エレキギターが趣味の人間にとっては、さまざまなサウンドを作り込めるエフェクターに凝るのも醍醐味のひとつ。しかし「色彩豊かな音を生み出したい!」と必要なエフェクターを揃えていったら、いつの間にか足元はペダルだらけ。すると「狙ったペダルを踏みにくい」などなどの細かな問題も増えてくるわけで……。
そこで今回は「奥に配置したペダルが踏みにくい」「ケーブルの取り回しに無理がある」「ノブがズレてしまいやすい」「トラブル時の電源確保が不安」といった、ギタリストがふと直面する微妙さを解消してくれる、「エフェクター周りの絶妙な便利アイテム」を集めてみました!
エレキギタリストは足元にエフェクターペダルを並べがちですし、その数を増やしがちです。上述の通り、エフェクターで音を自在に変えられることはエレキギターの醍醐味のひとつですから、それを楽しみまくりたくなるのは仕方ないことなのです。仕方ないのです。仕方ないですよね? ですが足元に並べるペダルの数が増えれば増えるほど、細々とした不便も増えてきてしまいます。
「ペダルボードをコンパクトにまとめるために、ボードの奥にもペダルを置いたら、そのフットスイッチが踏みにくくなってしまった」
「ペダルを横一列とかじゃなくて複雑に並べたら、パッチケーブルをねじるようにしないと配線できなくなってしまった」
「ペダルを隙間なく配置したら、フットスイッチを踏むときに足がほかのペダルのノブにも触れてしまいそうになってしまった」
「完璧なボードが構築できたけれど、だからこそ電源トラブルでこれが使えなくなったらもう終わりだ……」
そんな不便、不満、不安を抱えているギタリストは少なくないことでしょう。でも、そういう不便や不満や不安が多いということは、それを解消したいというニーズも多いということ。ならば、そのためのアイテムもすでに登場しているのでは?
正解です! 今回紹介するのはまさにそういったアイテムたち。前述の不便、不満、不安を解消してペダルライフの質を向上してくれる便利アイテム、こんなにあります!
踏みにくさ解消! フットスイッチハット
ケーブルのねじれ解消! オフセットパッチケーブル
ノブの誤動作解消! ロックノブ
電源の不安解消! USB PD対応9V給電ケーブル
というわけで以下より、ひとつずつ紹介していきましょう。
フットスイッチハットでペダルの踏みやすさアップ!
ペダルボード構築で最も悩ましいのは、ペダルの配置。並べる順序と接続順序が大きくずれていれば配線の取り回しに無理が出ます。では接続順に横一列に並べればよいかというと、配線の無理はなくせても、やたら横に長いボードでは持ち運びや設置に無理が出ます。
結果、エフェクターペダルを多く使うギタリスト、あるいはボードを最小限の面積に圧縮したいギタリストのボードは、ボードの縦方向にもペダルを並べる二列配置や三列配置になりがちです。
こちらのボードは、ペダル数は少ないですが、ボード面積最小化のために二列配置になっています
すると当然、その列のうち自分から遠い奥側のペダルのフットスイッチは踏みにくくなります。片足を奥に伸ばし、手前のペダルのノブに触れてセッティングを狂わせたりしないよう注意しながら踏まなくてはいけません。素早く無造作にパーンッと踏むのは難しいです。なので、ボード構築時には「奥側に置くペダルは、素早く踏む必要がないペダルにしておく」などの工夫が必要になります。
ですが、そんな配慮の余地なく「スペース効率優先でペダルを並べないとボードに収まらないよ!」なんて場合もありますよね。そこで登場、フットスイッチハット!
こちらはBarefoot Buttonsブランドの製品。これをフットスイッチに被せて……
フットスイッチの大きさと高さをアップ!
使い方も効果も超シンプル。このハットをフットスイッチにかぶせて、スイッチ全体の大きさと背の高さをアップ。すると奥側のペダルを手前のペダルを避けて脇から踏みやすくなったり、手前のペダルを飛び越えて踏んでも、背の高さのおかげで手前のペダルのノブに触れにくくなったりするわけです。
こちらはボードの脇から爪先を入れる感じで押すための配置&ハット
手前のペダルのノブよりも、奥のペダルのスイッチハットのほうが、背が高くなっていることにも注目
奥側設置のペダルに限らず、ひんぱんにオンオフするペダル全般に装着しておくのもあり! ボード配置とは関係なく、自宅でギターを弾いていてハダシで踏むときにも痛くない! なんてメリットもあったりします。
このフットスイッチハット、いまや定番アイテムなので選択肢は豊富。径の大きさや背の高さ、材質、カラバリ、取り付け方法など、選び放題です。だからこそ選び方のポイントはしっかり押さえておきたい!
まず大きさと背の高さは、基本的にはでかい方が踏みやすい! ですが、たとえばミニペダルに大きくて背の高いハットを被せると重心や力のかかり方がズレて、踏んだ勢いでペダル自体が倒れたりしやすくなる場合も。ペダルとボードの固定を強固にするなどの対応も同時に必要です。またオン/オフなどを示すLEDランプがスイッチの周囲に設置されているペダルに大きなハットを被せると、そのLEDの視認に支障を来す場合もあったりします。
スイッチ直下や周囲にLEDが設置されている場合は要注意。ハットを装着すると見事にLEDが隠れてしまうことも
なので、スイッチの周囲にLEDがある場合、その光を妨げないようなハットを選ばないといけません。より小さなサイズのハットにするというのがいちばん単純な対応方法です。
「フットスイッチ・キャップとして力を最大限発揮する最小限サイズ」というHATA A2017ジュラルミン製フットスイッチ・キャップはLED隠れ対策にも有効
ハットを小さくすると、踏みやすさアップ効果はやはり控えめになります。ですがこの写真のサイズのものでも、裸のフットスイッチよりは十分に踏みやすいです。もうひとつの対応方法は、クリア素材のハットを使うこと。百聞は一見にしかず。
MXRのミニペダルはフットスイッチ直下にオンオフLEDが配置されていますが、LEDが明るいのでクリアハットを抜けて視認可能!
こんな感じで、ハットを透過してくる光でオン/オフを視認できます。ただし、LEDの光量が弱めだったりLEDがフットスイッチの向こう側に隠れていたりするペダルだと、光の透過が不足し、十分な視認性を確保できない場合もあります。
フットスイッチハットの選択でもうひとつ注意が必要なのは、取り付けの径サイズです。ねじ留め固定のハットにせよ、ぎゅっと押し込んで固定するハットにせよ、フットスイッチハットの多くは、ペダル側で最も一般的な「頭の直径が約10mmのフットスイッチ」に合わせて作られています。
この部分の直径が約10mmというのがペダルで最も一般的なサイズのフットスイッチ
Barefoot Buttonsは、3方向からネジを均等に締めて固定する仕組み。多少のサイズ違いには締め込み具合で対応できます
ねじ留め式も押し込み式も、多少のサイズ違いに対応できる程度の余裕はあり。ですが、それで対応できる範囲にも限度はありますので、ペダル側のフットスイッチの実寸とハットの対応寸法、双方をあらかじめ確認しておきましょう。あと、フットスイッチの背の高さとストローク幅の兼ね合いで、ハットをかぶせるとスイッチを下まで踏み込み切れなくなり、オンオフできなくなるペダルもたまにあったりします。
写真は押し込んだ状態ですが、スイッチをストロークさせ切れずにオンオフできていません……
筆者は自己流の対策として、1mm厚ほどのナイロンワッシャーをスイッチとハットの間に入れて隙間をもう少しだけ稼ぎ、いちばん下までのストロークを確保。隙間を稼ぎすぎるとハットの固定が甘くなるので注意も必要です。
筆者はここにワッシャーを入れて対策
……といった感じで、ペダルごとにフットスイッチハットの有無や大きさや背の高さなどを使い分けて、踏みやすいボードを構築してます!
こちらオフセットパッチケーブルを使えばケーブルのねじれを減らせます
繰り返しになりますが、ペダルボード構築で最も悩ましいのはペダルの配置。そしてそれにともなって悩ましいのは、ペダル同士を接続するパッチケーブルの取り回しです。考えに考え抜いたベターなペダル配置も、そのペダルをつなぐケーブル接続がごちゃごちゃでは、サウンド面でも使い勝手や見た目の面でも、微妙な感じになってしまいますよね。
そうならないための基本は、ケーブルの長さを適切に選ぶこと。ケーブルの長さが余りまくっていたら、その余りがボード上でじゃまになってしまいます。「必要最小限+負荷を逃すための少しの余裕」な長さを選んでおきましょう。
そして、その基本ありきでさらにもうひと押し! としておすすめしたいのがオフセットパッチケーブルです。
MONTREUX「Premium Cable "Arena Jr.」シリーズのパッチケーブルから、奥が通常タイプ、そして手前がオフセット!
パッチケーブルで最も多用されるのは両端ともL型端子のものかと思います。ケーブルに対してのその「L」の取り付け向きに注目。
●スタンダード└──┘
●オフセット └──┐
となっているわけです。
そのおかげで、あるペダルのアウトプット端子と次のペダルのインプット端子の位置関係が、スタンダードタイプだとケーブルをかなりねじらないと配線できない位置関係な場合に、オフセットタイプなら少ないねじれで配線できます。すると、ねじりに必要な余分な長さや、ねじれから生じるボード上での暴れを回避できるというわけです。
たとえばこのように、縦に並べたペダル同士を接続する場合。手前のペダルの左側のアウトプット端子から奥のペダル右側のインプット端子という接続は、まさにオフセットケーブルの出番!
こういった「2」や「S」みたいな流れの配線にはオフセットケーブルがハマることが多いです
そういった特殊な配置だけでなく、普通に横並びの配置でも、オフセットケーブルがハマるパターンがあります。サイドジャックのペダルとトップジャックのペダルの接続です。
オフセットでもねじりは必要なのですが、普通のタイプよりもねじれを減らせます
ここって意外と、普通のパッチケーブルだと微妙にねじった接続になりますよね? オフセットケーブルならそこのねじりも減らせます。
ロックノブ装着でうっかりキックでの誤動作を防止できます
奥のペダルのフットスイッチを踏むときに、手前のペダルのノブにも足が触れてしまってペダルのセッティングがずれてしまった系トラブルへの対策としては、先にまず、奥の踏みたいペダルのほうにフットスイッチハットを装着する方法を紹介しました。対してこちらは、手前のペダルの方に装着するアイテム。ロックノブです。
こちらの製品はその名も「Loknob」。通常時は台座とノブ本体のギザギザが嚙み合っていて、ノブが動きません。
ロックノブとは「うっかり触れてしまったくらいでは回らないような固定の仕組みを備えたノブ」です。手前のペダル云々だけではなく、ボードごとケースに入れての運搬時など、ノブが勝手に動いてしまうことが気になる場面全般への対策としても便利なアイテムとして要チェック! そのロックノブ、製品ごとに固定の度合いや仕組みが異なるので、自身の用途や要望に合わせた選び分けが必要です。
固定の度合いとしてはおおよそ、以下の2種類。
●固定タイプ:取り付けてノブを固定/動かしたいときは取り外す
●固定&解除タイプ:取り付けたままロック解除もできる
先ほども紹介した「Locknob」ブランドはどちらのタイプもラインアップしています。
●Tour Cap:固定タイプ
●Loknob:固定&解除タイプ
より便利そうでいてもう少し詳しい説明も必要そうなのは、固定&解除タイプのほうでしょうか。詳しくチェックしてみましょう。
固定&解除タイプの「Loknob」の仕組みは、先ほど紹介したように、「台座とノブ本体のそれぞれにギザギザがあり、通常時はそれが噛み合ってロックされていて、ノブを持ち上げると噛み合いが外れてノブを回せる」というものです。
また、取り付け方は公式サイトで詳しく解説されており、そちらに目を通せば、取り付け方と同時にその仕組みも、よりはっきりと理解できるかと思います。
●Loknob Bigの取り付け方 取り付け前の注意
●Loknob Smallの取り付け方 取り付け前の注意
取り付け前の注意で特に大切なのは、「Loknob BigとSmallの違いはノブの大きさだけではなく、ペダル側のポットのサイズによってはBigじゃないと取り付けられる場合もある」というところ。そこはしっかり確認!
取り付けステップとしては、まず元のノブを外して、そこにこの台座パーツを取り付けます。台座パーツはペダル側次第で、ポットの根元にねじ込んで取り付けられる場合と、台座裏面のシールでの貼り付けになる場合があります。そしてノブ本体を留めネジで固定
仕組みや取り付け方などに少しの違いはありますが、Beatwalk「Hawkeye Knob」なども「ノブを持ち上げるとノブを回せる」という使い方は共通。ルックスやサイズ感、取り付け方法、お値段などを比較検討して購入です!
USBからペダルへの給電の最新最適解がUSB PD対応9V給電ケーブルです
どれだけ完璧なペダルボードも、電源がなければ何の役にも立ちません。ボードに組み込んである電源サプライが壊れてしまったら? みたいな事態への備えもあれば安心です。そこで、いまや持ち歩いている人も多いモバイルバッテリーやUSB充電器からエフェクター用の電源を取り出す、USB-9V変換ケーブルやアダプターというアイテムが生まれたわけですが……
これまでのUSB-9V変換アイテムの多くは、旧来のUSBの5V出力を9Vに昇圧してエフェクターに供給する仕組み。そのため、電圧を引き上げる際の電力ロスや発熱、電流不足などの弱点を抱えていたのです。
しかし、最近になって登場し始めた「USB PD」対応の変換アダプターは、そのあたりの心配が無用! 旧来のUSBの電力供給能力が電圧5V/最大電力7.5Wなのに対して、USB PDのそれは電圧5V〜20V/最大電力100W!
USB PD対応モバイルバッテリーやUSB充電器の多くは、その20Vとか100Wといった最大スペックまではカバーしません。ですがそれでも、USB PD対応9V給電ケーブルとの組み合わせで、小規模なペダルボードには十分な電源供給を昇圧なしに確保できる程度のスペックがあります。
なお、USB PD対応9V給電ケーブル、パッケージングテクノロジー「PDC-09VM」のほうの性能、注意事項は以下のようになっています。
・10000mAのモバイルバッテリーで006P電池約5個分。
・18Wクラスのモバイルバッテリーで最大2Aまで利用可能。
・100Wクラスのモバイルバッテリーであれば最大3Aまで利用可能です。
※PD対応の電源機器によっては無負荷(100mA以下など)状態が続くと給電を停止する製品があります。その場合は接続し直す必要があります。
※充電器の仕様によっては複数接続すると5V出力になる場合があります。
※PD対応の電源機器により対応する出力電圧が違いますので、利用可能かを事前確認してください。
最後の「対応する出力電圧」うんぬんは、「モバイルバッテリー等の側がUSB PD規格の9V出力に対応していること」という意味。まさにその9Vを引き出すためのケーブルですからね。
さて、では実際、モバイルバッテリーのエフェクターに対する電源供給能力ってどの程度なのでしょう? たとえば、以下のコンパクトなスティク型のモバイルバッテリー。容量は5000mAh。USB-C端子からのUSB PD給電に対応しており、最大給電スペックは18Wとなっています。電圧9Vで出力する場合、電流は2Aまでになるわけですね。2A=2000mAです。
なわとびのとびなわのグリップ程度しかないコンパクトさ
スペック表記を確認。9V/2Aです
では電源アダプターの超定番、BOSS「PSA-100S」のスペックはというと、電圧はもちろん9Vで、最大出力電流は500mA。
代長年お世話になってます、BOSSアダプター
こちらもスペック表記を確認。9V/0.5A
ということで、このモバイルバッテリーの供給可能電流はなんと4倍! スペック上は、BOSSアダプターPSA-100Sよりかなり多くのペダルに同時に安定的に電源を供給できるはずです。
実際、9V/2Aバッテリーでこの程度のボードの駆動は余裕。すべてアナログペダルで消費電力が低いおかげもありますが
動作可能時間は、PDC-09VMの使用目安として「10000mAのモバイルバッテリーで006P電池約5個分」と示されています。たとえばペダルも5個使う場合なら、各ペダルを電池駆動した場合と大体近い感じになるイメージでしょうか。5000mAのバッテリーならその半分ですね。十分な長さなのでは?
とはいえ、PDC-09VMにも「※PD対応の電源機器によっては無負荷(100mA以下など)状態が続くと給電を停止する製品があります」という注意事項が添えられているように、動作の安定性とか信頼性とかも考えれば総合的にはやはり、エフェクター向けに設計されている専用のパワーサプライに優位があるかと思います。
ですので、そちらをメイン電源として、そのバックアップやサブの役割としてUSB PD対応9V給電ケーブルもペダルボードケースに忍ばせておくというのがおすすめです。安定のパワーサプライ駆動をメインに、電源トラブル時や、急遽ペダルを追加する場合への備えとしてUSB PD給電の準備もしておくわけです。
ギターに限らずですが、自分が不便に感じることがあれば、同じく不便を感じている人がほかにもたくさんいたりして、それを解消するアイテムを作ってくれるメーカーも出てきていたりするものです。不便があるところに不便解消アイテムあり! せっかくなので使わせてもらいまくりましょう!