筆者はこれまで、たくさんの文房具をご紹介してきました。シンプルな機能のものが多い文房具ですが、斬新なアイデアや新技術、それにちょっとした遊び心というスパイスを加えることで、画期的な大ヒット商品が生まれてくるのも文房具の特徴です。今回はそんな奥の深い文房具ワールドの中から、筆者おすすめの「ハサミ」を14本ドーンっとたっぷり紹介しちゃいましょう。細部に施され、凝縮されたメーカーのこだわりをお見逃しなく!
目次
正統派ストロングタイプのハサミ
小型軽量タイプのハサミ
複数機能を搭載したハイブリッドタイプのハサミ
個性あふれるハサミ
まずは、定番ともいえるハサミを3種類ご紹介しましょう。実用性が高く、自宅でもオフィスでも快適に使える、正統派ストロングタイプのハサミです。切れ味がよく長持ち、シンプルな構造ながら特段の不満や問題がなく、末永く使えるのがポイントです。
まずは、プラスの「フィットカットカーブ」。“ベルヌーイカーブ刃”といわれる独特の形状の刃を採用することで、刃が開く角度が常に一定になり、刃の根元から刃先まで軽くなめらかな切れ味を実現しているのが特徴です。一般的にハサミは、根元部分はあまり力を入れなくてもよく切れますが、刃の中央部から先端部にかけては力を入れる必要があります。しかし、「フィットカットカーブ」では少し力を入れればそのまま切り進むことが可能。実際に使ってみると、そのなめらかな切れ味が堪能できます。
「フィットカットカーブ」にはさまざまなタイプがありますが、筆者のお気に入りは高い耐久性を持ち、粘着テープを切ってもベタつかない「プレミアムチタン」
この独特のカーブが、「フィットカットカーブ」の切れ味のよさを生み出します
「フィットカットカーブ」が真価を発揮するのはこのあたりから。ダンボールでもそのまま一気に切り進めます
続いては、コクヨの「エアロフィットサクサ」。こちらのハサミも、刃先でのなめらかな切れ味を追求。独自の“ハイブリッドアーチ刃”を採用することで、従来比約4倍の切れ味を実現したとのこと(メーカー調べ)。さらに同社オリジナルの「グルーレス構造」も見逃せません。刃が接する部分を最小限に抑える構造になっており、粘着テープなどを切ってものりがつきにくく、ベタつきにくいのも特徴です。「エアロフィットサクサ」にもいくつかのタイプがありますが、筆者は耐久性が高くのりがつきにくい「チタン・グルーレス」タイプを使っています。
“ハイブリッドアーチ刃”が、刃先でも広い角度をキープ。軽い切れ味を実現します
横から見ると中空構造になっているのがわかります。これが「グルーレス構造」
「グルーレス構造」タイプなので、何度も粘着テープを切って試してみても、確かにベタベタしません
定番の3つ目は、「双子マーク」でおなじみ、ドイツはツヴィリングJ.A.ヘンケルスのハサミ。ヘンケルスといえばキッチン用のハサミがよく知られていますが、事務用のハサミも伝統と磨き抜かれた技術に支えられ、長年にわたってドイツのクラフトマンシップによって作り続けられています。文房具を超えた機能美が感じられ、サクっと軽い感じで切れる日本製のハサミと異なり、ザクっとした感触と音が感じられる鋭い切れ味です。これを使うと、改めてハサミは刃物でもあることを実感させられます。
さまざまなタイプのハサミがありますが、今回は事務用の「クラシック」と呼ばれるモデルをご紹介
まるで切れ味鋭い高級ナイフのようです
しっかりしたかみ合わせが印象的で、かっちりした精密感と独特の重厚感があります
こちらでは持ち運びに便利な小型軽量のハサミをご紹介しましょう。最近は各社から携帯用ハサミがいろいろと発売されています。ポイントは、ペンケースはもちろんポーチなどに入れてもかさばらず、手軽に持ち運べること。もちろん切れ味や使いやすさも重要ですぞ。1つ持っていれば、「誰かハサミ持ってない?」と聞かれるような場面で大活躍できますよ。
刃を固定するリベットをなくしてとにかく薄さを追求したのが、アルスコーポレーションの「手帳ばさみ Pocke」。これなら、手帳や財布、名刺入れなどにもスッポリと収まりそうです。シンプルでかわいらしいデザインもいいですね。
わずか1.8mmの超極薄
筆者の古風な名刺入れにもスポッと収まりました
筆者の太い指もなんとか収まりました
続いては、サンスター文具の「スティッキールはさみ」。携帯・収納に便利なスティック型のハサミです。スリムな形状なので、ペンケースはもちろんメイクポーチなどに入れておけば持ち運びも楽々です。
本体サイズは長さが116mmで横幅が14mm、奥行きは1mm。鉛筆と並べてみました
使うときはキャップを外すだけ
バネが付いているので軽い力で動かすことができます
こちらはクツワの「HiLiNE 携帯はさみ」。重量はわずか7gで、本体サイズは、長さ44mm、横幅16mm、奥行き13mmときわめてコンパクト。携帯電話のストラップやキーホルダーに付けて持ち歩いても、気にならない大きさです。
コンパクトなサイズは携帯用にピッタリ。10円硬貨と一緒に並べてみました
使うときはこの部分を指でスライドさせると、刃渡り19mmのハサミが登場します
小さくても力持ち。ダンボールもしっかりと切れました
テコの原理で2枚の刃をスライドさせることで、紙などを切るのがハサミの機能。しかし、こちらでご紹介するのは、ハサミとしての基本機能にもう1つの機能が加わったハイブリッドハサミ。使ってみると意外と便利ですよ。
こちらはドラパスの「おもしろはさみカッター」。文字どおり、はさみとカッターが合体したハイブリッドな文房具です。ハサミとしてもカッターとしても、不満のない切れ味で、それぞれの使い勝手も悪くありません。
ネーミングやパッケージデザインから、ちょっとチャラけた商品かと思っていたのですが、まったくそんなことはありません
きわめて実用的に作られたナイスな文房具です
カッターの切れ味は鋭く、使い勝手も問題ありません
世の中まさに通信販売時代。そんな時代に最適なハサミがコクヨの「ハコアケ」。普段は通常のハサミとして使用しつつ、通販のダンボール箱が届くとハサミの刃を閉じた状態でさっと開梱(かいこん)できる「ハコアケモード」に変身。刃の先端部分に刃が出てきて、箱のテープなどをカットできるという優れものです。
普段はこんな感じで普通のハサミとして使います
スイッチに指をのせてスライドすると、先端部分に最大1mmの刃が登場。この刃を使ってテープなどをカットします。ハサミの刃の部分に段差を設け、刃の接する部分を最小限に抑えた「3Dグルーレス構造」を採用。梱包用のガムテープをカットしてもべたつきにくい設計となっているのもポイントです
こちらはベルモントの「エクシードカットII(50cmメジャー付)」。はい、もうおわかりですね。ハサミに50cmのメジャーが付いています。釣り用のグッズとして販売されている商品ですが、切れ味と使いやすさを追求して開発されており、さまざまなシーンでの活躍が期待できます。
サイズは95mm。ハサミはスライド収納タイプで、通常はこんな感じ
白い部分をスライドさせるとステンレス製のハサミが現れます。メジャーは50cmの長さがあります
最後にご紹介するのは、思わず「なんじゃこりゃ?」と叫んでしまいそうな、ちょっと(かなり)変わったハサミの数々です。四の五の言わず、個性的なフォルムと用途をお楽しみください。
まずは、アーネストの「秘密を守りきります! パートII」をご紹介しましょう。名前だけでなく、形状もかなりユニークです。実はこちら、シュレッダータイプのハサミ。9枚の刃が、人に見せたくない重要書類を細かく切り刻んでくれます。正直、大量の書類を処分するには向いていませんが、実際にやってみると結構楽しいですよ。これがあれば、「きざみのり」も簡単に作れそうです♪
9枚の刃が重なった独特の形状が印象的(衝撃的?)です
横と縦の両方からハサミを入れると……
3.5mm角ほどの四角い紙片になります
続いては北正の「プッチ」という商品。手では割りにくいうずらの卵をきれいにカットして中身を取り出すためのハサミです。ちなみに北正は刃物で有名な岐阜県関市にある会社、「プッチ」のパッケージには地域ブランドである「関の刃物」のロゴマークが付いています。
取っ手は普通のハサミと同じですが、刃がなんとも変わった形状ですね
うずらの卵の太いほうにハサミのリングをかぶせてカットすると、殻だけがきれいにカットできました♪
こちらはプラスの「フィットカット スクラップ」。写真を見ていただければ一目瞭然ですが、刃渡りが220mmもある、なが〜い刃が特徴のハサミです。A4サイズの短辺が1発で切れます。大きくカットしたい新聞の切り抜きにも効果を発揮しますよ。
長い渡りが特徴。先にご紹介した「フィットカットカーブ」と並べてみました
エンボス軽量加工刃と握りやすいグリップの採用で、長い刃渡りのわりに快適に使えるバランスを実現。A4サイズの書類が入った封筒を1発で切りましょう! と、思ったらちょっと余っちゃいました。一瞬何で? と思いましたが、A4が入る封筒はA4よりも大きいのは当たり前ですね。A4用紙は見事に一発切りができましたよ
続いては、刃物の町として有名な岐阜県関市にあるニッケン刃物の「日本刀鋏(はさみ)」。この地は古くから日本刀の産地として有名で、名刀を生み出す名工や刀工集団を輩出した5つの生産地、五ヶ伝(ごかでん)の1つ。「折れず、曲がらず、よく切れる」と評された日本刀を生み出した伝統と技術は、いまでも関市の刃物に受け継がれています。「日本刀鋏(はさみ)」は、文字どおり日本刀をモチーフにしたハサミ。この地で受け継いできた技術や魂が込められた逸品で、日本刀ならでは曲線美が特長です。見た目もよく、人からもらっても、人にあげても、自分で使ってもうれしい、個性豊かなハサミに仕上がっています。
おしゃれで実用的なギフトとして喜ばれそうです
キャップ代わりのさやを抜くとそこにはきれいな曲線を描いた刃が
曲線を描いた刃は対象物をしっかりと引き込み、“引き切り効果”を発揮。スムーズな切れ味を実現します
ここまで、いろんなハサミをご紹介してきましたが、いよいよ終わりが近づいてきました。トリを飾るのは、「最小で最強」というミッションのもと開発されたエンジニアの「鉄腕ハサミGT」。多彩な素材をパワフルに切断できる実力は、国内外で数々の賞を受賞していることでわかります。2015年度にはグッドデザイン賞も受賞しています。薄い紙はもちろん、針金やアルミ板などの金属も切断できる力持ちです(針金は1.2mm、アルミ板は0.5mm程度まで)。
この力強い武骨なフォルムにそそられる方も多いのでは
刃は刃物用の特殊ステンレス。スムーズな切れ味を生むストレート刃と、多彩な素材を切断できるギザ刃のダブル構造。針金や硬いコードを切断するワイヤーカッターもあります。この部分はガムテープだけを切断できるダンボールオープナーとしても使えます。
ハサミといっても、いろんなタイプのものがあっておもしろいですね。筆者は今回紹介した以外にも、まだまだユニークなハサミを持っております。機会があれば、次回のハサミの日(8月3日)頃にでも、またお会いしましょう!
主に東京の湾岸エリアに生息しているが、中国、タイ、インドネシアなどでの発見情報もあり、その実態は定かではない。仲間うちでは「おっちゃん」と呼ばれることも。