まるでミストのような微細な気泡が、毛穴や毛髪の汚れまで細やかに洗い流してくれることから、人気の高級シャワーヘッド。価格帯は幅広いが、3万円前後のモデルでトップクラスの人気を誇るブランドのひとつがMYTREX(マイトレックス)の「HIHO」(秘泡=ひほう)シリーズだ。今回は、そんな「HIHO」シリーズから、2024年2月に発売された最新モデル「HIHO FINE BUBBLE+e」(ヒホウ ファインバブル プラスイー)をピックアップ。40代男性の価格.comスタッフが使用し、その実力を検証した。
まず、シャワーヘッドのメーカー各社が用いる気泡の呼称と、その効果について整理しておこう。シャワーヘッドが発生する気泡をサイズで区分すると、1μm〜100μmの気泡を「マイクロバブル」もしくは「ファインバブル」、1μm未満の気泡を「ナノバブル」もしくは「ウルトラファインバブル」と呼ぶ。このうち、「ファインバブル」と「ウルトラファインバブル」は登録商標であり、ファインバブル産業会(FBIA)の会員企業のみが用いることのできる呼称だ。
これらの気泡は人間の毛穴(約100〜300μm)や毛髪(約80μm)より小さく、毛穴の奥や毛髪の汚れを洗い流すことができるとされる。また、それぞれに特有の性質があり、マイクロバブルは汚れに吸着して水中を浮上し、ナノバブルは汚れに付着して水中に停滞するという。
これらの気泡をどれだけ多く発生するかについては、個々のメーカーの試験方法が統一されていないため、メーカーの公称値でシャワーヘッドの性能を単純に比較することは難しい。そのため、ここでは筆者の使用感に基づき、シャワーヘッドの性能を検証する。
高級シャワーヘッド「HIHO」シリーズを展開するMYTREXは、美容機器のラインアップでも有名なメーカー。高級シャワーヘッドについては、モデルチェンジのたびに気泡のサイズが細かくなるのが注目点だ。
今回検証する最新モデル「HIHO FINE BUBBLE+e」は、ナノバブルの基準値が1μm(1μm=1,000nm)未満であるところ、これよりもはるかに小さい46nm(ナノメートル)の気泡を大量に発生させ、毛穴の奥や毛髪の汚れも細やかに洗い流し、保湿・保温効果も発揮するという。
「HIHO FINE BUBBLE+e」のシャワーヘッド本体は、半円型のヘッドからグリップが直線的に伸びるシンプルながら高級感のあるデザイン。大型の吐水板の色がグレーからブラックに変更されたことも、高級感にひと役買っている
シャワーヘッドのグリップ部分は、握ったときに親指側に重心がかかりやすいよう、傾斜角度が最適化された。ヘッドの根元にあるレバーによって、3つの水流モードを切り替えることが可能だ
さらに、「HIHO FINE BUBBLE+e」のもうひとつの大きな特徴が、シャワーヘッド本体から電源不要でマイクロカレント(微弱電流)を生み出す「水力発電」機能を搭載していること。電気を含んだ水流を浴びるだけで、年齢とともにゆるやかになる肌メカニズムの内部に働きかけ、ハリやツヤのある肌に導くという。体のこわばりが気になる場合にも効果が期待できるとしている。40代の筆者も、年齢肌が気になり始め、体のこわばりも実感するようになってきたので、試してみるにはちょうどよかった。
「HIHO FINE BUBBLE+e」に搭載される水流モードは、微弱電流を発生する「HIHOマイクロカレントモード」とミストを発生する「HIHOミストモード」、水流が豊富な「HIHOストレートモード」の3つ。シャワーヘッド本体には塩素除去カートリッジを内蔵しており、3つの水流モードのいずれでも塩素除去効果が期待できる。
シャワーヘッドの素材はプラスチックで、重量は約326g。シャワーヘッドとしてはやや重めだが、重量バランスがよいため、扱いにくさを感じるほどではない
本体下部には、塩素除去カートリッジを内蔵。約98.5%の残留塩素を除去できるという。敏感肌の人には欠かせない機能だ
電源なしで微弱電流を発生するモード。シャワーヘッドを手に持って水流を浴びることで、シャワーヘッドと体を通じて1つの電流回路が形成され、微弱電流を発生させて全身に行き渡らせる仕組みだ。毎日のシャワーで肌ケアやエイジングケアを図りたい場合に効果があるという。
実際に水流を浴びてみたところ、舌に当ててみるとピリッという感触があったので、確かに電流は流れているようだ。吐水板の中央の水流が太いので、打たせ湯のように首や肩に何分間か当ててみた。すると、肩や首こりのある部分が少し温かくなり、ほぐれた気がした。
電流が発生すると、吐水板の中央が紫色に発光するので、特別なムードがある。なお、メーカーによると、マイクロカレントモードは乳幼児やペット、自分で意思表示のできない人の使用は控えていただきたいとのことだ
微細な気泡を豊富に発生するモード。霧状のミストのような肌あたりのやさしい水流に、ふんわりと包み込まれるような感覚で、シャワーの始めでも最後の洗い流しでもどちらに使用するのにも向いている。肌あたりが非常にやさしいので、敏感肌の人にもおすすめできそうだ。
個人的に、気泡の細やかさややさしさ、滑らかさは、3万円前後の高級シャワーヘッドのなかでも頭ひとつ抜けていると感じた。広範囲にミストが噴き出すので、全身でサウナミストを浴びているかのような感覚だ。なおミストは、シャワーヘッドから噴き出すときに給湯器の設定温度より低くなる傾向があるが、MYTREXは今回、なるべく低くならないように設計を工夫したという。
「HIHO」シリーズの従来製品と比べて、ミストモード設定時の温度の低下が少ないように感じられた。夏場などの暑い時期は、冷水にしてさっと汗を流すのも爽快だ
水圧と水量が最も強いモード。しっかりとした浴び心地が欲しいときにはこのモードが最も便利だ。体の広範囲にたっぷりとした水流を当てられるので、シャンプーやボディソープの洗い流しが素早く行える。水流は太めだが、ナノバブルも豊富に含んでおり、肌あたりはやさしかった。
吐水板の面積が広いこともあり、体の広範囲にたっぷりと水流が当たるため、シャワーの浴び始めでも後でも使う頻度が多くなりそうだ
微細な気泡を豊富に含み、やわらかい水流が楽しめる本製品だが、汚れ落ちはどうだろうか? そこで、腕に油性ペンで文字を描き、「HIHOミストモード」の水流を当てて試してみた。
腕の上に油性マジックペンで「価格」と書き、そのまま1分程度、HIHOミストモードで水流を当ててみた。この段階ではまだ「価格」の文字に変化はなかった
1分ほど水流を当てた後、「価格」の文字を軽くこすってみたところ、文字が薄くなって広がり、ごっそりと流れ落ちた。ほかの高級シャワーヘッドと比べても、明らかに汚れ落ちが早い。汚れに吸着する力が強いナノバブルを多く含んでいるため、こうした違いが出るのだろう。
汚れ落ちは早く、汚れが薄く広がっていく様子が、ほかの高級シャワーヘッドと異なっていた
シャワーを浴びて体を拭いても、しばらくぽかぽかした感覚が続き、肌の表面が水の膜に包まれたようなしっとりとした感覚が続いていた。シャワーでの保湿・保温効果は期待以上だ。
では、入浴時はどうだろうか? お湯を張った湯船の中にシャワーヘッドを入れ、「HIHOミストモード」で1分ほど水流を注ぎ、シルキーバスを作ってみた。水中に停滞しやすいナノバブルの数が多いこともあってか、お湯の滑らかさは高級シャワーヘッドのなかでもトップクラス。湯のボリューム感がしっかりと感じられ、心地よいしっとり感が得られた。
水中に停滞しやすいナノバブルの数が多いためか、他社の高級シャワーヘッドと比べても、お湯のボリューム感やしっとり感が強く感じられた
本製品は、3万円前後の高級シャワーヘッドのなかでも、常に他メーカーの製品と比較検討される人気モデルのひとつ。それだけに、他メーカー製品とどのような差別化をしているのかにも注意して検証を行ったが、その答えは使ってみてすぐに得られた。
まずシャワーを浴びてみて感じたことは、ナノバブルの細やかさと豊富さだ。他メーカーの同価格帯の高級シャワーヘッドと比べても、明らかに気泡がきめ細やかで、リッチなミストが楽しめた。ミストのやさしさやふんわり感はまさに絶品。塩素除去機能も搭載されており、肌が弱い人にとってもありがたいポイントだ。
同時に、シャワー後の保湿・保温力も、ライバル製品に比べて高いと感じられた。特にシルキーバスに浸かったときの湯のボリューム感やしっとり感は、はっきりと実感できるものがあり、湯上がり後も、半日以上はぽかぽかした感じや体の表面が膜に包まれる感覚が続いていた。これだけとっても、「HIHO FINE BUBBLE+e」を選ぶ価値は十分にある。
加えて、今回のモデルで初採用となった「マイクロカレント」も新たな試みとして評価できる。美容機器で微弱電流を用いてケアをしている人も、毎日のこととなると億劫に感じる場面があるかもしれないが、シャワーのたびにケアができるのなら、そうしたことも少ないはず。
実際に「マイクロカレント」の水流を浴びてみたところ、美容ケアの効果まではわからなかったが、多少の温熱効果はあるように感じられた。凝り固まった首・肩にぽかぽかと温かさが残って気持ちよかったので、日常的に使うのが楽しくなりそうだ。本製品は、高級シャワーヘッドのなかでも先進の機能を凝縮した製品と言えるだけに、長く使える1品を手に入れたい高級志向の人にはうってつけだろう。