「ウルトラファインバブル」や「ナノバブル」が話題を集め、息の長い人気を見せる高級シャワーヘッド。そんな高級シャワーヘッドも、初期のブームを牽引したモデルが発売してから数年が経ち、値ごろ感が出ている。旧モデルは今や1万円台半ばが相場だが、2024年6月下旬、このボリュームゾーンに合わせる価格設定で、アイリスオーヤマの美容家電ブランド「MiCOLA(ミコラ)」から高級シャワーヘッド「MiCOLA ウルトラファインバブル クレンジングシャワーヘッド」が発売された。はたしてその実力はどうだろうか?
高級シャワーヘッドが発生するナノサイズの気泡「ウルトラファインバブル」やマイクロサイズの気泡「マイクロバブル」を含む「ファインバブル」は、300μmの毛穴や、80μmの毛髪よりはるかに小さく、汚れに吸着する性質を持つことが確認されており、汚れ落ちがよく、保温・保湿効果もあるとして高く評価されている。
コロナ禍における清潔志向の高まりや在宅時間の増加もあり、こうしたファインバブルの性質が注目され高級シャワーヘッドのブームが到来したのが、2020年ごろのこと。それ以前にも、TKS(田中金属製作所)などから高級シャワーヘッドは発売されていたが、当時はまだ認知度も低く、盛り上がりを欠いていた。
2024年はそうした初期のブームから数年が経ち、3万円前後の新製品のほか、発売から数年経った1万台半ば程度の製品がボリュームゾーンを形成している。本製品は発売時の公式サイトの価格が1万5,000円前後とボリュームゾーンのど真ん中に入っており、かなりトレンドを意識した製品だ。
しかも、アイリスオーヤマはファインバブル産業会(FBIA)の会員企業のため、公的機関の調査結果から「ファインバブル」の発生が確認されている点で、信頼性が高い。おなじみのメーカーから技術的な裏付けのある製品が手ごろな価格で発売されたことになり、注目に値する。
「ファインバブル」を発生するシャワーヘッドは、減圧機構などを本体に内蔵する必要があるため、通常のシャワーヘッドと比べてヘッド部分が重くなる傾向にある。ところが、本製品は直径約10cmの大型の吐水板を用いながら約229gと軽量。さらに、手元のボタン操作で水流をストップできる止水機能も搭載されており、取り回しがよく実用的だ。
本体素材はプラスチックで、表面にはパールホワイトの塗装が施されている。吐水板が大きいのが特徴で、直径は約10cm。グリップの上部に水流切り替えのレバーを、その下部に止水ボタンを備える
背面には、貝殻をモチーフにしたようなラインが入っており、デザイン上のワンポイントとなっている
本体重量は約229g。ウルトラファインバブルを発生するシャワーヘッドとしてはかなり軽量で、取り回しがよい
吐水板の仕様は、中央部の最も小さい穴が約0.25mmで、穴の総数は372個。穴の大きさが3段階に分かれており、吐水板の円の外側になるにつれ大きくなっているのが特徴だ。
「MiCOLA ウルトラファインバブル クレンジングシャワーヘッド」に搭載されている水流モードは3つ。レバー操作で水流を変更でき、吐水板と正対した状態でレバーを左に回すと、最も小さな吐水口から水流が出る「バブルクレンズ」、真ん中にするとそのひとつ外側の吐水口から水流が出る「ストレート」、レバーを右に回すと最も外側の吐水口から水流が出る「ミストクレンズ」を使い分けられる。
全身に浴びたいときに使いたい水流。絹のような滑らかでやさしい肌当たりなので、シャワーの浴び始めにまずこの水流で体を流すとよいだろう。水圧が弱めなので、敏感肌の人にもよさそう。
吐水板の中央部の穴から細めの水流が出る
体や髪を洗い流すときに便利な水流。太めの水流がたっぷりと出るので、シャンプーなどを洗い流すのに便利だ。水圧はそれほど強くないので、リラックスして浴びられる。
吐水板の中央からひとつ外側の穴から太めの水流が出る
豊かなミストを体感できる水流。大径の吐水板から広範囲にミストが噴き出すため、体の多くの部分がミストに包まれ、ミストサウナを浴びているような感覚だ。水圧は強めだが、肌当たりはやさしいので、顔に浴びるのにも最適。細やかで豊富なミストの感覚をリッチに楽しめる。
吐水板全体から広範囲にミストを噴き出す
次に、汚れ落ち具合をテストしていこう。油性マジックペンで腕に文字を書き、そこに水流を当てて汚れをこするという手順で行った。汚れ落ちの早さや強さは、価格が3万円前後のワンランク上の製品と比べるとわずかに劣る気がしたが、発売時1万円台半ばという価格を考えると、期待値は超えている。
油性マジックペンで「価格」という文字を書き、ミストクレンズで1分ほど水流を当ててみた
1分間水流を当てた後、価格の文字をこすると、広がるように文字が落ちていった。ただし、うっすらと文字の跡が残った
シルキーバスの保湿効果はどうか? 湯を張った浴槽にシャワーヘッドを入れて水流を出すと、水中に小さな粒のようなものが漂っていることが確認できた。ウルトラファインバブルは不可視、マイクロバブルは可視とされるため、おそらくマイクロバブルが多く漂っていたものと思われる。湯にはボリューム感があり、しっとりとした感触があった。
湯上がり後もぽかぽかとした感覚や潤いが続いていたので、保湿効果は十分にありそうだ。シルキーバスによる保湿効果は、言われてみなければ価格が3万円前後の製品と違いがわからないほど高い。入浴後5時間ほどたっても体がぽかぽかとしており、肌の表面も潤っていた。
湯を張った浴槽にシャワーヘッドを入れて、3分ほどミストモードで水流を当ててみた。写真ではわかりづらいが、目を凝らして見ると、ごく小さな粒のようなものが漂っていた。なお、シャワーヘッド本体が軽くお湯に浮いてしまうため、水流は下に向けるのがコツだ
そのほか、シャワーヘッドを本製品に交換すれば節水効果も期待できる。メーカーによれば、通常のシャワーヘッドから交換すると、約50%の節水効果があるという。約50%といえば、3万円前後の高級シャワーヘッドと比べても見劣りしない数値で、これもうれしいポイント。毎日のシャワータイムが楽しくなり、それでいて節水効果も期待できるとなれば、製品購入後の満足度は高いだろう。
FBIA会員企業で、家電や生活雑貨でおなじみのアイリスオーヤマから、ファインバブルを発生するシャワーヘッドが、比較的手ごろな価格で発売されたことは、改めて注目度が高い。
発売時の価格が3万円前後のワンランク上の高級シャワーヘッドと比べると、ファインバブルの効果はやや弱いようにも感じられたが、3つの水流モードと止水ボタンを備え、それでいて軽量で取り回しのよい本製品は、高級シャワーヘッドの旧モデルより操作性にすぐれている。このあたりは、最新製品だからこその進化点と言えるだろう。コストパフォーマンスはかなり高いと言える。
価格帯がワンランク上の高級シャワーヘッドは、確かにミストがより豊富だが、その分価格が高かったり、シャワーヘッド本体が重かったりといったデメリットもある。本製品は、高級シャワーヘッドの入門機としてバランスのよい仕上がりとなっているので、ぜひ購入して試してみてはいかがだろうか。