どうせハサミを買うなら、よく切れるヤツがいいに決まっています。100均のハサミも昔に比べるとずっと品質は上がりましたが、それでもまだ当たり外れは大きい。100円払ってまったく切れないダメハサミを引いてしまう可能性もゼロではありません。
今は国産の超優秀なハサミでも500円ちょいで買えてしまうので、変なギャンブルをするよりは、最初から当たり確定のよく切れるハサミを探したほうが効率的と言えそう。
リニューアルによって切れ味の安定感を増したコクヨ「ハサミ<サクサ>」
そんなよく切れるハサミの代表格が、コクヨ「ハサミ<サクサ>」(以下、「サクサ」)シリーズ。先端がカーブした「ハイブリッドアーチ刃」を搭載し、お安いのによく切れて、しかも頑丈で長持ちと、言うことなしです。
そんな「サクサ」が2024年12月に2度目の大幅リニューアルを行い、特殊機構によってさらに切れ味をアップさせたとのこと。これまでのハサミが苦手としていたアレもサクサク切れて、しかも左利きの人でも使いやすいという新「サクサ」とは、どういうものか? 実際に切って性能を確認してみました。
以前から、「サクサ」シリーズと言えばまず特徴的なのが、コクヨ独自の[ハイブリッドアーチ刃]です。一般的なハサミは、刃の先端にいくほど力が入りにくく切れ味が落ちていくんですが、刃先がカーブした[ハイブリッドアーチ刃]なら、刃元から先端までずっと安定した切れ味が続きます。
たとえばコピー用紙を両断する場合も、チョキチョキチョキとこまめに刃を動かすことなく、サクッ、サクッと大きなストロークで切れるため、切り線が歪まずまっすぐに切りやすくなっています。
刃が先端に向けてカーブすることで、刃先までスムーズに切れます
リニューアルした新「サクサ」は、その[ハイブリッドアーチ刃]に加えて、新たに業界初となる「傾斜インサート」構造を搭載。これまでよりもさらに切れ味がアップしました。ではこの「傾斜インサート」とはどういうものか?
端的に言うと、ハンドルに対して刃をナナメに組み込むことで切る力を一点に集中させる、という仕組みです。
ハンドルに対して刃をナナメに据え付けた「傾斜インサート」構造
ハサミというのは、2本の刃が交差する点で紙などを挟み込んでせん断(断ち切る)する、というもの。そのとき、刃と刃の間に隙間があるとせん断力が逃げてしまい、切れ味が落ちてしまいます。
2本の刃が平行してすれ違う従来のハサミだと、どうしても微妙に隙間ができてしまうんですが、刃がナナメになっていると、交差時の隙間が小さくなるからよく切れる、というわけ。
刃と刃の隙間が小さくなることで、より高いせん断力を発揮!
ハサミを使うのがうまい人は、ハサミのハンドルに力をかけて少しねじることで、刃をわざとナナメにして切れ味をアップさせるというテクニックをよく使っています。つまり「サクサ」を使うだけで、誰でも意識することなく上級者のテクニックが駆使できる、ということになるんです。
さらに「傾斜インサート」構造のメリットとして、左利きの人でも切りやすい、というのがあります。先ほど「ハサミを使うのがうまい人はハンドルをねじる」という話をしましたが、左利きの人が普通のハサミを使うと、逆方向にねじる力が発生してしまい、刃と刃の隙間が開いてしまう現象が発生します。つまり、それだけ切れなくなるということに。
これまでは、あまり市販されていない“左利き専用ハサミ”を使うか、ハサミのときだけ右手を使うよう矯正するしか対策はなかったんですが、最初から切れるほうにねじられたナナメ刃の「サクサ」ならそのあたりは問題なし。右左の関係なく快適に切れるんです。
従来のハサミは左手だと切れ味が落ちますが、「サクサ」はまったくいつもどおりにサクサク
そしてなによりナナメ刃が生きるのが、布や薄いフィルムといったやわらかいものを切るときです。紙のようなコシがないフィルムなどは、刃と刃のわずかな隙間にフニャと落ち込んでしまうので、とても切りにくい。なかでも特に難敵なのが梱包用のプチプチシートで、やわらかいフィルムが2枚重ねになっているため、非常に切りにくい。切れ味の悪いダメなハサミでは、文字通り刃(歯)が立ちません。
500円台でプチプチシートがここまで自在に切れるハサミは、かなりレア
そして当然なんですが、ナナメ刃で隙間を減らす設計である「サクサ」は、プチプチシートにもめちゃくちゃ強い! シートを蛇行するように曲がりながら切っても、刃の隙間に落ち込む感覚は欠片もありません。
コシの弱いポリ袋や、やわらかなガーゼなんかもサクッスパッといけるので、家庭用ハサミとしての対応力はかなり高いと感じました。
リニューアルした「サクサ」には、以下の4種類がラインアップされています。
・ノーマル仕様の「スタンダード刃」
・粘着剤が刃に付着しにくい「グルーレス刃」
・コーティングを施すことでより非粘着性を高めた「フッ素・グルーレス刃」
・高硬度コーティングで切れ味が長続きする「チタン・グルーレス刃」
正直なところ、スタンダード刃があまりにもコスパよすぎるので「いちばん安いスタンダード刃で十分です」と言いたいんですが、ご家庭内であれこれ切るのであれば、グルーレス刃もあったほうが安心かも。
粘着テープのベタベタが付着しにくい「フッ素・グルーレス刃」。刃が立体的に盛り上がることで構造的な非粘着性能を発揮します
サクサのグルーレス刃は立体的な3Dグルーレス構造刃と呼ばれるもので、ガムテープなどを切っても、ベタベタした粘着剤が刃に付着しにくくなっています。ご家庭で長年使われているハサミは、大体この粘着剤がべったりと付着して切れ味がガタ落ちしているものですが、その心配が少なくて済むのはありがたいところでしょう。特にコーティングがしっかりしている「フッ素・グルーレス刃」は本当にベタつきません。
ハサミを含めて、刃物は基本的に値段と性能がかなり正比例するジャンル。実際、数千円するお高めハサミは切れ味がとてもすばらしいんですが……ただ、この新しい「ハサミ<サクサ>」は切りやすい工夫が満載にもかかわらず、スタンダード刃で528円(公式サイト価格・税込)と気軽に買えるお値段。これはちょっと安すぎでは!?
性能的には不満を言う隙もないレベルで、コスパ的にはトップクラスだと思います。
お手ごろ価格で、切れ味の安定感もあるコクヨ「サクサ」