ASUSは、「ZenFone」シリーズの最新モデル「ZenFone 4」を2017年9月23日に日本市場へ投入する。希望小売価格は56,800円(税別)。基本スペックが前モデルの「ZenFone 3」から大幅に向上しているうえに、画面サイズが大きくなったり、指紋認証センサーの位置が移動したりなど、デザインがガラリと変わっている。また、標準と広角レンズのデュアルカメラを搭載し、ハイエンド機並みの高画質な写真を撮影することも可能だ。
そんな「ZenFone 4」を発売前に試すことができたので、「ZenFone 3」から進化したポイントを押さえつつ、使い勝手をレポートする。
「ZenFone 4」はSIMフリースマホの本命になるのか?
「ZenFone 4」の液晶ディスプレイは5.5型で、前モデルの5.2型から大型化。本体サイズも大きくなり、横幅はあまり変わらないが、縦が約8.6mm長くなって前モデルよりも縦長の形状になっている。解像度は1080×1920のフルHDで変わらないものの、画面が大きくなったぶん視認性が向上しており、ブラウジングはもちろんのこと、写真や動画も見やすくなった。
ディスプレイは5.5型のフルHD IPS液晶。最新のハイエンド機に搭載されている有機ELではないが、それでもコントラストが高く色鮮やかだ。表面には、耐衝撃性にすぐれた「Corning Gorilla Glass 3」を採用している
左が「ZenFone 4」で右が「ZenFone 3」。サイズアップした「ZenFone 4」のほうが、文字の視認性が高い
大きくなったとは言え、手にフィットするサイズに収められており、持ちにくさは感じない。もちろん「ZenFone 3」から乗り換えた直後は違和感を覚えるが、すぐになれるだろう
外観においてサイズ以外に大きく変化したのは、指紋認証センサーだ。従来背面にあったものを前面下部に移動し、ホームボタンの役割も兼ねている。前モデルでは、画面を上にして置いた状態だとわざわざ持ち上げて指紋認証センサーに触れる必要があったが、「ZenFone 4」では置いた状態のまま指紋でロック解除できるようになった。
「ZenFone 4」の指紋認証センサーは前面下部に搭載されるようになり、ホームボタンも兼ねている。背面にあったときは人差し指や中指を使ってロック解除などを行っていたが、前面に移動したことで親指や人差し指で操作できるように
イヤホンジャックは天面から底面に移動した
背面には標準レンズと広角レンズをそれぞれ採用する2つのカメラを搭載。「ZenFone 4」ではカメラの出っ張りがなくなったのが、デザイン面の大きな変化と言える。また、指紋認証センサーが前面に移動したことで、背面がかなりスッキリとした見た目になったのもポイントだ。なお、ASUSのロゴは背面下部から中央部に移動。“禅”をイメージしたという同心円状の模様は健在だ。
カメラ部分の出っ張りや指紋認証センサーがなくなった背面。全体がスッキリとし洗練されたデザインになった。これならデスクの上に置いて操作しても、たわまないか心配しなくていい
「ZenFone 4」の基本スペックは、CPUが「Snapdragon 660」(2.2GHz)、メモリーが6GB、ストレージ容量が64GBという構成。搭載OSは「Android 7.0」だが、最新の「Android 8.0」へのアップグレードを予定している。DSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)は、microSDカードとの排他利用になるが、ストレージ容量が64GBあるため、十分に実用的だろう。SIMカードスロットは、「ZenFone 3」の“microSIM×1、nanoSIM×1”から“nanoSIM×2”に変更されている。なお、「ZenFone 3」との基本スペック比較は以下の表を確認してほしい。
スペックは「ZenFone 3」から大きく進化
「AnTuTu Benchmark」を使ったベンチマークテストを行ってみたところ、結果は“112017”で、“62779”だった「ZenFone 3」の2倍近いスコアを記録。アプリやカメラの起動は高速で、アプリを複数開いてマルチタスク作業を行っていても動作が不安定になることはなく、ハイエンド機に近い性能を備えていると感じた。
「AnTuTu Benchmark」のスコアは“112017”
「ZenFone 4」の最も大きな特徴は、デュアルレンズを採用したカメラだ。背面に、1.4nmピクセルのソニー製センサー「IMX362」を搭載したF値1.8のメインカメラ(1200万画素)に加えて、120°の広角カメラ(800万画素)を搭載。2つのカメラはワンタッチで切り替えられる。特に広角カメラは、風景撮影や大人数での記念撮影などで重宝するだろう。
メインカメラでスマートフォンを構えて、もう少し広い画角で撮影したいというときに、ワンタッチで広角カメラに変更できるのはとても便利。メインカメラは、多少暗い場所でも高速でオートフォーカスしてくれ、手ぶれすることなく撮りたい瞬間を撮影できる。
いっぽうで、広角カメラはメインカメラより画素数が低く、暗い場所で撮影すると画質の低さが目立つのが気になった。とは言え、両カメラともマニュアル撮影やポートレートモード、4K動画撮影などに多彩な撮影に対応しており、全体的なカメラ性能は十分満足できるクオリティだ。
左がメインカメラ、中央が広角カメラ、右がRGBセンサーとLEDフラッシュ
メインカメラのオートモードで撮影。HDRがきいていて、コントラストが強くしっかりとした色味の写真
カメラのUI。シャッターボタンの左にある山のアイコンをタップすると、メインカメラと広角カメラを切り替えられる
左がメインカメラ、右が広角カメラで撮影したもの。広角カメラは、同じ場所から撮影しても標準レンズより2回りほど広い範囲を撮影可能だ。ただし、広角カメラで撮影した写真はゆがみがややキツい
メインカメラは、少々暗い室内でも高速でピントを合わせて手ぶれなしで撮影できる
メインカメラは、夜道のような低照度の場面で手持ちで撮影しても手ぶれなし。明るく撮影できるため、夜道でのスナップ写真にはもってこいと言えそうだ
左がオートモード、右がポートレートモードで撮影した写真。iPhone 7 Plusに搭載されているポートレートモードは、望遠カメラと広角カメラを使って被写界深度を識別して背景をぼかすのだが、「ZenFone 4」はボケ効果をソフトウェア側で処理している。そのためか、顔と認識できない“ぬいぐるみ”のような被写体だとポートレートモードを使うことができなかった。また、横顔でも不可だったため、このあたりは今後の改善に期待したい
ホワイトバランスや露出、ISO、シャッタースピードなどを自由に設定できる「プロモード」で撮影。これを使いこなせば、幻想的な写真を撮影できるだろう
「ZenFone 4」には、ASUSのAndroid端末に採用されている独自ユーザーインターフェイス「ZenUI」の最新版「ZenUI 4.0」が搭載されている。初期状態で搭載されている標準アプリの数は13個、サードパーティー製アプリの数は3個で、「ZenFone 3」と比べると減っている。現在地の位置情報をアプリで共有できたり、電源ボタンを3回押すと緊急通報してくれたりする新機能が追加されているが、なかでも便利なのが1つのアプリを2つのアカウントで同時に使用できる「ツインアプリ」機能だ。
たとえば、DSDSを使い会社用、プライベート用などと2枚のSIMカードを使い分けているユーザーが、それぞれのSIMカードに割り当てた2つのLINEアカウントを「ZenFone 4」上で運用できる。これは今までになかった、かゆいところに手が届く機能だと感じた。
通常だと1端末につき1つのアカウントまでしか運用できないFacebookやインスタグラム、LINEといったSNSアプリで2つのアカウントを使い分けられる「ツインアプリ」。設定を有効にしておけば、オリジナルのアプリとコピーのアプリが生成され、それぞれを別アカウントで利用可能
「ツインアプリ」のほかには、電源ボタンを3回押すと緊急通報したり、事前に設定した相手にSMSで位置情報を送信したりする機能や、現在地の位置情報をアプリで共有できる機能などが新しく搭載されている
「ZenFone 4」は、「ZenFone 3」からデザインや性能が大幅に向上しており、シリーズ最新モデルにふさわしい端末だ。気になるのは、56,800円(税別)という価格だろう。「ZenFone 3」の発売時価格が39,800円(税別)だったため、「ZenFone 4」が高いと感じる人は多いかもしれない。ただし、ベンチマークで「ZenFone 3」の2倍近いスコアをたたき出した性能や、ハイエンド機並みの写真を撮れるデュアルレンズカメラといった機能を考慮すれば、妥当な価格だと感じるのではないか。
記事では触れなかったが、内蔵のデュアルスピーカーでステレオ再生やハイレゾオーディオにも対応しており、全部入りスマートフォンと言っても過言ではないくらいバランスがとれている。気になる人はチェックしてみてほしい。
最新ガジェットとゲームに目がない雑食系ライター。最近メタボ気味になってきたので健康管理グッズにも興味あり。休日はゲームをしたり映画を見たりしています。