久しぶりに“尖った”VAIOが登場した。尖ったと言ってもデザイン面ではなく、テクノロジー面でVAIOらしい仕掛けが施された新しい「VAIO S」シリーズだ。インテルの「第8世代Coreプロセッサー」の性能をさらに引き上げる「VAIO TruePerformance」という独自技術を備えているのが特徴。いったいどんな技術なのか。今回は13.3型の「VAIO S13」のスペシャルエディションである「VAIO S13 | ALL BLACK EDITION」を使って、その実力をチェックしていきたい。
第8世代Coreプロセッサーの性能をさらに引き出すためのVAIO TruePerformanceという独自技術を搭載する最新のVAIO S13 | ALL BLACK EDITION。価格.com最安価格は256,820円(2018年2月5日時点)
同社の主力モバイルノートであるVAIO Sシリーズは、11.6型の「VAIO S11」と、今回試用した13.3型のVAIO S13の2つのモデルをラインアップする。昨年2017年にフルモデルチェンジをしたばかりで、今年1月に発売されたモデルはマイナーチェンジ版だ。本体サイズやデザインなどはそのままで、その中身が大きく変わっている。具体的には、CPUに最新の第8世代Coreプロセッサーを採用し、メインメモリーがLPDDR3-1866からLPDDR3-2133へと基本性能の底上げが図られている。
第8世代Coreプロセッサーは前世代から大きく性能が向上しているが、さすがにこれだけでは本モデルをレビューしようとは思わなかったが、新しいVAIO Sシリーズには、第8世代Coreプロセッサーの性能をさらに高めるVAIO TruePerformance(以下、VTP)という独自技術が搭載されている。
インテル製のCPUには、消費電力や温度などの条件がそろったときに、ピーク負荷時にパフォーマンスを高める「インテルターボ・ブースト・テクノロジー 2.0」という機能が搭載されている。すぐれた機能だが、最大パフォーマンスの状態は電力消費も発熱も非常に大きくなることから、最大パフォーマンスを長時間維持するのは難しい。そこで、最大値から低下した後のパフォーマンスを通常よりも高めに維持することで、パフォーマンスを向上させようというがVTPだ。
VTPの動作イメージ。最大パフォーマンスではなく、その後の持続可能パフォーマンスを高く保つことで性能を高めている
気になるそのパフォーマンスは、同社によると、CPU性能なら通常のCPUとVTP適用のCPUを比較した場合、11〜13%向上するという。また、通常の「Core i7-8550U」よりもVTP適用の「Core i5-8250U」のパフォーマンスがすぐれており、価格を抑えるためにVTP適用のCore i5-8250Uを選んでも高いパフォーマンスを得られるということだ。CPU性能を測定するベンチマークプログラム「CINEBENCH R15」でも、VTPを有効にすることで、スコアがアップするのを確認できた。
グラフィック性能は第7世代の「Core i5-7200U」を1とした場合、VTP適用のCore i5-8250Uが1.13、VTP適用のCore i7-78550Uが1.15と、こちらも10%以上性能が向上するという。
CINEBENCH R15の結果。今回はCore i7-8550Uを搭載したモデルを使用している。左がVTP適用時、右がVTPをオフにした場合。驚くほどの差ではないが、CPU、CPU(シングルコア)ともにスコアがアップしている
VTPを実現するために、電源周りが強化されている。放熱用ヒートパイプの熱輸送力を33%、放熱用フィンの熱交換率を10%向上させたほか、ファン回転数をチューニングして放熱能力を高めている。電源周りを強化した結果、重量はVAIO S11、VAIO S13ともに10gほど重くなっている。また、バッテリー駆動時間もVAIO S11で1時間〜30分、VAIO S13で30分ほど短くなっている。
VTPは「VAIOの設定」の「CPUとファン」の動作モードを「パフォーマンス優先」にすると有効になる。VTPを有効にしてベンチマークテストを実施したところ、ファンが高速に回転し、動作音が大きくなった。もちろん、バッテリーの消費も大きくなるので、必要なときだけ有効にするとよさそうだ
最新のVAIO Sシリーズは、マイナーバージョンアップ版なので、デザインは変わっていないが、新たに追加されたALL BLACK EDITIONは、これまでのVAIO Sシリーズとは一味違う雰囲気のモデルに仕上がっている。
つや消しのブラックで、通常シルバーのロゴと「オーナメント」と呼ばれるディスプレイのお尻の部分を黒色にすることで、全身真っ黒なたたずまいなのだ。ディスプレイを開くと、キーボード面は光沢のある黒色で、そのコントラストもかっこいい。レノボ・ジャパンの「ThinkPad」が好きな人は、物欲を刺激されるはずだ。気になるのは汚れ。触れたところがテカテカになるので、汚れが気になる人は注意したい。
奥がVAIO S11のブラックモデル、手前がVAIO S13|ALL BLACK EDITION。同じブラックだが、つや消しのVAIO S13|ALL BLACK EDITIONのほうが高級感のある仕上がり。ロゴとオーナメントの色が黒色になっているのがポイント
オーナメント部分は光沢のある仕上がりで、通常のブラックモデル同様、デザイン上のよいアクセントになっている
ALL BLACK EDITIONはVAIO S11でもVAIO S13でも選択可能。通常モデルとの違いは、CPUの選択肢がVTP適用のCore i7-8550Uだけになること。そのほか、梱包箱が黒色になり、クリーニングクロスも黒色のものが付属する。
最後にノートパソコンの基本的な部分をチェックしていきたい。
キーボードは、キーピッチが約19mm、キーストロークが約1.2mmとゆとりのある仕様。ディスプレイを開くと、ディスプレイ部分のお尻がテーブルにぶつかり、かなり角度が付き、手のひらや手首が窮屈にならずにタイピングができる。キーボードに角度は付くが、剛性が高いのでぐらつくこともない。タッチパッドはクリックボタン独立式で、クリック操作はしやすいが、最近のノートパソコンとしてはタッチパッドの面積が狭く、人によってはタッチパッドの面積が少し狭く感じるかもしれない。
ディスプレイを開くと、キーボードに角度がついてタイピングしやすくなる
標準的なレイアウトのキーボードは、静かなのもポイント。カチャカチャという耳障りな音がせず、静かな場所でも周りに迷惑をかけずにタイピングできる。バックライトキーボードもついているが、明かりがまばらなのが気になった(個体差かもしれないが)
ディスプレイは1920×1080のノングレアタイプ。パッと見は白っぽく見えて、グレアタイプよりも地味に感じたが、実際に使ってみると、鮮やかさや明るさに不満は感じなかった。店頭モデル、カスタマイズモデル(VAIO OWNER MADE)ともにタッチ対応モデルはラインアップしない。
外部インターフェイスが充実しているのもVAIO S13の特徴だ。USB 3.0端子を左側面に2ポート、右側面に1ポート(USB充電対応)備える。HDMI端子、VGA端子(アナログRGB出力端子)、SDメモリーカードスロット、LAN端子と、必要なものがそろっている。ただし、USB Type-C端子がないのが残念なところ。対応機器はまだまだ多くはないが、将来性の高いポートなので、ぜひ次のモデルでは搭載してもらいたい。
外部インターフェイスは先進性よりも実用性を優先した構成。USB Type-C端子など新しい規格は搭載せず、会議室のプロジェクターなどで使われているVGA端子や、無線LANのないオフィスでは必須のLAN端子を備える
個人向け標準仕様のVAIO S13|ALL BLACK EDITIONの主なスペックは、CPUがCore i7-8550U、メモリーが8GB(オンボードで増設不可)、ストレージは256GB SSD(NVMe)という仕様だ。OSはWindows 10 Home 64ビット。LTE対応のSIMフリーモデルなので、格安SIMを使って、外出先でインターネットに接続することもできる。本体サイズは約320.4(幅)×216.6(奥行)×15.0〜17.9(高さ)mm、重量は約1.07kg。バッテリー駆動時間は約12時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver.2.0)。
ソニー時代のVAIOは、SSDを積極的に採用するなど、性能にこだわっていた。VAIOになってからもそれは変わらなかったが、久しぶりにVTPのような独自の取り組みにより性能を高めたのが最新のVAIO Sシリーズだ。その性能アップは、驚くほどのものではないが、少しでも高性能なパソコンが欲しい人にとっては、間違いなく魅力的な選択肢になるはずだ。
今回試したVAIO S13|ALL BLACK EDITIONにも注目してほしい。ThinkPadのような真っ黒なカラーリングはシックで、かっこいい。汚れが目立つのが難点だが、飽きずに長く使えそうだ。
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