NTTドコモとソフトバンクから2021年6月25日に発売されたシャープのハイエンドスマートフォン「AQUOS R6」が注目を集めている。価格.comの「スマートフォン」カテゴリーでは、人気・注目度ランキングで4位、ユーザーレビューの投稿数も25件と活況だ(いずれも2021年7月6日時点)。その使用レビューをお届けしよう。
通信キャリアが取り扱うスマートフォン端末は、現在は定価販売が基本。特にハイエンドモデルは10万円以上が主流で、誰もが簡単に買えるようなものではなくなっている。しかし、シャープの「AQUOS R6」は、11万円以上の高価格製品ながら、ドイツの老舗カメラメーカーであるライカとの協業による本格的カメラを搭載することなどから、高い注目を集めている。
「AQUOS R6」のボディサイズは、約74(幅)×162(高さ)×9.5(厚さ)mmで、重量は約207g。手にした際のサイズ感もなかなかのものだ。なお、このボディはIPX5/8等級の防水仕様と、IP6Xの防塵仕様をクリアしている。また、FeliCaポートは、交通系ICカードの併用対応だ。そのいっぽうで、ワイヤレス充電の「Qi」には、前モデル「AQUOS R5G」と同様、非搭載、フルセグ・ワンセグのテレビチューナーも本機でついに非搭載となった。
9mm以上の厚みと200g以上の重量は、昨今のスマートフォンとしても厚く、重いほうだ
リアパネルは、クロムメッキされたフレームやガラスの背面など高価格機らしい質感。上部に備わる一眼のメインカメラはレンズが大きく、デザイン面の特徴ともなっている
ボディ下面に、USB Type-Cポートとヘッドホン端子を配置。左側に見えるスリットはスピーカーホール。受話口のスピーカーと合わせてステレオ出力に対応する
ボタンはボディ右側面に配置。写真斜め左下から電源、Googleアシスタント呼び出し、ボリューム調整という並び。なお電源ボタンの長押しで、Google Payなどの呼び出しが行える
歴代の「AQUOS R」シリーズは、ディスプレイにシャープならではのIGZO液晶を採用していたが、本機は新たに自社製の6.6インチ有機ELパネル「Pro IGZO OLED」を搭載する。このディスプレイは2,730×1,260の解像度と2,000nitの輝度、2,000万:1のコントラスト比を実現した高性能なもの。10bitカラー出力やDolby Visionにも対応している。また、1Hzから240Hz(残像低減機能付き)までの可変リフレッシュレートに対しており、高速駆動と低消費電力を両立しているのも特徴だ。なお、タッチ操作の応答速度に影響するタッチサンプリングレートは公開されていない。
このディスプレイが実現する2,000nitという輝度は、「AQUOS R5G」の1000nitよりはるかに明るく、屋外でもとても鮮明に映像を表示できる。また、暗い場所でも階調の破綻は見られない。画面自体の面積が広く、画面解像度も高く、明るく、リフレッシュレートも高い本機のディスプレイは、本機の大きな魅力と言える。ライカ監修のカメラにばかり注目が集まりやすいが、そのカメラで撮影した写真を映し出すディスプレイもそれに負けないほどの高画質と言える。
ディスプレイのパネルは、従来のIGZO液晶から有機ELへと変更された。有機ELパネルではあるが輝度が高く、もちろんコントラストも良好。色のりもよく、透明感が高い
「AQUOS R5G」よりも明るい2,000nitという最大輝度を誇る。日中の屋外でも視認性はかなりよい
ディスプレイ指紋認証には、認証エリアの広い「Qualcomm 3D Sonic Max」を採用。認証速度も速い
なお、このディスプレイは、長辺が湾曲した曲面ディスプレイだ。曲面ディスプレイは、手にした際のサイズ感を薄くさせる効果があるが、曲面部分のゆがみやタッチ判定の抜け、ハードタイプの保護フィルムを装着しにくいという欠点もあって、好みが分かれる。近ごろはサムスン「Galaxy S21 Ultra」やオッポ「Find X3 Pro」のように曲面部分を極力減らしたものが増えており、その点での評価は分かれそうだ。
ディスプレイの曲面部分は比較的大きくラウンドしている。最近のスマートフォンではあまり見かけなくなったタイプだ
本機の基本スペックだが、SoCには最新のハイエンド向け「Snapdragon 888」を採用しており、12GBのメモリーと256GBのストレージ、1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードを組み合わせている。OSは、Android 11だが、発売から2年間2回のバージョンアップを保証しており、Android 13世代までは最新のソフトウェア環境で利用できる。
定番のベンチマークアプリ「AnTuTuベンチマーク」で処理性能を測ってみたが、総合スコアは779,725(内訳、CPU:206,723、GPU:297,061、MEM:132,985、UX:142,956)となった。なお、同じ「Snapdragon 888」搭載機のサムスン「Galaxy S21」のスコア、731,900(内訳、CPU:205,101、GPU:255,407、MEM:139,086、UX:133,306)と比較してもわずかだが良好な結果となった。Snapdragon 888搭載機としては満足できる結果と言えるだろう。
AnTuTuベンチマークの結果。左が本機、右が同じSoCとメモリー容量を備えるサムスン「Galaxy S21」のもの。本機のほうがよい結果となったが、Snapdragon 888搭載機としては順当なところと言える
次に、本機最大の注目点であるカメラ機能を見てみよう。リアに備わるメインカメラは、高級コンパクトデジタルカメラでも採用される1インチサイズの大きなセンサーを採用しており、有効画素数は約2,020万となっている。なお、レンズは、焦点距離19mm、絞り値F 1.9のライカ「ズミクロン」だ。このほかに、構図認識やオートフォーカス目的のToFセンサーも搭載される。なお、カメラ起動時の画角は、デジタルズームによる26mmとなる。 望遠側は6倍までのデジタルズームが利用できる。動画撮影機能だが、「AQUOS R5G」で特徴的だった8K動画撮影機能は搭載されず、最大で4K(60fps)にとどまっている。なお、フロントカメラは約1,260万画素で、こちらはライカの監修は受けていない。
1インチのセンサーサイズに対応するためメインカメラはかなり大きい。いかにもカメラ重視という雰囲気だ
以下に、メインカメラを使って撮影し た作例を掲載する。いずれも、初期設定のままカメラ任せのAIオートモードを使用している。なお、焦点距離は19mmの超広角を使用している。
秋葉原駅前の様子。イメージセンサー本来の画角である19mmはかなりの広角だが、極端なゆがみは見られない。画質が周辺まで比較的均一で、スマートフォン用のカメラとしてはかなり高品質だ
左が本機、右はソニー「Xperia 1 II」の超広角カメラ(16mm)で撮影したもの。彫刻に焦点を合わせて、背景のボケの量を比べた。「Xperia 1 II」は遠景までほぼボケなしなのに対して、本機では大きなボケが生まれている
明るめな夜景を撮影。ハイライト部分や明かりに照らされた壁の階調が自然だ。街路樹のディテールも隅々までしっかり残っている
深夜の美術館。肉眼では非常に暗いシーン のため、長時間露光のナイトモードを使った撮影となった。手持ちで5ショットを撮影し、そのうちいちばん手ぶれが少ないものを選んだ。今までのAQUOSシリーズのカメラではピント合わせでも苦労するシーンだが、驚くほどノイズが少なく、芝生やコンクリート壁の質感も残っている
カメラ機能では、1インチという大型イメージセンサーの効果が大きい。画質と手軽さの両面で、サムスンやソニー、オッポといった高画質で定評のあるスマートフォンのカメラと比べても優位性が感じられた。特に、暗所撮影の扱いやすさは抜きん出ている。浅い被写界深度を生かした、自然な背景ボケも楽しく、デジタル一眼カメラのような表現も手軽にできる。また、マニュアルモードならRAWデータの保存も可能なので、さらなる表現の追求も可能だ。
気になった点だが、ToFセンサーが備わるものの構図の認識機能がやや弱く、カメラ任せのオートモードでは構図の中央部分にピントを合わせるだけになりやすい。瞳AFや高速かつ高度なオートフォーカス機能も搭載されていないため、ペットや子どもといった動く被写体の撮影はやや苦手だ。シャッタータイムラグもやや長い。また、ソニー「Xperia」シリーズで見られるようなシャッターボタンもできれば欲しかったところ。これらが改善されれば、より本格的なカメラとして使えるだろう。
本機はAQUOSシリーズとしては最大の5,000mAhのバッテリーを搭載する。カタログスペックを見ると、連続通話時間(AMR-WB)が約1,940分、連続待ち受け時間(4G)は約420時間となっている。Snapdragon 888を搭載する今期のハイエンドモデルに共通の、連続待ち受け時間が短く、バッテリー持ちがよくない傾向は、本機でも見られる。
実際の利用では、WebやSNSなど処理負荷の比較的少ないアプリをメインに使用した場合でも、1日3時間ほど使えば2日以内に、ゲームをやりこむと半日程度でバッテリーがなくなる。また、待機時でもバッテリーは減っていく。ボディの発熱も比較的多めだ。低価格帯の「AQUOS sense」シリーズとは異なり、ハイエンド機に求められるパフォーマンス優先のチューニングと言えそうだ。
なお本機には、電池持ち対策として、バッテリーを介さずにAC電源から直接給電できる機能が備わる。有線接続にはなるものの、バッテリーにかかる負担を大幅に減らすことができるので、電源が確保できるところでは積極的に活用したい。なお、類似する機能はソニー「Xperia」などでも見られるが、本機の場合、すべてのアプリでこの機能を利用できるのが特徴だ。
設定→電池→インテリジェントチャージ→「画面消灯中のみ充電」のトグルをオンにすることで、画面点灯中は直接給電となる。なお、消灯中は一定の残量以上の充電を停止してバッテリーを保護する
機能面で見どころの多い「AQUOS R6」だが、その実力はかなりのものだった。端末価格は、NTTドコモ版で115,632円、ソフトバンク版で133,920円(いずれも税込)と決して安くはない。だが、ライバルとなりそうな、サムスン「Galaxy S21 Ultra」が約15万円、ソニー「Xperia 1 III」が15万円以上、本機の兄弟モデルとなるライカ「Leitz Phone 1」が18万円以上することを考えると、良心的な価格にさえ思えてくる。
何と言っても、ライカ監修のカメラ機能が注目点だが、注意点としては、カメラのオートフォーカスが弱く、動く被写体や複雑な構図に弱いことがある。また、パフォーマンスを重視したチューニングなので、「AQUOS sense」シリーズなどの電池持ちをイメージすると期待外れに感じるかもしれない。加えて、好みの分かれるところではあるが、購入前にディスプレイの曲面部分を確認しておいたほうがよいだろう。
とはいえ、「AQUOS R6」は、カメラ、ディスプレイ、機能性、処理性能のどれも妥協したくないという欲張りなユーザーでも納得できるほどの実力を備えている。ハイエンドスマホを検討しているなら積極的に検討したい1台だ。
FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。