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2021年を振り返る、格安SIM/MVNO業界ニュース

新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから1年が経った2021年。コストの安さが魅力の格安SIMは、2021年9月末の時点で1,531万契約に達しています(MVNOサービスのうちSIMカード型の区分別契約数、総務省が2021年12月に公開した統計資料より)。

今年は繰り返される感染の波や昨年から延期された東京オリンピック・パラリンピックの開催といった、これまでの日常とは異なる大きな社会的出来事もありました。そんな2021年の格安SIM市場を取り巻く大きな動きを振り返ってみたいと思います。

※記事の内容は2021年12月21日時点での情報をもとにしています。記事中の価格は特に断りがない限り税込です。

ニュースその1:大手キャリアが「オンラインプラン」を提供開始

2021年はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの「オンラインプラン」が大きな注目を集めました。オンラインプランとはドコモの料金プラン「ahamo」をはじめ、KDDIの「povo」およびソフトバンクの「LINEMO」で提供されているプランを指します。

オンラインプランは2021年3月から4月にかけてスタートしたばかりの新しいプランです。いずれも低廉で多様なサービスから自分のニーズに合ったものを選べる環境の整備を目的とする「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」が総務省から2020年10月に公表された後に登場したもので、「月額3,000円でデータ利用量は毎月20GB」を目安に、各キャリアとも1種類の料金プランのみを提供するシンプルなサービスとして始まりました。

KDDIのオンラインプラン「povo」

KDDIのオンラインプラン「povo」

3社のサービスが出揃った当初は横並び感もあったオンラインプランですが、サービス開始後のアップデートや料金プランの追加などを経て、2021年12月現在では独自色も強くなっています。

最も大きく変化したのはKDDIの「povo」でしょう。「povo」はアプリから気軽にオン・オフを選べるオプション「トッピング」を特徴としていましたが、2021年9月から提供が始まった「povo 2.0」では基本となる「ベースプラン」がデータ利用量0GB・月額0円になり、データ利用量さえもトッピングとして購入する「オールトッピング」スタイルになりました。

データトッピングは1回2,700円で20GB(30日間有効)のデータ利用量を購入できる「データ追加20GB」だけでなく、まとめ買いに向いた「データ追加60GB」(90日間有効、1回6,490円)や「データ追加150GB」(180日間有効、1回12,980円)、データ通信が24時間使い放題になる「データ使い放題」(1回330円)などが用意されており、ユーザーが自身のニーズに合わせて選ぶことが可能です。

ソフトバンクのオンラインプラン「LINEMO」

ソフトバンクのオンラインプラン「LINEMO」

ソフトバンクの「LINEMO」は子会社であるLINEモバイル(2022年3月にソフトバンクへ吸収合併予定)の格安SIMを源流とするサービスで、LINEアプリの利用時にデータ利用量を消費しない「LINEギガフリー」が特徴のひとつです(一部対象外の通信あり)。

LINEMOでは当初から提供されてきた毎月20GBで月額2,728円の「スマホプラン」に加え、2021年7月からは毎月3GBで月額990円の「ミニプラン」を選べるようになりました。

NTTドコモのオンラインプラン「ahamo」

NTTドコモのオンラインプラン「ahamo」

ドコモの「ahamo」は当初から変わらず、毎月20GBで月額2,970円(各通話最初の5分間が無料になる通話料割引付き)のワンプランを貫いています。料金プランの選択肢はほかにありませんが、スマートフォンの端末販売をオンラインプランでは唯一行っているのが特徴のひとつです。

ニュースその2:格安SIMから「オンラインプラン」対抗プランが続々登場

オンラインプランの登場を受けて、2021年はMVNOが提供する格安SIMの料金プランにも変化が訪れています。

従来、大手キャリアは通信品質が高く店頭サポートも受けられる代わりにコストが高く、通信品質や店頭サポートと引き換えにコストが安い格安SIMと棲み分けができていました。ところが、「月額約3,000円で毎月20GB」というコストパフォーマンスの高さが話題を呼んだオンラインプランは、格安SIMの一部料金プランと競合するサービスです。

大手キャリアのうちKDDIとソフトバンクは以前からサブブランドの「UQ mobile」や「ワイモバイル」に力を入れており、大手キャリアとMVNOの棲み分けは曖昧になりつつありましたが、オンラインプランの登場はその状況に拍車をかけることになったのです。市場環境の変化を受けて、一部のMVNOからはオンラインプランに対抗する料金プランが登場しています。

日本通信SIMの「合理的20GBプラン」と「合理的みんなのプラン」

日本通信SIMの「合理的20GBプラン」と「合理的みんなのプラン」

たとえば「ahamo」の発表から間もない2020年12月には、早くも日本通信が同社の名を冠した格安SIMサービス「日本通信SIM」において「合理的20GBプラン」の提供を開始しています。データ利用量はオンラインプラン当初の目安と同じ毎月20GB(サービス開始時点では16GB、30GBの上限までは275円/1GBで追加購入可能)で、合計70分の無料通話分が付きつつ月額料金は2,178円で提供されています。

2021年6月にはデータ利用量が毎月6GBの「合理的みんなのプラン」(月額1,390円、合計70分の無料通話分付き。30GBの上限までは275円/1GBで追加購入可能)も提供が始まりました。

mineoの料金プラン「マイピタ」

mineoの料金プラン「マイピタ」

オプテージは格安SIMサービス「mineo」の料金プランを一新し、2021年2月から「マイピタ」の提供を開始しました。デュアルタイプ(音声通話SIM)ではオンラインプランと競合する毎月20GBの料金プランを月額2,178円で利用できますが、毎月1GBで月額1,298円の小容量プランをはじめ4種類の料金プランを選ぶことができます。

mineoはドコモ・KDDI・ソフトバンクすべての回線から選べるマルチキャリアを特徴のひとつとする格安SIMですが、これまでは同じデータ利用量の料金プランでも使用する回線によって月額料金が異なっていました。これに対し「マイピタ」ではこの状況が改善され、どの回線を選んでも同じ月額料金になったため、料金プランが従来よりもシンプルに整理された形になっています。

IIJmioの料金プラン「ギガプラン」

IIJmioの料金プラン「ギガプラン」

インターネットイニシアティブは格安SIMサービス「IIJmio」の料金プランを刷新し、2021年4月から「ギガプラン」の提供を始めました。ギガプランは毎月2GBの「2ギガプラン」から毎月20GBの「20ギガプラン」まで5種類が用意されています。

ギガプランは音声通話SIMやデータ通信SIMといった物理的なSIMカードだけでなく、利用できる端末が増えてきたeSIMにも対応しているのが特徴のひとつです。「20ギガプラン」の月額料金は音声通話SIMが2,068円、データ通信SIM(SMS機能なし)が1,958円ですが、eSIMではさらに安い1,650円となっています(ただし、ギガプランのeSIMは音声通話とSMSに対応しておらず、データ通信のみ利用可能です)。

イオンモバイルの料金プラン「さいてきプラン」と「さいてきプランMORIMORI」

イオンモバイルの料金プラン「さいてきプラン」と「さいてきプランMORIMORI」

イオンリテールの格安SIMサービス「イオンモバイル」も2021年4月と10月に相次いでサービス内容を改定し、料金プランの刷新や値下げを行っています。データ利用量が10GB以下の「さいてきプラン」は1GB刻みで適したものを選ぶことができますし、10GBを超える「さいてきプランMORIMORI」では毎月20GBで月額2,178円のプランも用意されています。

NTTドコモが提供する各種料金プランとエコノミーMVNOの位置付け(同社の報道発表資料より)

NTTドコモが提供する各種料金プランとエコノミーMVNOの位置付け(同社の報道発表資料より)

オンラインプランに対抗する料金プランを開始するMVNOがあるいっぽうで、大手キャリアとの協業を選んだMVNOもあります。NTTドコモは同社のdアカウントやdポイント等を連携するMVNOを「エコノミーMVNO」と位置付け、2021年10月からNTTコミュニケーションズの格安SIMサービス「OCN モバイル ONE」の新規契約受付などが始まりました。

エコノミーMVNOはドコモ回線を利用するMVNOから選ばれており、低廉・小容量の料金プランを提供することが特徴のひとつにあげられています。エコノミーMVNOの格安SIMは全国のドコモショップ店頭にて新規契約や端末の購入、APN設定のサポートなどが受けられるようになります。

格安SIMとしてのサービスそのものはMVNOが提供するため、ドコモの料金プランと全く同じようなサポートが受けられるわけではありませんが、ドコモで購入した端末の故障時には店頭で修理などを受け付けてもらうことができます。ドコモとの連携開始にあわせて、OCN モバイル ONEはスマホデビュー向けの小容量プラン「500MB/月コース」(月額550円)の提供を開始しています。

また、2021年12月には子ども向けの見守りサービスを特徴とするトーンライフスタイルの「トーンモバイル for docomo」がエコノミーMVNOに加わりました。エコノミーMVNOはこの2社だけでなく今後も増える可能性があるとされており、2022年には新たに連携するMVNOが現れるかもしれません。

ニュースその3:解約金廃止&キャリアメール継続で大手キャリアから乗り換えやすく

オンラインプランの登場はMVNOにとって逆風となる出来事でしたが、格安SIMの追い風になり得る動きも見られました。

現在大手キャリアで申し込める料金プランの一部や過去に申し込むことができた料金プランの多くでは、月額料金が安くなるかわりに2年の契約期間が自動更新される定期契約が設定されています。

これらの料金プランを契約しているユーザーが解約したり他キャリアへ乗り換えたりする場合、契約期間の更新月にあたるタイミングであれば追加料金はかからないものの、更新月以外のタイミングで解約や乗り換えをすると解約金が生じていました。更新月以外でも解約や乗り換えができないわけではないものの、約1万円の解約金を負担しなければならないことから、契約期間の長さをもとに「2年縛り」とも呼ばれています。

電気通信事業法が改正された2019年後半以降に大手キャリアから提供されている料金プランは、定期契約がないか、あったとしても契約期間の有無による月額料金の差額は少額に抑えられていますし、解約金も1,100円と安くなっています。しかし、それ以前から提供されていた料金プランを使い続けている場合は、解約金が高額な定期契約が継続していました。

今年はこの状況に変化が訪れました。NTTドコモが旧プランの解約金と「解約金留保」を2021年10月1日から廃止するとともに、ドコモの定期契約である「2年定期契約プラン」の新規受付を終了したのです。

ポイントは解約金留保の廃止です。解約金が高額な旧プランを契約し続けている大手キャリアのユーザーは、定期契約が存在しない、あるいは定期契約があっても解約金が安い現行のプランに切り替えることで、高額な解約金を支払うことなく好きなタイミングで解約や乗り換えをすることができます。プラン変更の一手間をかけることで「2年縛り」が解消されるわけです。

解約金留保の概要(NTTドコモの報道発表資料より)

解約金留保の概要(NTTドコモの報道発表資料より)

ところがドコモは2019年10月に料金プランを改正した際に、料金プランを変更しても旧プランの契約期間が満了するまでは解約金が留保される制度を採用していました。これが解約金留保です。

たとえ現行の料金プランで「定期契約なし」を選んで切り替えたとしても、旧プランの契約期間満了前に解約・乗り換えをすれば、これまでは旧プランの解約金が請求されていたのです。この解約金留保が解約金とともに廃止されたことで、ドコモのユーザーは更新月を気にすることなく解約・乗り換えができるようになりました。

解約金廃止の動きはほかの大手キャリアにも波及しており、ソフトバンクとワイモバイルは2022年2月1日から、auとUQ mobileは2022年3月までに解約金を廃止する予定とされています。

また、近年では「携帯電話・PHS番号ポータビリティ(MNP)」制度を利用することで電話番号を他社へ持ち越すことができますが、大手キャリアのキャリアメールは解約や乗り換えと同時に使えなくなるのが当たり前でした。

しかし2021年12月からは、キャリアメールを継続して使い続けられるようになる「メール持ち運びサービス」の提供が始まりました。解約・乗り換えの手続き時、もしくは解約から31日以内にメール持ち運びサービスに申し込むことで、キャリアメールを引き続き利用できるようになったのです。

利用料金はドコモの「ドコモメール持ち運び」とauの「auメール持ち運び」が月額330円、ソフトバンクおよびワイモバイルの「メールアドレス持ち運び」が年額3,300円(2022年夏以降は月額330円の支払いにも対応予定)です。

NTTドコモのメール持ち運びサービス「ドコモメール持ち運び」

NTTドコモのメール持ち運びサービス「ドコモメール持ち運び」

格安SIMはコストの安さがメリットのひとつですが、大手キャリアから乗り換える場合にキャリアメールを使えなくなることがデメリットのひとつに数えられていました。大手キャリア各社がメール持ち運びサービスを開始したことで、このデメリットが解消されたことになります。

もちろん、メール持ち運びサービスは大手キャリアから格安SIMへの乗り換え時だけでなく、大手キャリアからサブブランドへの乗り換えや、大手キャリア間で乗り換える場合にも利用可能です。

さらに、2021年春以降は大手キャリアから転出する場合の転出手数料も無料になりました。2022年3月までに大手キャリアから全廃される見込みの解約金と、今回のメール持ち運びサービスの登場によって、以前にも増して携帯キャリアを乗り換えやすい環境が整いつつあると言えます。2022年の動きにも注目です。

松村武宏

松村武宏

信州佐久からモバイル情報を発信するフリーライターであり2児の父。気になった格安SIMは自分で契約せずにはいられません。上京した日のお昼ごはんは8割くらいカレーです。

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