レビュー

指紋センサー搭載で使いやすくなったエントリースマホ、サムスン「Galaxy A23 5G」

今回は、サムスンのエントリー向けのスマートフォン「Galaxy A23 5G」を取り上げよう。エントリーモデルながらユーザーの評価が高く、価格.comユーザーレビューの満足度は4.48と高い。その理由に迫ろう。

前モデル「Galaxy A22 5G」をベースにしつつ指紋認証センサーを搭載することで、使い勝手が大幅に改善された

前モデル「Galaxy A22 5G」をベースにしつつ指紋認証センサーを搭載することで、使い勝手が大幅に改善された

※本記事に掲載する価格.comユーザーレビューの評価点は2023年2月21日時点のものです。

「Galaxy A22 5G」の改良版、指紋認証センサー搭載で実用性アップ

サムスンの「Galaxy A23 5G」は、3Gケータイからの移行や子どもに持たせるといったことを想定したエントリーモデル。前モデルの「Galaxy A22 5G」(以下、「A22」)は、NTTドコモ専売だったが、本機は販路が拡大され、NTTドコモ、au、UQ mobile、楽天モバイル、一部のMVNOで購入できる。今回の検証ではau・UQ mobile版の「SCG18」を使用した。

ボディサイズは約71(幅)×150(高さ)×9.0(厚さ)mmで、重量は約168gとコンパクト。「A22」と比べると、高さが0.3mm、厚さが0.1mmだけ大きくなっているが、外見はよく似ている。価格.comユーザーレビューの評価項目「携帯性」はカテゴリー平均の3.96を上回る4.23で、ユーザーの評価は高い。

ディスプレイは1560×720のHD+表示に対応した約5.8インチの液晶で、こちらも「A22」と同じだ。IP6Xの防塵仕様と、水没に耐えるIPX5/8の防水仕様、FeliCa、FMラジオチューナー(FMワイド対応)の搭載も変わっていない。スピーカーはモノラルだがヘッドホン端子を搭載。エントリーモデルとしては珍しくバーチャルサラウンドのDolby Atomsに対応している点も共通である。

ディスプレイはリフレッシュレートとタッチサンプリングレートも60Hzにとどめられており、HDRにも対応していないので、性能的には最小限と言える。価格.comユーザーレビューの評価項目「画面表示」は、カテゴリー平均の4.33に対して3.73と下回る評価となっている。評価が伸び悩んだのは、近ごろはエントリーモデルでも1.5倍速駆動に対応しているものやフルHD対応のものがあるで、それらと比べると少々見劣りするためだろう。

近ごろのスマートフォンとしては小さめのボディ。手になじみやすく携帯性は良好

近ごろのスマートフォンとしては小さめのボディ。手になじみやすく携帯性は良好

背面は樹脂製。カメラ部分の凹凸がほとんどないフラットでシンプルなデザインだ

背面は樹脂製。カメラ部分の凹凸がほとんどないフラットでシンプルなデザインだ

「A22」とは、中身の共通点も多い。性能の要であるSoCはMediaTek社のエントリー向け「Dimensity 700」のまま。4GBのメモリーと64GBのストレージ、ストレージの増設として最大1TBまで対応するmicroSDXCメモリーカードを組み合わせている点も同じである。プリインストールされるOSは1世代新しいAndroid 12だが、「A22」もAndroid 12へのバージョンアップが行えるので、この点でも違いはない。なお、NTTドコモのAndroid 13バージョンアップ対象リストには、本機と「A22」がともに含まれている。

逆に「A22」と異なる点は、指紋認証センサーを搭載したことと、メインカメラの画素センサーが約1300万画素から約5000万画素に強化されたこと。そして、SIMカードに加えて、eSIMにも対応したデュアルSIM機となったことだ。また、各販路のモデルはいずれも、国内4キャリアの5Gおよび4Gのコアバンド・プラチナバンドに対応しているので、バックアップ回線を導入しやすくなっている。

指紋認証センサーを搭載したことで、使い勝手が大幅によくなった。一般的な買い替え用途としても選びやすくなっている

指紋認証センサーを搭載したことで、使い勝手が大幅によくなった。一般的な買い替え用途としても選びやすくなっている

SIMカードスロットは1基、これに加えてeSIMに対応したデュアルSIM機となった。通信事業者各社が準備しているバックアップ回線も使いやすいだろう

SIMカードスロットは1基、これに加えてeSIMに対応したデュアルSIM機となった。通信事業者各社が準備しているバックアップ回線も使いやすいだろう

SoCの「Dimensity 700」は2020年に登場したもので設計が古めだ。ただ、調べ物やGoogle Map、SNSやメールを使う程度なら十分な性能を備えている。ストレージの容量も少なめだが、あくまでエントリーモデルとして使うのであれば、致命的な問題とはなりにくいだろう。価格.comユーザーレビューの評価項目「レスポンス」は、カテゴリー平均の4.09より高い4.27となっており、体感速度の満足度はエントリーモデルとしては高い。実機の体感速度を見ても、操作に引っかかりを感じることが少ないので、ストレスを感じにくい。

AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X+AnTuTu 3D Liteを使用)のスコアは273155。昨今のエントリーモデルとしてはやや低めのスコアだが、体感速度はそれほど悪くない

AnTuTuベンチマーク(バージョン9.X+AnTuTu 3D Liteを使用)のスコアは273155。昨今のエントリーモデルとしてはやや低めのスコアだが、体感速度はそれほど悪くない

「かんたんモード」や視認性の高いキーボード画面を採用。サポート体制も強化

次に、操作性を見てみよう。ホーム画面はGalaxyシリーズ共通で、高機能でカスタマイズ性も高い。文字やアイコンを大きく表示するシニアユーザー向けの「かんたんモード」への切り替えは、ホーム画面上のアイコン操作だけで可能だ。シニアユーザー向けの機能として、文字入力画面のコントラストを高めて視認性を高めることもできる。また、サムスンは本機専用の無料の電話サポート窓口を用意しており、ホーム画面のアイコンをタッチすればすぐに利用できるのも特徴だ。

子どもに持たせる場合、Androidの標準機能であるペアレンタルコントロールに加えて、端末の場所を追跡する「端末リモート追跡」も便利だろう。類似する機能はAndroidの標準機能「スマートフォンを探す」として用意されているが、「端末リモート追跡」はリモート操作でバッテリーの節約モードに切り替えられるうえ、音声通話やSMSのログを確認する機能なども備えており、より高機能である。

文字やアイコンを大きくする「かんたんモード」のホーム画面(左画面)。よく使う機能をエッジディスプレイとしてまとめることが可能(右画面)。アイコンの並び数を調整できるなどカスタマイズ幅も大きい

文字やアイコンを大きくする「かんたんモード」のホーム画面(左画面)。よく使う機能をエッジディスプレイとしてまとめることが可能(右画面)。アイコンの並び数を調整できるなどカスタマイズ幅も大きい

キーボードのコントラストを高めて視認性を改善できる

キーボードのコントラストを高めて視認性を改善できる

4000mAhのバッテリー搭載。4日+αのバッテリー持ちは狙える

搭載されるバッテリーは容量が4000mAhで、電池持ちに関係するスペック情報を見ると、連続通話時間は約1840分、連続待ち受け時間は約450時間だ。本機と価格の近いソニー「Xperia Ace III」の連続通話時間約2690分、連続待ち受け時間約730時間と比較すると、本機の電池持ちはそれほど良好とは言えない。ただし、検証に際してフル充電で4日+α(1日2時間ほど使用する。ゲームは行わない)はバッテリーが持続したので、一般的な使い方であればこれで十分だろう。なお、価格.comユーザーレビューの評価項目「バッテリー」はカテゴリー平均の3.70を上回る4.15となっている。

充電時間は、USB PD規格に対応した27Wのauの充電器「TypeC共通ACアダプタ02」を使用した場合で約110分、45Wの出力に対応するNTTドコモの充電器「ACアダプタ 08」なら約105分となる。本機と組み合わせる充電器を新調する場合、30W程度の出力に対応した多少高性能なUSB PD対応のものを選ぶのがよいだろう。

ズームの画質向上が見込める5000万画素のメインカメラ

続いて、カメラを見てみよう。メインカメラは約5000万画素のシングルカメラだ。先に触れたように前モデルの約1300万画素から画素数が大幅に増えた。

本機に限らず、近ごろのスマートフォンは高画素化が進んでいる。その狙いは、より高精細な写真が撮れるというよりも、むしろデジタルズームの画質低下を抑えることを狙ったものである場合が多い。デジタルズームは、センサーの真ん中部分の画像だけをトリミングしたズームなので、元の画素数が多ければトリミング後でも画質を維持しやすいためだ。本機の場合2倍、4倍、10倍のズーム倍率を選ぶことができる。

約5000万画素のシングルカメラを搭載。高精細よりもデジタルズームのための高画素化だ

約5000万画素のシングルカメラを搭載。高精細よりもデジタルズームのための高画素化だ

以下に、メインカメラを使った静止画の作例を掲載する。初期設定のまま、シャッターを押すだけのカメラ任せで撮影を行っている。

ズームなしで撮影

ズーム行わずに順光の風景を撮影。カメラにかかる負担の少ない構図と言うことでダイナミックレンジは十分。偽色やノイズも少ない撮影写真(4080×3060、4.38MB)

ズーム行わずに順光の風景を撮影。カメラにかかる負担の少ない構図と言うことでダイナミックレンジは十分。偽色やノイズも少ない
撮影写真(4080×3060、4.38MB)

2倍のデジタルズームで撮影

上と同じ構図を2倍のデジタルズームで撮影している。イメージセンサーの画素数が高いこともあり、この程度の倍率ならノイズも目立たず十分実用になるだろう<br>撮影写真(4080×3060、3.48MB)

上と同じ構図を2倍のデジタルズームで撮影している。イメージセンサーの画素数が高いこともあり、この程度の倍率ならノイズも目立たず十分実用になるだろう
撮影写真(4080×3060、3.48MB)

4倍のデジタルズームで撮影

同じ構図のまま、さらに倍率を4倍まで高めた。構図中央のカルガモがはっきり写るが、デジタルズーム特有のノイズも目立つ<br>撮影写真(4080×3060、1.99MB)

同じ構図のまま、さらに倍率を4倍まで高めた。構図中央のカルガモがはっきり写るが、デジタルズーム特有のノイズも目立つ
撮影写真(4080×3060、1.99MB)

シクラメンを撮影。赤の表現が苦手のようで、陰影やディテールがつぶれ気味で、肉眼とは多少異なる印象だった<br>撮影写真(4080×3060、2.76MB)

シクラメンを撮影。赤の表現が苦手のようで、陰影やディテールがつぶれ気味で、肉眼とは多少異なる印象だった
撮影写真(4080×3060、2.76MB)

明るめな夜景を撮影。全般に明るく暗部とハイライトの表現は良好。いっぽう拡大してみると街路樹の枝や路面の舗装などのディテールが消えている<br>撮影写真(4080×3060、3.46MB)

明るめな夜景を撮影。全般に明るく暗部とハイライトの表現は良好。いっぽう拡大してみると街路樹の枝や路面の舗装などのディテールが消えている
撮影写真(4080×3060、3.46MB)

シンプルなシングルカメラだが、日中やある程度の明るさのある夜景なら偽色やノイズが少なく、仕上がりは意外と悪くない。高画素化によって2倍程度のデジタルズームなら比較的きれいに写る。価格.comユーザーレビューの評価項目「カメラ」は、カテゴリー平均の3.95よりも高い4.19だ。

いっぽう、夜景はぱっと見た印象は悪くないものの、拡大すると消失しているディテールもあり、手ぶれにも少し敏感になる。色の濃い花のようにはっきりとした発色の被写体も得意ではない。こうした限界を考慮しても、エントリーモデルとしてはかなり健闘している部類と言える。

指紋認証センサー搭載で普通に使える、大きな欠点のないエントリースマホ

近ごろのエントリー向けスマートフォンは、なかなか侮れない性能を備えている。本機もそうした製品のひとつと言えるだろう。前モデル「A22」にはなかった指紋認証センサーを備えたことで、ロック解除の手間が軽減されているし、体感速度もそこまで悪くない、カメラもクラスの水準以上、バッテリー持ちも悪くない、サポートも魅力だ。大きな欠点は見当たらず、しっかりと使えるエントリー機となっている。価格.comユーザーレビューでは、こうしたそつのない性能が評価を高めていると言えるだろう。

いっぽう、割引や端末購入補助を考慮しない場合、端末の価格は大体3万円台なので、そこまで安いわけではない。この価格帯では、シャープ「AQUOS wish2」ソニー「Xperia Ace III」、といった、バッテリー持ちや処理性能では本機より有利な製品も現れる。今後の価格動向によって、おおいに魅力が高まる可能性がありそうだ。

田中 巧(編集部)

田中 巧(編集部)

FBの友人は4人のヒキコモリ系デジモノライター。バーチャルの特技は誤変換を多用したクソレス、リアルの特技は終電の乗り遅れでタイミングと頻度の両面で達人級。

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