Googleのスマートウォッチ向けOSの最新バージョンの「Wear OS 3.5」を搭載するスマートウォッチ「TicWatch Pro 5」。そこまで知名度の高くないMobvoiというメーカーが手掛けるシリーズの最新モデルなのですが、実際に使用したユーザーからの評価が高く、個人的にも「これは買い!」と言えるほどの完成度の高さです。
実際に普段の生活や、ランニングで使用してみてわかった、人気の秘密に迫ってみます。
Wear OS搭載スマートウォッチ「TicWatch Pro 5」をレビュー。公式サイトの販売価格は49,999円(税込、以下同)
まずは、「TicWatch Pro 5」の特徴をピックアップして紹介しましょう。Wear OS搭載モデルなのでGoogle Playに用意されている多くのアプリを利用できたり、使い勝手を高める機能性を備えていたりと、さまざまな特徴を持っています。
・普段使い、オフィスカジュアル、アウトドアまで合わせやすいデザイン&耐久性
・タッチ操作とクラウン回転ボタンによるシンプルな操作性
・表示の美しさと省電力性を両立させる2層式のディスプレイ
・最新Wear OS&CPU搭載によるサクサク動作
・Wear OS搭載モデルでは長時間駆動のバッテリー
・使い勝手の高い健康管理機能
上記6つの特徴を中心にレビューしていきます。なお、「TicWatch Pro 5」はAndroidスマートフォンとのみ連携可能で、現時点ではiOSに対応していません。iPhoneでは利用できないのでご注意ください。
Mobvoiの「TicWatch」シリーズは、過去にグッドデザイン賞やレッド・ドット・デザイン賞を受賞したことがあり、デザインには定評があります。「TicWatch Pro 5」も、その系譜に漏れず、操作ボタンが少ないシンプルでスッキリとしたデザインに仕上がっています。
タフネス性能が高いため(詳細は後述)スポーツやアウトドア向けと思うかもしれませんが、普段使いからオフィスカジュアル、スポーツまで幅広いシーンで合わせやすいデザインだと思います。
丸形のボディにボタンが2つとシンプルなデザインの「TicWatch Pro 5」
ケースの素材は場所によってステンレスやアルミニウム、高強度ナイロンなどが使い分けられており、軽さと強度のバランスが取られている印象。MILスペック準拠のタフネス設計で、5ATM防水にも対応しています。アウトドアアクティビティーなどで使うのに安心感がありますね。
操作性では、ディスプレイのタッチ操作に加えて、本体右側の2つのボタンでも操作できるのがポイント。そのひとつのクラウン回転ボタンは、押すとアプリ選択画面が表示されるほか、回転させると画面のスクロール操作が可能。クラウン回転ボタンを押してアプリ一覧を表示させて、そのままスクロールで選択できるので操作は非常にスムーズです。
本体右側に並ぶボタンのうち、下側にあるのがクラウン回転ボタン
クラウン回転ボタンの上部にあるボタンは、押すと直近で使用したアプリの一覧が表示されます。アプリ一覧から選ぶよりも素早くアクセスできるので、なかなか使い勝手のいい機能だと思いました。
画面は1.43インチの有機ELディスプレイに加え、超低消費電力のFSTN液晶も採用した2層式。これも「TicWatch」シリーズならではの特徴で、操作時などは有機ELディスプレイでコンテンツを表示しますが、待機時はFSTN液晶で時刻などを表示して電力消費を抑えるという仕組みです。この待機時の表示モードは「エッセンシャルモード」と呼ばれています。
待機時は「エッセンシャルモード」で消費電力を抑えてくれます
「エッセンシャルモード」は時刻だけではなく、心拍数、歩数なども表示。一般的なスマートウォッチだと、腕を持ち上げたりして画面を点灯させるか、電力をかなり消費してしまう常時表示させるしかないんですが、この工夫は「TicWatch Pro 5」ならではの利点です。
「エッセンシャルモード」はバックライトも点灯するので暗い場所でも問題なし。ライトの色も18色の中から好みの色を選べます
デザイン的な機能で言うと、Google Playからいろんなウォッチフェイスをダウンロードできるのがいいですね。個人的には「TimeShow Watch Faces」というアプリがウォッチフェイスを豊富に取り揃えている印象。自分で好きなウォッチフェイスを探す面白さもあるんです。
自分好みのウォッチフェイスをたくさんダウンロードして、その日の気分で着せ替えするのもアリ
「TicWatch Pro 5」は、OSに最新の「Wear OS 3.5」を搭載するだけではなく、CPUもクアルコムのスマートウォッチ向けモデルでは最新の「Snapdragon W5+ Gen 1」を搭載しています。このCPUは、前世代と比較してパフォーマンスが2倍、省電力性が50%向上。そのため、アプリの切り替えや起動、操作まで非常に快適です。
また、容量32GBのストレージを搭載しているため、アプリや楽曲データなどもたくさん保存可能です。
Googleマップが使えるのはWear OS搭載モデルならではの便利さ。また、目的地までの経路をナビしても動きはスムーズ。ちなみに、Google Payによる非接触型決済にも対応します
バッテリー駆動時間は、表示が高精細&色鮮やかになるスマートモードで約80時間、エッセンシャルモードで最大45日間。使用中は両方のモードが自動で切り替わるため、GPSを利用しない場合だと80時間以上は持ちます。
レビューでは、24時間の使用で、その間にGPSを使ったランニングを2時間行ったところ、バッテリーの減少は約40%でした。毎日2時間のランニングを行ったとしても、2日以上は持つことになります。そこまでトレーニングをしなければ、バッテリー駆動時間はもう少し延びそうです。
ちなみにですが、バッテリー駆動時間が約80時間と言うと少ないように感じるものの、Wear OS搭載スマートウォッチは駆動時間の短いモデルが多く、そのなかで「TicWatch Pro 5」はかなり健闘しているほうなんです。Google「Pixel Watch」の約24時間と比べると、かなり長いことがわかると思います。
充電は専用のケーブルでのみ可能。急速充電にも対応しており、30分で約60%の充電ができます。バッテリーが切れてもサクッと充電できるわけですね
「TicWatch Pro 5」は、歩数や消費カロリーなどのライフログや睡眠トラッキングなど健康管理に関するデータはもちろんのこと、100種類以上のワークアウトに対応する「ワークアウトモード」を備えます。
ワークアウトのトラッキングは、アプリ「TicExercise」から行い、データはスマートフォン向けアプリ「Mobvoi Health」で確認・管理が行えます。
屋外での運動に欠かせないGPSは5つの衛星測位に対応し、バロメーターによる気圧と高度の測定と合わせることで、山の中でも精度の高い位置情報を捕捉できるとのこと。今回は屋外ランニングを行い、運動データやGPSの精度などをチェックしてみました。
いつもレビューで走行するコースを走ってみたデータは以下画像のとおり。走行距離や平均ペース、消費カロリーのほか、最大酸素摂取量のVO2 MAXや回復に要する時間なども測定してくれます。各種数値も、普段の数値と変わりなく、測定やGPSの精度も高いと感じました。
約1時間30分の屋外ランニングを行ったデータ。ただ単に運動するだけではなく、自身のレベルアップにつなげられる歩数や歩幅なども測定してくれます
なお、GPSの測位スピードは約30秒。ガーミンなどの上位モデルと比べると遅いですが、30秒くらいだったらまったく気になりません。
「TicWatch Pro 5」は、シンプルなデザイン、快適な操作性、サクサク動作といった特徴を持つうえ、スマートウォッチに必要な機能もひと通り網羅しています。Wear OSならではの自由度の高さも魅力で、見どころが非常に多いスマートウォッチです。ユーザーからの評価が高い理由もわかります。
Wear OS搭載スマートウォッチとしては、Googleの「Pixel Watch」がライバルになると思いますが、それより約10,000円高額なのは気になるかもしれませんね。ちょっと手が出しにくい価格帯ではあるものの、その価値は十分にあると思います。
ひとつ残念なのは、現状iPhoneでは使えないという点。そこを除けば、“買い”のスマートウォッチだと言えるでしょう。
ミラソル デポルテ代表。自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン。