スマートフォンやモバイル通信とお金にまつわる話題を解説していく「スマホとおカネの気になるハナシ」。今回は、前回の「ドコモポイ活プラン」に続いて、「dポイント」に関わる話題、NTTドコモとアマゾンジャパンとの新しい協業を取り上げる。ユーザー目線でどう関わるべきか迫ろう。
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2024年4月1日に、前回紹介した「ドコモポイ活プラン」の提供を開始したばかりのNTTドコモだが、2024年4月10日にも料金に関する新たな施策を発表している。それはEコマースサイト大手の「Amazon.co.jp」を運営する、アマゾンジャパンとの協業だ。
NTTドコモは2024年4月10日にアマゾンジャパンとの協業を発表。「Amazon.co.jp」で「dポイント」を貯めたり、使えたりできるなどの施策が打ち出されている
「なぜNTTドコモがアマゾンと協業?」と思われる人がいるかもしれないが、実は両社は2012年から協業を実施しており意外と関係が深い。2018年には「Amazon.co.jp」で、NTTドコモのスマートフォン決済サービス「d払い」が利用可能になった。また、2019年から2021年までは当時のNTTドコモの料金プラン「ギガホ」に、アマゾンジャパンの有料会員プログラム「Amazonプライム」が1年間付いてくる特典を提供していた。
NTTドコモとアマゾンジャパンは過去にも何度か協業を実施しており、2019年からは当時の料金プラン「ギガホ」に「Amazonプライム」が1年間付いてくる特典を提供していた
近年は携帯電話会社が顧客を自社系列のポイント経済圏に囲い込む傾向が見られる。その際にカギとなるのがポイントを使う・貯める軸となる場、Eコマースの存在だ。「楽天モバイル」を有する楽天グループの「楽天市場」や、ソフトバンク傘下のLINEヤフーが展開する「Yahoo!ショッピング」が、その代表的な事例だろう。
だが、NTTドコモは独自のEコマースサービス「dショッピング」を展開しているものの、競合と比べると存在感は薄かった。そこで国内のEコマース市場で大きな存在感を発揮しているアマゾンジャパンと連携することで、その弱みを補って経済圏ビジネス拡大につなげようと考えたようだ。
いっぽうのアマゾンジャパンとしても、ここ最近携帯各社が関係するポイントプログラムが国内Eコマース市場の大きな競争軸となっており、競合に対抗するうえでも、規模が大きいポイントプログラムとの提携を必要としていたのではないかと考えられる。
その点、NTTドコモは共通ポイントプログラムの「dポイント」を持ち、2023年度の時点で会員プログラム「dポイントクラブ」の会員数がおよそ1億に達するなど、規模は非常に大きい。それでいてEコマースサービスが弱く競合関係になりにくいことから、今回の両社の提携に至ったと考えられる。
「dポイント」の会員基盤「dポイントクラブ」の会員数は、2023年度時点で約1億人に達しており規模は非常に大きい
実際の協業内容は大きく2つに分かれている。ひとつは「dポイント」に関する協業で、NTTドコモの「「dポイントクラブ」のアカウント「dアカウント」と、「Amazon.co.jp」のアカウント「Amazonアカウント」を連携すれば、買い物の際に「dポイント」を使ったり、貯めたりできるものだ。
これまでにもリクルートの「リクルートポイント」やジェー・シー・ビーの「Oki Dokiポイント」など、アカウントを連携することで「Amazon.co.jp」での買い物に使えるポイントはいくつか存在した。だが、今回の「dポイント」の場合、1ポイントから1円相当で買い物に使えるだけでなく、ポイントを貯められる点が大きな特徴となる。
協業のひとつは「Amazon.co.jp」で「dポイント」を使ったり、貯めたりできること。1回の買い物で5,000円以上など条件はやや厳しいが、NTTドコモの回線契約がなくても「dポイント」を活用できるのは大きなメリットだ
ただし、ポイントを獲得するための条件はやや厳しい。1回の注文で5,000円以上支払うと、金額の1%が付与される仕組みだが、付与上限も1回の注文で100ポイントまでだ。1万円以上の買い物をしてもポイントが100ポイントまでしか増えないのは残念なところだ。
だが、「dポイント」の使用や獲得だけなら、NTTドコモの携帯電話サービス契約や「d払い」での決済などは一切必要なく、「dアカウント」さえあれば誰でも利用できる。加えて、「Amazon.co.jp」独自の「Amazonポイント」との二重取りも可能なので、お得な仕組みであることは間違いない。
そしてもうひとつの協業は、「Amazonプライム」に関するもの。こちらはNTTドコモの携帯電話サービス契約者が対象となり、NTTドコモ経由で「Amazonプライム」の「月間プラン」(月額600円)に加入することで、毎月「dポイント」(期間・用途限定)を120ポイント還元するものとなる。
NTTドコモ回線契約者であれば、NTTドコモ経由で「Amazonプライム」の「月間プラン」に契約することで、毎月120ポイントの還元などの特典が得られる
「Amazonプライム」は月間プランだけでなく年間プランも用意されており、そちらのほうが年額5,900円とお得だ。だが、今回の協業によるポイント還元を考慮すると、年間で(600円−120円)×12か月=5,760円相当で「Amazonプライム」が利用でき、年間プランよりも実質140円ほどお得になる。また、「Amazonプライム」を初めて利用する人の場合、同様の手続きをすることで3か月間、dポイント還元は受けられないが月額プラン相当の600円が割り引かれるのでさらにお得感が高まる。
加えて、NTTドコモ経由で「Amazonプライム」を契約した人にはもうひとつ特典が用意されている。それは、特定の条件を満たし、「Amazon.co.jp」で「d払い」を使って買い物をした際の「dポイント」還元率が1%アップするというものだ。その条件は2種類あり、ひとつは「eximo」「ahamo」「ギガホ」といった中・大容量プランを契約していること。そしてもうひとつは60歳以上であることだ。
それゆえ、今回の施策の条件を全て満たし、「d払い」を使って「Amazon.co.jp」で買い物をすれば、「d払い」の通常の還元率である0.5%に加え、アカウント連携で5,000円を超えた場合の1%(1回の上限100ポイント)、そして中・大容量プラン契約者向けの1%に、60歳以上のユーザー向けの1%が加わり、3.5%のポイント還元が受けられることとなる。
・d払い通常の還元率:0.5%
・アカウント連携を行い5,000円以上の買い物をした場合:1%
・中・大容量プランを契約した場合:1%
・60歳以上のユーザーの場合:1%
NTTドコモ経由で「Amazonプライム」に登録し、所定の条件を満たして「Amazon.co.jp」での決済を「d払い」にすればポイント還元率がアップする特典も。一連の特典を合わせれば最大で3.5%の還元が得られる
年齢の条件は60歳の誕生日まで待たなければいけないが、それ以外の条件を満たすことで2.5%、小容量の「irumo」「ギガライト」利用者や、回線契約がない人でもアカウント連携とd払いの利用で1.5%の還元は受けられる。特定の支払い方法にこだわるのでない限り、かなり幅広い人がポイント還元の恩恵を受けられる仕組みだろう。
「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などが、さまざまな条件を満たしキャンペーンやセールを活用することで高いポイント還元率が得られることと比べると、少々物足りなさを感じるかもしれない。そもそも異なる2社の協業で実現したものだけに、還元率や還元額を増やすのが難しかったと想像される。
ただ、前回紹介した「ahamoポイ活」を利用している人であれば、「Amazon.co.jp」の決済に「d払い」を使うことでポイント還元を上限まで獲得しやすくなる。それに加えて今回の施策により、NTTドコモ経由で「Amazonプライム」に加入していれば還元されるポイントがいっそう増えることから、よりポイ活の“やり甲斐”が出てくるのではないだろうか。
「Amazon.co.jp」を使う「dポイント」会員は多いと思われる。そんな潜在ユーザーに向けて、NTTドコモの回線契約がない場合でも金額によって「dポイント」が手に入り、回線契約があればよりお得になる。今回の協業が幅広い人達に恩恵をもたらすことは間違いない。付与率は高くないものの、手持ちの両アカウントを連携しておいて損はなさそうだ。