シャオミのハイエンドスマホ「POCO F6 Pro」は公式ストアの販売価格が69,980円(12GBメモリー+256GBストレージ)という低価格で人気だ。ただ、低価格の代償としてカメラのスペックがいまいちという声もある。しかし、価格.comに寄せられるユーザーレビューを見ると「カメラ」の評価項目は4.27ポイントで、カテゴリ平均の3.96以上だ(いずれも2024年7月3日時点の数値)。そこで同じシャオミの高性能カメラスマホ「Xiaomi 14 Ultra」を基準に、「POCO F6 Pro」のカメラ性能がどれほどのものなのか検証を行った。
「POCO F6 Pro」は69,980円〜、「Xiaomi 14 Ultra」は199,900円(いずれも直販サイトの税込価格)で発売中だ。※本記事中の価格は税込で統一している
最初に両機の特徴を簡単に解説しよう。「POCO F6 Pro」と「Xiaomi 14 Ultra」は、いずれもシャオミのハイエンドスマートフォン。ただし、価格が大きく異なり、「POCO F6 Pro」は69,980円なのに対して、「Xiaomi 14 Ultra」は199,900円(いずれも直販サイトの税込価格)と価格差は約3倍もある。
「POCO F6 Pro」が安い理由として直販を主体にして流通コストを下げている点とともに、機能の取捨を大胆に行っている点がある。重視されなかった機能のひとつがカメラだ。広角+超広角+マクロのトリプルカメラだが、そこまで凝ったものではない。昨今のハイエンドスマホとしては珍しく望遠カメラを備えていないし、200万画素のマクロカメラを搭載している点もハイエンドらしくない。
いっぽう、「Xiaomi 14 Ultra」はライカ監修のクアッドカメラを備え“スマホ付きカメラ”と呼ばれるほどカメラ機能を重視している。
そんな両機のカメラは「Xiaomi 14 Ultra」がハイレベルなのは当然として、「POCO F6 Pro」も「意外と悪くない」「普通に使える」という意見もよく見かける。今回の検証は「Xiaomi 14 Ultra」を基準に、「POCO F6 Pro」のそうしたクチコミの真相に迫ることを狙ったものだ。
両機のカメラ性能を表にまとめた。
※焦点距離はEXIF情報を参照した35mm換算の値。そのほかのスペックも可能な限りハードウェア情報を直接参照している
スペックを比較すると、「Xiaomi 14 Ultra」の豪華さを改めて確認できる。広角カメラには高価な1インチセンサーを搭載。それ以外の超広角、望遠、ペリスコープ望遠の各カメラも約5000万画素だ。また、暗くなりやすいペリスコープ望遠カメラでもF2.5が確保されているのもこだわりを感じる点だ。ただし、「POCO F6 Pro」も広角カメラにF1.6の大口径レンズに光学式手ブレ補正機構を備えており、必要だと判断した機能は搭載していることがわかる。
「POCO F6 Pro」のメインカメラは、超広角、広角、マクロのトリプルカメラ
「Xiaomi 14 Ultra」は、超広角、広角、望遠、ペリスコープ望遠のクアッドカメラ。しかもすべて約5000万画素
両機の静止画の作例を比較してみよう。いずれも初期設定のままカメラ任せで撮影を行っている。なお、ピント位置だけは指定している。
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。「POCO F6 Pro」はややアンダー。「Xiaomi 14 Ultra」は鮮やかないっぽうで、鮮やかすぎない空の色に初夏の空気を感じる
撮影写真(POCO F6 Pro、3.1MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、2.8MB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。「POCO F6 Pro」は明るく鮮やかに、「Xiaomi 14 Ultra」は陰影をより残しており発色も深めだ
撮影写真(POCO F6 Pro、3.2MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、2.6MB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。いずれも構図上の赤いおしべにピントを合わせて撮影し、900×600の等倍でトリミングしている。同じ構図で10ショット以上撮影したが「POCO F6 Pro」はそこまで厳密にピントを合わせられないようだ。いっぽう「Xiaomi 14 Ultra」は花粉の質感がより残っており、狙った場所にしっかりピントが合う確率が高い
撮影写真(POCO F6 Pro、69KB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、102KB)
陰影の大きい木漏れ日を撮影。左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。こちらも、「POCO F6 Pro」のほうがアンダー気味だ。「Xiaomi 14 Ultra」はより鮮やかな印象
撮影写真(POCO F6 Pro、4.7MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、7.8MB)
上の作例のハイライトを等倍でトリミング。左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。「Xiaomi 14 Ultra」には光芒が現れている
撮影写真(POCO F6 Pro、251KB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、221KB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。やはり大型センサーを搭載し光学的な余裕がある「Xiaomi 14 Ultra」のほうが鮮明だ。ただし「POCO F6 Pro」も大きな破綻はなく、「普通に使える」という評価がぴったりあてはまる
撮影写真(POCO F6 Pro、3.5MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、4.1MB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。感度性能の差で「POCO F6 Pro」は全般に黄色いが、「Xiaomi 14 Ultra」は無理をせずにクリアに写る。ただし、「POCO F6 Pro」がとらえた樹木もディテールがかろうじて残っているしノイズも少ない
撮影写真(POCO F6 Pro、4.1MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、3.8MB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。鮮明さでは「Xiaomi 14 Ultra」に軍配が上がる。しかし、「POCO F6 Pro」も高架下の暗部の写りや夜空に浮かぶ雲の表現などディテールは悪くない。ただし、構図中央の水銀灯に現れるフレアの処理では、「Xiaomi 14 Ultra」のほうが自然だ
撮影写真(POCO F6 Pro、2.3MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、2.3MB)
ここでは超広角カメラを比較する。なお、焦点距離の違いが4mmあるため同じ位置でも構図の印象が異なる場合がある。
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。4mmという焦点距離の違いが構図の印象に与える影響は大きい。いっぽう、光量が十分な構図ということあって画質において目立つ差はない
撮影写真(POCO F6 Pro、2.9MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、4.1MB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。「POCO F6 Pro」では感度の不足による色かぶりが見られる。いっぽう「Xiaomi 14 Ultra」のホワイトバランスは安定してい
撮影写真(POCO F6 Pro、2.3MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、4.2MB)
左が「POCO F6 Pro」、右は「Xiaomi 14 Ultra」。「POCO F6 Pro」も意外とよく写っている。ただ、露出が安定するまで多少時間がかかる傾向が見られた
撮影写真(POCO F6 Pro、1.5MB)
撮影写真(Xiaomi 14 Ultra、1.8MB)
超広角カメラでは「POCO F6 Pro」がホワイトバランスや露出に少し不安定なところがあったため、同じ構図を余計に撮っておいたほうがよいだろう。「Xiaomi 14 Ultra」はそうした不安定さが感じられず、構図が同じなら何枚撮っても仕上がりはほぼ同じだった。
両機を使い比べると「POCO F6 Pro」の16mm、「Xiaomi 14 Ultra」の12mmという4mmの焦点距離の違いを実感することが多かった。同じ超広角でも「POCO F6 Pro」の16mmという焦点距離はごく一般的だが、「Xiaomi 14 Ultra」の12mmは相当の超広角で迫力がある構図を作りやすい。
価格差が3倍という「Xiaomi 14 Ultra」を基準にするのは議論があるかもしれない。確かに「Xiaomi 14 Ultra」のカメラは安定しているし簡単にハイレベルな撮影ができた。
いっぽう、一定以上の画質で簡単に撮影を行うスマートフォンのカメラとして見ると「POCO F6 Pro」も上出来。両機のカメラは画質よりも、超広角や望遠といったより幅広い構図に対応できるかが大きい。こうした点で見ると「POCO F6 Pro」のカメラが意外と高評価な理由も納得できる。