マニアックなゲーミングスマホとしても、とびきりガチ勢向けの「REDMAGIC 9S Pro」を入手。クロックアップした「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」を搭載し、Androidスマホでは現状最速グループを牽引する1台だ。ベンチマークテストを中心としたレビューをお届けしよう。
REDMAGIC「REDMAGIC 9S Pro(サイクロン)」、価格.com最安価格152,350円(税込) 、2024年8月5日発売(価格は2024年9月6日時点のもの)
「REDMAGIC 9S Pro」は、2024年8月5日に登場したゲーミングスマホ。同年1月に発売された「REDMAGIC 9 Pro」のマイナーチェンジモデルだ。ハードウェアは基本的にそのままだが、SoCにクロックアップされた「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」を搭載。特徴となる凝った冷却システムも改良されている。また、販路が拡大され、メーカー直販サイトに加えて、Amazonや楽天市場といったECサイト、家電量販店でも扱われるようになり、買いやすくなった。
搭載される「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」の詳細を見てみよう。CPUコアの構成は、プライムコア×1、ゴールドコア×5、シルバーコア×2で変わらない。そのうちプライムコアの動作クロックを3.3GHzから3.4GHzに高めた。これによってピーク性能のアップが期待できる。また、GPUの動作クロックも903MHzから1GHzに引き上げられている。ゲーミングスマホにとって、CPUの性能よりもGPUのほうがむしろ重要なので、1割のクロックアップがどう影響するのか注目だ。
クロックアップされた「Snapdragon 8 Gen 3リーディングバージョン」を搭載している
冷却システムの「ICE 13.5」は、「REDMAGIC 9 Pro」の「ICE 13」をベースにしつつ、「フロスト冷却ジェル」が加わり、熱の伝導性を高めている。これによってCPUコア温度を、さらに約1.5度下げられるという。クロックアップによって増える発熱を「ICE13.5」が処理できるのかも気になる点だろう。
空冷ファンや大型ベイパーチャンバーを組み合わせた冷却システム「ICE 13.5」を搭載。SoCとの接着に「フロスト冷却ジェル」を使うことで効率を高めている
なお、CPUと冷却システムのほかは、ハードウェアは基本的に「REDMAGIC 9 Pro」から変更はない。詳細は「REDMAGIC 9 Pro」のレビュー記事を参照していただきたい。
「AnTuTuベンチマーク(バージョン10.X)」の結果を、本機と「REDMAGIC 9 Pro」で比較してみよう。本機の総合スコアが2111462なのに対して「REDMAGIC 9 Pro」が2169655だった。意外だが、「REDMAGIC 9 Pro」のほうがスコアは良好だった。
「REDMAGIC 9 Pro」のほうが速いのか?と思うかもしれないが、サブスコアを見ると違った見方ができる。グラフィック性能を示すサブスコア「GPU」の結果に注目すると本機が949302で、「REDMAGIC 9 Pro」の913042よりも高い。約1割のクロックの向上に対して、スコアは比例しているわけではないもののきわめて高いスコアだ。
「CPU」の結果が伸び悩んだ理由として、CPUのほうがクロックアップによる熱の影響が大きく、熱処理が間に合わなかったことが考えられる。加えて、「REDMAGIC 9 Pro」のベンチマークテストは外気温の低い1月に行ったのに対して、本機は9月であることも影響しているかもしれない。
「AnTuTuベンチマーク」の結果。左が本機、右は「REDMAGIC 9 Pro」のもの。総合スコアは本機のほうが低い。ただし、ゲームにおいて重要な「GPU」のスコアは本機のほうが高い
グラフィック性能を計測するアプリ「3DMark(Wild Life Extreme)」のスコアは5437、平均フレームレートは32.56。こちらはAndroidスマホとしてはほぼ最高レベル。なお、機種名が正しく表示されず前モデル「Red Magic 9 Pro」となっていることはご了承いただきたい。
こちらはベンチマークアプリ「GeekBench 6」の結果。左はCPUの計測で、シングルコアが2223、マルチコアが6889。「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機ならマルチコアで7000ポイント以上が多いが、こちらも不発だった。右はGPU(Vulkan)性能の計測結果。スコアの17749は「Snapdragon 8 Gen 3」搭載機としても相当高く、グラフィック性能は国内で一般流通しているAndroidスマホとして最高レベルと見てよいだろう
ベンチマークテスト中の発熱は相当のもので、ツールの示すCPUの温度は60度を超えていた。バッテリーの温度も45度以上だった。さまざまなスマホを試しているが、CPUの温度が60度以上のAndroidスマホはちょっと記憶にない。ベンチマークテスト中におけるボディ表面の発熱も強烈で、付属のカバーを装着しても素手ではとても持てないほどだった。
AnTuTuベンチマーク実行直後のバッテリーの温度は44.8度、CPU温度は60.2度! ボディ表面の温度も手持ちできないほど高かった
ただし、実際のゲームでは、ベンチマークテストほど過酷な状況が続くことはなく、そこまで極端な高熱にはならない。一部で「原神」よりも負荷が高いのではとささやかれるリズムゲーム「シャニソン(アイドルマスターシャイニーカラーズ Song for Prism)」の描画設定を最高に引き上げつつ、HDR表示に切り替え、ノーツのフレームレートを120FPSに切り替えても、フレームレートは上限に張り付いて微動だにしなかった。一世代前の「Snapdragon 8 Gen 2」搭載機よりも断然スムーズで、グラフィック性能は、現状のAndroidスマホでは最強と言ってよいだろう。
本機は、12GBメモリー+256GBストレージモデル(122,800円)と、16GBメモリー+512GBストレージ(152,800円)の2モデルが用意されている。競合する製品はASUSのゲーミングスマホ「ROG Phone 8」(159,800円〜)だが、非ゲーミングスマホの「Galaxy S24」(124,800円〜)や「Galaxy S24 Ultra」(189,700円〜)も含まれるだろう。なかでも「ROG Phone 8」はボディが軽くなり、ジンバル付きカメラやおサイフケータイに対応するなど1台で何でもこなせる機能性を兼ね備える。いっぽう本機は、ゲームガチ勢のための製品だ。大分値段は上がってしまったが、それでも競合製品と比べても割安なのは、機能性をあまり追求していないためだ。発熱の多さのためCPUのベンチマークテストは振るわなかったが、グラフィック性能の高さは、極限の性能を求めるストイックなガチゲーマーに響くだろう。