シャープ「KC-F50」
図1:「空気清浄機」カテゴリーのアクセス数推移(過去2年間)
ここ数年における国内の空気清浄機市場はほぼ停滞している。2013年の春、中国国内の大気汚染に端を発した「PM2.5」の飛来が問題化し、この年、空気清浄機の販売はピークを迎えたが、このとき、ある程度家庭内に普及したこともあり、その後の販売台数はほぼ横ばいかやや減少気味で推移している。2年前の2016年3月に当コーナーでレポートした記事内(https://kakakumag.com/seikatsu-kaden/?id=3879)においても、そのことは明らかだった。そして、それから2年間の流れを見ても、昨年2017年はさらに注目度が減少しており、今シーズンはさらに下がるのではないかと予想されていた(図1)。
しかし、「価格.comトレンドサーチ」で、過去2年間における「空気清浄機」カテゴリーのアクセス数推移(図1)を見ると、昨シーズンは確かに下がっているが、今シーズンに関して言えば、むしろ昨年より全体的に上がっており、現時点でのピークにおける閲覧者数を比較すると、昨シーズンより約13%ほど高い数値を記録している。年明けになってもこの流れは継続しており、空気清浄機への注目度は久々に上向いていると見ていいだろう。
この理由として考えられるのは、今冬、日本列島が数十年ぶりというレベルの大寒波に見舞われていることだ。空気清浄機は暖房器具ではないが、空気が冷えて乾燥すると活発化するインフルエンザなどのウイルスに対して、ある程度の効果が見込まれると言われている。近年の空気清浄機はほとんどの製品が加湿機能を搭載しており、なおかつ、ウイルスの動きを抑制すると言われる「イオン機能」も、ほとんどの製品に組み込まれている。これらの付加機能によって、インフルエンザなどのウイルスの活動を抑制。風邪やインフルエンザ予防のために、空気清浄機を導入するという人も増えている。今冬は、インフルエンザの流行も爆発的に広がっており、これが、空気清浄機の注目度を押し上げているのではないかと思われる。
ただし、それで、空気清浄機全体の売れ行きがアップしているかというと、それはいささか微妙な状況と言わざるを得ない。と言うのも、価格.com上で売れている製品のほとんどが、1年前、場合によっては2年前の型落ちモデルだからだ。
図2:「空気清浄機」カテゴリーの売れ筋ランキングベスト5製品(2018年1月31日時点)
2018年1月31日時点の「空気清浄機」カテゴリーの売れ筋ランキングベスト5の顔ぶれを見ると(図2)、ベスト5製品の中で2017年発売の最新モデルは、5位のダイキン「MCK70U」のみ。ほかの製品はすべて型落ちモデルである。しかも、1位のシャープ「KC-F50」と、4位のシャープ「KC-F70」は、2年前の2015年発売モデルだ。ベスト10まで範囲を広げてみても、2017年発売の最新モデルはわずかに2製品。その他の8モデルが型落ちモデルで、2015年発売の2年落ちモデルがそのうち3製品を占める。ちなみに、この3製品はすべてシャープ製だ。
図3:「空気清浄機」カテゴリーの売れ筋ランキングベスト5製品の最安価格推移(過去2年)
図3は、現時点での売れ筋5製品の、過去2年間における最安価格の推移を示したもの。2年前から継続販売されているシャープの「KC-F50」および「KC-F70」の2018年1月31日時点での最安価格は、それぞれ16,400円、21,556円。なお、この2モデルは機能的にはほぼ同じ姉妹モデルで、「KC-F70」のほうが最大風量が大きい(31畳対応)という違いになる。
これに対して、1年前の型落ちモデルで、上述「KC-F50」(23畳対応)の後継モデルである「KC-G50」の現在の最安価格は17,290円。「KC-F50」よりも1,000円程度高いレベルだが、それでもかなり安い。ちなみに、この2機種の後継最新モデルとなる「KC-H50」(2017年12月発売)の現時点での最安価格は30,790円。上記の型落ちモデルと比べると、倍近い価格となっている(図4)。ちなみに、本機の売れ筋ランキング順位は41位と、売れているとは言いがたい状況だ。
図4:シャープ「KC-F50」「KC-G50」「KC-H50」の最安価格推移(過去2年)
なお、この3モデルは、空気清浄機としての基本スペックに違いはなく、安くなっている旧モデルを狙っても、得られる効果は変わらない。であれば、価格の安い型落ちモデルを狙うのは、理に適っている。なお、現時点では2年前の「KC-F50」も、まだ在庫は潤沢にありそうだ。
図5:2017年発売の空気清浄機・最新モデルの最安価格推移(過去6か月)
このシャープの例はやや極端であるが、ここ5年くらいの空気清浄機市場の停滞を受け、ネット通販市場では、まだまだ旧モデルの在庫が大量に出回っていると推察される。そのいっぽうで、空気清浄機の各メーカーは、付加価値をつけた上級モデルの販売に力を入れており、こうした上級モデルの価格は、5年前と比べてもかなり上がっている。一例をあげると、同じシャープの上級シリーズである「KI-HS50」(23畳対応)の現時点の最安価格は36,576円。プラズマクラスター濃度が高くなり、スマホ連携AI機能「KOKORO AIR」を搭載するという付加機能はあるが、4万円に近い価格帯となっている。これは、他メーカーでも同様で、同じ対応畳数のモデルで、たとえばダイキン「MCK55U」(25畳対応)の最安価格は39,220円。パナソニック「F-VXP55」(25畳対応)は42,744円と、ほぼ4万円前後という状況(図5)。最新モデルのほとんどが、付加価値をつけることによって以前よりも高価格帯で売られているいっぽうで、1年前、2年前の売れ残って安くなった型落ちモデルは、半額以下の1万円台で購入できる。この価格差ギャップが、今の空気清浄機を取り巻く状況と言える。
ただ、今市場に出回っているような型落ちモデルがいつまでもあるわけではない。空気清浄機の各メーカーは、これらの低価格モデルから、高付加価値で高額な上級モデルへのシフトを行いつつあり、空気清浄機が2万円以下で購入できるという状況は、徐々になくなっていくだろう。今シーズンは、思わぬ寒波の到来と、それにともなうインフルエンザの流行によって、空気清浄機の需要が高まっているだけに、なるべくお得に空気清浄機を導入したいと考えているのであれば、まだ市場に出回っている型落ちモデルを今狙うのが、絶好の買い時と言えるかもしれない。
価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。