購入しやすい価格ながら「なるほど」と膝を打つ機能を搭載した“おトク”感の高い製品を次々と発売し、近年家電分野でもメキメキと存在感を高めているアイリスオーヤマ。今回はそんな同社から登場したユニークな「焼き調理」機能付き電子レンジ「かんたん両面焼きレンジ IMGY-F181」をお試しレビューしたいと思います。
通常、「焼き調理」機能付きレンジといえば、食材を内側から温めるマイクロ波調理に加え、ヒーターを使って食材を外側から焼き上げるグリル/オーブン機能を備えた「オーブンレンジ」を指します。ところが、「かんたん両面焼きレンジ」はヒーター非搭載。その代わりに、マイクロ波に反応して発熱する「発熱プレート」付き専用容器を使うことで、焼き調理を可能にしています。レンジ自体は単機能なので価格は1万8000円台と格安。この「低価格と焼き調理機能の両立」がこの製品の“キモ”となっています。
「かんたん両面焼きレンジ」IMGY-F181のサイズは457(幅)×272(高さ)×347(奥行)mmで、重さは13.5kg。持ち上げると液晶画面がある本体右側がかなり重く、マイクロ波の放出ユニットなど主なパーツは右側に集中設置されているようです
ちなみに、アイリスオーヤマでは2015年から、専用容器を使って焼き調理ができる電子レンジを発売していますが、今回の「かんたん両面焼きレンジ」はその名の通り、食材を途中でひっくり返さずに両面焼けるようになったのが進化ポイント。専用容器下部と上ぶたに発熱プレートを装着することで、食材の上下から同時に加熱を行います。さらに、上ぶたの置き方を変えることで「片面焼き」にも対応。18種類のメニューを自動調理できるようになりました。
シリコン製の専用容器
専用容器は、容器底と上ぶたにアルミニウム合金製の発熱プレートを装着して使います。発熱プレートの表側にはフッ素樹脂加工が施されており、調理した肉や魚などの食材がこびりつきにくくなっています
プレート裏側にはマイクロ波を吸収して発熱するフェライトを混ぜ込んだシリコンゴムを貼付。これにより、食材をこんがり焼き上げることができます
上ぶた側面の出っ張りを容器の取っ手部分にある深い溝にはめ込むと、上ぶたが低い位置まで沈んで(左)、食材の上面も加熱する「両面焼き」が行えます。いっぽう、ふたの出っ張りを容器の前後にある浅めの溝にはめ込むと、上ぶたの位置が食材から離れるため(右)、おもに食材の下面だけ焼き上げる「片面加熱」になります
実際に調理してみましょう。付属のレシピブックには、専用容器を使った18種類のレシピを掲載。今回作った料理は、すべてこのレシピブックに載っている食材量に従いました。
鶏の照り焼き
まず作ったのは、鶏の照り焼き。付属のレシピ集にしたがい、鶏もも肉120gをしょうゆやみりんなどを加えた調味液に10分ほど漬け込み、調味液ごとプレートに乗せて「両面加熱」しました。
鶏もも肉をプレートに乗せ、両面加熱の位置でふたをし、専用容器をレンジ内にセット
焼き物調理の「18.照り焼き/19.ムニエル」を押してスタートボタンを押すだけで調理スタート。ちなみに、19番の「ムニエル」を選ぶ場合は、ボタンをもう一度押します
7分30秒後に加熱終了。ふたを開けると、照りとツヤのあるおいしそうな仕上がりになっていました
さっそくできあがった鶏の照り焼きを試食。調味液に片栗粉を加えていたせいでしっかり照りが出て、味も食感も十分合格点です。個人的には、皮の部分がカリッと仕上がるかにも注目していたのですが、ふたを閉めることで内部が“蒸し焼き”状態になるため、皮のパリパリ感は得られませんでした。
鶏もも肉は火が通り過ぎて硬くなることもなく、家庭料理としては文句なし。甘辛の照り焼きだれも絶妙な味わいで、ごはんが進みます
焼き魚
続いては、焼き魚をお試し。鮭の切り身に塩を振り、両面焼きに。焼き物調理メニューの「8.魚(切り身)」を選択します。切り身の量が約100gとレシピに指定の80gよりやや大きかったので、仕上がり「強」で調理しました。
切り身を発熱プレートに乗せ、両面焼きの位置にふたをして調理。裏面のフェライト入りシリコンゴムの大きさがプレートよりやや小さいので、プレートの端の部分の加熱時の温度はやや下がりめになるそうで、切り身に限らず、プレートの幅より少し内側に食材が納まるようにするのが、食材をムラなく焼くコツです
調理時の仕上がりは、「弱」「標準」「強」の3段階で調節できます。しっかりこんがり火を通したい時や、食材の量がやや多めの時は「強」に、火の通りを弱めにしたい時は「弱」にします
調理時間は4分30秒。焼き上がりは「超ふっくら」とまではいきませんが、硬くなりすぎず、まずまずの食感でした。グリルレンジやフライパンで魚を焼くと、外側が焦げすぎたり、中がまだ生だったりと、火加減や加熱時間の調節が難しいですが、電子レンジで手間なくできるのはメリット大。晩ご飯のメニューの幅も広がりそうです。
鮭は口の中でうまみが広がり、上々のおいしさ。切り身の両側までしっかり火が通っていました
お好み焼き
次に、お好み焼きを作ってみました。レシピ通りの分量にしましたが、千切りのキャベツでかさが出るため、両面焼きで焼くと上ぶたがちょっと浮いた状態に。ここでも表面をこんがり焼きたかったので、仕上がりを「強」にしました。
豚バラ肉を敷いた上に、キャベツをたっぷり混ぜ込んだ生地を乗せて焼きます。キャベツがこんもり盛り上がるので、ふたの重みでキャベツと生地を軽くプレスしながら焼いていきます
加熱時間は10分間。ふたを開けると上面にも薄めの焼き色がついてしました
焼きあがったお好み焼きにソースを塗り、マヨネーズ、青のり、かつお節をかけて完成
上ぶたでプレスしながら焼いたため身の詰まった食感ですが、中までしっかり焼けており、味もまったく問題なし。ただ、専用容器では火力がそこまで出ないのと、焼く際に油を使わなかったせいもあり、表面のカリッと感は弱く感じました。
続いて、朝食レシピのピザトーストをお試し。食パンにケチャップを塗り、ベーコンとピーマン、チーズを乗せて「片面焼き」にします。
レシピでは「ウインナー」が使われていますが、今回は冷蔵庫に入っていた薄切りベーコンを使用、チーズはとろけるタイプのシュレッドチーズを使いました
「片面焼き」ですが、上ぶたからも適度に加熱するため、チーズがいい感じにとろけます。ちなみに写真は仕上がり「ふつう」で焼いたものですが、仕上がり「強」にすると、チーズに少し焼き色が付いてよりおいしそうに焼けます
試食したところ、チーズはトロトロ、ピーマンの苦味とシャキシャキ感も適度に残って文句なしのおいしさでした。写真撮影したあとに試食したこともあり、トーストが冷めてくるとパンの耳の部分が硬くなって食べづらくなりましたが、焼きたてをそのまま食べれば耳も硬くなる前に食べ切れるでしょう。
ケチャップの甘み、酸味にチーズの塩気とうまみ、ピーマンの風味が溶け合って、うなってしまうほどのおいしさでした
さらに、同じ朝食メニューでハムエッグも調理してみました。ハムを半円型になるように切って真ん中にくぼみができるように並べ、その窪みに卵を落として「片面焼き」で焼きます。
ハムの丸い部分を外側にするように井桁状に並べると真ん中が空くので、そこに卵を割り入れます
焼き物調理「6.ハムエッグ」を選択。調理時間は3分30秒でしたが、この加熱時間だと部分的に卵の黄身に火が通りすぎてしまいました。トロ〜リとした黄身が好きなら、仕上がりは「弱」にしたほうがよさそうです。
写真の黄身部分はすっかり固まってやや残念な結果に。ただ、黄身の場所によってはトロ〜リ感の残っている部分もありました。専用容器を使ってもわずかに加熱ムラは出てしまうようです
焼き物調理のメニューには、「揚げ物」(の温めなおし)も用意されています。お惣菜の揚げ物をよく買う家庭では、揚げ物の温め直しのカリッと感も気になるところ。惣菜のコロッケで試してみました。
「両面焼き」のポジションでふたをして加熱。プリセットメニューでは3分加熱の設定になっていますが、3分では中は温まって衣が油でベタッとすることはないものの、衣のカリッと感はあまり感じません。さらに2分加熱してようやく少しカリッと感が出たかなという程度で、この機能に関しては、個人的には少し不満が残りました。
コロッケの衣のカリッと感は、専用容器でもなかなかよみがえらない印象。オーブントースターで加熱したもののほうがカリッと感は上だと感じました
今回は番外編として、メニューに載っていない蒸し野菜にも挑戦。専用容器はシリコン樹脂製なので、発熱プレートを外して、シリコンスチーマーとして使えないか試してみました。
ブロッコリー100gとにんじん80gを蒸し調理。ブロッコリーは小房に分け、にんじんはやや小さめの乱切りにして、水で洗ったあとさっと水気を切ってレンジ加熱しました
取扱説明書の調理目安を参考に、レンジ手動で4分加熱。まだ少し硬いと感じたので、30秒追加加熱しました。結果としては、専用容器でもまったく問題なく蒸し調理でき、容器のニオイが野菜に移ることもありません(逆にたまねぎなどニオイの強い野菜を蒸し調理した場合、容器にニオイが移る心配はあるかも)。
蒸し調理後のブロッコリーとにんじん。ブロッコリーは適度にシャキシャキ感が残る火の通り具合で、にんじんにもしっかり火が通ってやわららかくなっていました。今回は2つの野菜を一緒に蒸したので、火の通りにくいにんじんをやや小さめにカットしています
ただ、よくよく考えてみると、わざわざ専用容器を蒸し野菜用に使う必要があるかなあという気も。専用容器は両面焼き・片面焼き用の溝があるぶん、通常のシリコンスチーマーと比べて洗うのが少しめんどう。メーカーも蒸し野菜を想定して専用容器を作っているわけではないので、長く使った場合の影響も未知数です。それなら100円均一ショップでシリコンスチーマーを買って使ったほうがいいかなと思いました。
最後に、基本のレンジ機能も試してみました。本機はセンサー非搭載なので、食材の種類と量(重さ)に合わせて加熱時間を手動で調整します。ただし、ごはんと飲み物、お弁当に関しては「自動あたため」メニューを用意。牛乳を「自動あたため」してみましたが、温め終えたミルクは60℃で、ちょうど飲み頃の温度になっていました。
マグカップに8分目くらい牛乳を入れ、「自動あたため」の「飲み物」ボタンを押して加熱スタート。加熱時間は1分50秒でした
加熱後にミルクの温度を測ると60℃でした
「お弁当あたため」では、やや小ぶりの弁当を「お弁当(大)」で加熱したこともあり、熱々に仕上がりました。
ハンバーグ弁当を温め。「お弁当(大)」だと3分45秒加熱する仕様で、温め後のハンバーグの内部は約83℃、ごはんは約88℃になっていました
「解凍」メニューでは、冷凍室に入れてカチカチに凍った鶏もも肉を耐熱皿に乗せ、グラム数を設定して解凍。解凍時はマイクロ波照射のオンオフを繰り返して、加熱ムラ、加熱しすぎを防ぎます。
設定できるのは100〜500g。まず100g単位の設定を行い、次に10g単位を設定しま
鶏肉は重さ114gだったので120gで解凍しましたが、まだほとんど凍ったまま。もう一度120g設定で解凍しても鶏肉の上側は溶け切っていません。いっぽう、皿に接している下側は解凍されて温かくなっていたので、鶏肉をひっくり返してさらに120g設定で解凍。これでようやく全体が解凍できました。
何度も解凍を繰り返す手間はかかりましたが、加熱ムラで肉が“生煮え”になることもなく、きれいに解凍できました
「解凍」メニューに関しては、食材にもよりますが、ジャストな解凍を自動で行うのは難しく、やはり食材の状態を見ながら手動で細かく解凍する必要があると感じました。ただ、扱い方に慣れてくれば、「鶏肉はこれくらいの量ならだいたい○分でいいだろう」と判断できるようになると思います。
操作パネルの作りはとてもシンプル。専用容器を使った18種類の「焼き物調理」は、9つのボタンに2種類ずつメニューが割り当てられていて、どのボタンを押せばいいか一目瞭然です。「自動あたため」は「ごはん」「飲み物」「お弁当」の3種類。あとはすべて手動で加熱することになります。
操作パネル。上から「手動メニュー」「自動あたため」「焼き物調理」と操作ボタンが並んでいて、見ただけですぐに操作できま
「焼き物調理」と「自動あたため」では、仕上がりを「強」と「弱」に調整可能。少し残念だったのは、「強」か「弱」を押したあと「標準」に戻したい時、いったん取り消しボタンを押さなければならない点で、取り消し後に最初から設定し直さならなければならないのがめんどうでした。「強」を押したあとで「弱」を押すと「ふつう」に戻るとか、「強」「弱」を2度押しすると「標準」に戻る仕様になっていたら便利なのですが……。
手動加熱では1分単位、10秒単位、1秒単位までの設定が可能。解凍モードでは、加熱時間でなく食材の重さを入力し、その重さから解凍時間を調節します。もっと上の価格帯のモデルなら、各種センサーで加熱や解凍を行うところですが、中途半端な性能のセンサーだと加熱ムラが起きてしまいます。低価格実現のために思い切ってセンサーを搭載しない、という判断は、筆者は「あり」だと思います。
右手手前が庫内灯で、奥の丸い出っ張りがマイクロ波放出口カバーです
お手入れ面では、フラットテーブルを採用しているうえに庫内の凹凸が少なく、拭き掃除がラク。また、オーブンレンジで焼き物調理をする際、庫内が油で汚れてしまうのがめんどうですが、本機は専用容器で食材を密閉して調理するため庫内が汚れず、専用容器と発熱プレートを洗うだけでよいのがとても便利でした。
フラットテーブルを採用し、汚れがサッと拭き取れます
発熱プレートは汚れがこびりつきにくく、洗うのがとてもラクでした
専用容器は調理した料理をプレートごと取り出す時に、汁や油が上ぶたをはめ込む溝の部分に流れてしまうので、調理後は毎回洗う必要があります
低価格モデルながら、専用容器を使って「両面焼き」調理ができるのが本機の魅力。料理の仕上がりも問題なく、さらに焼き調理後も庫内が汚れないのもメリットだと感じました。
ただ、購入するうえでネックになるのは専用容器の大きさ。一度にひとり分の量しか調理できないので、2人以上の世帯で使うのは難しそうです。レシピ集を見ても、指定されている肉や魚の量は総じて少なめで、おなかいっぱい食べたい人には物足りないかもしれません。ただ、レシピ集に出ている量までしか作れないわけではなく、多少量が多い時は加熱時間を多めにすればOK。その際に専用容器の発熱プレートの端の部分は加熱が弱いので、食材が端ぎりぎりまでこないよう注意が必要です。
ともあれ、肉料理や焼き魚などがボタンひとつで、料理をひっくり返す手間もなく、失敗なく作れるのは魅力十分。価格も安いので、特にふだん料理をしない独身男性は、購入するメリットが大きそうです。
雑誌やWeb媒体において、生活家電の紹介記事やお試し記事を執筆。家電ジャンルは調理家電から掃除機、美容・健康家電など幅広くこなす。夫婦共働きのため、調理など家事も応分に担当(ただしあくまでダンナ目線)。立食いそばも好き。