レビュー

これぞ東日本のご飯! 日立の圧力IH炊飯器「ふっくら御膳」で茨城の米炊いて感動

筆者は福島県いわき市の出身である。勿来町(なこそまち)という茨城県境の町で育ち、海沿いのトンネルを越えて日立や水戸にはよく遊びに行った。映画を観に行ったり、遊園地に行ったり、海水浴に行ったり、水族館に行ったり。僕たちにとって茨城はすぐそこにあった。というわけで福島県民ながら茨城には思い入れがあるため、「ガールズ&パンツァー」が放映されたときには狂喜乱舞したし、今でもガルパンが大好きである。

創業の地である日立市が近いため、いわき周辺には日立製作所の系列家電店、日立チェーンストールが多かったように思う。まだ家電量販店が存在しない時代だ。子どものころ、実家には日立チェーンストールのおじさんがしょっちゅう出入りし、洗濯機や炊飯器、蛍光灯などさまざまな家電製品の納品や修理をしていった。おじさんが来るたびに持ってくる子ども向けの玩具(日立が配布していたであろう販促品)が僕は楽しみで、修理のあとはよくその玩具でおじさんと一緒に遊んだものだった。日立はいつも僕たちの身近にあったんだ。

そんな子どものころの記憶は今の今まですっかり忘れていたのだが、先日それが一気によみがえった。それは、2019年発売の日立の圧力IH炊飯器「沸騰鉄釜 ふっくら御膳 RZ-W100CM」で炊いたご飯を食べた瞬間だった。

ご飯は飲み物ではなく、嚙むもの

一般的に、東日本に本社を置く家電メーカーの炊飯器で炊くご飯は比較的硬く、逆に西日本のメーカーはやわらかいと言われていた。東日本人は硬いご飯が好きで、西日本人はやわらかいご飯を好むから。しかしそれはひと昔前の話だ。圧力炊飯方式が一般的になり、さらに日本人全体がやわらかい食感を好むようになると、全メーカーが「もちもち」系を標準仕様にし始めた。硬めの「しゃっきり」系が好きな場合は、ユーザーが自分で調整しなければいけない。

ところが、今年の「ふっくら御膳 RZ-W100CM」(以下、ふっくら御膳)はそんな時代の趨勢(すうせい)に逆らう食感に仕上げられている。日立はそれを「外硬内軟」(がいこうないなん)と呼んでいる。お米の外側は硬く粒の輪郭を感じることができるいっぽうで、中はやわらかく甘みが際立つ。東北出身者にとってこれほどうれしいことがほかにあるだろうか? いやない(反語)。

というわけで、筆者の趣味をちょいちょい見切れさせながら「ふっくら御膳」のおいしさに迫る!

というわけで、筆者の趣味をちょいちょい見切れさせながら「ふっくら御膳」のおいしさに迫る!

これぞ「東日本のご飯」! 茨城のお米を炊いて実食レビュー

「ふっくら御膳」は、従来モデルより低い水温でじっくり時間をかけてお米を浸す炊飯プログラムを採用することで、「外硬内軟」な炊き上がりを実現するのだとか。仕組みの詳細は以下の速報記事をご覧いただくとして、ここではさっそく実食レビューといこう。果たしてどれくらい「外硬内軟」なご飯が味わえるのか?

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新しくなった内釜の底面にはリンク状の突起を配置しており、これが発熱面積を広げるとともに、泡の発生をうながすのだとか

日立の多賀工場で作られている炊飯器でご飯を炊くのだから、今回のレビューではお米をはじめ、茨城県産の食材を使ってみることにした。都道府県魅力度ランキングで7年連続最下位の茨城県だが、実は食に関しては海・川・山・農・酪なんでもそろう豊かな土地なのだ。

メインとなるお米は「ふくまる」をチョイス。茨城県オリジナル品種だ。粒が大きく、豊かな風味とさっぱり感が特徴で、冷めても硬くならない特性を持っている。

さて、「ふっくら御膳」のもうひとつの特徴として、少ない量でもおいしく炊ける「少量モード」がある。0.5合から2合までの少なめな量のお米でも「外硬内軟」に炊き上がるものだ。ちょうど最近の我が家では1度に2合分を炊くことが多いので、今回も少量モードに設定して試してみた。

茨城で作られた炊飯器を、茨城の食材とともにレビュー!

茨城で作られた炊飯器を、茨城の食材とともにレビュー!

手始めにスタンダードな「白米」「極上」「ふつう」コースで炊いてみたのだが、いずれも炊きあがりはツヤツヤで、お米が立っている様子が見て取れる。ふっくらというより、まさに「しゃっきり」という表現が合うだろう。ひとくち含んでみると、舌触りがつるつるしており、口の中でお米がバラけていき、お米1粒ひと粒の感触が舌の上でしっかりわかる。

そして嚙んでみると、ガツンと歯ごたえが来る。まさに外硬、最近のもちもち系圧力炊飯にはない感触だ。嚙み進めるともちもち感が生まれ、味もあとからやってくるのが面白い。外硬ゆえか、最初はあまり味がせず、さっぱりした風味だが、嚙み進めるうちにじわじわとお米の甘みが出てくるのだ。外の硬い殻によって甘みが中に閉じ込められたのだろうか。

標準的な「極上・ふつう」のコースで2合炊きの炊飯時間は約50分

標準的な「極上・ふつう」のコースで2合炊きの炊飯時間は約50分

2合炊きでもお米の1粒ひと粒が立っており、ツヤ、ハリがとても美しい炊き上がりに! 口に含んでみると自然にバラけ、しっかりとした歯ごたえのあとから来るもちもち感はまさに「外硬内軟」

食べてみて感じたのは、これぞ「東日本のご飯」ということ。われわれが子どもの頃に食べていたご飯はこんな感じだった。こんな感じに硬かった。といっても芯がある硬さ(筆者が育った土地では“めっこご飯”と呼んでいた)ではなく、適度な歯ごたえを楽しめる硬さ。ご飯は飲み物ではなく嚙むもの。ひとくちに付き10回は嚙んで、お米の甘さを楽しんでいたことを思い出させる。そう、この味だ。群馬県出身の妻も「これよね」と懐かしそうにゆっくりと嚙みしめる。

茨城といえば納豆。「外硬内軟」のツルツルさっぱりした外殻によって、ごはん1粒ひと粒に納豆の粘りがからまり、納豆とご飯の一体感を味わえる

続いては、やわらかめである「もちもち」コースで炊いてみた。もちもちなのに食感がしっかりあり、これこそが「外硬内軟」なのではないか。みずみずしく、嚙めば嚙むほど甘みが出てくる。おかずやお供はいらない。ご飯だけでいい。

筆者はこの「もちもち」モードが1番好みで、家族も同意見だった。我が家の娘は「ふつう炊きより甘みがある。1粒ひと粒がしっかりしていながら、中がふわふわしている」と語り、妻も「口に入れると、あれ? 硬いかな? と感じるけど、嚙むともちもちしている。ねちょねちょしておらず弾力があり、食べやすくておいしい」とのこと。

「もちもち」コースは4合で炊いてみた。炊飯時間は90分と長めになる。炊きあがりは真っ白でツヤツヤ、お米1粒ひと粒の形がはっきりわかる。より甘みが増し、東日本人だけでなく万人向けの味だろう

「長時間保温」もおいしい!

さて、「ふっくら御膳」は長時間保温もウリにしている。炊飯時に出る蒸気を水分に変えて二重になった内蓋の中に溜め込み、6〜7時間ごとに再加熱、そして蒸気にして内釜に戻す「給水レスオートスチーマー」機構を搭載していて、ご飯を40時間もの間しっとり保つことができるという。

40時間はさすがに試せなかったが、「ふつう」で炊いて14時間保温後のご飯を食べてみたところ、炊きたて時に比べると若干の乾きがあるものの、嚙んでみるとみずみずしさは残っており、とてもおいしい。娘も「お米の表面のツルツルつやつやが残っているし、硬さもほとんど変わっていない。歯ごたえがあっておいしい。これまで食べた中で1番好きな食感」との感想だった。嚙むほどに甘みが出てきて、不思議なことに炊きたてよりも甘みが強く感じられる。

内蓋の給水レスオートスチーマーに蒸気がたまり、1度水に戻ったものを再加熱して蒸気として内釜に注入することで長時間保温ご飯がおいしくなる

14時間保温後のご飯。写真では粒の外殻が崩れているように見えるが、食べてみると「外硬内軟」に変わりなく、表面はツルツルしている

さまざまな種類のご飯を炊いてみる!

次に、さまざまな種類のご飯を炊いてみよう。まずは、もち麦を1.5割の比率で白米に混ぜたものを「極上/麦ごはん」コースで炊いてみた。白米同様、硬めに出るが中まで火が通っている。麦のプチプチ感を楽しみながら、白米の甘みを楽しめて、これもまたおいしい。

なお、「おこわ」コースで炊いた赤飯は意外にやわらかめだった。結構もちもちなので、もう少し硬めのほうが東北出身者にとっては好みだ。ただ、やわらかめといっても粒立ちはある。標準で炊いても薄いおこげができるが、味はさっぱりめ。ちょっと甘みが足りないかな?

1.5割の麦ごはんは、いつも使っている炊飯器より麦のプチプチ感が強く出て、食感が楽しい

1.5割の麦ごはんは、いつも使っている炊飯器より麦のプチプチ感が強く出て、食感が楽しい

お赤飯はおこげが薄くできるにもかかわらず、やわらかめに炊き上がる。個人的はもっと硬めが好みだが、これは水加減を調整して自分好みの食感を探していけばよさそう

発芽玄米も炊いてみた。炊き上がりはかなりやわらかい。芯が残っていないのはよいが、もちもちが少し強い印象。個人的はもう少し硬めに出てもよいと思うが、高齢者にとってはほどよいやわらかさだろう。玄米独特のにおいは抑えられているが、甘みは弱くさっぱり感が強い。

「玄米・ふつう」コースで炊くと、キレイにカニ穴ができた。食感はかなりやわらかめだが、びちゃびちゃネチャネチャ感は全くない。味はさっぱりめ

冷凍しておいしいのは白ご飯と赤飯

ちなみに冷凍してみると、ご飯の種類によってかなり差が出た。白米は外殻に硬さを維持しつつ、中はやわらかい。きちんと水分を保っているのがわかる。炊きたてと同等とまではいかないがほぼ劣化はなく、おいしい。

いっぽうで、麦飯と発芽玄米の冷凍は、正直言ってあまりオススメできない味だった。特に玄米は、炊きたて時は水分が多かったのに、冷凍するとなぜかパサつきが強く、もともとさっぱりめだったこともあって味がほとんど感じられない。逆に赤飯は冷凍すると外殻に硬さが出て、中はもちもち感が強くなり、炊きたてよりもおいしく感じた。

白米を2週間ほど冷凍したもの。粒の形がキレイに残っており、解凍しても「外硬内軟」は維持されていた。味の劣化もほとんどない

発芽玄米ご飯(左)と麦ご飯(右)は冷凍するとパサつきが強くなり、あまりオススメできる味ではない……

発芽玄米ご飯(左)と麦ご飯(右)は冷凍するとパサつきが強くなり、あまりオススメできる味ではない……

冷凍お赤飯は「外硬内軟」が増してむしろおいしくなった

冷凍お赤飯は「外硬内軟」が増してむしろおいしくなった

カレールーの中で見せる、ひと粒の存在感

というわけで、冷凍してもっともおいしかった白米にカレーをかけてみた。冷凍することで若干硬さが増したご飯にカレーはよく合う。カレーと一緒に食べても米の粒立ちは残っており、それでいて嚙むとやわらかく、口の中でカレールーと混ざりあって絶妙な味を醸し出す。白米だけの場合、ご飯は嚙むものだったが、カレーと混じり合うことで米表面のツルツル感が相乗効果となり、カレーは飲み物に変わる。やはりカレーは正義だ。

硬めの外殻のおかげでカレールーと混ざっても米粒の形を舌で感じることができ、ご飯とカレーのシンフォニーを存分に楽しめる。ふつうコースでもカレーによく合う

最後にちょっとだけハードの話を。「ふっくら御膳」にはちょっとおもしろい仕組みが2つある。ひとつは、内釜の水位線が標準・やわらかめ・かための3本あること。液晶のメニューで「ふつう・もちもち・しゃっきり」の3つの食感を選べるが、水加減を加えると9通りの食感を楽しめる。

白米・無洗米などで3つの食感の異なる水位線を選べる

白米・無洗米などで3つの食感の異なる水位線を選べる

もうひとつは、炊飯中に蒸気がほとんど出ないこと。炊飯のピークの時に数分ごとに若干の蒸気が出るだけ。真夏にキッチンが炊飯器の蒸気で蒸し風呂のようになることが防げるし、炊飯器を置いたカップボードが蒸気の熱でゆがむのも避けられる。

炊飯時には最大でこの程度の蒸気しかでない

炊飯時には最大でこの程度の蒸気しか出ない

決して色褪せることのない、郷愁の味

「ほら、たんと食べれ」「ウマいべ」「とーちゃんの分がなくなるべよ」「テレビばっかり見てたらだめだっぺ」。「かーちゃん、ねえちゃんがオレの刺身取った!」。ちゃぶ台を囲み、ブラウン管から流れる磯野家のみなさんのアニメを見ながら、両親・兄弟とワイワイガヤガヤ、さわがしくも楽しい食卓。決して裕福ではなかったが、子どもたちにおいしくて栄養のあるものを食べさせようと、必死で働いていた父。その父の稼ぎの中から毎日食材を選び、おいしいご飯を作ってくれた母。「ふっくら御膳」のご飯は、そんな昭和の光景を思い出させてくれる。

両親とも、とうに他界しているので確かめる術はないが、子どものころに食べていたのは日立の炊飯器で炊いたご飯だったかもしれない。今も色褪せることのない郷愁の味だ。

近藤克己

近藤克己

1966年生まれ、福島県出身。大学では考古学を専攻。主に生活家電を中心に執筆活動する家電&デジタルライター。レビューや検証記事では、オジさん目線を大切にしている。得意分野は家電流通・家電量販店。趣味は、ゴルフ、ギター、山登り、アニメ、漫画、歴史、猫。

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