長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第24回は、1台あれば何かと役に立つ便利家電「電気ケトル」の最新トレンドについて解説する。
「電気ケトル」という家電製品の歴史は案外新しい。2001年にティファールが日本国内で電気ケトルの販売を開始してからまだ22年ほどの歴史しかない。でありながらも、電気ケトルは日本のキッチンやリビングにおける定番の家電製品という地位をすでに築いているように思う。今やさまざまなメーカーが独自の特徴を盛り込んださまざまな電気ケトルを発売しており、市場は活性化している。
電気ケトルが登場する前の日本では、お湯を沸かす主役はやかん+ポットだった。しかし、やかんの場合、ガスコンロなど火を使うことが多く、お湯を沸かしている間、目を離せないというデメリットがあった。このデメリットを補完する存在として生まれたのが、「電気ポット」だ。電気ヒーターを内蔵したこのポットは、火を使わないのがメリットで、お湯を沸かした後もそのままの温度で保温できるため、1日のうちにお茶を何度も飲むような家庭では重宝されてきた。しかし、保温をし続けるとそれだけ電気代がかさむ。そのため、せっかくの保温機能があるのに、保温をオフにして使っている人も少なくないはずだ。
そうした状況下で登場したのが、電気ケトルである。電気ケトルには基本的に保温機能は搭載されないが(搭載モデルもある)、少量のお湯を素早く沸かすことができ、ヒーターの搭載される台座とケトル部を分けて使うことができるため、ケーブルなどがじゃまになることもなく、手軽に利用できるのがメリット。保温には向いていないが、使いたいと思ってから1〜2分で熱湯を利用できるため、さほどの時間的デメリットはない。むしろ電気代が安く済むため、電気ポットから電気ケトルへ乗り換える人も後を絶たない。最近では、保温機能を搭載したモデルや、コーヒーを淹れるのに特化したモデルなど、さまざまな用途別製品も多く出そろっており、バリエーションも豊富だ。
【図1】価格.com「電気ポット・電気ケトル」カテゴリーに掲載される製品種別割合(2023年9月時点)
図1は、価格.comの「電気ポット・電気ケトル」カテゴリーに掲載されている製品種別の割合を示したものだが、こちらを見ると、電気ケトルの割合が63.2%で全体の約3分の2を占めている状況だ。残る36.8%が電気ポットで、こちらも一定の割合で人気があることがわかるが、人気ランキングの上位の顔ぶれを見ると、ほとんど電気ケトルで占められており、電気ポットから電気ケトルへのシフトは鮮明だ。
【図2】価格.com「電気ポット・電気ケトル」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)
図2は、価格.com「電気ポット・電気ケトル」カテゴリーの過去2年間における閲覧者数推移を示したものだが、全体的にはほぼ横ばいで推移しており、需要は安定していることがわかる。需要期はやはり寒さが厳しくなる年末年始がピークで、どちらかと言えば、冬期に需要が伸びる製品と言える。
【図3】価格.com「電気ポット・電気ケトル」カテゴリーにおける主要4メーカー別の閲覧者数推移(過去2年)
人気をメーカー別で見ると(図3)、電気ケトルのパイオニアであるティファールと、長らく電気ポットを手掛けてきたタイガー魔法瓶が1位を争っている状態だ。この2社からわずかに離れて、こちらも長らく電気ポットを手掛けてきた象印が続き、最近では、コーヒーメーカーで知られるデロンギがこの3社にからんで、4強の一角をなしてきた。なお、タイガーと象印は電気ポットも多くラインアップしているメーカーなので、電気ケトルだけに特化して見ると、ティファールが今でもトップで、そのほかのメーカー間ではそれほど大きな差はないと見ていい。
【図4】価格.com「電気ポット・電気ケトル」カテゴリーにおける人気モデル上位5製品の閲覧者数推移(過去1年)
では、ここ1年で人気のモデルにはどんなものがあるだろうか。図4を見ると、ティファールの「ジャスティン プラス 1.2L KO490」と、タイガーの「5SAFE+ PCM-A081」の人気が特に高いことがわかる。「ジャスティン プラス 1.2L KO490」は、ティファールの大容量1.2Lタイプの中では軽量なベーシックモデルだが、3,000円台で購入できるハードルの低さと、すぐれたデザイン性などから人気があるロングセラー機だ。いっぽうタイガーの「5SAFE+ PCM-A081」は、タイガーならではの安全機能(「転倒お湯もれ防止」「給湯ロックボタン」など5種類の機能を搭載)が人気。4,000円台で購入できる価格の安さも魅力のひとつだ。
この2製品から少し離れて2位グループを形成しているのが、ティファールの容量0.8Lのベーシックモデル「アプレシア プラス 0.8L KO630」と、タイガーの上述「5SAFE+ PCM-A081」の兄貴分とも言うべき「6SAFE+ PCJ-A102」。さらに、バルミューダのコーヒーポット型ケトル「BALMUDA The Pot K07A」の3モデルが、比較的安定して2位グループを形成している。特に直近では、「BALMUDA The Pot K07A」の人気が上昇しており、上述の1位グループの製品の人気が下がってきたこともあって、相対的に目立ってきている。
人気ランキングの上位の顔ぶれを見ても、ティファールの比較的安いベーシックモデルが安定した人気を保っているいっぽう、タイガー、象印といった老舗の電気ポットメーカーが独自の安全機能で人気を獲得してきており、さらにバルミューダやデロンギなどの、デザイン性でアピールするメーカーも一定の支持を得ているという状態であることがわかる。
電気ケトルと言っても、今やさまざまな特徴を持った製品が顔を揃えているので、なかなか選ぶのが難しいが、特にこだわりがないのであれば、ティファールなどのベーシックモデルがコスパもよく、安心感も高いため、選ばれやすい。後は、使用用途によって、温度コントロールの付いた製品を選んだり、コーヒーポット型の製品を選んだり、デザイン性にすぐれた製品を選んだりといったように、それぞれの目的に合った製品を選ぶとよいだろう。
※最安価格とユーザー評価は、いずれも2023年10月18日 時点のものです。
価格.com最安価格:3,400円
発売日:2021年9月発売
ユーザー評価:★4.54(28人)
ティファールの大容量1.2Lモデルの中ではベーシックラインに当たる製品。カップ1杯(140ml)を約58秒で沸かせ、最大8名分まで一度に沸かせるため、家族で使うのにも最適な1台だ。握りやすいハンドル形状で、湯量は横の窓から確認可能。広い間口なのでお掃除も楽に行える。
価格.com最安価格:3,380円
発売日:2020年3月発売
ユーザー評価:★4.28(31人)
ティファールの電気ケトルのベースを担うベストセラーモデル。容量は0.8Lで、カップ1杯(140ml)を約53秒で沸かすことができる。湯量は横の窓から確認可能。ひとり暮らしなどに最適な手軽な製品だ。
価格.com最安価格:9,528円
発売日:2022年3月発売
ユーザー評価:★4.33(17人)
ティファールの高機能モデル。側面のデジタルディスプレイに湯温が大きく表示されるので、沸き上がりまでの時間が読みやすい。容量は1L。湯温は60・80・90・95・100度の5段階で設定でき、さまざまな用途に最適な温度でお湯を温められる。また、外はプラスチック、中はステンレスの2重構造になっているので、ボディが必要以上に熱くならず、安全に使うことができる。
価格.com最安価格:5,526円
発売日:2022年8月下旬発売
ユーザー評価:★5.00(4人)
電気ポットを長らく手掛けてきたタイガーならではの安全機能がいくつも搭載された電気ケトル。「転倒お湯もれ防止」「給湯ロックボタン」「本体二重構造」「カラだき防止」「通電自動オフ」「蒸気レス」といった6つの特徴があり、転倒したときにもお湯が漏れないほか、火傷などもしにくい構造になっている。容量は1Lで、カップ1杯約45秒のスピード沸騰が可能。ワンタッチでふたを簡単に取り外すことができ、お手入れも楽々行える。
価格.com最安価格:5,150円
発売日:2023年2月下旬発売
ユーザー評価:★5.00(1人)
こちらも電気ポットを長く手掛けてきた象印ならではの安全機能が満載の電気ケトル。「転倒お湯もれ防止」「自動電源オフ」「空だき防止」「蒸気セーブ構造」「本体二重構造」「給湯ロックボタン」と、上記「6SAFE+ PCJ-A102」とほぼ同等の内容になっている。このほか、ホコリの入りにくい「注ぎ口 ほこりブロック」を採用。ふたは外して内部を簡単に洗うこともできる。容量は1Lで沸騰スピードはカップ1杯約60秒。
価格.com最安価格:9,990円
発売日:2022年1月14日発売
ユーザー評価:★4.80(6人)
コーヒーポット型の注ぎ口を採用したバルミューダの電気ケトル。独自の注ぎ口で、ドリップコーヒーはゆっくり、カップ麺は素早くと、ストレスなく流速をコントロール可能。少量ずつお湯を注げるので、コーヒーや紅茶を淹れるのに適している。容量は0.6Lとやや少ないが、コーヒーや紅茶を片手で淹れるのに最適なバランスだ。沸騰スピードは、200mlで約1分半。「価格.comプロダクトアワード2022」で金賞を受賞。
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