何となく知ってはいるものの、実はよくわかっていない家電の機能はありませんか? この連載では家電ライター歴10年以上の筆者が実際に体験して「これはいい!」と思った、または興味を引かれた機能や構造を超簡単に説明。その機能や構造を搭載している製品も紹介するので、家電選びに役立つはずです。
今回は、三菱電機の冷蔵庫に搭載されている「切れちゃう瞬冷凍」を紹介します。
一般的な冷凍庫で冷凍した食材はカチコチに凍りますが、「切れちゃう瞬冷凍」で冷凍した食材はそこまで硬く凍りません。このため、凍ったままの食材を包丁などでサクッと切れます。
解凍しなくていいということは、うまみ成分や栄養素を含んだドリップの流出が抑えられ、おいしさをキープしたまま保存できるということ。上の動画は、「切れちゃう瞬冷凍」で冷凍した挽肉をカットしている様子ですが、ドリップはまったく出ていません。必要な分だけ切り分けて使えるので、小分けにしなくていいのも便利です。使わなかった分は、「瞬冷凍室」に戻せば、後日また同じように使えます。
パックのまま凍らせた肉や魚を簡単に剥がせ、通常の状態ではグニャグニャして切りにくい肉や魚介も薄くスライスしやすくなるのも「切れちゃう瞬冷凍」のメリット。カレーやソースなど液状の料理も、下の動画のように解凍せずに使う分だけスプーンで簡単にすくって取り出せるので、時間がある週末に下ごしらえをしておけば、忙しい日常の家事時短に役立ちます。
でも、「切れちゃう瞬冷凍」でできることって、他メーカーの冷蔵庫でもできたような……。そう! パナソニックの「微凍結パーシャル」、東芝の「氷結晶チルド」、日立の「特選氷温ルーム」など、他メーカーの冷蔵庫にも「カチコチに凍らせない」機能はあります。
ただし、他メーカーの「固く凍らせない」保存機能のほとんどは冷蔵室にある機能。下の図のようにチルド室の温度帯を切り替えるか、チルド室とは別に用意されたパーシャル室で、チルド室より低い温度だけれど、完全に凍らないギリギリの温度帯(約-3〜-1度)で冷却する「パーシャルフリージング」なのです。
フレンチドア・6ドアのレイアウトの一例。各部屋の温度帯はメーカーによって若干差があり、チルド室やパーシャル室、急冷凍室はメーカーや製品によって異なります
それに対し、「切れちゃう瞬冷凍」は冷凍室にある機能。製氷室の横にある専用の冷凍室「瞬冷凍室」で、約-7度で冷却します。一般的な冷蔵庫では「急冷凍室」などと呼ばれる、一気に冷やしたり、凍らせたり、熱々のものも凍らせられる部屋ですね。
冷凍機能で「カチコチに凍らせない」状態で保存できるのは、三菱電機の「切れちゃう瞬冷凍」だけ!
「切れちゃう瞬冷凍」は冷却温度が低いぶん、保存期間が長いのもメリット。たとえば、一般的な「凍らせない保存(パーシャルフリージング)」の場合、刺身の保存は1週間ほどですが、「切れちゃう瞬冷凍」は最大約3週間の保存が可能です。
-7度という温度帯なのにカチコチに凍らせないでおいしく保存できるのは、凍らせ方が違うから。「切れちゃう瞬冷凍」は、「過冷却」という現象を応用して冷凍しています。
物質をゆっくり静かに冷やしていくと、その物質の凝固点を過ぎても凍らないまま温度が低くなります。これが「過冷却状態」というもの。たとえば、水の場合、凝固点は0度なので、0度を下回ると固い氷になり始めますが、過冷却状態の水は-1度以下でもずっと液体のまま。ところが、面白いことに、この過冷却した水に衝撃を与えると一瞬にして水全体がシャーベットのように凍り付くのです。
イラストでは例として、床に当たった衝撃でシャーベット状に凍ると紹介していますが、「瞬冷凍室」ではこのような激しい衝撃は起こりません。過冷却状態になった食品に冷気を当てることで、過冷却状態を解除し、食品を一瞬で凍らせます
この「一瞬にして全体が凍る」ということが重要なポイント。一般的な冷凍の場合、食材が表面からじわじわと中心に向かって時間差で凍り付くため、食材の細胞が壊れて、肉なら解凍時にドリップが出たり、じゃがいもなら冷凍するとボソボソになったります。
いっぽう、過冷却させる「切れちゃう瞬冷凍」は、食材の表面から中心まで一気に均一に凍らせるため、食品の細胞破壊を抑えてうまみを閉じ込め、食感もそのまま維持することが可能。つまり、「切れちゃう瞬冷凍」は解凍せずにサクッと切れるだけでなく、おいしく冷凍できるのです。
よく「カレーにじゃがいもを入れたら冷凍してはいけない」などと言われますが、「切れちゃう瞬冷凍」ならそういったことも気にする必要がありません
ここまで「切れちゃう瞬冷凍」の特徴として紹介してきた、凍っているのにサクッと切れる、パリッと剥がせる、簡単にスプーンですくえるだけでなく、普通に冷凍するとくっついてしまう野菜も、「切れちゃう瞬冷凍」ならパラパラの状態で冷凍できます。
きのこやもやし、スライスしたたまねぎなども凍っているのにパラパラと取り出せるので、「切れちゃう瞬冷凍」しておけば、冷蔵庫で野菜を保存するよりも長く保存できるうえ、日々の調理の手間も減らせます
このほか、約80度の熱い食材の急冷にも対応しているので、ごはんを熱々のまま冷凍することができます。また、フルーツを冷凍すれば、シャリシャリのシャーベットになるのも「切れちゃう瞬冷凍」だからできること。工夫次第でさまざまな使い方ができる便利な機能です。
すでに三菱電機の冷蔵庫を使っている人にも役立つ、「切れちゃう瞬冷凍」の使い方をひとつ紹介します。
一度「切れちゃう瞬冷凍」で凍らせた食材は、通常の冷凍庫(約-18度)で冷凍してもおいしいまま保存できます。この場合、サクッと切れるやわらかさは失われてしまいますが、求めるのがおいしさだけなら「瞬冷凍で過冷却冷凍させて、その後広い冷凍室に移動させる」という使い方をすれば、もっとたくさんおいしい状態で冷凍保存できます。
「瞬冷凍室」の容量はそれほど大きくないので、冷凍室に移し替えてもおいしさや食感に変化が起きないのはうれしい!
そして、冷蔵室に「氷点下ストッカーD A.I.」機能を搭載した製品なら解凍も可能。「切れちゃう瞬冷凍」で冷凍した後、普通の冷凍室に移し替えた食品を「氷点下ストッカールーム」に入れて「氷点下解凍」に設定すれば、約90分で包丁などでサクッと切れる硬さまで解凍できます。なお、「D」が付いていない「氷点下ストッカー」には解凍機能は付いていません。
「氷点下ストッカーD A.I.」機能を備えた「氷点下ストッカールーム」は、チルド室の下に配置されています。チルド室よりも低温の約-3〜0度の温度帯で冷却する「氷点下ストッカールーム」では、冷凍せずに鮮度を保ちながら保存可能
現在、「切れちゃう瞬冷凍」機能は、AI制御を組み合わせた「切れちゃう瞬冷凍A.I.」として展開されています。従来モデルは食品を入れた後、パネル操作で「瞬冷凍」運転を始める必要がありましたが、AI機能を搭載した「切れちゃう瞬冷凍A.I.」は、AIがユーザーの行動を分析、学習するため、今後の使い方を予測して「瞬冷凍室」の扉の開閉に合わせて自動で「切れちゃう瞬冷凍」をスタート。いちいちボタン操作をしなくても、「切れちゃう瞬冷凍」で冷凍してくれます。
そんな「切れちゃう瞬冷凍A.I.」を搭載した冷蔵庫を紹介。2024年4月8日時点の最新モデルをピックアップしました。
【野菜室が真ん中タイプ】
「MR-MZ60K」(容量602L、本体幅685mm)、「MR-MZ54K」(容量540L、本体幅650mm)、「MR-MZ49K」(容量485L、本体幅650mm)、「MR-MD45K(右開き)」(容量451L、本体幅600mm)、「MR-MD45KL(左開き)」(容量451L、本体幅600mm)
【冷凍室が真ん中タイプ】
「MR-WZ61K」(容量608L、本体幅685mm)、「MR-WZ55K」(容量547L、本体幅650mm)、「MR-WZ50K」(容量495L、本体幅650mm)、「MR-WXD70K」(容量700L、本体幅800mm)、「MR-WXD47LK」(容量470L、本体幅650mm)、「MR-BD46K(右開き)」(容量455L、本体幅600mm)、「MR-BD46KL(左開き)」(容量455L、本体幅600mm)