長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第40回は、これから暑くなる夏にかけて買い替え需要が盛り上がる大型冷蔵庫について、その最新トレンドを解説する。
【図1】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移(過去2年)
図1は、過去2年間における、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移を示したもの。こちらを見ると、「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーが最も盛り上がる時期は、毎年夏の時期(6〜9月くらい)であることがわかる。次いで盛り上がるのは、年明け1〜3月くらいだが、こちらは春の新生活需要と見てよいだろう。
では、なぜ冷蔵庫は夏に売れるのか。答えはわりとシンプルで、長く使ってきた冷蔵庫がこの時期に不調になりやすいため。冷蔵庫は、コンプレッサー(圧縮機)を使って冷媒を圧縮し、その冷媒が膨張する際に冷気を発する(熱を奪う)という仕組みで動いている。これが、気温が上がってくる夏になると、コンプレッサーへの負荷が高まり、許容量を超えると壊れてしまうこともある。冬場よりも夏場に冷蔵庫が壊れやすいのは、こうした理由によるものだ。
そもそも、冷蔵庫という家電製品は、基本的にずっと稼働している働き者だ。それだけコンプレッサーにとっては、かなり過酷な状況が続いていると言ってよい。一般に、冷蔵庫の買い替え目安は10年と言われているが、これはコンプレッサーの耐久年数と考えてもよいだろう。もちろん、10年を超えて長く使い続けられる冷蔵庫も多くあるが、10年を超えてくると、徐々に冷却性能が弱まってくる。なんだか最近、冷蔵庫の冷えが悪くなった気がする。そのように気が付くのも、やはり気温が上がってくる夏場であることが多いはず。こうして、多くの人が夏場に冷蔵庫の買い替えを考えるようになるのだ。
そんな冷蔵庫だが、多くの製品が発売されるのは、意外にも冬場である。冷蔵庫が売れるハイシーズンは夏場だが、その半年くらい前には各社から新モデルが出そろっており、万全の体制で本格的な需要期を迎えるというわけだ。この時期は発売から半年程度は経っているため、最新モデルでも比較的価格が安くなっており、購入しやすいのも特徴だろう。
【図2】価格.comにおける冷蔵庫の庫内容量別人気シェア(2024年5月時点)
では、冷蔵庫の人気サイズはどのあたりになっているのだろうか。図2は、2024年5月時点の価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品の庫内容量別のシェアを示したものだが、これを見ると、やはり400Lを超えるファミリー向けの大型冷蔵庫のシェアが高いことがわかる。特に「400〜500L」というゾーンが22.8%と最大で、続いて「500〜600L」が16.25%、「300〜400L」が15.51%となっており、この3つのゾーンを合わせると、全体の半数以上を占める。
ざっくり言うと「庫内容量500L前後」が、冷蔵庫の人気のサイズということができるが、ここ数年の動きを見ていると、容量500L以上のモデルよりも、最近はむしろ容量500L未満のモデルのほうが人気が高まっている感が強い。これには、いくつか理由があるが、ひとつには、近の新築マンションではキッチンが全体的に狭くなってきており、最冷蔵庫の設置スペースも限られてしまっていることがある。そのため、各メーカーとも、幅60cmや幅65cmというサイズを超えることなく、この幅に置ける範囲で断熱材などのさまざまな工夫を行いながら、庫内アップを図っているという実情がある。
もうひとつは、冷蔵庫自体の価格が近年上昇傾向にあることだ。少し前までは、庫内容量500Lを超える製品でも、型落ちモデルになってくれば17万〜18万円台くらいで購入できるものが多かったが、最近ではかなり厳しくなっており、型落ちモデルでも20万円を超えるケースがざらに出てきた。
【図3】パナソニック「NR-F518MEX」(2022年2月発売)と「NR-F519MEX」(2023年2月発売)の最安価格比較
図3は、前後モデルとなる、パナソニック「NR-F518MEX」(2022年2月発売)と「NR-F519MEX」(2023年2月発売)の最安価格を比較したものだが、2022年に発売された「NR-F518MEX」が比較的早めに価格が下がってきているのに対して、2023年に発売された「NR-F519MEX」はなかなか価格が下がりづらく、長い期間にわたって25万円以上の販売価格を維持してきた。これは一例でしかないが、メーカーやモデルによっては、このように冷蔵庫の販売価格がなかなか下がりづらくなっているものもあり、予算に合わせるためにサイズダウンするというケースも増えているようだ。
いずれにしても、今、そこそこ大型で機能・性能の高めな冷蔵庫を買おうとすると、意外に高いと思う人が多いのではないだろうか。狙い目としては、庫内容量500L前後で20万円以下の製品ということになるが、探せばまだ18万円以下くらいで購入できるモデルも存在する。少しでも節約しようと考えている人は、ぜひ本記事を参考に、お買い得モデルを選んでいただきたい。
【図4】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける主要5メーカーの閲覧者数推移(過去1年)
図4は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける主要5メーカーの閲覧者数推移(過去1年間)を示したもの。これを見ると、三菱電機が圧倒的な人気で他メーカーの追随を許さない状況が続いていることがわかる。三菱電機の製品がここまで圧倒的な人気を誇る理由はいくつか考えられるが、(1)基本性能がしっかりしている、(2)省エネ性にすぐれている、(3)使い勝手やデザインがいい、(4)比較的安い、という4つの要素が高い次元でバランスしていることがその主な理由だろう。
【図5】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける人気冷蔵庫(容量300L以上)5モデルの閲覧者数推移(過去1年)
図5は、価格.com上で人気の大型冷蔵庫(容量300L以上)5モデルの閲覧者数推移を示したものだが、こちらはすべて三菱電機の製品で占められている。人気の中心は、容量500L前後の「中だけひろびろ大容量」シリーズ。シリーズ名からもわかるように、横幅を65cm程度に抑えつつ、内部の容量は470〜550Lと十分な広さを確保している。さまざまなバリエーションモデルが用意されており、販売価格の安さもあって、冷凍庫重視の「WZシリーズ」、野菜室重視の「MZシリーズ」とも一定の人気だ。さらにその下のグレードである「置けるスマート大容量」シリーズも、コスパの高さから高い人気を得ている。
2位以下のメーカーを見ると、1年前は東芝、パナソニック、日立の3社が熾烈な2位争いを演じていたが、今年年明けくらいからパナソニックがやや抜け出ている。ただし、こちらのパナソニックの人気上昇は、主に容量200L以下の小型冷蔵庫(NR-B18C1、NR-B16C1)の人気によるもので(こちらの記事も参照)、大型冷蔵庫に関しては、それほどの人気とはなっていない。実際、パナソニックは小型冷蔵庫が売れる春先を境にやや数を落としており、その代わりに東芝が上昇してきて、この2社がほぼ同率で2位争いをしている状況だ。なお、昨年2位争いに入っていた日立は、三菱電機、パナソニックの2社にはやや差を付けられる形で、現在はシャープとともに4位を争っている。
【図6】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける上位4社の人気冷蔵庫(容量300L以上)5モデルの閲覧者数推移(過去1年)
【図7】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける上位4社の人気冷蔵庫(容量300L以上)5モデルの最安価格推移(過去1年)
図6は、断トツ人気の三菱電機をはじめ、東芝、パナソニック、日立の3社を加えた4社の人気モデル(容量300L以上)の閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、昨年から今年の春先にかけては、パナソニック「NR-F509EX」の人気が高かったが、今年の4月以降、急激に人気が下がっており、人気が上がってきた三菱電機の2モデルに首位の座を譲り渡した形となっている。
この理由だが、図7の最安価格推移を見るとわかる。パナソニック「NR-F509EX」の最安価格は、同クラスの製品の中では飛び抜けて安かったため、人気が高かったが、4月以降、むしろ高値に転じて、ほかのモデルとほぼ変わらない価格水準になってしまったため、人気が急激に下がっていったものだ。それまでやや高めだった、東芝「VEGETA GR-W470GZ」や日立「R-HWS47T」の人気が4月以降に高まってきているのも、やはり最安価格の動きと大きく関係していそうだ。
以上のことをまとめると、容量500L前後の大型冷蔵庫は、17万〜20万円くらいのレンジが最も人気だが、同じくらいの価格であれば、さまざまな長所があり、ブランディングもしっかりしている三菱電機の製品を選ぶ人が多いということだ。しかも、三菱電機の冷蔵庫は、他社製品より価格面で割安と感じられることも多いため、他社にとっては、なかなかこの牙城を崩すのは難しい状況と言えそうだ。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年6月18日 時点のものです。
価格.com最安価格:177,480円
発売日:2023年3月10日発売
ユーザー満足度・評価:★5.00(3人)
庫内容量:495L
三菱電機の主力シリーズ「中だけひろびろ大容量」、そのうち、冷凍庫を真ん中に設置したタイプが「WZシリーズ」だ。シリーズ名称にもあるように、独自の薄型断熱材を使用することなどで、幅65cm、奥行き65cmという設置スペースはそのままに庫内容量を広く取っているのが特徴。冷蔵室は棚の高さやドアポケットの仕切りを自由にカスタマイズでき、使い勝手もいい。同社独自の冷凍・チルド機能「切れちゃう瞬冷凍A.I.」や「氷点下ストッカーD A.I.」は多くのユーザーに好評で、肉や魚の鮮度を保ちつつ冷凍保存できる。また、AIが家庭ごとの生活パターンを学習して、部屋別に最適な運転を実施する「全室独立おまかせA.I.」機能を装備し、賢く節電してくれるため、消費電力も抑えられている。
価格.com最安価格:144,900円
発売日:2023年3月10日発売
ユーザー満足度・評価★4.89(5人)
庫内容量:455L
上記「中だけひろびろ大容量」の下位シリーズ。本モデルは幅60cm、奥行き69.9cmの設置スペースで455Lの大容量を実現しており、冷蔵庫置き場の幅が狭めのキッチンなどにちょうどいいサイズ感だ。下位シリーズとはいえ、上位シリーズとほぼ同等の機能性を備えているのもポイント。「切れちゃう瞬冷凍A.I.」や「氷点下ストッカーD A.I.」「全室独立おまかせA.I.」といった人気機能はしっかり搭載しており、なおかつ価格も安めなことから、価格.com上でも人気が高い。
価格.com最安価格:171,773円
発売日:2023年3月10日発売
★4.00(1人)
ユーザー満足度・評価:庫内容量:465L
野菜の鮮度にこだわった東芝「VEGETA」の5ドアモデル。本モデルは幅60cm、奥行き70.4cmの設置スペースで465Lの大容量を実現している。最大の特徴でもある「もっと潤う 摘みたて野菜室」は、冷蔵室のすぐ下の真ん中に位置しており、取り出しやすい。搭載されるミストチャージユニットによる「うるおい冷気」で約10日間は野菜の鮮度をキープできるだけでなく、使いかけの野菜もラップなしで保存できる「使い切り野菜BOX」を備えるなど、野菜の鮮度にこだわる人に向いた仕様となっている。もちろん、冷蔵室も全体をチルドルームとして使用できる「うるおい冷蔵室」を採用していたり、肉や魚の鮮度を維持しながら冷凍保存できる「氷結晶チルド」や「おいしさ密封急冷凍」など、トレンドとなる機能はすべて押さえられている。
価格.com最安価格:171,777円
発売日:2023年5月上旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.39(14人)
庫内容量:501L
パナソニックの冷蔵庫のラインアップでは、比較的価格の抑えられた「EXシリーズ」の500Lモデル。比較的価格が高めな同社製品の中では、リーズナブルに購入できる製品だ。横幅65cm、奥行き69.9cmの設置面積で501Lの大容量を実現。上位シリーズとの機能差はあるものの、「微凍結パーシャル」や「新鮮凍結」「シャキシャキ野菜室」などの人気機能は搭載し、必要十分な性能を持つ。また、冷蔵庫内に「ナノイーX」を充満させることで除菌を行う「全室ナノイーX」機能も搭載。コンプレッサーを上部奥に設置するトップユニット方式を採用し、いちばん下の野菜室が奥まで広く使えるのもメリットだ。
価格.com最安価格:183,800円
発売日:2023年2月上旬発売
ユーザー満足度・評価:★4.00(5人)
庫内容量:485L
日立の冷蔵庫のラインアップでは、中級に位置づけられる「HWCシリーズ」の485Lモデル。日立の冷蔵庫も比較的価格が高めで推移しているが、本モデルは比較的リーズナブルに買えるお買い得モデルとなっている。幅65cm、奥行き65cmの設置面積ながら、天井まで薄型化することで、全体で485Lの大容量を実現。冷蔵庫全体をチルドルームとして使える「まるごとチルド」機能を搭載するほか、魚や肉の鮮度を保ちつつ保存する「特鮮氷温ルーム」や「クイック冷却」、野菜のみずみずしさが長持ちする「新鮮スリープ野菜室」などを搭載し、機能性は十分だ。また、冷凍室には、3段トレイで使いやすく整理できる「らくうま!ひろin冷凍」を採用。なかでも1段目トレイはアルミトレイで、小分けにしたご飯や肉・魚などを急速冷凍するのに向いている。
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