パナソニックから登場した業界最小のホームベーカリー「SD-CB1」。ホームベーカリーを使ったことがない人にも焼きたてのパンを食べてもらいたいという思いから、キッチンに常設しやすい本体サイズと食べきりやすいパンのサイズ、そして、市場想定価格22,000円前後(税込)という購入しやすい価格を実現しました。
もちろん、単純に小型化しただけではありません。約0.6斤サイズのおいしいパンが焼けるように、新しいプログラムを採用。「SD-CB1」に込められたこだわりを紹介します。
パンの大きさ(容量)を小さくすれば、簡単に本体サイズを小さくできるのでは? と思うかもしれませんが、2〜3人で食べきれるくらいのパンが焼ける容量を確保しながら、本体外側が熱くなりすぎないように遮熱板を配置するなどの安全性を担保し、それでいてキッチンに常設しやすいサイズまで小型化するのはそう容易ではなかったそう。内部部品の形状を変更するなどさまざまな工夫を施すことで、0.6斤のパンが焼けるA4サイズのスペースに設置できるホームベーカリーが誕生しました。
約2年の開発期間を経て完成した「SD-CB1」。設置面積だけでなく、高さを抑えたのもポイントです。本体サイズは188(幅)×285(奧行)×243(高さ)mm。幅が狭いカップボードにも、オーブンレンジや電子レンジなどと並べて置けます
容量を確保しつつ本体をコンパクトにするため、操作面の基板を小型化し、モーターを平らで小型なタイプを採用。シャーシもコの字型から平板型に変え、脚の仕様も変更しています
本体サイズを抑えるため、液晶や操作部もコンパクトに
そして、既存モデルと大きく異なるのが、パナソニックのホームベーカリーの代表的な機能「イースト自動投入」を搭載していないこと。最適なタイミングでパンケースにイーストを自動投入する機能ですが、パンケースとふたの間に「イースト容器」や投入のための機構が必要で、この機能を搭載するとどうしても本体が理想とするサイズに収まらなかったのと、価格を抑えるため、搭載しない構造を採用したそうです。
高さを気にしなければ「イースト自動投入」機能を搭載できますが、カップボードに設置したときに焼き上がったパンが見やすい高さとして250mm以下という目標値を設定していたため、途中から「イースト自動投入」機能は搭載しない方向に切り替えたそう
「イースト自動投入」機能を搭載した既存モデル。上位機種には自動で具材を投入する「レーズン・ナッツ自動投入」機能も搭載(イースト容器の左にある部分)されています。自動投入するイーストやレーズン・ナッツを入れる容器は、パンケースの上にあるふたに配置。つまり、ふたが2つある構造です
自動投入機能を搭載しない「SD-CB1」は、ふたを開ければパンケースが現れます
1斤のパンが焼ける既存モデル「ビストロ SD-MDX4」と並べると、「SD-CB1」の小ささがわかります
「イースト自動投入」機能は、利便性を高めることを目的とした機能ではありません。ホームベーカリーでのパン作りは、パンケースに材料入れ、それらを羽根でかき混ぜて生地をこねる「ねり」工程からスタートします。「イースト自動投入」機能がないホームベーカリーの場合、パンケースに水を入れてから小麦粉や砂糖、バターなどの材料を投入。そして、材料の中央に凹みを作り、そこにイーストを入れます。
一般的なホームベーカリーで食パンを焼く準備段階の様子。材料の中央にある茶色い粉がイーストです
イーストは水に触れると発酵が進み、パンの膨らみが不足するなど仕上がりに影響するため、材料を練り込む前にイーストが水に触れないようにすることが重要。「イースト自動投入」機能があれば、そうした事態を防げます。
パンケースに入れた材料の中央に凹みを作る手間がないのも「イースト自動投入」機能のメリット
「イースト自動投入」機能を搭載したパナソニックのホームベーカリーは、「ねり」工程で材料を混ぜて生地をこね、次の「ねかし」工程が終わったタイミングでイーストを投入します。その後、再度「ねり」工程を行い、「発酵」→「焼き」と進行。最適なタイミングでイーストが投入されるだけでなく、室温の変化に合わせて「ねかし」時間も調節されるので安定した仕上がりが期待できます。
では、「イースト自動投入」機能を搭載していない「SD-CB1」は、“おいしさ”を妥協したのかというと、そうではありません。一般的なホームベーカリーと同じように、パンケースにイーストも入れる作り方ですが、「ねかし」工程からスタートする新しいプログラム「改良ストレート法」を採用することで、イーストの自動投入がなくても安定した焼き上げを実現しました。
そのベースとなったのが、多くのパン屋が使用している「ストレート法」という製法。最初からイーストを含む粉をすべて混ぜてこねる「ねり」からスタートする作り方ですが、この製法で安定して焼き上げるには、生地の温度に合わせて水温を変えたり、発酵時間を調整したりするプロの経験値が必要です。そこで、ストレート法をベースに、ホームベーカリーで作るのに最適な「改良ストレート法」を開発。最初に「ねかし」工程を入れ、粉と水を触れさせることで生地の伸展性を向上させ、さらに「ねかし」工程の時間を変えて、室温変動時に発酵時間を調節します。もちろん、室温センサーと庫内温度センサーを使い、室温に合わせて各工程の時間を調整する機能も搭載。
「ねり」工程では、既存モデルと同じ「3D匠ねり」で立体的に生地をこねます。羽根を回転せる際に、パンケース内側に設けられた突起(リブ)に生地が引っ掛かり、手でこねたような「ひっぱり」を再現。さらに、生地を上下前後に回転させ、「伸ばす」「たたく」といったこね方と組み合わせることで、伸びのいい生地に仕上げます
なお、「改良ストレート法」では早いタイミングでイーストが水に触れないように、パンケースに入れる順番が、ドライイースト→強力粉→砂糖・塩などの材料の後に水を入れると指定されています。イーストが水に触れるタイミングを遅くすることが目的であれば、一般的なホームベーカリーのように水→粉の順で投入し、粉の上に凹みを作ってイーストを入れる方法でもいいのでは? と疑問に思ったのでメーカーの担当者に聞いてみたところ、ねり始めにパンケースの外に粉が飛び出す可能性があるため、「改良ストレート法」では粉→水の順にしたそう。
パン作りは、材料の分量を正確に計量することも重要です。デジタルスケールを使って量るのが基本ですが、粉の計量は結構面倒。そうしたわずらわしさを軽減するため、「SD-CB1」には小麦粉を計量できる「粉計量カップ」を同梱しています。「SD-CB1」の購入者は、初めてホームベーカリーを使うという人も多いだろうと考慮してのことでもあるそう。既存モデル同様にドライイーストや塩、砂糖、スキムミルクなどを計量する「スプーン」も付いています。
粉は周囲に飛び散りやすいので、デジタルスケールを使わずに付属の「粉計量カップ」と「スプーン」で計量できるのは便利。バターはg表記で必要な量が記されていますが、取扱説明書に目安のサイズが記載されているのでデジタルスケールなしでも作れます
なお、「食パンミックス SD-MIX100A」「食パン早焼きコース用 SD-MIX105A」「食パンミックススイート SD-MIX30A」「食パンスイート早焼きコース用 SD-MIX35A」といったパンミックスにも対応。これらは1斤用なので、パンミックスと水を半分の量でセットすれば、「SD-CB1」で使えます。
「SD-CB1」はコンパクトですが、「高加水パン」「ガトーショコラ」「米粉パン生地」「ベイク(ケーキを焼けるコース)といった新メニューを始め、20メニュー・30種類を搭載。具入りパンやうずまきパン、ピザ生地、生チョコレート、ジャムなども作れます。
水分を多く含む「高加水パン」は表面がこんがり、中がもっちり&しっとりとしたパン。最近人気が高まっているパンが家で作れます
ただし、上位モデルに搭載されている「パン・ド・ミ」メニューは非搭載。「パン・ド・ミ」は普通の食パンよりも少ない量のイーストで長時間発酵させて作るため、クラスト(パンの耳の部分)が薄く、小麦の風味が引き立つのが特徴です。「パン・ド・ミ」しか作らないという人も多い人気メニューなので、このメニューがない「SD-CB1」ってどうなの? と思っていたのですが、「SD-CB1」で作った普通の食パン「デイリーパン」を試食して気持ちが変わりました。これはこれでありかも! というくらいおいしい。パナソニックのホームベーカリーらしく、しっかり窯伸びしており、焼き色も完璧です。
「SD-CB1」の「デイリーパン」メニューで作った食パン。約0.6斤は小さく見えますが、5枚切り食パンの3枚分なので2〜3人にちょうどよさそう
「パン・ド・ミ」と比べるとクラストは厚いですが、なぜか食べやすい。カリカリで香ばしく、厚みがあるのだけれど歯切れがよくて最高においしい。クラム(パンの白い部分)はしっとりとしており、甘みを感じます
また、「デイリーパン」は約3時間で焼き上がる早さも魅力。既存モデルの食パンは約4時間なので、「SD-CB1」は待ち時間が短くて済みます。もちろん、指定した時間に焼き上げる予約機能を使えば、寝る前にセットして、朝、焼きたてのパンを食べることも可能。