パナソニックのビルトインIHクッキングヒーターに、新しい加熱方式を採用した最上位モデル「Sシリーズ」が登場。従来のIHクッキングヒーターでは難しかった縦長の鍋や大きなフライパンなどが利用しやすくなったほか、焼き物や煮物がさらにおいしく見た目もよく仕上げられるようになりました。
幅75cmの「KZ-S1F7」と幅60cmの「KZ-S1F6」の2モデルを用意。いずれもジェットブラックとシルバーの2カラーがあります。メーカー希望小売価格は「KZ-S1F7」が660,000円(税込)、「KZ-S1F6」が638,000円(税込)
IHクッキングヒーターはトッププレート(ガラス製)の下にぐるぐるに巻いたコイルを配置しており、そのコイルから発生した磁力線が鍋やフライパンの金属を通過することで発熱します。
3口タイプの従来モデル。後ろIH(中央奥)は手前にある左右IHより直径が小さいため、写真のコイルとは異なりますが、3口タイプの場合、このようなIHヒーターが3つ搭載されています
一般的なコイルは上の写真のような円状に巻かれたものですが、今回新たに登場した「Sシリーズ」は、左右それぞれに、三角形の「ピースコイル」を10個組み合わせたコイルを採用。トッププレートの奥側にもピースコイルを配置することで加熱エリアが約1.7倍拡大し、オーバル型や縦長の鍋、大きなフライパンも鍋底全体を均一に加熱できるようになりました。
「Sシリーズ」も3つ口タイプですが、左右IHの形状が通常のものとは異なります。6個のピースコイルを組み合わせて円状にし、さらにその奥に4つのピースコイルを配置して加熱エリアを広げました
ちなみに、左右IHの加熱エリアが広くなったぶん、中央奥にある後ろIHは従来モデルより幅が少し狭くなっています。
加熱エリアが拡大しただけでなく、加熱方式も一新されました。一般的なIHコイルはコイル全体に電流を流しますが、ピースコイルは各ピースコイルに流す電流を制御し、加熱位置を切り替えることが可能。手前側だけ、奥側だけ、手前から奥まで全体と加熱エリアを選べます。
大きなフライパンや縦長の鍋を使うときは10個のピースコイルに電流を流す「全体エリア」で加熱し、油はねが激しそうな調理の際には奥側の6個のピースコイルに電流を流す「奥エリア」で加熱するというように、使用する調理器具の形状や用途に合わせて3つの加熱エリアを切り替えて便利に調理できます
「奥エリア」でフライパンを使えば、トッププレートから取っ手が飛びでない状態で使用可能。「全体エリア」時には最大底面28×33cmの鍋が使えます
大きな鍋が使いやすくなっただけでなく、底径10cm以上の小さな鍋などにも対応したのもポイント。家庭用IHクッキングヒーターのほとんどは底径12cm未満の鍋に対応していません
赤く光るラインで加熱エリアを示してくれるので、わかりやすさもバッチリ!
さらに、ピースコイルは磁束を集中させる部分を中央と外側に分けて制御可能。各ピースコイルの中央部分に磁束を集中させれば鍋の中央を集中的に加熱でき、外側部分に磁束を集中させれば鍋の外側を集中的に加熱できますが、それだけではなく、加熱パターンを組み合わせることで最適な加熱を実現します。
主に6つの加熱パターンを切り替え、鍋や調理状態に合わせた最適な加熱を実行
この加熱制御を実現したことで、焼き物と煮物の仕上がりが向上。たとえば、メニューに合わせたプログラムで調理をサポートする「焼き物アシスト」では、焼きムラを抑え、大きなフライパンで調理しても中央から外側まで均一に焼き上げられるようになりました。通常「加熱」時の火力7以下での焼き物調理や、設定した温度をキープする「焼き物温度調節」でもこの加熱制御が使われます。
「焼き物アシスト」とは温度や時間が自動で設定されるほか、予熱完了や食材を入れる・裏返すなど手を加えるタイミングをお知らせしてくれる機能。ホットケーキ、ハンバーグ、冷凍ぎょうざ、お好み焼き、フレンチトーストなど10メニューが用意されています。基本的な操作方法は従来モデルと同じですが、中央加熱と外側加熱を切り替えて焼くことで仕上がりが大きく向上しました
そして、煮物調理では中央加熱で外に向かう対流、外側加熱で内側に向かう対流が発生します(下の動画参照)。
中央加熱と外側加熱のパターンを次々に切り替えて煮汁を対流させながら煮込む「対流加熱」により、味が均一に染み込みやすくなるそう。また、鍋をかき混ぜるような状態が作り出されるため、ひんぱんにかき混ぜる必要がありません。
加熱位置を常に移動させて集中させないことで鍋底の焦げ付きを軽減
この加熱制御は、通常「加熱」時の火力3以下での煮物調理のほか、新たに搭載された「煮込みアシスト」で作動します。「煮込みアシスト」は、「焼き物アシスト」と同じく調理をサポートする機能。メニューに合わせて火力や時間が自動設定され、食材を入れる・裏返すなどのタイミングをお知らせしてくれます。「煮込みアシスト」では牛乳やルウを入れた調理でも、沸騰〜煮込み工程で鍋の中をかき混ぜ不要で上手に仕上がるそう。
「煮込みアシスト」には肉じゃが、カレー、さばのみそ煮、アクアパッツアなど10メニューを用意
メニュー画面で「煮込みアシスト」を選択後、メニューを選んで加熱を始めれば、後はIHクッキングヒーターが火力や温度、時間を自動調節して仕上げてくれます
肉じゃがを普通に作る場合、食材を炒めた後、調味料を加えて煮立たせたら火を弱めて落としぶたをして煮込みますが、「煮込みアシスト」を使えば、食材を入れて落としぶたをし、メニューを選んでスタートボタンを押すだけと、手間が大幅に軽減されます
なお、対流加熱による火加減不要での煮物調理を実現するため、従来モデルにも搭載されている「光火力センサー」に加え、「光火力センサー+(プラス)」が追加されました。赤外線センサーで鍋底温度をセンシングする仕組みは同じですが、検知できる温度が「光火力センサー」が150度弱以上なのに対し、「光火力センサー+」は約70度以上と、沸騰温度域の検知が可能に。この2種類のセンサーを使って鍋底温度をセンシングし、必要なタイミングで素早く火力を調節してくれます。
鍋底の温度を検知する2種類のセンサーを搭載
煮物調理や自動湯沸かし時には、約70度から鍋底温度を検知する「光火力センサー+」を使用
一般的なIHクッキングヒーターで採用されていることの多い「サーミスターセンサー」と「光火力センサー+」の温度検知の速度を比較。「光火力センサー+」は沸騰と同時に100度と表示されたのに対し、「サーミスターセンサー」が100度と検知(表示)するまでには沸騰してから数分かかりました。検知が遅ければ噴きこぼれる可能性があることがわかります
揚げ物調理には、温度を設定すると予熱を始め、予熱が完了するとお知らせし、揚げている途中も設定温度をキープする制御プログラムが用意されています。「Sシリーズ」は、そのプログラムでの最大火力を2.0kWにアップすることで、食材を入れた後の素早い温度復帰を実現。調理時間が短くなったうえ、もっとカラッと揚げられるようになりました。
パナソニックのビルトインIHクッキングヒーターは、元々、機能性の高さやお手入れのしやすさで人気ですが、今回、新しい加熱方式を採用することで、使用できる鍋の大きさや形状のバリエーションが広がり、さらに使い勝手が向上しました。なかでも、「煮物調理時にずっと鍋をかき混ぜる必要がない」という新機能は非常に便利。新築時やキッチンリフォーム時には、ぜひ一度チェックしてほしい製品です。
新機能ではありませんが、庫内が全面フラットで、焼き網を使わずに専用のグリル皿を使う清掃性にすぐれた「ラクッキンググリル」も搭載。時間や温度を自動設定して焼き上げる自動調理には、冷凍保存した食材を解凍せずにそのまま焼き上げる「凍ったままIHグリル」対応のメニューも用意されています