シャープの水なし自動調理鍋「ヘルシオ ホットクック」(以下、「ホットクック」)に、自動かき混ぜ機能の代わりに「まぜナビ」というアシスト機能を搭載した新ライン「withシリーズ」が登場。1.6Lタイプの「KN-MN16H」1機種がラインアップされており、市場想定価格は39,000円前後(税込)。既存の1.6Lタイプ「KN-HW16H」の発売当初の価格が66,000円前後(税込)だったので、「withシリーズ」は価格を抑えたエントリーモデルだと言えます。
ただ、自動かき混ぜ機能がないのに選ぶ価値があるのか、正直悩ましい……。新機能「まぜナビ」も気になるので、2024年11月21日発売予定の「KN-MN16H」を借りてどのようなものなのか確かめてみました。
「そもそも自動かき混ぜ機能を搭載していないのに「ホットクック」と言えるのか?」と思う人もいるかもしれませんが、「ホットクック」は無水調理できる自動調理鍋として誕生しました。いまでこそ他メーカーにもありますが、2015年に登場したホットクック「KN-HT99A」が業界初の無水調理に対応した自動調理鍋。なので、自動かき混ぜ機能がなくても「withシリーズ」は「ホットクック」なのです。
「ホットクック」は水なし自動調理鍋。「ホットクック=自動かき混ぜ機能」が定着していますが、無水調理を“おまかせ”できる電気調理鍋であることが「ホットクック」のベースです
ただ、「ホットクック」は初代モデルから自動かき混ぜ機能を搭載しており、この機能があるから選ばれているのも事実。温度センサーと蒸気センサーで鍋の中の温度や食材から出る蒸気をチェックして加熱を調整するとともに、必要なタイミングで「まぜ技ユニット」が稼働し、鍋の中をかき混ぜることで食材の焦げ付きや味の染み込みムラを抑えるのが「ホットクック」の調理の特徴です。さらに2.4Lタイプと1.6Lタイプは、2021年発売モデルから食材をつぶす、泡立てるといった調理もできるようになり、2024年に発売された「proシリーズ」ではかき混ぜる能力が向上し、調理時間の短縮を実現しました。このように、自動かき混ぜ機能は料理の仕上がりや手間削減などに関係する重要な機能です。
2.4Lタイプと1.6Lタイプはかき混ぜるタイミングで「まぜ技ユニット」のアームが開き、食材の状態に合わせて回転の速度や角度など、かき混ぜ具合を制御します
そんな「ホットクック」の強みと言える自動かき混ぜ機能が「withシリーズ」には搭載されていません。
「withシリーズ」のふたを開けた様子。「まぜ技ユニット」を装着する機構はなく、内ぶたが装着されているのみ
自動かき混ぜ機能を搭載した既存の「ホットクック」には「まぜ技ユニット」を装着する軸があるので、「withシリーズ」は完全に「まぜ技ユニット」が付けられない仕様だとわかります
その代わりに「withシリーズ」に搭載されたのが「まぜナビ」機能。かき混ぜが必要なタイミングを音とメッセージで知らせるとともに、混ぜ方をアドバイスします。その案内に従い、人の手でかき混ぜを実行。「ホットクック」と人との共同作業でおいしく仕上げるというわけです。なお、この機能が作動するのは、自動調理メニューでのみ。「まぜナビ」に対応する自動調理メニューでもかき混ぜずに仕上げることも可能ですが、かき混ぜたときと仕上がりは異なるそう。
既存の「ホットクック」は天面に操作部や液晶画面がありましたが、「withシリーズ」はふたを開けても表示されている内容が見やすいように本体前面に配置
自動調理の「まぜナビメニュー」使用時に「まぜナビ」が作動します
調理の途中で「まぜナビ」がかき混ぜるタイミングをお知らせ。ふたを開けて食材をかき混ぜたらふたを閉め、再スタートしたら再度加熱が始まります。ただかき混ぜるタイミングを知らせるだけでなく、どのような混ぜ方をしたらいいかアドバイスしてくれるのもポイント
「まぜナビ」がかき混ぜるタイミングや混ぜ方を教えてくれることはわかったので、とりあえず、「まぜナビ」に対応する料理を作ってみます。
「まぜナビ」に対応するメニューは30メニュー内蔵されています
筆者は、自動かき混ぜ機能を搭載した「ホットクック」を何度も使ったことがあります。その際に作った自動調理メニューの中でいちばん気に入った無水カレーを最初に試してみたい! 準備は既存の「ホットクック」と同じ。内鍋に材料とルウ入れて「ホットクック」にセットし、「まぜナビメニュー」の「無水」を選んでスタートボタンを押したら調理が始まります。
最初からルウを入れるのが「ホットクック」での無水カレーの作り方。付属レシピには鶏手羽元を使うと記されていましたが骨付きは食べづらいので、筆者はいつも鶏もも肉にチェンジしています
メニュー番号ではなく料理名が表示されるので、レシピ集をチェックする手間はなし!
メニューを選ぶと、「まぜナビ」調理か普通の調理かを選択する画面に切り替わります。「まぜナビ」に対応したメニューは途中で混ぜるか、混ぜないで完成させるかを選ぶことが可能
既存の「ホットクック」なら自動でかき混ぜてくれるので完成までほったらかしでいいのですが、「withシリーズ」は途中でかき混ぜる作業が発生するため、待ちの状態。ずっと「ホットクック」の近くにいなければならないのはしんどいな……と思っていたら、調理の途中で「まぜナビ」キーを押せば、かき混ぜる時間を確認できる機能が用意されていました。これなら、つきっきりにならずに済みます。
調理開始早々に「まぜナビ」キーを押してみたら、かき混ぜるタイミングは約1時間後であることがわかりました。1時間あれば、ちょっと買い物に行っても大丈夫ですね
約1時間後、「ピーピー」というアラーム音が! 既存の「ホットクック」のように会話する機能は搭載されていないので、「withシリーズ」は通知音でのお知らせとなります。そして、液晶画面には「ルウが全体になじむようにしっかり混ぜてください」と、混ぜ方のアドバイスが表示されました
ふたを開けると、当然ですが混ざってない! 溶け残ったルウとカレーの色が付いていない鶏肉があります
アドバイスどおりに食材をかき混ぜます。浸ってなかった鶏肉も底に沈めました
かき混ぜが終わったらふたを閉めて、スタートボタンを押すと調理が再開されます
無水カレーが完成
自動かき混ぜ機能を搭載した「ホットクック」で作ったときと遜色ない完成度。途中まで白いままだった鶏肉がありましたが、味の染み込みが物足りないものはまったくありませんでした
途中でかき混ぜたほうがおいしく仕上がる「まぜナビ」対応メニューをかき混ぜないで調理したらどうなるのかも気になるので、無水カレーを「まぜナビ」を使わずに作ってみました。「チキンと野菜のカレー(無水カレー)」メニューは予約調理に対応しているので、できあがり時間を設定してほったらかしで作る予約調理で作ります。
4時間後の18時50分にできあがるように予約を設定。最大15時間先まで予約できます
なお、「ホットクック」の予約調理は予約を設定してすぐに加熱がスタートし、食材が腐敗しにくい温度でキープされるので安心。これは既存モデルも同じです
予約した調理ができあがりました。予約調理は調理が終わると保温に切り替わるので、外出先からの帰宅が遅れても問題ありません。保温時間は最大12時間
途中でかき混ぜていないので、溶けきらなかったルウと白いままの鶏肉がある状態で完成
でも、かき混ぜればルウは溶けます。ただ、細かくダマになったルウが混ぜている途中で目に付いたので、「まぜナビ」を使って途中でかき混ぜたほうがトータルでは楽。味はカレーの味が濃いので、「まぜナビ」を使ったときとあまり変わらない印象でした
無水カレーは「まぜナビ」を使えば自動かき混ぜ機能を搭載した「ホットクック」と同じような仕上がりになったので、自動かき混ぜ機能がなくてもいい感じかも! と思っていたのですが、肉じゃがを作ったときに自動かき混ぜ機能の優秀さを実感しました。
肉じゃがも無水調理なので、調味料は下のほうに少しあるだけ。「まぜナビ」調理でスタート
かき混ぜるタイミングを知らせるアラーム音が鳴ったので、ふたを開けてみると、上のほうはただの加熱した野菜と肉という状態
「まぜナビ」が上下を入れ替えように大きく混ぜるとアドバイスしてくれたので、そのとおりにかき混ぜてみましょう
トータルの加熱時間34分の23分経過したタイミングでかき混ぜるので、すでにじゃがいもはかなりやわらかくなっており、かき混ぜると形が崩れてしまいました
あまりかき混ぜると全部崩れそうだったので、ほどほどでかき混ぜを終え、調理を再スタート。最後11分加熱してできあがりました
じゃがいもが崩れた部分はありますが、無水調理なので野菜の甘みが引き出され、肉はやわらか。加熱具合は抜群。じゃがいもがホクホクでおいしかったです
ちなみに、こちらが自動かき混ぜ機能を搭載した「ホットクック」で作った肉じゃが。これも無水調理です。分量が違いますが、調理途中でかき混ぜながら作るほうが、全体的に味が染み込み、仕上がりもきれい
その後、「withシリーズ」を使った家電ライターに「2人分の肉じゃがはうまくできたよ」と言われました。今回筆者が作ったのは4人分。気になるので、同じ品種のじゃがいもを使って2人分の肉じゃがを作ってみました。
分量が少ないのでかき混ぜやすく、じゃがいもも崩れにくいです
2人分の肉じゃがが完成。じゃがいもの角が残っています
4人分作ったときよりじゃがいもの崩れは少なく、見た目もよい感じです
仕上がりの食感は分量が違っても同じ。途中でかき混ぜる段階でじゃがいもがやわらかいのは変わらないので、2人分のほうがじゃがいもが崩れなかったのは混ぜやすさの差だと思います。もしくは、かき混ぜるときに使用したツールや混ぜる人の技量の差ということもあるかも……。どちらにしてもじゃがいもはホクホク、たまねぎやにんじんは甘くておいしいので食べるぶんには満足ですが、自動かき混ぜ機能のあるホットクックのほうが仕上がりがいいのは間違いないでしょう。
「withシリーズ」は自動調理メニューのほか、煮る・無水・蒸す・低温などの手動調理もでき、温め直し機能や煮詰め機能、炊飯メニューも搭載していますが、Wi-Fi機能は搭載されていないので既存の「ホットクック」のようにメニューを増やせません。自動かき混ぜ機能はなくても火加減は自動で調整されるので焦げ付くことはなかったですが、きんぴらごぼうは「withシリーズ」の自動調理メニューにありませんでした。自動かき混ぜ機能を搭載した「ホットクック」を使ったことがあると、「withシリーズ」は“おまかせ”できることが少ない点や料理の仕上がり、自動調理メニューの数に満足できないかもしれません。価格は既存モデルと比べると26,000円ほど安いものの、長く使うことを考えると自動かき混ぜ機能を搭載したモデルのほうが満足できそう。
ただ、「withシリーズ」は普通の鍋での調理を自動化し、使い慣れた鍋と同じような感覚で使えようにと開発されたモデル。普通の鍋ではコンロにつきっきりになったり、かき混ぜるタイミングが難しかったりする調理を「まぜナビ」でアシストすることで、いつもより楽に、よりおいしく仕上げられます。無水調理や2つのセンサーを使った加熱コントロールなど、定評のある「ホットクック」の調理は継承されているので、自動かき混ぜ機能がない電気調理鍋を探しているなら安心して選べる一台でしょう。
「withシリーズ」には「まぜナビ」調理以外の自動調理メニューもありますし、普通の鍋で調理する際の手間を軽減してくれます
「まぜ技ユニット」がないので、洗い物が楽なのは「withシリーズ」のメリット。内鍋以外のパーツは食洗機で洗えます