コーヒー好きなら、自分でコーヒー豆を焙煎してみたいと思ったことがある人もいるのではないでしょうか。今回は、ボタンを押すだけで簡単に焙煎できるダイニチの自動式コーヒー豆焙煎機「カフェプロ MR-F60A」を紹介します。
<ダイニチ「カフェプロ MR-F60A」のいいところ>
・焙煎度合いを選んでスタートするだけで仕上がる自動式
・電気ポットくらいのコンパクトなサイズ
・2つのセンサーを使った精度の高い焙煎
・静音性の高い設計
焙煎されたコーヒー豆よりも生豆のほうが安く購入でき、保存期間も1年くらいと長いので(焙煎豆は1か月ほど)、豆代を抑えたい人にもいいかも!
自動式のコーヒー豆焙煎機には直火で焙煎するタイプ、電気ヒーターで焙煎するタイプ、熱風で焙煎するタイプがあります。ダイニチは1997年に発売した「カフェプロ」の初代モデルから電気ヒーターでローストする焙煎方法「電気ヒーター直火式焙煎」を採用していましたが、「MR-F60A」は熱風式を採用。熱風式にすることで部品点数とコストを削減し、もっと手軽に家庭で使える本体サイズと価格を実現しました。
サイズは241(幅)×186(奥行)×280(高さ)mmで、重量は約2.3kg。出しておいても気にならない大きさなので、リビングやキッチンなどに置いておいてもじゃまになりません
同社の電気ヒーター直火式焙煎モデルは一度に120gの生豆を焙煎でき、焙煎レベルを12段階から選択できる高性能な焙煎機。価格は10万円近く、業務用として使われることも多いそう。いっぽう、「MR-F60A」のメーカー公式オンラインストア価格は34,760円(税込)。一度に焙煎できる量は60g、焙煎レベルは5段階と少なめですが、その分、わかりやすいですし、5杯分は作れるので家庭用としてはちょうどいいのではないでしょうか。
焙煎レベルは「1:ライト・ロースト」「2:シナモン・ロースト」「3:ミディアム・ロースト」「4:ハイ・ロースト」「5:シティ・ロースト」で設定できます
価格を抑えたコンパクトなサイズが特徴ですが、焙煎精度は上々。ヒーターで温めた風を渦状に吹き上げ、豆を常時回転させることでムラを抑えます。さらに、釜の中に入る熱風の温度を検知する「上流センサー」と、釜内の豆の温度を検知する「下流センサー」を使って熱風温度や焙煎時間を調整するため、季節による室温の差や豆量の誤差などによる影響を受けにくく、安定した焙煎が可能。
単純に熱風を生豆に吹き付けるのではなく、豆を動かしてムラなく加熱できるように渦状の熱風を生み出し、その風で豆一粒一粒を回転させ続けます。それに加え、2つのセンサーを使って最適な温度管理を行うことで、安定した仕上がりを実現
また、2つのセンサーで焙煎温度や時間が調整されるため、時間の設定は不要。生豆を釜に入れて焙煎レベルを設定し、スタートボタンを押すだけと、使い方は簡単です。焙煎中に出る薄皮(チャフ)も気流に乗り、上部の「チャフコンテナ」に溜まるので片付けも手間取りません。
さっそく、焙煎してみましょう。
焙煎中に発生する薄皮を溜める「チャフコンテナ」とふたで構成された「チャフコンテナセット」を取り外します
付属の計量カップ1杯の生豆を焙煎釜にセット。すり切り1杯で60gになるように設計されていますが、計量してみると62.9gでした。でも、センサーを使って焙煎温度や時間が調整されるので心配せずに、すり切り1杯分を入れればOKです
「チャフコンテナセット」を本体に取り付けたら電源をオンにし、焙煎レベルを設定してスタートボタンを押すと焙煎が始まります
焙煎が始まると同時に釜内の豆がぐるぐると回転します(下の動画参照)。上部の透明な窓から、豆が徐々に茶色くなっていく様子が見られるのも楽しいポイント。時間の経過とともにコーヒーの香りが広がり、運転開始から10分くらい経つとパチパチと豆がはぜる音も聞こえてきました。
上部に排気口があるので、焙煎中は手を触れないようにしましょう
運転音は、熱風を起こして焼き上げるため、電気ヒーター直火式焙煎モデルと比べると大きいですが、それでも家庭用の熱風式モデルのなかでは静かだそう。ダイニチは石油ファンヒーターや加湿器を長年手掛けており、その開発で得た風の制御のノウハウを焙煎機に応用し、余計なところに熱風が当たらないように風の流れを最適化することで運転音を約55〜60dBに抑えたそうです。
スマホアプリで運転音をチェックしてみると、本体から約50cmの位置で約55dBでした。会話は普通にできますが、テレビは音量によっては聞き取りにくいかもしれません。でも、焙煎する場所を変えれば回避できます。小型なので、移動も苦労しません
約15分で焙煎が終了。ただし、その後すぐに焙煎された豆や本体の冷却が始まるため、トータル約25分後に運転が終了します。
焙煎約15分+冷却約10分が経過すると運転終了を告げるアラーム音が鳴り、スタートランプ(赤)が消灯するので、その状態になってから「チャフコンテナセット」を取り外しましょう
コーヒー豆と薄皮はきちんと分離され、薄皮は「チャフコンテナ」に溜まっています。釜内のコーヒー豆に薄皮の混入は見られません
焙煎された豆は本体を逆さにして出します。取っ手が付いているので、それほど負担には感じないでしょう
「MR-F60A」で焙煎したコーヒー豆。釜からすべて取り出してみましたが、薄皮はほぼ混じっていません。ふっくらと膨らみ、煎りムラも少ない印象です
なお、焙煎すると水分が飛ぶので6〜10gほど軽くなります。そのため、60g焙煎してできるのは54〜50gの豆ということに。コーヒー1杯を淹れるのに使用する粉は一般的に約10gなので、一度の焙煎で5杯分くらい楽しめるでしょう。
60gの生豆は焙煎後、51.7gになっていました(焙煎レベル「3」時)。焙煎レベルを上げるほど水分が多く飛ぶので、軽くなります
一度の焙煎で作れる量が少なく感じるかもしれませんが、「MR-F60A」は温度センサーで制御しているので連続で焙煎できます。ただし、1回焙煎するたびに薄皮を捨てる必要があり、5回に1回程度で「チャフコンテナ」の排気口に付着したコーヒー油を取り除くお手入れが必要なので、連続運転は5回までにしておいたほうがいいでしょう。
「チャフコンテナ」の排気口に中性洗剤を数滴垂らし、やわらかいブラシでこすってコーヒー油を取り除いたら水ですすぎます。排気口にブラシの毛が届きやすいので、お手入れの手間はそれほど負担に感じません
焙煎レベルによって、どのくらいコーヒーの味が変わるのか検証してみました。焙煎するのに選んだコーヒー豆は、フルーティな酸味と深いコクが特徴の「グアテマラSHB」です。
焙煎のレベルを変えても焙煎時間はほぼ同じ約15分かかりますが、熱風温度の調整により、設定した焙煎度合いで仕上がります。焙煎レベル「1」の仕上がりに少しムラが出たものの、「2」〜「5」のレベルではほぼムラはなく、なかなか焙煎精度は高そう
見た目の差は明らかですが、味はどのくらい違うのでしょうか。焙煎したコーヒー豆を挽き、ドリップして確かめてみました。
中細に挽いたコーヒー粉をハンドドリップで抽出
色は焙煎レベルが上がるほど、赤褐色から黒褐色へ変わっていきました
焙煎レベル「4」以上で、多くの人が思い描くコーヒーっぽい色になったのではないでしょうか
<味の評価>
・レベル1→ほのかな香ばしさはあるもののコーヒー独特のコクや苦みが弱く、ベリーのような酸味が強い味わい。
・レベル2→レベル「1」と似ていますが酸味が少し弱くなり、コーヒーらしい苦みが少しアップ。全体的に紅茶のような印象。
・レベル3→酸味が少し落ちて甘みが少し上がった感じ。ほどよいコクがあり、フルーティなコーヒーが好きな人向きでしょう。
・レベル4→5つの焙煎レベルのなかで、酸味と苦みと甘みのバランスがいちばんいい。今回使用した豆に最も合う焙煎度合いと言えそう。
・レベル5→酸味がほぼなくなり、苦みが強調された味わい。エスプレッソやアイスコーヒーに適している印象。
ダイニチでは5段階の焙煎レベルを「ライト・ロースト」から「シティ・ロースト」としていますが、実際に焙煎した印象では全体的に1段階深めに感じました。深煎りが好きな人でも十分に楽しめそう。
一般的に、コーヒー豆の焙煎度合いは浅煎りから深煎りまで8段階に分かれています。「MR-F60A」で設定できる焙煎レベルは5段階なので、ある程度選択肢は絞られますが、抽出方法や豆を挽く粒度、コーヒー豆の種類などを変えれば味わいは変化するので5段階でも十分楽しめるでしょう。
いつでも焙煎したてのコーヒーが味わえることが自宅に焙煎機があるメリットのひとつだと思われるかもしれませんが、焙煎直後の豆は炭酸ガスが多く発生するため成分がうまく抽出できず、豆本来のおいしさが味わえません。さらに、豆の熟成が進んでいないので、コクの少ないコーヒーになってしまいます。焙煎してから3〜7日は寝かしておきましょう。
密閉容器に入れて湿度の低い場所で常温保存し、飲み頃になるのを待ちましょう
直火×手動で焙煎する場合、焙煎している間、豆を入れた容器を手で動かし続けなければなりません。筆者も経験したことがありますが、なかなか大変なうえ、煎りムラもできやすかったです(そこをクリアしていくのが手動の楽しさでもありますが……)。自動式のコーヒー豆焙煎機を使うのは初めてでしたが、圧倒的に楽。煎りムラが少なく、毎回安定した仕上がりだったのも評価できるポイントです。そして、焙煎中に出る薄皮が周囲に飛び散らないのがいい。準備から片付けまでストレスが少ないので、ひんぱんに使えると思います。
「MR-F60A」のメーカー公式オンラインストア価格は34,760円(税込)。熱風でローストする自動式のコーヒー豆焙煎機はもっと安い製品もありますが、高温で10分以上加熱するものなので、自動式コーヒー豆焙煎機の開発・販売において25年以上の実績を持ち、石油ファンヒーターなども手掛けるダイニチの製品は安心感があります。性能に加え、こうした部分もアドバンテージでしょう。
消費電力は1,300W。熱風式では標準的な数値です。転倒自動停止装置や停電安全装置、室温異常自動停止装置、過熱防止装置といった安全装置を搭載
冒頭で記したとおり、焙煎豆よりも生豆のほうが安く購入でき、長期間保存できます。購入する店によって価格は変わりますが、今回使用した「グアテマラSHB」の焙煎豆と生豆の販売価格を同じショップで比べたところ、焙煎豆は100gで585円、生豆は100gで390円でした。
さらに、生豆は焙煎豆よりも10倍以上長期保存できるので、一度に多くの量を購入できるのがポイント。一般的に、まとめて購入する量が多いほど割引率が高くなるからです。焙煎豆の保存期間は1か月程度なため、毎日1杯淹れるとしても300gくらいしか買えないのに対し、生豆は1年程度持つのでkg単位で購入可能。同ショップの販売価格を見ると、生豆1kgは3,510円だったので、100gを10回買う(3,900円)よりお得です。月単位の価格差はそれほど大きくありませが、数年単位で考えるとかなり節約につながりそう。
ちなみに、「MR-F60A」で1回の焙煎にかかる電気代は多く見積もっても16円程度。冷却の10分は1,300Wも電力はかからないでしょうし、焙煎の15分にかかる10円くらいで済むかもしれません(最初から最後まで1,300Wではない可能性もあるので、もっと安く済むかも)。1日2杯淹れる場合、一度の焙煎で5杯分作れるので1か月に焙煎する回数は13回。ひと月にかかる電気代は130〜208円くらいとなります。
(※1kWhあたりの電気量料金は31円で算出)
以上のことから、生豆を安く手に入れれば、コーヒー豆焙煎機を購入しても元は取れそう。自分好みに焙煎できる楽しさも得られるので、興味があるなら買って損はしないはずです。