長年、家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第64回は、これから夏に向けて大きな買い換え需要を迎える大型冷蔵庫の最新トレンドについて解説する。
※最安価格は2025年6月17日時点のものです
【図1】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
【図2】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)
冷蔵庫が売れる時期は、ずばり「夏」である。図1は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの過去3年間における閲覧者数推移を示したもの。これを見ると、冷蔵庫の需要のピークは、6〜8月にかけての夏期であることがわかる。同時期の需要はここ3年間ではわずかに減少傾向にあるが、これは2020〜2022年にかけてのコロナ禍で需要を先食いした反動が出ているもので、全体としての需要は底堅いと言ってよい。
今年2025年の場合も、おそらくこれから気温が上がるにつれて需要がグンと上がってくるだろう。図2は、過去半年の同カテゴリーの閲覧者数推移を示したものだが、6月初旬の段階ではまだあまり需要が上がっていない。今年の場合、6月初旬までは比較的涼しく過ごしやすかったことが影響しているのかもしれない。なお、今年は3月10日週に大きなピークが来ているが、これはほかの年ではなかなか見られないもの。時期的には、春の新生活シーズンにともなう需要(主に小型冷蔵庫)の盛り上がりと考えられるが、この週だけ大きく上に数字が動いているのは、何らかの外的要因(テレビショッピングのセールなど)が影響している可能性もある。
【図3】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品の庫内容量別割合(2025年5月時点)
ちなみに、価格.comではどんなタイプの冷蔵庫が売れているのか。図3は、売れ筋製品の庫内容量別の割合を示したグラフだが、これを見ると、最も売れているのは意外にも庫内容量200L以下の小型タイプであることがわかる。続いて多いのは、400Lクラスの大型冷蔵庫で、500L以上のクラスになると2割以下という結果だ。
【図4】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品の庫内容量別割合(2024年5月時点)
これをちょうど1年前の結果(図4)と比べると、トレンドの変化がよくわかる。全体のバランスはそれほど変わりないものの、わずかではあるが、500L〜600L、600L〜700Lの大容量モデルのクラスが減少し、その下の400 L〜500Lのクラスや、さらにその下の中容量モデルと言われる200L〜300Lクラス、300 L〜400Lクラスが増加している。これまで冷蔵庫の売れ筋は容量500Lクラスと言われてきたが、庫内容量で見ると、従来人気だった500L以上から、500L未満へとシフトしていることが見て取れる。
【図5】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯別割合(2025年5月時点)
このことは、売れ筋の価格帯の状況を見てもよくわかる。図5は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯別割合を示したものだが、これによれば、400L〜500Lクラスの大型冷蔵庫の多くが該当する「15万〜20万円」の割合が21.27%と比較的大きいものの、500L〜600Lクラスの冷蔵庫が該当する、その上の「20万〜25万円」の割合は7.12%とかなり小さい。最近の500Lクラスの冷蔵庫の多くは20万円以上で高値安定傾向にあることを考えると、20万円未満でこのクラスの製品を購入することが難しくなっており、20万円未満で購入できる400Lクラスの製品へとダウンサイジングする傾向が高まっているとも考えられる。
【図6】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品のメーカー別割合(2025年5月時点)
では、価格.comにおける人気の冷蔵庫メーカーはどのようになっているだろうか。図6は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品のメーカー別割合を示したものだ。これを見ると、価格.comでは伝統的に人気が高い三菱電機が約20.6%とトップシェアであるものの、2位グループを構成するパナソニック、AQUA、東芝が13〜15%程度のシェアとなっており、首位との差がそれほどなくなっていることがわかる。これに、日立、シャープ、ハイアールまでを加えた7メーカーが約85%のシェアを占めており、以前よりもやや混戦状況になっていると見てよさそうだ。
【図7】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける主要メーカー別閲覧者数推移(過去3年間)
図7は、過去3年間における同カテゴリーの主要メーカー別の閲覧者数推移を示したもの。こちらを見ても、3年前は2位以下を大きく引き離していた三菱電機がシェアを徐々に落としており、直近では2位グループにほぼ飲み込まれているような状況になっていることがわかる。閲覧者数と売れ筋とは必ずしも一致するものではないが、図5のシェア状況との関連性は見て取れるだろう。
【図8】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける人気冷蔵庫(400L〜500Lクラス)別閲覧者数推移(過去半年)
ただし、これらの表は、小型から大型まですべての冷蔵庫・冷凍庫を含んだシェアや閲覧者数なので、今回取り扱っている大型冷蔵庫に限ってみると、やや状況が異なってくる点には注意が必要だ。図8は、6月16日時点での庫内容量400L〜500Lの製品に絞った売れ筋ランキングの上位モデル7製品の閲覧者数推移を示したものだが、これを見ると、三菱電機の製品が4モデル、パナソニック、日立、AQUAの製品が1モデルずつとなっており、大型冷蔵庫に限って見ると、やはり三菱電機の人気の高さが際立っていることがわかる。
なお、この7モデルの中では、今年の1〜3月くらいに人気のあった三菱電機「中だけひろびろ大容量 WZシリーズ MR-WZ55K」とパナソニック「NR-E45PX1」が直近では人気を落としているのに対して、三菱電機の「中だけひろびろ大容量 WZシリーズ MR-WZ50K」と同 MZシリーズ「MR-MZ54K」、さらに「MR-N40K」が人気を上げており、また日立「R-HWS47V」とAQUA「Delie AQR-V43P」も、じわじわとこれに迫るという状況になっている。このように、人気モデルの入れ替わりは若干あるが、それでも三菱電機の製品はコンスタントに高い人気を得ていることがわかる。
【図9】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける人気冷蔵庫(400 L〜500Lクラス)別最安価格推移(過去半年)
図9は、図8で取り上げた7モデルの最安価格推移を示したもの。まず、庫内容量430LのAQUA「Delie AQR-V43P」は安定して10万円前後と、ほかのモデルを大きく引き離して安いのが目立つ。ここ最近AQUA製品の人気がじわじわと上がってきているが、これはこの高コスパあってこそということがよくわかる例だ。
さらに、その上の価格帯(13万〜15万円)には、パナソニック「NR-E45PX1」と三菱電機「MR-N40K」の2モデルが存在する。このうち「MR-N40K」は庫内容量が403Lとやや小さめの4ドアモデルであるため、直近の最安価格では11万円強まで下がっており、人気が上がってきている。いっぽう、パナソニックの「NR-E45PX1」は庫内容量450Lの5ドアモデルであるものの、15万円前後の最安価格で推移しており、お買い得度は高めだ。ただ、ここ半年では最安価格がほとんど下がっておらず、やや人気を落としている。
そしていちばん上の価格帯(18万〜21万円)には、三菱電機の「中だけひろびろ大容量 WZシリーズ MR-WZ55K」「同 MZシリーズ MR-MZ54K」の庫内容量500Lオーバーの2モデルと庫内容量495Lの同「WZシリーズMR-WZ50K」、庫内容量470Lの日立「R-HWS47V」が属する。どの製品もこの半年でゆるやかに21万〜23万円のレベルから、18万〜21万円のレベルに最安価格が下がってきており、買いやすくなってきていることからほとんどが人気を上げている。
大型冷蔵庫の発売時期はメーカーやモデルによっても異なるが、比較的多いのは、1月から3月くらいにかけての時期だ。上にあげた価格.com上で人気のモデルは、その多くが昨年2024年の1〜3月に発売された型落ちモデルで、すでに販売価格はかなり安くなっている。いずれもお買い得の狙い目モデルとなっているが、それでは、その後継モデルが出ている場合、どちらを買ったほうがよいのだろうか。
【図10】新旧モデルの最安価格推移比較(三菱電機「中だけひろびろ大容量 WZシリーズ」)
図10は、三菱電機「中だけひろびろ大容量 WZシリーズ」の新旧モデルの最安価格を比較したもの。2024年2月に発売された「MR-WZ50K」は、発売時は約40万円したものが、直近では最安価格が17万円台なかばまで下がっており、かなりのお買い得となっている。これに対して、今年2025年2月に発売された新モデル「MR-WZ50M」は、売り出し時はやはり約40万円からスタートし、直近では23万円台まで最安価格が下がっている。両者の差は単純比較すると6万円近くとなり、スペック的にもそれほど差がないため、旧モデル「MR-WZ50K」を買ったほうがお得であることは間違いないだろう。
なお、両者の価格の下がり方を比較すると、旧モデルの「MR-WZ50K」の昨年6月中旬時点での最安価格は約266,000円。新モデル「MR-WZ50M」の直近の最安価格が約232,000円なので、実は最新モデルのほうが価格の下落スピードは速い。そういう意味では、今年の最新モデルのほうが、今後、早めに価格下落が進む可能性は高そうだ。
【図11】新旧モデルの最安価格推移比較(AQUA「Delieシリーズ」)
もうひとつ、高コスパで知られるAQUA「Delieシリーズ」での新旧モデル比較も見てみよう(図11)。2024年1月に発売された旧モデル「Delie AQR-V43P」は、発売時には約25万円の価格をつけていたが、直近の最安価格は約9.5万円。ほぼ6割安という状況で、かなりお買い得度は高いといえる。いっぽう、2024年12月に発売された後継モデル「DELIE+ AQR-V43R」は、発売時の価格はやはり約25万円で、直近の最安価格は約14.5万円。すでに4割程度安くなっているが、新旧モデルの価格差は約5万円あり、こちらも旧モデルのほうを買ったほうが、金額面では大きく得をしそうだ。ただ、こちらの場合、後継モデルの「DELIE+ AQR-V43R」のほうが、省エネ性能がやや高く、野菜室の割合が広いので(逆に冷凍室はやや狭い)、どう使うかによって選択肢が分かれてくるだろう。
このように、メーカーやモデルによって、新旧モデルの価格差や価格の下がり方はまちまちだが、大抵の場合は旧モデルを購入したほうが、かなりお得になる。その際には、新旧モデルのスペックをよく比較し、機能差がどの程度あるかを確認してから、購入してほしい。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年6月17日時点のものです
価格.com最安価格:174,797円
発売日:2024年2月22日
ユーザー満足度・評価:★4.11(10人)
庫内容量:495L
三菱電機の「中だけひろびろ大容量」シリーズは、従来モデルと同じ製品サイズで、庫内容量を増やしたことから人気となったシリーズ。ラインアップとしては、中段にフリーザーを装備した「WZシリーズ」と、中段に野菜室を装備した「MZシリーズ」があるが、こちらはその前者の495Lモデルだ。人気の「切れちゃう瞬冷凍A.I.」や「氷点下ストッカーD A.I.」といった機能を搭載。さらに、AIがその家庭の利用状況を学習し、部屋別に独立した温度管理を行う「全室独立おまかせA.I.」機能も備えるなど、非常に多機能な製品に仕上がっている。現時点で最安価格が18万円を切っており、お買い得だ。
価格.com最安価格:178,000円
発売日:2024年1月26日
ユーザー満足度・評価:★4.43(7人)
庫内容量:540L
上記「中だけひろびろ大容量」シリーズの中段野菜室シリーズの540Lモデル。基本的な特徴は上記「MR-WZ50K」と同じで、「切れちゃう瞬冷凍A.I.」や「氷点下ストッカーD A.I.」「全室独立おまかせA.I.」など、多機能を備える。野菜室を重視するならこちらがいいだろう。現時点で最安価格が18万円前後となっており、こちらも十分お買い得。
価格.com最安価格:148,000円
発売日:2024年10月下旬
ユーザー満足度・評価:★--(0人)
庫内容量:462L
東芝「VEGETA」から、2024年10月に発売された庫内容量462Lモデル。「VEGETA」はその名のとおり、野菜室に特徴があり、野菜を取り出しやすいように中段に配置しているほか、野菜のみずみずしさを保持する「新鮮 摘み立て野菜室」を採用。野菜を多く使うというユーザーから高い支持を得ている。冷凍室も104Lと広めだ。本モデルはすでに生産を終了しているが、庫内容量462Lとやや小さめながら現時点で最安価格が15万円を切っており、なかなかのお買い得品だ。
価格.com最安価格:148,888円
発売日:2024年3月上旬
ユーザー満足度・評価:★4.00(4人)
庫内容量:450L
パナソニックの廉価シリーズ「Eシリーズ」の450Lモデル。通常は下部にあるコンプレッサーを上部に配置することで、冷凍室や野菜室が100%フルオープンする「ワンダフルオープン」機能をはじめ、最上段のデッドスペースをなくすなど、使いやすさに配慮。パナソニックならではの「微凍結パーシャル」も人気の機能だ。パナソニックの冷蔵庫はここ数年高値安定傾向にあり、500Lクラスで20万円を切るものがほとんどないだけに、やや設計は古いものの、最安価格で15万円を切る本モデルの高コスパは魅力的だ。
価格.com最安価格:94,800円
発売日:2024年1月17日
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)
庫内容量:430L
庫内容量はやや小さめなものの、幅60cmで収まるスリムさが特徴の4ドア冷蔵庫。野菜室が真ん中に設置されており、冷蔵室の扉を開けるとその下の野菜室までが見えるシースルー設計を採用している。冷凍室は2段用意されており、合計で150Lを超える大容量を確保、製氷室はなく、フリーザーの中に製氷ユニットを設置するタイプだが、製氷ユニットを外せば、その分フリーザーが広く使える仕様で、冷凍食品などを多く使う人に向いている。このクラスで最安価格10万円を切る高コスパにも注目だ。
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