多くの人が求める“理想のエアコン”は、“快適”であり、かつ“省エネ性能が高い”ことだろう。それを実現するためには、エアコンの能力頼りだけでなく、設置する場所とのバランス、使い方なども考慮して“自分の家に合ったエアコン”を選ぶことが肝心。そこで、エアコン購入時に押さえておくべき4つのポイントを紹介する。
何よりも先にチェックしなければならないのは、“部屋に適するエアコン”かということ。スペックに明記されている「適用畳数」という項目と、エアコンを設置する部屋の大きさを確かめることが大切だ。たとえば、部屋が14畳なのに適応畳数が12畳のものを購入してしまうと、部屋を設定温度にするためにエアコンがフル稼働する時間が長くなる。そうすると、電気代は高くなってしまう。適用畳数が小さいエアコンのほうが販売価格は安いが、ミスマッチのサイズを選んでしまうとランニングコストで損をすることに。さらに追求するならば、間取りもチェックしてほしい。“吹き抜け”“壁一面が窓”といったような部屋は冷暖房効率が下がるので、適応畳数よりも大きめのタイプを選ぶほうがいい。つまり、“エアコンがフルパワーで稼動する時間を短くする”ことを考えて製品選びをすることが、節電にもつながるというわけだ。
冷房時の「11〜17畳」は、11〜17畳の部屋に適応するという意味ではない。「木造(平屋・南向き・和室)の部屋」では11畳まで、「鉄筋(集合住宅・南向き・中間階・洋室)の部屋」では17畳までということを示している。冷房と暖房で適用畳数が違うので、そこも見落とさないようにしよう
省エネ性能は電気代に直結するため、誰もが気にかけるポイント。比較する際は、日本冷凍空調工業会の規定に沿って同一条件で試算された、省エネ性能を確認するためのスペックをチェックすればいい。ただし、使用環境や稼動状況によって能力や電気代は変わってしまうので、あくまでも「目安」と理解しつつ、見比べよう。
期間消費電力量
期間消費電力量とは、一定の条件(下記の表参照)を基に試算された“1年を通して冷暖房を使った時の消費電力量”で、製品紹介欄でよく目にする「目安年間電気料金」を算出する基にもなっている。カタログにはいろいろなスペックが載っているが、省エネ性能は「期間消費電力量」で確かめて問題ない。ただし、東京をモデルとして試算しているので、“東京よりも寒い/暑い地域”や“設定温度が高い/低い”など、条件が異なれば期間消費電力量も変動することを念頭に置いておこう。
エアコンのJIS規格が2013年4月に改正されたことにより、「JIS C 9612:2013」適用と書かれていないものは改正前の条件(「JIS C 9612:2005」適用/ただし、2005年以前の製品は、さらに前の規格)を基に試算した数値となる。同じ能力のエアコンでも、改正後のほうが期間消費電力量は少なくなるようだ
省エネ基準達成率
もし、見比べたいエアコンの「期間消費電力量」のJIS規格が「JIS C 9612:2013」と「JIS C 9612:2005」というふうに異なる場合、「省エネ基準達成率」を見てみるといい。省エネ基準達成率は改正前の「JIS C 9612:2005」を適用することが決められているので(2014年3月時点)、統一された表記として参考になるだろう。ここの数字が大きいほど、省エネ性能が高いということになる。
2000年8月に制定された「省エネラベル」には、「省エネ基準達成率」が明記。ちなみに、下のほうに大きく書かれた目安電気料金は「期間消費電力量」から算出されている
APF(通年エネルギー消費効率)
「期間消費電力量」と「省エネ基準達成率」を見れば省エネ性能の優劣は判別できるが、省エネ性能効率を表した「APF(通年エネルギー消費効率)」でも確認可能。「1年間で必要な冷暖房能力の総和÷期間消費電力量」から算出された数値のため、「期間消費電力量」と同じく、JIS規格改正で数値が変更されている。APFも数値が大きいほど省エネ性能が高くなるのだが、近年はAPF「6」「7」を超えるエアコンがフラグシップモデルの主流に。まず、「6」を超えていたら、高性能エアコンだと判断してよい。ただし、APFが同じ数値であっても期間消費電力量は異なるので、細かく省エネ性能を比べたいならば、期間消費電力量のほうを優先しよう。
「POINT1」で解説した適用畳数が表示されているスペック欄には、「能力(kW)」も明記されている。その名のごとくエアコンの能力を表しており、数値が大きいほど広い部屋に対応可能。だが、部屋への適応は畳数を見ればいいので、「能力(kW)」でチェックすべきは「4.0」などの数値の下にある( )の中だ。これは能力の幅で、最小値がより小さいエアコンのほうが細やかな運転ができ、最大値がより大きいもののほうがパワフルな運転ができるということになる。
さらに、「低暖房能力」もチェックしておこう。エアコンの暖房能力を示す数値は、「室内20℃、室外7℃」の条件で試算されているが、冬場はもっと気温が下がるため、「室内20℃ 、室外2℃」の条件で試算された「低暖房能力」のほうが暖房の効果を見るには参考になる。暖房をよく利用するならば、「低暖房能力」が高いエアコンを選ぼう。
上はパナソニック「CS-404CXR2」、下は日立「RAS-Z40D2」のスペック(どちらも最上位モデル)。適用畳数、能力、APF(両機とも7.1)が同じでも、能力の幅は違うことがわかる
「Part1」で紹介したように、エアコンにはたくさんの機能が搭載されており、機能が充実しているほど上位モデルとなる。ただし、機能の数だけで上位モデルとなるワケではない。気流を生み出すフラップやルーバー、冷房/暖房能力などの根本的な性能が異なっており、同じ“冷やす”“暖める”運転でも電気代が違ってくる。ちなみに、「POINT2」で述べた「期間消費電力量」を測るための検証では、センサーやエコモードといった機能は使用されていない。つまり、センサーやエコモードを利用すれば、さらなる省エネが望める。空気清浄や自動お掃除などの“快適さ”のための機能だけでなく、省エネにつながるセンサーなどの性能もしっかり見比べよう。
最新エアコンの上位モデルと下位モデルの年間電気代比較
期間消費電力量を基に算出した年間電気代(目安)を、ダイキンの最新エアコンの最上位モデルと下位モデルで比べてみる。
最上位モデル「AN40RRP」と下位モデル「AN40RCP」の年間電気代の差は、10,800円となった。本体価格が、価格.comの最安値(2014年3月25日時点)で、最上位モデルは約199,700円、下位モデルは187,000円となっており、その差は12,700円。年間の電気代が最上位モデルのほうが10,8000円も安いということは、2年で初期費用の差額はカバーできてしまう! さらに、センサーなどの省エネ機能が作用することを考えれば、最上位モデルのほうがお得と言える。塵も積もれば大きな金額となるので、長期間使用した時の電気代と初期費用のバランスを計算することも大切
10年前のエアコンと最新エアコンの年間電気代の比較
10年以上前のエアコンを使っている場合、最新のものに買い替えたほうがお得なのかも見てみよう。例として挙げるのは、ダイキンの最新エアコン「AN40RRP」(最上位モデル)と同社の10年前のエアコン。ダイキンから10年前に発売された上位モデルに位置するエアコンは、省エネ性能の高さをウリとした「うるるとさらら AN40ERP」とインテリア性に優れた「AN40EUXP」の2モデルがあったので、両方と電気代を比べてみた。
10年前の省エネモデルだった「うるるとさらら AN40ERP」よりも、最新のエアコン「AN40RRP」のほうが年間電気代が8,160円少ない。同じ上位モデルでも、インテリア性に優れた「AN40EUXP」と「AN40RRP」を比べると、年間電気代は15,620円も差がつく。まだ動くから……と使い続けていると、毎年高い電気代を支払うことになるので、買い替えたほうがお得になることも!
※上2つのグラフにある年間電気代は環境省が提供するデータをもとにしているため、2013年4月に改正されたJIS規格による試算とは異なる。改正後の年間電気代は、最上位モデル「AN40RRP」が約24,130円、下位モデル「AN40RCP」が33,970円