2010年から定期的に発生しているバター不足で、入手に苦労した人も多いのではないだろうか。現在は需要量以上の供給量を確保できたとされているが、店舗によってはいまだに販売個数が制限されていることもあり品薄感は否めない。そんな時には発想の転換。“バターがなければ作ればいい!”ができちゃうホームベーカリー「HBK-100」(エムケー精工)で、バターをホームメイドしちゃおう。
1斤の食パンが焼ける「ふっくらパン屋さん HBK-100」のサイズは、230(幅)×290(高さ)×345(奥行)mm
「HBK-100」は一般的なホームベーカリー同様に小麦粉を使った食パンやフランスパンが作れるほか、米粉パン、ケーキ、ジャム、パン生地作りにも対応。さらに、「ねり」「発酵」「焼き」工程の時間・速さ・温度を個々で設定することができるメニューも用意されており、オリジナルのパン作りが楽しめる。まずは、今回の目的であるバター作りにチャレンジしよう!
「ねり」「発酵」「焼き」工程を調整できるメニューでは、「ねり」を低速/中速/高速、「発酵」と「焼き」を低温/中温/高温の3段階でそれぞれ設定できる。たとえば、「ねり」を中速にすればざっくりとねることで歯ごたえのあるハード系の食感に。また、砂糖やバターが多いリッチなパンは「発酵」を低温にするといったように、ホームベーカリーを利用しながら付属のレシピにはないパン作りも可能
バターは、手動でも作ることができる。生クリームを容器に入れて振り続ければ、バターが完成。「HBK-100」で作る場合も原理は同じ。違うのは、“振る”代わりに羽根で攪拌する点だ。
パン作りに使用するパンケースに羽根をセット。羽根は1種類しか付属しないので、バター作りでもパン作りでも同じものを使う
材料は、生クリーム(195〜200ml)と水(100ml)。塩(6g)は好みで入れる入れないが選べ、無塩バターにすることもできる
材料をパンケースに投入したら準備完了
攪拌する際に中身が飛び散らないように、同梱のフタをした状態で本体にセットする
メニューを選んでスタートボタンを押せば、攪拌が始まる
30分後、運転が終了。実際にはフタを開ける必要はないが、どんな状態になっているのかを見るために今回はフタを取ってみた。固形バターと液体が混在している
液体を取り除いた状態にしないと、バター作りは完成しない。フタには溝が設けられているので、そこから液体だけを排出する
バターと分離した白い液体は「バターミルク」といい、料理やパン作りに利用できる。捨ててしまわず、取っておこう(バターミルクを使ったパン作りは下で紹介)
バターミルクを排出し切れば、バター作り完了
できあがったバターを容器に移して、冷蔵庫で保存可能。約1週間は保存しておけるという
でも、バターを冷蔵庫に入れる前にできたてを食してみてほしい。やわらかくなめらかなので、写真のようなトーストした熱々のパンに塗らなくてもトロトロ。市販されているバターを常温で戻したものとは別格の口どけとおいしさに感動した
できたてのバターをパンに塗るだけでなく、具材を混ぜて冷蔵庫で冷やせば具入りバターができる。酒の肴にうってつけなレーズンバターも、自宅で作れるというわけだ。
刻んだレーズンを、作ったバターに投入して混ぜる。この時、レーズンを事前にラムに浸しておけば、香り豊かなラムレーズンバターにすることも可能
ラップで棒状に包み、キャンディのように両端を絞る
同じように、サラミを入れたものも作ってみた
冷蔵庫に入れて、1晩放置
固まったレーズンバターとサラミバターを輪切りにすれば、馴染みのあるおつまみに! これだけ具材の多い、レーズンバターやサラミバターは市販のものではなかなかないだろう。ただ、サラミのほうは少々失敗。サラミに塩分があるのを計算せず、めいっぱい投入してしまったのでしょっぱくなってしまったのだ。具材に味が付いている場合は、混ぜる分量に注意が必要。そして、作るバターも無塩にしたほうがいいだろう。ちなみ、右上の器にあるバターは普通に冷蔵保存しておいたもの。市販のバターのように使える
バター作りの際に、バターと分離してできた「バターミルク」を有効活用してみよう。バターミルクはクリームシチューやスープといった料理を作る時に牛乳の代わりに使ってもいいが、今回は食パン作りに用いてみる。
200mlの生クリームでバターを作ると、バターミルクは約200mlできた
普通の食パン作りには、強力粉、砂糖、塩、バター、スキムミルク、水、ドライイーストを材料として使用する。バターミルクを使うならスキムミルクやバター、水は不要なのでは? と想像していたのだが、分量の違いはあれど材料はすべて必要
大きく違うのは、水の量。普通の食パンが190mlの水を使うのに対し、バターミルクを利用する場合は28mlでよい。水の代わりにバターミルクを用いるというわけだ
無塩/有塩バターのどちらを作ったかで塩の量は変わるが、その他の材料は普通の食パンと同量。「HBK-100」にはドライイーストが自動投入される機能はないため、投入した材料の一番上に窪みを作ってセットしておく
普通の食パンと同じ「ねり」「発酵」「焼き」となるので、食パンのメニュー番号「1」でスタート
3時間50分で焼き上がったバターミルク食パンは、パンケースからはみ出さんばかりに大きく膨らんでおいしそう
窯伸びもしっかりしており、天面や側面の焼き色は十分だ
基本材料のスキムミルクに加えてバターミルクが入ったので、ミルクの香りが強いパンになるのかと思っていたが、それほどミルク臭はしない。水分量が少ないので、普通の食パンよりもコクがある
バター作りを中心に見てきたが、もっとも利用頻度が高いであろう普通の食パンについても触れておこう。基本的な材料や操作は上で紹介したバターミルク食パンと同じなので、手順は割愛する。
天面の焼き色がバターミルク食パンに比べると薄いような気もするが、窯伸びの具合は十分なので発酵不足はないようだ。ふんわりと柔らかく、もっちり感も適度にあって口どけもいい
そんな食パンをベースに、具材入りパンを作ることもできる。具材を自動で投入する機能はないので、生地をねるタイミングに手動で入れなければならない。
材料を攪拌して生地をねる途中で、混ぜ込みたい具材を入れる。運転開始から約1時間後にブザーが鳴るので、そのタイミングで投入
50gのレーズンを投入してみる。細かく砕く必要はない
レーズンパンが焼き上がった。上で作った食パンよりも天面が濃いキツネ色になって、見栄えはいい。レーズン以外の材料の分量は同じなので、室温などの状況によって焼き色に差が出るのかも
カットしてみると、いい感じでレーズンが分散して練り込まれている。具材入りパンを作ると攪拌で細かく砕かれてしまうこともあるが、「HBK-100」で作ったものはレーズンの原型が保持されジューシーさも残っていた
焼き色がどうしても気になる場合は、「うすめ」「ふつう」「こいめ」で焼き色を設定可能。焼く時間の長さで色を調整するので「うすめ」だと通常運転より10分短く、「こいめ」だと10分長くなる
正直なところ、10,000円以上のホームベーカリーであれば焼き上がりの膨らみや焼き色も比較的安定していることが多く、おいしさの満足度も高い。安価なものを購入して“味わいに不満→使わなくなる”となる可能性を考えれば、10,000円以上のホームベーカリーを選ぶほうが安心だろう。
価格帯を絞った後の選定項目となるのが、普通の食パン以外で作れるメニュー。「HBK-100」でいうところの、バターやジャムといったメニューとなる。「ねり」「発酵」「焼き」の各工程を自由に設定できるメニューもオリジナルパン作りをしたい人には魅力かもしれないが、「HBK-100」の目玉は、やはりバターが作れることだろう。現に、筆者はバターが作れるホームベーカリーという一文に惹かれた。バターは手動でも作ることができるが、やはりパン作り同様、おまかせできるのは楽チン。そして、できたバターがビックリするほどやわらかく、食材に乗せた時の絡み具合が最高なのだ。家族や会社の人たちにも試食してもらったが、今回作ったものの中でバターの評価が一番高かったほどのおいしさ。バター好きなら是非食べていただきたい一品だ。具材の自動投入機能などはないので、メニューによってはすべてをおまかせにはできないこともあるが、“パン+バター”の組み合わせが好きなら選ぶ価値あり。
冷蔵庫に入れておいたバターと冷凍保存していたレーズン食パンを、作った2日後に食べてもおいしさは健在。1度に食べ切らずに冷凍しておいても、トーストすればパンはフワフワ&サクサク!