今冬は、日本全国で驚くほどの暖冬となっている。年末年始も暖かい日が多く、3月並みの暖かさを記録した場所も多い。こうした暖冬の影響をもっとも受けるのが、ヒーター・ストーブなどの暖房器具である。「価格.comトレンドサーチ」のデータで、その影響がどの程度現れているのか見てみよう。
図1:「ヒーター・ストーブ」カテゴリーのアクセス推移(過去2年)
図1は、価格.comの「ヒーター・ストーブ」カテゴリーの過去2年間のアクセス推移を示したもの。前年同時期と比較すると、2014年度のピークは12月15日週で約161万PV。これに対し、2015年度のピークは11月30日週で約148万PVとなっている。ピーク時の単純比較で見ても、2015年度は約8%のダウンだ。しかも、2014年度のピークの山を見ると、11月から12月にかけて何度かの山があるのに対して、2015年度のほうは11月30日週がほぼ唯一の山で、12月に入るとアクセスはすでに激減していることがわかる。12月が異例の暖かさだったこともあって、暖房器具の販売ピークが例年よりも早めに終わってしまったということだろう。
図2:「ヒーター・ストーブ」カテゴリーのアクセス推移(過去3か月)
上記の動きをより細かく示しているのが図2だ。過去3か月の「ヒーター・ストーブ」カテゴリーのアクセス推移を見ると、11月28日にピークが訪れて以降、12月に入るとアクセスはほぼ下降の一途をたどり、12月後半には完全にピークアウトしていることがわかる。1月に入って寒さが厳しくなると、一時的に揺り戻す動きも見られるのだが、今冬に関して言えばそうした動きもほとんどないという状況だ。このように暖冬の影響はデータ上でも確認することができる。
図3:「ヒーター・ストーブ」カテゴリーにおける売れ筋ランキング上位5製品
暖冬の影響だけではない。暖房器具の人気トレンドにも、今冬は変化が見られる。図3は、2016年1月6日現在の、「ヒーター・ストーブ」カテゴリーにおける売れ筋ランキングのトップ5製品のアクセス推移を示したものだが、実はこの5製品はいずれも、風で熱を送る「ファンヒーター」という点で共通している。なお、熱源別に見ると、うち2製品(1位と2位)が石油ファンヒーター、3製品(3〜5位)がセラミック(電気)ファンヒーターとなっており、どちらかと言えば、石油ファンヒーターが人気だ。
コロナ「コアヒート DH-1215R」
こうした状況はここ数年では非常に珍しい。と言うのも、ここ数年の「ヒーター・ストーブ」カテゴリーで人気を博していたのは、たいていの場合、輻射式の遠赤外線セラミックヒーターであったからだ。代表的なモデルとして、コロナの「コアヒート」や、ダイキンの「セラムヒート」といった製品があるが、こうした製品が人気トップ5のうち、2〜3製品を占めるというのが例年のトレンドだった。しかし、今冬は、こうした遠赤外線セラミックヒーターは、トップ5に1製品も入っておらず、上記のファンヒーター勢に完全に押されている形となっている。
図4:コロナ「コアヒート DH-1215R」(2015年モデル)と「コアヒート DH-1214R」(2014年モデル)とのアクセス数推移(過去2年)
図5:コロナ「コアヒート DH-1215R」(2015年モデル)と「コアヒート DH-1214R」(2014年モデル)との売れ筋ランキング推移(過去2年)
図6:コロナ「コアヒート DH-1215R」(2015年モデル)と「コアヒート DH-1214R」(2014年モデル)との売れ筋ランキング推移(過去3か月)
図7:コロナ「コアヒート DH-1215R」(2015年モデル)と「コアヒート DH-1214R」(2014年モデル)との最安価格推移(過去3か月)
図4と図5は、遠赤外線セラミックヒーターの人気モデルである、コロナ「コアヒート DH-1215R」(2015年モデル)と、「コアヒート DH-1214R」(2014年モデル)とのアクセス数および売れ筋ランキングの推移を示したものだ。これを見ると、2014年モデルの「コアヒート DH-1214R」が非常に人気だったのに対し、2015年モデルの「コアヒート DH-1215R」が、今冬そこまでの人気となっていないことが見て取れる。売れ筋ランキングでも、「コアヒート DH-1214R」がずっと1位をキープしていたのに対し、「コアヒート DH-1215R」のほうは6位〜10位の間を上下しているだけだ(図6)。なお、販売価格で見ると、現在は「コアヒート DH-1215R」のほうが安くなってきており、販売価格の問題ではないことがわかる(図7)。このように、今冬はなぜかこれまで人気だった、遠赤外線セラミックヒーターの人気が下がっており、代わりに、それまでやや不調気味だった石油ファンヒーターの人気が高まってきているのだ。
コロナ「FH-G3215Y(S)」
図8:コロナ「FH-G3215Y(S)」の売れ筋・注目ランキング推移(過去3か月)
今冬好調な石油ファンヒーターであるが、その代表モデルといえるのが、2016年1月6日現在、「ヒーター・ストーブ」カテゴリーにおける売れ筋ランキングで1位をキープし続けている、コロナの「FH-G3215Y(S)」という製品だ。対応畳数は木造9畳、コンクリート12畳という小型の製品であるが、今冬は非常に好調な売れ行きを見せている。図8は、「FH-G3215Y(S)」の売れ筋・注目ランキングの推移を示したものであるが、本格シーズンに入ってきた11月中旬以降めきめきと人気を伸ばし、12月に入った頃には売れ筋ランキングで1位を獲得。以降、若干の変化はあったものの、1位の座をほぼキープしつつ今に至っている。
図9:コロナ「FH-G3215Y(S)」の最安価格推移(過去3か月)
図9は、「FH-G3215Y(S)」の最安価格推移であるが、ちょうど本製品の人気が高まってきた11月中旬くらいに最安価格が1万円を切り、その後も1万円を境に上下しつつ、全体的には値下がりしてきている。2016年1月6日現在の最安価格は8,925円で、すでに9,000円を割り込むような状況だ。小型モデルとはいえ、石油ファンヒーターでここまで価格が安くなることは滅多になく、この価格の安さが、本製品の人気を高める一因となっていることは間違いなさそうだ。
トヨトミ「LC-32F」
図10:トヨトミ「LC-32F」の最安価格推移(過去3か月)
こうした動きに呼応するように、ここ数週間の間に、コロナ「FH-G3215Y(S)」に次ぐ人気を獲得するようになってきたのが、トヨトミ「LC-32F」である。こちらもスペック的には、ほぼ「FH-G3215Y(S)」と同じで、対応畳数は木造9畳、コンクリート12畳という小型のモデル。やはり最安価格で見ると、11月末に1万円を割り込み、2016年1月6日現在では9,000円という価格をつけている(図10)。トヨトミの石油ファンヒーターは、独自の安全装置や、古い灯油も燃焼可能なバーナー性能をもっていることもあり、ユーザー評価も4.77(評価者9名)とかなり高い。
9,000円程度で購入できる低価格の2製品が、この冬の石油ファンヒーター人気を引っ張っている状況だが、この2製品以外にも、今冬は全般的に石油ファンヒーターの人気は高い。その背景には、国際的な原油安にともなう灯油価格の下げが大きく影響しているものと思われる。昨年2015年1月上旬の、灯油の店頭価格は18Lで1,700円を超えていたが、今年2016年の1月上旬は1,200円近くまで下がってきており、大幅な安値となっている。灯油に関してはここ数年高騰が続いており、元々はランニングコストの安さと熱効率のよさから人気だった石油ファンヒーターにとって逆風となっていたのだが、今冬については久々にそのメリットが大きく見直された形だ。
ダイソン「Dyson Pure Hot + Cool HP01WS」
図11:ダイソン「Dyson Pure Hot + Cool HP01WS」の売れ筋・注目ランキング推移(過去3か月)
もうひとつ、今冬の大きなトピックなのは、ダイソンの「羽根のない扇風機」こと「エアマルチプライヤー」に、ヒーター機能と空気清浄機能をプラスした「Dyson Pure Hot + Cool HP01WS」が人気となっていることだろう。2016年1月6日現在の「ヒーター・ストーブ」カテゴリーにおける売れ筋ランキングでは、上記の石油ファンヒーター2製品の下につける第3位となっており、12月には一時1位となるなど、その人気はかなりのものと言える(図11)。
図12:ダイソン「Dyson Pure Hot + Cool HP01WS」の最安価格推移(過去3か月)
本製品の特徴は、夏は扇風機として、冬はファンヒーターとして使えるというユーティリティーの広さと、空気清浄機能を一体化したクリーン性だ。その分、価格も高めで、2016年1月6日現在の最安価格では62,937円と、暖房機器として考えると、別格の高価格製品である(図12)。それでいながら、ここまでの人気を博した理由をユーザーレビューの内容に求めると、「デザインに惚れました」「デザインは申し分ないですし、メタリックカラーが好みなので即決しました」など、ほかにはないすぐれたデザイン性と、「性能的には、温まるのはもちろんですが、何より、出てくる空気がきれいに感じます」「待望の、空気清浄機能つきで夏冬フルシーズン使える扇風機。満を持して出て来たという感じです」「病気の母のため、綺麗な空気を得るため」など、空気清浄機能を搭載したことが大きいようだ。確かに、暖房器具として考えればかなり高いが、空気清浄機として使えることも考えればある程度納得がいく。しかも、夏には扇風機として1年中使えるという点も、利便性が高い。単体の「エアマルチプライヤー」でも、ここまでの人気とはならなかったが、送風、暖房、空気清浄機という3つの機能が一体となった「Dyson Pure Hot + Cool HP01WS」は、いわゆる「全部入り」の製品として、今後も人気を博しそうだ。
価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。