インテリア性の高い“デザイン家電”は、性能はそれなりであることが多い。以前、“美し過ぎる”カドーの加湿器をレビューした際も効果はそれほど期待していなかった。しかし、実際に使ってみると加湿力や使い勝手、衛生面なども上々で、見た目だけでなく性能も高評価。白い壁を基調とした筆者宅にマッチするビジュアルも気に入っている。そこで、同社の空気清浄機「AP-C200」も試してみることにした。“見た目以上”の働きをしてくれるのだろうか?
表面にマットな塗装が施されており、上品な仕上がりになっている。筐体は1枚のスチールで成形されているので、つなぎ目がなく美しい
AP-C200は、加湿機能を搭載していないモデル。円柱形の本体下部全面が吸込口になっており、フィルターでろ過した空気を天面から放出する。しかも、ただ上に送風するだけでなく、天井にぶつかることで360°に拡散。そのため、AP-C200を部屋のどこに置いてもキレイな空気が部屋中に届けられ、効率よく循環できるという。
サイズは直径24.2×高さ65.2cmで、適用床面積〜22畳。キャスターは付いていないが、重量は6.3kgなのでそれほど苦労せずに運べた
本体下部360°が吸込口になっている。本体の約半分ほどが吸込口なので、かなり吸引できそうな印象だ
汚れやニオイが取り除かれたクリーンな空気は、真上に放出される
搭載されているフィルターについて、ここで解説しておきたい。AP-C200のフィルターは2層構造となっており、光ブルー活性炭フィルターとHEPAフィルターが一体化している。吸い込まれた空気は、最初に光ブルー活性炭フィルターを通過。活性炭には吸着力があるため、有害物質をしっかりキャッチしてくれるという。その後、0.09μm以下の微粒子も捕獲するHEPAフィルターで仕上げ、キレイな空気を部屋に放出する。
この清浄システムに加え、光ブルー活性炭フィルターには自己再生機能があるのも特徴だ。活性炭には可視光で反応する光触媒被膜がコーティングされており、LEDを照射することで吸着した細菌やカビ、花粉、ニオイなどを二酸化炭素と水に分解。有害物質を除去できるだけでなく、吸着力も復活するためフィルターの性能が保持できるという。
パネルを取り外すと、ろ過するためのフィルターが現れる。360°で配置された吸込口にあわせて、フィルターも円柱形状。光ブルー活性炭フィルターは、汚れだけでなくニオイも消臭する
内側には、不織布が何層にも折り重なったHEPAフィルターを装備。PM2.5もしっかりキャッチしてくれる
活性炭に照射するのは青色LED。従来採用されていた紫外線と比べ、人体への影響がないのも魅力だ
「自動」「エコ」「急速」の運転モードが用意されているが、今回は「自動」モードで“おまかせ”状態にして約2週間使ってみた。設置したのは、約11畳のLDK。使用中に感じたAP-C200のいいところを3つ紹介しよう。
「エコ」モードでは風量が「弱」状態になり、「急速」モードにすると風量「強」よりも大きな風量で2時間運転した後、「自動」モードに切り替わる
イイと感じた1つめは、汚れに対する反応の速さ。素早い清浄を求めるならば「急速」モードや風量「強」で稼働すればいいが、「弱」に比べると運転音が約30dBA大きい59dBAとなる。日常生活の中で、ずっとこの運転音が響くのは厳しい。しかし、「弱」にすると風量が弱いだけでなく光触媒ランプ(青色LED)も消灯する。浄化性能を考慮すると、光触媒ランプはONになっているほうがいいはず。そうなると、やはり「自動」モードがよさそう。AP-C200にはニオイセンサーとホコリセンサーが装備されており、「自動」モードにしておけば適した風量に変更してくれる。そのセンサーの反応がいいのか、人の出入りが多い時やキッチンで調理を始めるとすぐに風量が「強」にチェンジ。素早く清浄されていることを実感できた。
※運転音の「dBA」は国際的に制定されている騒音を示す単位
風量「強」の時にティッシュペーパーを吸込口に這わせてみると、ピッタリ貼り付いて落下せず。見た目にそぐわず、なかなかの吸引力がある
キッチンのニオイに反応して風量が「強」になっても、リビングに居る子どもも快適に過ごせたようだ
2つめの魅力は、放出される風が体に当たりにくいこと。スピーディーに浄化するには大きな風量が求められるが、一般的な空気清浄機は斜め上に送風されることが多いので風で寒く感じることもある。その点、AP-C200は真上に空気が放出され天井にぶつかって拡散するため、「自動」モード中に風量「強」に切り替わっても不快に感じなかった。
最大風量は259m3/h。この勢いの風が体に当たるのは、かなりキツイ
最後に紹介するグッときたポイントは、やはりデザイン性だ。吸込口の部分から見えるライトは、ただのおしゃれ要素ではなく空気の状態を表すもの。空気がキレイなら青に、汚れていると黄色、赤色に3段階で色が変わる。そして、吹出口からは光触媒用のLEDが青く点灯。浄化のための技術をデザインにも生かすセンスが秀逸だと感じた。
吸込口全体ではなく、正面の3つの穴のみが光るようにしているのも◎。やり過ぎていないところが上品だ。この部分のライトはセンサーで部屋の明るさを検知して照度が変わるほか、手動で消灯することもできる
一般的な空気清浄機同様に、吸込口やセンサー部に溜まったホコリは定期的に掃除することが推奨されている。フィルターに関しては、光触媒技術により吸着力が復活するため手入れは不要。しかし、1年に1回交換しなければならない。国内メーカーの空気清浄機に多い「10年間交換しなくていい集じんフィルターと脱臭フィルター」と比べると手間に感じるかもしれないが、パネルを1枚外してフィルターを抜き出すだけと手軽だ。
加湿機能がないため、構造はとてもシンプル。フィルターは一体型なので、何層も外すという手間がないのもうれしい
空気清浄機の性能を評価する統一基準が日本にはないため、フィルターの性能や風量による浄化スピードで示されることが多い。そんな中、カドーは国内メーカーとしてはめずらしく米国家電協会(AHAM)が定める世界標準の指標「CADR(クリーンエア供給率)」を採用している。CADRの試験はタバコの煙、ホコリ、花粉が散布された部屋で行われ、空気清浄機が1分間あたりにどれだけキレイな空気を放出できたのかを測るというもの。理論値ではなく、実証した数値なのがポイントだ。AP-C200のCADR値はタバコの煙140、ホコリ153、花粉160と評価された。CADR値が大きいほど素早くキレイにできるので、参考にするといいだろう。目では見えない空気だからこそ、このようなテストを受け数値が公表されていることは高い信頼となる。
今回、2週間の使用で、センサーの感度のよさと真上に放出されるメリットを実感できた。全方向から吸引する構造も、一方向だけから吸い込むよりも効率がよさそうだ。フィルターは年に1度の交換が必要なため(メーカー直売価格:7,830円)、毎年交換するとなると少々割高に感じるかもしれないが、「CADR」を採用する空気清浄機のほとんどが1年未満でのフィルター交換を推奨していることからも、個人的には短いサイクルで交換するほうが高い清浄が保持できると思う。