数年前から人気のある美容ケア製品に、「炭酸パック」があります。その名の通り、炭酸ガスが発生するパックですが、これが意外と高価。安いものだと1枚100円前後ですが、有名ブランドのものだと1枚2,000円以上の製品も珍しくありません。肌に直接触れるものなので、あまり安いものは……と思いつつ、1回2,000円は高すぎる気も。などと悩んでいたところ、パナソニックから、炭酸ガスを肌の上で発生させて高濃度の炭酸ガスで肌の状態を整えるというドンピシャな製品「炭酸イオンエフェクター EH-SG90」(以下、EH-SG90)が発売されました。さっそく、2週間じっくり試してみました。
じつは筆者、以前「炭酸に関するセミナー」に参加したことがあります。そこで習ったのが、炭酸ガスと肌の関係。炭酸水で肌を濡らすと、その部分がガスにより酸欠状態になります。この時、肌がこの状態を改善するために血流をよくしようとする結果、肌に栄養が行きわたるのだとか。そのほか、新陳代謝をスムーズにしたり、たんぱく質に作用して、肌を引き締めるという効果もあるそうです。そして、これらの効果は炭酸ガスの濃度が高いほど有利と言われています。
「EH-SG90」は、炭酸ガスを肌の上で発生させるのですが、その仕組みは非常にシンプルです。本体に炭酸ガスカートリッジを取り付け、ホースでつながれたパターから炭酸ガスを噴出させるだけ。濡らしたドライシートマスクなどを肌にのせ、その上から使用することで、炭酸ガスが肌表面の水分に溶け込んで、高濃度の炭酸パックをしたのと同じような状態になるそうです。
「EH-SG90」と専用の炭酸ガスカートリッジ。本体サイズは11.7(幅)×16(奥行)×27.5(高さ)cmで、2Lのペットボトルに近いサイズ。重量は約850gです
製品にはカートリッジが1本付属。1本で約10回使用できます。カートリッジは本体裏のパネルを開き、ねじ込んで装着します
筆者が「EH-SG90」を使いたいと思った一番の理由は、このシンプルさです。じつは筆者はデリケート肌。ところが、炭酸パックは比較的刺激が強いものが多いため、パックの種類によっては肌がかぶれてしまうことも多かったのです。ですが、「EH-SG90」なら、肌に触れるのは水と二酸化炭素だけ。化粧品にありがちな安定剤や防腐剤などは使用しないので、デリケート肌でも安心して使用できます。ちなみに、「飲料用の炭酸水をドライシートマスクに含ませて顔をパックする」という方法もあるのですが、パナソニックによると、この「炭酸水のパック」と比較すると、「EH-SG90」の炭酸濃度は約140倍もあるとのこと。
「EH-SG90」から発生する炭酸の濃度の高さを確認するため、ペーハー試験液を入れたアルカリ水を用意
炭酸水は弱酸性なので、炭酸濃度が濃いほどアルカリ水の色が変化します。左の容器には炭酸パック(クリーム状)を投入。いっぽう、右の容器には「EH-SG90」で5秒だけ炭酸ガスを発生させたところ、一瞬にして容器の水の色が変化しました! 炭酸パックに比べて、「EH-SG90」から発生する炭酸の濃度がかなり高いことがわかります
さて、ここからは実際に「EH-SG90」を使用してみます。使い方は簡単で、「水で濡らしたドライシートマスクなどの上からパターを当てる」だけです。ちなみに、「EH-SG90」には付属品として「シートマスク EH-2S42」も3枚入っています。これは超吸水性繊維「ランシール」を配合したシートマスクで、薄いのに水分保持力が高いのが特徴。水を含ませるとヌルヌルした手触りになり、パターのすべりもよくなる優秀な製品です。ただし、ちょっと弾力があり硬めなので、顔の曲線にピタッと沿わないこともあります。また、このマスクは10枚入りでメーカー希望小売価格は2,000円(税別)なので、1枚200円と少々高価。このため、我が家ではもっぱら100円ショップのドライシートマスクを愛用しています。100円(税別)で12枚ほど入っている製品が多いので、1回10円もかからない計算ですね。
(※編注:本記事の初出時に「顔を霧吹きで濡らしただけの状態でも使用できます」という記載がございましたが、「EH-SG90」の使用時は必ず水で濡らしたドライシートマスクなどをご使用ください。お詫びして訂正いたします)
小さなラケットのような形状の「パター」。パター中央の「炭酸噴出部」の表面には、目に見えないほど細かい穴が開いており、微細な炭酸ガスを発生させます
ハンドル部にある細長い「イオンパネル」に手が触れるように持ち、「炭酸噴出部」に肌が当たっていないと炭酸が発生しない安全設計です
3枚付属するシートマスク。非常に薄いですが、水を吸収するとふくらみ、表面はヌルヌルしたジェルのような質感になります
注意が必要なのが、パターは防水ではないこと。このため「マスクを用意するのがめんどうだから」と思っても、風呂場での使用はできません。また、一部検証済みの化粧マスク以外は、炭酸を発生させるモードの時は「水で塗らしたドライシートマスク」を使うのが基本です。
最初に試してみたのは、「炭酸+イオン」モード。これは、その名の通り炭酸を発生しつつ、イオンによる電気浸透流で、保湿もできるというもの。また、同時にパターを温める温感機能も使用可能で、肌に当てるパーツを高温(約43℃)か低温(約37℃)で温めることができます。
操作は本体のパネルで行います。「モード選択/ストップ」ボタンで、「炭酸+イオン」か「イオン(保湿)」を選択。さらに、温度やイオンの有無もそれぞれ指定できます
肌に当てると、「ピチピチッ」という細かな破裂音とともに、肌がシュワシュワと泡立つような感覚、そして炭酸水を飲んだ時のような独特な香りも感じます。しかも、パターを当てた部分は、パターが移動した後もシュワシュワが持続。マスクの水が炭酸水化したのが感じられます。
これは……おもしろい! 実は筆者、今までたくさんのイオン導入美顔器を使用してきました。ただ、多くの美顔器は無音・無振動(もしくは微振動)・無刺激なので、「使っている」という実感がなかなか得られにくいのです。このため、1か月くらいで飽きてしまうことが多いのですが、「EH-SG90」は肌の上で発泡する感覚があるので、「美容によいことをしている」「ケアしている」という気分が盛り上がります。使っている感があるので、これなら続けようという気持ちも持続しそう。
シュワシュワする感覚に最初はびっくりしますが、だんだんクセになってきます。発泡の微振動はマッサージとしてもよさそうだと感じました
下の動画は、水と反応してパターが発泡する様子。意外に激しく発泡しているのが確認できます。
しかも、温かいパターで肌をマッサージする感覚も非常に気持ちいいです。炭酸が発生する時間は、肌を刺激しすぎない2分なのですが、正直「もっと長くやりたい!」と感じるくらい楽しい作業でした。ちなみに、炭酸モードは1日1回、週に3回までが使用の目安だそう。非常に気持ちがよいので毎日でも試したいところですが、そのあたりは我慢です。
「EH-SG90」には、「イオン(保湿)」モードという機能もあります。炭酸モードは基本的に水だけで行うため、終了後はケアをする必要があります。ちなみに、イオンモードでは手持ちの化粧水や化粧成分を含むシートマスクが使用可能。使い方は簡単で、モード選択で「イオン(保湿)」を選択し、シートマスクの上からパターを当てるだけ。電気浸透流により、保湿成分がより角質層に浸透しやすくなるそうです。
こちらはほとんど刺激がないので、あまり「使っている効果が実感」できるというモードではありません。ただ、寒い時期に温かいパターを肌にすべらせるのは気持ちよいので、炭酸モードのついでにササっと使える点はうれしいですね。
右側だけ「EH-SG90」で炭酸と保湿ケアをしたところ。右だけ、口のほうれい線があきらかに薄くなっているのがわかります。また、目の下のクマも薄くなっているような
「EH-SG90」で気になる点はいくつかあります。ひとつはパターが防水ではないこと。肌を濡らして使用する製品なのに、お風呂場で使用できないのは残念です。もうひとつは、製品サイズが大きいこと。炭酸ガスのカートリッジをセットする必要があるため、それなりの大きさが必要なのはわかるのですが、部屋に出しておくとスペースをとるので、使用するたびに出してくるのがちょっとめんどうだと感じました。
とはいえ、今まで炭酸ミストをスプレーするという美容製品は見かけることがありましたが、肌の上で新鮮な炭酸を発生させるという製品を筆者は初めて見ました。このあたりは、さすがスチーマー「ナノケア」シリーズなどの美容器に定評のあるパナソニックだなあ、と感心。
ちなみに、気になる肌の状態ですが、「EH-SG90」を使用して2週間で一番変わったのは化粧のノリです。いままで重ねづけしていたファンデーションが、1回でムラなく肌に吸い付くようになりました。残念ながら、吹き出物などの肌荒れが治るとまではいきませんでしたが、肌の感触がモチッとやわらかくなったのも実感できます。試しにマイクロスコープで肌を拡大してみたところ、この2週間で肌のキメが細かくなっているのも確認できました。化粧品はまったく変えていないのに、ここまで変化するのは驚きです。
マイクロスコープで肌のキメをチェック。2週間前は一方向に流れかけていた下頬の表皮のミゾですが、今はミゾが深くなり、形もほぼ三角形の整ったキメに変化しています
ちなみに、別売りの「専用炭酸ガス カートリッジEH-2S41」は、2本でメーカー希望小売価格2,500円(税別)です。1本で約10回使用できるので、ランニングコストは1回約125円。週に3回使用すると、1か月のコストは1,500円ほどになります。導入コストはそれなりにかかりますが、個人的には結果がわかりやすく出たため、長く使えばそこまで高い買い物ではないと感じました。あとはいかに継続できるかがポイントですね。
パソコン雑誌編集者からドッグカフェオーナーという、異色の経歴を経た家電ライター。家電を活用することで、いかに家事の手を抜くかに日々頭を悩ませている。