レビュー
普通のマウンテンバイクと比較もするほどのガチっぷり!!

国内唯一のフルサスe-MTB「XM-D2」をガチのマウンテンバイク乗りが山でガチ検証!


パナソニックから2019年3月1日に発売されたマウンテンバイクタイプのe-Bike「XM-D2」は、価格60万円(税別)で100台限定のモデルではあるものの、2019年4月12日現時点では完売にはなっていない。パナソニックがいうには、XM-D2は高価だが、本気のマウンテンバイク乗りだけに向けたモデルではないとのこと。しかし、正直なところ、60万円というのは、ある程度マウンテンバイクに乗った経験や知識がある人の評価を聞かないと購入を決断できない価格だ。そこで、20年以上マウンテンバイクに乗っており、自転車関連のブロガーとして有名な佐藤真吾さんと、価格に見合う実力があるのかを山の中でガチ検証してみた。

フルサスe-MTBだから60万円は妥当な価格

日本国内で発売されているe-MTB(マウンテンバイクタイプのe-Bike)は、カーボンフレームモデルでも50万円弱なため、XM-D2の60万円という価格は群を抜いて高い。しかも、XM-D2のフレームはアルミ製。では、なぜ、これほど高価なのかというと、前後にサスペンションを装備した「フルサス」だからだ。フロントのみにサスペンションが付いた「ハードテイル」に比べ、前後にサスペンションが装備されたフルサスは、路面からの衝撃が効果的に吸収されるうえ、サスペンションの反発力でタイヤが地面に押し付けられるため、走破性が格段に高い。その分、価格帯もハードテイルモデルより10万ほど高くなり、電動アシスト機能を搭載しない普通のマウンテンバイクでもフルサスモデルは35〜40万円ほどする。その車体価格にバッテリーやモーターなどのアシストユニットが加算されれば、60万円になるのも妥当と言えるだろう。

サイズは1,895(全長)×750(全幅)mmで、重量は26.2kg

サイズは1,895(全長)×750(全幅)mmで、重量は26.2kg

フロントサスペンションは160mmのストロークを持つSR SUNTOUR製の「AURON」。27.5×2.8インチの太いタイヤに対応したBOOST規格に対応する

リアサスペンションも同じく160mmのホイールトラベルを持つRockShox製

リアサスペンションも同じく160mmのホイールトラベルを持つRockShox製

変速はリアが10段のシマノ製「デオーレXT」グレード。フロントにはモーターユニット内蔵の2段変速を装備する

油圧ディスクブレーキも同じくシマノの「デオーレXT」グレード。前後ともに4ピストンのキャリパーと180mm径のディスクとなっている

モーターユニットはパナソニック独自の2段変速を内装した仕様

モーターユニットはパナソニック独自の2段変速を内装した仕様

バッテリーは12AV(36V)で、最長107kmのアシスト走行が可能。バッテリー残量ゼロの状態から満充電まで約4.5時間かかる

<関連記事>XM-D2の詳しい構造は発表会レポートをチェック!

ガチのマウンテンバイク乗りとガチに山の中で走行テスト!

マウンテンバイクに限らず、普通の自転車にガチで乗っている人の中には、電動アシスト機能に否定的な感情を抱く人も多い。そもそも動力に頼りたくないということもあるが、バッテリーやアシストユニットがあることで重量が増したり、設計のバランスが崩れることで操作性や走行性に影響が出ることを懸念している人もいるだろう。そんなところも加味して検証できるように、今回は、電動アシスト機能を搭載しないフルサスのマウンテンバイク(YETI「SB66」)も用意し、登りも下りもハードなセクションのある山道で乗り比べてみることにした。筆者と一緒に試乗してくれるのは、ガチのマウンテンバイク乗りである佐藤真吾さんだ。

XM-D2と乗り比べするために佐藤さん所有の2011年式のYETI「SB66」を持ってきてくれた。佐藤さんはマウンテンバイク歴20年以上で、その界隈ではけっこう有名だ

>> 佐藤真吾さんについてはブログをチェック!

2011年式のYETI「SB66」のスペックについて軽く触れておこう。タイヤ径が前後26インチというところはXM-D2と異なるものの、フロントサスペンションのストロークは160mmで同じ。ブレーキも同じシマノ製「デオーレXT」グレードだが、フロントが4ピストン、リアが2ピストンという違いはある。なお、リアサスペンションのストロークは6インチ(約152mm)と若干異なるが、今回の検証においては誤差の範囲なので気にしなくていい。

リアの変速もXM-D2と同じ10段だが、佐藤さん所有の「SB66」は内側に大きなスプロケット(緑色のもの)を入れて、軽いギアを選べるようにしている。フロント側はXM-D2より1段少ない1枚

まずは、山道までアプローチする舗装路を登っていく。なお、舗装路では佐藤さんがXM-D2に乗り、筆者が佐藤さん所有の普通のマウンテンバイク「SB66」に乗り、ハードな下りもあるポイントを目指す。

電動アシスト機能があるので、余裕の表情で上っていく佐藤さん

佐藤さんはe-MTBなのでギアを落とすことなく楽々と登っていってしまったが、普通のマウンテンバイクに乗っている筆者はかなりつらい。もっとも軽いギアに入れてもキツさを感じる斜面で、まだ目的地に到着していないのに結構体力を消耗してしまった。自動車で自転車を運べる場合は問題ないが、自走で山道にアプローチするなら電動アシスト機能で体力を温存しておきたいところだ。

その後、舗装路から山道に入る。山道なので登りと下りが入り交じるが、基本は登りが続く。

少し軽めのギアにして、XM-D2でスイスイ登っていってしまう佐藤さん。筆者は撮影することを言いわけに休憩しながら普通のマウンテンバイク(SB66)で登っているが、どんどん引き離されていく

すでに舗装路でキツさを感じていた筆者は、ダートに入ってからの登りでギブアップ。佐藤さんが乗っていたXM-D2と交換してもらい、登り道がいったん終わるところまで一気に登ることにした。佐藤さんは普通のマウンテンバイク(SB66)での走行となる。

登りきったところで、ちょっと休憩。正直、XM-D2に乗っていた筆者は汗もかいていないし、息も切れていないので休憩はいらないくらい余裕だ。いっぽう、普通のマウンテンバイクで登ってきた佐藤さんは、普段から慣れているため見事に登りきってしまったが、到着後、上着を1枚脱ぐほど汗をかいていた

荒れた路面が続く本格的なコースでXM-D2ならではの走破性を実感!

ここからは、木の根が露出している路面や、丸太が道を塞ぐような山道を走る。自転車をコントロールする技量が問われる場面が多くなるので、非常に楽しいところだ。

狭い山道に大きく木の根が露出し、道を塞いでいるようなセクション。簡単に乗り越えられるように見えるが、意外とコツがいる

上の写真のような土から露出した木の根は、そのまま走り抜けようとするとタイヤがすべって越えられないので、避けるか、木の根の手前でタイヤを浮かせられるようにフロントにかかっている荷重をいったん抜くなど調整しながら乗り越えていく。試しに、佐藤さん所有の普通のマウンテンバイク(SB66)で走ってみたところ、やはり加重するポイントを変えながら乗り越えることとなった。次に、XM-D2で走ってみると……あれ? 普通に走っていたら突破できてしまったではないか! 同じフルサスモデルなのに、これほど差が出たのには、タイヤの大きさと太さが関係していると思われる。ホイール径が大きくなると走破性は向上し、それに加えてタイヤが太くなると路面をつかむトラクション性能も向上するため、近年のマウンテンバイクで人気の高い「27.5+」サイズの太いタイヤを履いたXM-D2は、このくらいの木の根なら踏み潰すような感覚で乗り越えることができたというわけだ。

普通のマウンテンバイクにXM-D2のタイヤほどの太さを装着した場合、ペダルを漕ぐ際に負担が大きくなるが、電動アシストがあるXM-D2では問題にならない

道に転がっていた丸太も難なくクリア。あれこれ考えずに、乗り越えられる走破性はすばらしい

道に転がっていた丸太も難なくクリア。あれこれ考えずに、乗り越えられる走破性はすばらしい

タイヤの大きさや太さだけでなく、障害物の乗り越えでは電動アシスト機能も有用だ。普通のマウンテンバイクでは、通過した際にペダルが木の根に当たらないよう、どのタイミングでペダルを踏んでトラクションを与えるか気を遣わなければならない。その点、e-MTBはアシストが強力なので、それほど考えなくてよく、ある程度勢いに乗っていれば、ペダルを漕がなくてもアシストの力で乗り越えられてしまう。

ハードな下りで本領発揮! そして思わぬ楽しみ方を発見!

尾根筋を少し走ったら、いよいよ、多くのマウンテンバイク乗りが大好きな下り斜面だ。佐藤さんと自転車を交換しながら、乗り心地を比べる。

急な斜面でもタイヤがしっかりと路面に食いついてくれるので、怖がらずにガンガン行ける

急な斜面でもタイヤがしっかりと路面に食いついてくれるので、怖がらずにガンガン行ける

佐藤さん所有の普通のマウンテンバイク(SB66)も軽快なハンドリングで楽しい! だが、XM-D2はその楽しさに加え、より安心感があった。これは、太いタイヤですべりにくいうえに、低重心になったことも大きい。ライダーの体重でサスペンションが沈み込むことで、重心が低くなるのは普通のマウンテンバイクでも同じだが、e-MTBは重さのあるモーターなどの位置が低くなるため安定感が増す。さらに、XM-D2の場合、サスペンションストロークが160mmと長いので、乗車の段階で沈み込んでも余裕があり、走行中の衝撃もしっかり吸収される。サスペンションのストロークは佐藤さん所有の普通のマウンテンバイク(SB66)と同じだが、重心が低いXM-D2のほうが安定しやすいのだろう。

斜面の途中に木の根があっても前後サスペンションがショックを吸収してくれるので、難なく通過できる

斜面の途中に木の根があっても前後サスペンションがショックを吸収してくれるので、難なく通過できる

結構ハードな下りを進んだところで、佐藤さんが「XM-D2なら、今下ってきたところを登れるのでは?」と言い出した。いや、こんなところ登りたくないし……と、正直、やりたくない無理だと思いつつ試してみると、それほど苦労せずにスルスルと進んでいく。途中で足をつくこともあったが、上まで登りきれてしまった。

筆者がとまどっている間に、登り始めてしまった佐藤さん。そして、筆者に試させるため、登ってきたところを再び下ってきてくれた

佐藤さんだから登れたのでは……という疑念を抱きつつ、漕ぎ出すと、意外に楽勝で驚いた

佐藤さんだから登れたのでは……という疑念を抱きつつ、漕ぎ出すと、意外に楽勝で驚いた

あまりにも登坂能力が高いので、佐藤さんが斜面を登って行くシーンを動画に収めてみた(下の動画参照)。かなりの急斜面だが、ペダルを回しているだけでスルスルと登れてしまう。

ここまでハードな斜面を登って行けるのは電動アシスト機能があればこそだが、XM-D2がフルサスであることも大きい。ハードテイルモデルでは、リアタイヤがすべってしまうこともあったが、XM-D2ではほとんど起こらず。リアのサスペンションが後輪を路面に押し付けてくれるので、登坂能力が高まっているのだ。リアサスペンションと太いタイヤを備えるXM-D2はアシスト力がロスなく発揮できるため、アシストの出力自体は同社のハードテイルのe-MTB「XM2」と変わらないものの、XM-D2のほうが、より強い力でアシストされているように感じた。

曲がりくねっていて、ターンした直後に木の根をこえなければならないようなルートも登って行ける

曲がりくねっていて、ターンした直後に木の根をこえなければならないようなルートも登って行ける

登坂能力の高さは折り紙付きだが、ペダルを止めた際にアシストが残って自転車だけ登って行ってしまうことがあった。フルサスの許容力があるため怖い思いはしなかったものの、ペダルを止めると同時にアシストが抜けてくれるとより走破性が高まりそうだ。

ペダルを漕ぐのを止めた時にアシストが若干残るシーンもあったが、それによりコントロールが崩れることはなかった

まとめ

筆者はこれまで、今回のような山道やパークでいくつかのハードテイルのe-MTBに試乗したことがあるが、フルサスになったXM-D2の実力は思っていた以上だった。登りで体力を温存でき、その分、下りを全力で楽しめるのは電動アシスト機能のあるe-MTBなら当然なのだが、登りのラクさと荒れた路面での安定感が段違い。木の根や丸太などの障害物が現れた場合、技術がある程度ないと避けるしかないのだが、XM-D2は普通に漕いでいるだけで突破できてしまう。ルートを選ばずに進んでいける走破性の高さは、楽しめるシーンを大きく広げてくれる。

初心者のうちは細かい木の根でも乗り越えられるか、すべらないかなど身構えてしまうもの。XM-D2はそのまま走り抜けられるので、いろいろチャレンジしてみたくなる

そして、なにより驚いたのは圧倒的な登坂能力。マウンテンバイクは下りメインで楽しむ筆者の場合、まず登ろうという気持ちにもならないような傾斜も登れてしまったのだ。今回協力してくれた佐藤さんが「登ってみよう」と言ってくれたから気付けたことではあるが(筆者だけなら絶対登っていない)、まさか自分が登りを楽しいと感じるとは思ってもみなかった。そして、楽しかった下りのセクションを、XM-D2なら何度も繰り返せるのがうれしい。普通のマウンテンバイクでは「今度、またここを下りに来よう」と次に持ち越さなければならないが、 XM-D2は登って戻ればいい。楽しいところを満足いくまで味わいつくせる。普通のマウンテンバイク乗りである佐藤さんも、かなりおもしろかったようなので、マウンテンバイク経験者もこれまでとは違う遊び方を交えて楽しめるはず。

登りではペダリングにちょうどいい高さに、下りではじゃまにならないようにサドルを下げられる機構を備えたドロッパーポストを付けば、もっと楽しめそうだ

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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