ヤマハ発動機が2026年3月に発売した「PAS CRAIG ALLEY(パス クレイグ アリー)」。シンプルな細身のフレームに20インチホイールを組み合わせた、ミニベロタイプの電動アシスト自転車です。スタイリッシュな見た目ながらメーカー希望価格は138,000円(税込)とリーズナブルなのも魅力。走行性能や乗り味がどうなっているのか、実際に試乗してチェックしました。
「PAS CRAIG ALLEY」はその車名からわかるとおり「PAS」シリーズのドライブユニットを採用した電動アシスト自転車です。簡単に言えば、「PAS」は普段使いのためのシリーズ。買い物、通勤、子どもの送迎、通学など、さまざまなライフスタイルに合わせたラインアップが展開されています。
なお、ヤマハには「YPJ」というe-Bikeシリーズもありますが、こちらはスポーツタイプのドライブユニットを採用しているのが特徴。「YPJ」はクロスバイクやロードバイク、マウンテンバイクなどスポーツタイプの車体が中心で、バッテリーもフレームと一体となったインチューブ式が採用されているなどスポーティーな見た目です。
日常使い向けの「PAS」シリーズですが、シンプルでスッキリした見た目。サイズは1,620(全長)×560(全幅)mmで、重量は22.4kg(ワイヤー錠含む)
ドライブユニットは一般的な「PAS」シリーズと同じ、モーター部とバッテリー取り付け部が一体となったもの
スマートなスタイルを実現している要因は細身の鉄フレームにあります。アルミ製のフレームは軽量ですが剛性を出すためにパイプが太くなりがち。その点、鉄製のパイプを組み合わせたフレームは、スリムでシンプルなルックスに仕上げられます。「PAS CRAIG ALLEY」のフレームは直線基調のデザイン。フレームのトップチューブが水平に近いシルエットとされているのも、電動アシスト自転車の中では際立ってシンプルな見た目に貢献しています。
細身のパイプを組み合わせたシンプルな設計のフレーム。カラーバリエーションは写真の「メルティグラファイト」のほか、グリーン系の「カーキジェイド2」、ホワイト系の「マットエクリュ」(後者の2色はつや消し)
シンプルなフレームデザインを実現するため、細部にも工夫が凝らされています。ドライブユニットを装着するためのハンガー部分は、大きくゴツい見た目になりがちですが、ここを独自の設計にすることでコンパクトな仕上がりに。バッテリーの部分に重なるシートステー部分は、モノステーと呼ばれる1本構造とすることでスリムにまとめ、バッテリーの取り外しもしやすい作りとなっています。
ドライブユニットを取り付ける部分はパイプとプレートが組み合わされ、コンパクトに仕上げられています
シートステーの部分(サドルと後輪を結ぶパイプ)は2本から1本にまとめるモノステー構造で、バッテリーの取り外しにも対応します
バッテリー容量は25.2V 15.8Ah。アシスト走行が可能な距離は、「強モード」で63km、「スマートパワーモード」で75km、「オートエコモードプラス」で128km
このフレームデザインを生かすため、ハンドルを支持するステム部分はアヘッド式と呼ばれるスポーツタイプの自転車に多く見られる方式を採用。ハンドルはBMX風のデザインとなっていて、太めのタイヤと相まってスポーティーなルックスに仕上がっています。変速ギアは内装式の3段で、これもシンプルな見た目に貢献するポイントです。
スポーツタイプの自転車に採用されることの多いアヘッド式ステム。軽量・高剛性でフレームとの太さが揃うメリットがあります
BMXなどに使われるようなセミライザータイプのハンドルを装備。グリップ位置が高めで握りやすいことが特徴です
ハンドル周りのデザインもシンプル。乗っている間は目に入る部分なので、スッキリしているのはうれしいポイント
時計機能を持ったコントローラー「スマートクロックスイッチ」を採用。時計のほか、モードや走行可能距離、消費カロリーなどを表示できます
前後ともに20×2.125インチのタイヤ。フェンダー(泥よけ)も装備されているので、泥はねを心配する必要がありません
フロントブレーキは制動力の高いVブレーキを採用。バッテリーから給電される砲弾型ライトも装備しています
変速ギアは内装式の3段。外装式と違って見た目がシンプルなのと、停止中でも変速できるのがメリットです
「PAS CRAIG ALLEY」はシンプルでスポーティーなデザインが魅力ですが、乗り味はどうでしょう。実際に乗り回してみました。
ペダルを踏み込むと、こぎ始めから強めのアシストがかかります。ペダルの回転数が上がるのに合わせてアシストが強まっていくe-Bikeとは異なるフィーリングですが、思った以上に車体が進んでしまうような怖さはありません。その点は制御がしっかりきいていると感じました。
こぎ始めからしっかりアシスト感があるのは電動アシスト自転車らしいフィーリング。ケイデンス(ペダルを回す速さ)を高めても違和感はありません
また、ケイデンスを上げていってもアシストが不安定になるような挙動もなく、スピードを出して乗りたい人も不満を感じることはなさそうです。ただ、アシストが切れる規制値である時速24kmを超えて走るのには向いていません。重量が22.4kgあることと、20インチの小径タイヤが高い速度を維持するのには向いていないので、これは仕方のないことでしょう。
石畳のような場所を走行しても、太めのタイヤと車体設計の恩恵で不安定感はありません
タイヤ径が小さいと、路面の段差を拾いやすいのがデメリットです。小径車の中にはハンドルがふらふらしやすい車種もありますが、このモデルについてはそうした不安感もありませんでした。タイヤが20×2.125インチと太めなので衝撃の吸収力にすぐれ、車体も安定性を高める設計になっていることが要因でしょう。また、BMX的なハンドルを装備していることもあり、ちょっとした段差を乗り越えるのを楽しめる感覚もありました。
歩道に乗り上げる際の段差など、街中の段差を越えるのも楽しめる車体設計です
坂道を上っても力強いアシストを実感。「スマートパワーモード」を選択しておけば、路面状況に合わせて最適なアシストを提供してくれます
シンプルで自転車らしいデザインに仕上がっている「PAS CRAIG ALLEY」。スポーティーな見た目でありながら、ドライブユニットはスポーツタイプではなく一般の「PAS」と同じという点が乗る前は懸念材料でしたが、実際に乗ってみると違和感はありませんでした。小径タイヤのミニベロは基本的に街乗りでの短距離利用向きと言えますが、片道5km程度の移動であればこのドライブユニットでも十分という印象です。
もっと長距離のツーリングなどに使いたいのであれば「YPJ」シリーズのほうが向いていますが、その分価格も30万円オーバーと高くなってしまいます。冒頭のとおり、メーカー希望価格は138,000円(税込)とリーズナブルなことも「PAS CRAIG ALLEY」の大きな魅力。街乗りが中心だけれど、近所に坂道などがあってしっかりとしたアシストが欲しいというユーザーや、これから電動アシスト自転車デビューを考えている人には好適な1台と言えるでしょう。
●メインカット、走行シーン撮影:松川忍