コンシューマー機器で構築した日本で一番小さい映画館

ホームシアターファン、ガルパンファンも注目! 日本初のバリアフリー映画館「CINEMA Chupki TABATA」がスゴイ

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映画ファン、ホームシアターファン、『ガールズ&パンツァー』(以下、ガルパン)ファン、そしてバリアフリー映画館として障害者の方にも注目の映画館が東京・田端にあるのをご存知だろうか。

日本初のバリアフリー映画館として誕生した「CINEMA Chupki TABATA(シネマチュプキタバタ )」がオープンから1周年を迎え、プレス陣を招いた『ガールズ&パンツァー 劇場版』の特別上映会を開催。支配人の佐藤浩章氏と、音響設計の監修・コーディネートを手掛けた音響監督の岩浪美和氏による劇場のこだわりのポイントが語られた。

東京・田端にある「CINEMA Chupki TABATA」

東京・田端にある「CINEMA Chupki TABATA」

CINEMA Chupki TABATA支配人の佐藤浩章氏

CINEMA Chupki TABATA支配人の佐藤浩章氏

音響設計を手掛けた音響監督の岩浪美和氏

音響設計を手掛けた音響監督の岩浪美和氏

Cinema Chupki TABATAは、昨年9月1日に「バリアフリー映画鑑賞推進団体City Lights」というボランティア団体が主体となり、クラウドファウンディングでの1800万円もの募金を集め設立された映画館。目や耳が不自由な人でも試聴できるよう音声ガイドと日本語字幕を全作品で提供している。

上映作品は国内外の映画で障害者の方が介助者を頼む都合上、一か月は変えずに上映。今年8月にはクラウドファウンディングの最高額寄付者の権利として指定された『ガールズ&パンツァー 劇場版』の上映も行われ、劇場始まって以来の大盛況となる月1500人以上の来場者を集めた。ほかにも『この世界の片隅に』など、アニメ上映を行う劇場としても人気を博している。

劇場のコンセプトは「癒される空間、森の中の空間」(佐藤支配人)と障害者の方からの声を参考に作られ、シアター内には木や緑、動物のクッションといったものが飾られている。

座席は補助席を導入しても最大20席と小さな劇場だが、障害者向けの設備として全席に左右独立のアナログのボリュームが付けられた音声ガイド用のイヤホンジャックを完備。「スマホを使ったシステムもあるが、それでは障害者の方には優しくない」(岩浪監督)と、音声ガイド用に有線で各座席にイヤホンジャックを付ける方式になっているという。

劇場受付にはWestoneのアンビエント型イヤホンの「AM PRO10」が貸し出し用として2台用意されており、イヤホンで音声ガイドを聴きながら映画館のスピーカーの通常の映画音響も楽しめる仕組みだ。なお、音声ガイドの利用方法や館内案内が流れる普段の音声は声優の小野大輔氏が担当している。

常設の座席15席の小さな劇場だ

常設の座席15席の小さな劇場だ

全席に音声ガイド用のラインを常設

全席に音声ガイド用のラインを常設

受付でWestoneアンビエント型イヤホンの「AM PRO10」を貸し出し

受付でWestoneアンビエント型イヤホンの「AM PRO10」を貸し出し

音声ガイドの再生は手作業で行われている

音声ガイドの再生は手作業で行われている

岩浪美和監督監修により4K上映、ドルビーアトモス対応の7.2.4chをコンシューマー機器で構築

CINEMA Chupki TABATAの上映設備は、劇場用のDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)を導入していないため、新作映画は上映できずBD/DVDという形でパッケージ化された作品を上映する映画館となる。上映する作品の映像ソースや映像・音響機材、スピーカーまですべてをコンシューマー用の機器でカバーした、いわば劇場の形をしたホームシアターだ。「映写室に導入した機材は決して高額ではないけれど、信頼性があって上質な機材」(岩浪監督)をそろえたという。

BDプレーヤーはOPPO 「BDP-103DJP」でプロジェクターはJVCの4K対応モデル「DLA-X750R」、スクリーンはエリートスクリーン製の120インチだ。音響設備にはアンプはDENON「AVR-6300H」スピーカーにはDALI「OPTICON1」を11台導入し、ドルビーアトモスホームとして設計されている。サブウーハーにはBowers & Wilkins(B&W)の「ASW610」に加えて、『ガールズ&パンツァー 劇場版』の上映用にELAC「SUB2090」も用意されていた。

コンシューマー用の機器で構成された再生システム

コンシューマー用の機器で構成された再生システム

プロジェクターにはJVCの4K対応モデル「DLA-X750R」を導入

プロジェクターにはJVCの4K対応モデル「DLA-X750R」を導入

スピーカーは11chすべてDALI「OPTICON1」

スピーカーは11chすべてDALI「OPTICON1」

天井にドルビーアトモス用のスピーカーも設置

天井にドルビーアトモス用のスピーカーも設置

サブウーハーはガルパン用にELAC「SUB2090」を追加で用意

サブウーハーはガルパン用にELAC「SUB2090」を追加で用意

岩浪美和氏はガルパンの音響製作を手掛けたアニメファンの間でも特に高い知名度を誇る音響監督だ。CINEMA Chupki TABATAでは、劇場内で使用する機材の選定から音響チューニングにいたるまで、岩浪美和氏がすべて監修を行った。特にサウンドチューニングについては、コンシューマー向けのAVアンプ、スピーカーを使いつつも、岩浪美和氏の手によって各チャンネルの帯域のマニュアル調整まで行われており、プロの手、プロの耳で本気でチューニングが行われたシアターとなっている。

通常の上映作品に用いられるサウンドチューニングは作品にあわせて適応するという形になっている。ただし、岩浪美和氏自身が音響監督を努めた『ガールズ&パンツァー 劇場版』の上映にあたっては特別のチューニングが行われ、多数の登場人物の声がよりクリアに聞こえ、チャンネル間の繋がりがよくなるようにセッティングしているという。

中上育実さんの音声ガイドを体験できた『ガールズ&パンツァー 劇場版』上映

オープンから1周年を迎え、プレス陣を招いて上映が行われたのはCINEMA Chupki TABATAの『ガールズ&パンツァー 劇場版』だ。僕自身、もともとガルパンのTVシリーズから鑑賞していたファンで、『ガールズ&パンツァー 劇場版』は劇場でも鑑賞し、もちろんBDも所有しているのだが、そんな僕にとってもCINEMA Chupki TABATAでの鑑賞は特別。なんと、音声ガイドは劇中で秋山優花里役を演じる中上育実さんが担当しているのだ。そんなガルパンファンの視点でCINEMA Chupki TABATAで『ガールズ&パンツァー 劇場版』のレポートをお届けしよう。

『ガールズ&パンツァー 劇場版』を音声ガイド付きで体験

『ガールズ&パンツァー 劇場版』を音声ガイド付きで体験

まず、CINEMA Chupki TABATAの音響についてだが、先に説明したとおり劇場音響の姿をしたホームシアターで、7.2.4chというドルビーアトモスの環境かつサブウーハー2基という最上級の構成。実際に『ガールズ&パンツァー 劇場版』を聴くと極めて自然な空間表現と音の繋がりとともに、戦車の走行シーンでは体に響くような低音が伝わり、そして劇中あちこちにある砲撃のシーンでは身体に突き抜けるような振動が響き渡る。もちろん大スクリーンの映画館のサウンドとはまた違ったものだが、ホーム用の機器でここまでナチュラルな劇場音響が出るとは……プロの手によるセッティングの素晴らしさ驚かされる。

そしてもうひとつの聞き所が、手元のイヤホンジャックに接続したWestoneアンビエント型イヤホンの「AM PRO10」を通して聴ける音声ガイドだ。

まず、ほとんどの人が音声ガイドでどんな内容が流れているのかもご存知ないと思うが、基本的には画面に映っている内容を端的に説明し、視覚障害者の方のストーリーの理解を助けるものだ。本来的にはそんな目的で作られる音声ガイドなのだが、CINEMA Chupki TABATAで鑑賞した『ガールズ&パンツァー 劇場版』の音声ガイドは、実はガルパンファンとしてもなかなか楽しめるものだ。

ガルパンという作品のファンならご存知と思うが、実在のWWII時代の戦車が多数登場する。『ガールズ&パンツァー 劇場版』の上映がスタートすると、「あんこうチームのIV号戦車が−−」といった形で作中でも特に説明のない戦車の名前まで教えてくれるため、普通に鑑賞するより作品理解度につながるのだ。特に、もし『ガールズ&パンツァー 劇場版』を初見の人がいたら、実在の戦車が使われていることを音声ガイドで知ることになるかもしれない。

ガルパンファンなら大洗女子の全てのチーム名と戦車名を瞬時に見分けられるかもしれないが、『ガールズ&パンツァー 劇場版』劇場版の後半では、大洗連合チームとして聖グロリアーナ女学院、黒森峰女学園、プラウダ高校、サンダース大学付属高校、知波単学園の生徒と戦車も参戦し、たんぽぽ中隊、ひまわり中隊、あさがお中隊、どんぐり小隊が結成される。画面に映っている戦車を見て、どの中隊所属かまでは『ガールズ&パンツァー 劇場版』を何度も見ている僕でも頭に叩き込みきれていない。さらには対戦相手の大学選抜チームの戦車までと考えると……音声ガイドは正確に戦況を知るための音声解説にもなるのだ。これだけでも、ガルパンファンはCINEMA Chupki TABATAで『ガールズ&パンツァー 劇場版』の上映を見る価値がある。また、僕は作品全篇を通して音声ガイドを聴いたまま鑑賞したが、スピーカーから鳴る劇場のサウンドもまったく違和感なく聴けたことも付け加えておきたい。

開館1年を迎えたCINEMA Chupki TABATAの現状と今後とは

今回はCINEMA Chupki TABATAのオープン1周年のイベントということもあり、支配人の佐藤浩章氏と音響監督の岩浪美和氏を交えて、プレス陣に現在の劇場の運営についても状況の説明が行われた。

支配人の佐藤浩章氏と音響監督の岩浪美和氏から映画館の現状も語られた

支配人の佐藤浩章氏と音響監督の岩浪美和氏から映画館の現状も語られた

まず、CINEMA Chupki TABATAの理念でもある音声ガイド付きの上映にあたって、ハードルとなるのは日本国内での音声ガイドというもの普及状況だ。「2015年度調べでは、日本国内の映画タイトルに対して、音声ガイド付きの作品は3%程度。欧米では法律により96〜98%程度の作品には音声ガイドが用意されおり、日本は障害者へのサポートがまだまだ遅れている」(佐藤支配人)

CINEMA Chupki TABATAの上映作品については音声ガイド付きの作品から選んで上映している訳ではなく、まず作品を選び権利元と交渉をし、音声ガイドが存在しない作品については独自で制作・録音も制作し、上映が行われる。作品によってはCINEMA Chupki TABATAでの上映自体が断られるケースも少なくないという。

映画館としてのCINEMA Chupki TABATAの稼働は、月の来場者数で500人程度。健常者の方と障害者の方との割合は10:1で、世の中の障害者の割合と大きく変わるものではない。障害者の方もバリアフリー映画館だから映画を観に来るという訳でもなく作品を選んで観に来るので、CINEMA Chupki TABATAも一般の来客の方が多いのだ。

それでも、日常的に障害者の方がいるのはCINEMA Chupki TABATAの劇場の姿でもある。「劇場に来た時も、盲導犬がいたり、目の見えない方がいたりするのは僕自身も考えたことがなかったので、輪が広がっているなと実感します」(岩浪監督)と、映画館としての使命も果たしているといえる。またCINEMA Chupki TABATAの取り組みによって、音声ガイド付きの作品本数もわずかではあるが増えつつあるという。

上映作品でのヒットタイトルとなったのが『ガールズ&パンツァー 劇場版』、そして『この世界の片隅に』というアニメ作品で、劇場始まって以来となる連日満員になるほどの来客数を記録し8月には月間1500人が来館。「今後ともアニメのラインアップを強化していきたい」(佐藤支配人)と語る。

CINEMA Chupki TABATAのもっとも重要な取り組みは劇場設立の目的でもあるバリアフリーによる映画上映を広め映画業界全体を啓発していくという社会的な使命。そんな取り組みを応援する上でも映画ファン、ホームシアターファン、ガルパンファンにも是非とも足を運んで体験してみてほしい。


©GIRLS und PANZER Film Projekt

折原一也

折原一也

PC系版元の編集職を経て2004年に独立。モノ雑誌やオーディオ・ビジュアルの専門誌をメインフィールドとし、4K・HDRのビジュアルとハイレゾ・ヘッドフォンのオーディオ全般を手がける。2009年より音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員。

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2017.12.12 更新
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