ソニーモバイルコミュニケーションズは、今年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2018」でお披露目した最新ヘッドセット「Xperia Ear Duo」を国内で正式に発表した。発売日は4月21日で、本日より予約をスタートしている。
「Xperia Ear Duo」は、「Xperia Ear」シリーズ第2弾モデルとなるステレオヘッドセット。シリーズ初の左右完全独立タイプの本体を採用し、外音と音楽を同時に聴ける新しいリスニングスタイル“デュアルリスニング”を提案するなど、かなりユニークな製品に仕上がっている。ここでは、実機写真を交えながら、新製品の特徴をレポートしていこう。
「Xperia Ear Duo」で最大の特徴となっているのが、左右のイヤホン本体が完全に独立した完全ワイヤレスタイプのヘッドセットながら、耳穴をふさがずに外音と音楽を同時に聴ける“デュアルリスニング”を実現しているということだろう。
先代の「Xperia Ear」は、片耳タイプの本体を採用。本体に搭載されたアシスタント機能をボイスコントロールすることで、ハンズフリーでコミュニケーションができる点をウリにしていた。今回登場する「Xperia Ear Duo」も、ハンズフリーでコミュニケーションができるというコンセプトそのものは踏襲しているが、左右の両耳に装着してステレオ再生できるなど、より音楽リスニングに振った製品となっている。
左右完全独立型の本体を採用した「Xperia Ear Duo」
ながでも、同社が「Xperia Ear Duo」で大きく訴求しているのが、外音と音楽を同時に聴ける新しいリスニングスタイル“デュアルリスニング”だ。これは、ドライバーユニットを耳の裏側に配置し、そこから音導管を通じて耳穴近くで音を出すことで、外音も音楽も同時に聴けるというもの。同じソニーグループのソニービデオ&サウンドプロダクツとベンチャーキャピタルのWiLが共同で立ち上げたambie(アンビー)というジョイントベンチャーが、耳を塞がずに音楽を楽しめるイヤホン「ambie sound earcuffs」をすでに製品化しているが、仕組みはこちらと同じものだ。
装着は、ドライバーユニットや通信チップ、バッテリーなどが内蔵された本体と、本体から伸びる音導管の間にあるすき間に耳をすっぽりと収める下掛けスタイルとなる。「ambie sound earcuffs」の記事でも同様の指摘をしているが、普通のイヤホンタイプのヘッドセットとは装着方法がまったく異なるため、慣れるまでは装着に多少戸惑うかもしれない。
ちなみに、本体と音導管の幅は固定となっているが、さまざまな耳のサイズに合うように多くの人の耳の形やサイズを研究。音導管の先に取り付ける専用のリングサポーターもS/M/Lの3サイズを用意し、誰が装着しても安定した装着感が得られるようになっているという。試しに耳に装着して頭を左右に素早く振ってみたが、ずれ落ちるということはなかった。
「Xperia Ear Duo」の本体
「Xperia Ear Duo」を装着したところ
今回の「Xperia Ear Duo」は左右完全独立型の本体となっているが、左右のヘッドセットをつなぐ通信規格には、補聴器やヘルスケアなどの分野で長年使用されてきた「NFMI(Near-Field Magnetic Induction)」と呼ばれる電磁誘導を利用した技術が使われている。信号のドロップアウトやノイズによる干渉に強く、左右の音切れが少ないため、ここ最近完全ワイヤレスイヤホンでの採用が多くなっているが、ソニー製品での採用は「Xperia Ear Duo」が初となる。音楽リスニングに振った製品ということで、こういったところにも細かな配慮がなされているというわけだ。ちなみに、ヘッドセット単体でのバッテリー駆動時間は最大約4時間。バッテリー内蔵の専用ケースでは約3回分の充電が可能となっている。
バッテリー内蔵の専用ケース
音導管を通じて耳穴近くで音を出すオープンタイプのヘッドセットということで、気になるのはその音質だが、こちらについても、ウォークマンなどでおなじみのデジタル音響特性補正技術「Clear Phase(クリアフェーズ)」を搭載することでしっかりと担保。ソニーオーディオ部門の協力のもと、オープンタイプ製品に合わせたチューニングを施すことで、自然でクリアな音質を実現しているという。
また、オープンタイプのヘッドセットでもうひとつ気になる音漏れについても、音導管の先が耳穴近くギリギリに配置されていることもあり、耳元まで近づいて聴かない限りは聞き取れないというくらいのレベルに収まっている。音漏れレベルでいえば、インナーイヤーイヤホンのほうが大きい位で、エレベーターなどの静かな狭い空間などで音楽を大音量で聴かない限りは大丈夫だろう。周囲の環境に合わせて自動で音量を調整してくれる「アダプティブボリュームコントロール」も用意されており、音漏れ問題はほぼないといってよさそうだ。
短い時間だが、実際に装着していろいろと試してみたが、外音と音楽がミックスされて聴けるのはやはり新鮮だ。オープンタイプということで、外の雑音も直接耳に届いてしまうし、音導管を伝ってくる音のボリュームもやや抑え目なので、がっつり音圧を感じて音楽と楽しむといったような本格的なリスニング用途にはやや向かないものの、BGMとして楽しむには十分だった。
「Xperia Ear Duo」では、 “デュアルリスニング”という新しいリスニングスタイルの提案に加え、「Xperia Ear」シリーズのウリである“ハンズフリーでコミュニケーションができる”というスマート機能も大きな進化を遂げている。
スマート機能は専用アプリから設定が可能
先代の「Xperia Ear」では、Andoroid端末に専用アプリとインストールして連携設定することで、独自のアシスタント機能「Assistant for Xperia」を利用でき、「(相手の名前)に電話」や「(相手の名前)にメッセージ」といった問いかけで電話やメッセージを送信したり、「(目的地)までナビして」「(アーティスト名)の曲かけて」といったことをボイスコントロールで行うことができた。
「Xperia Ear Duo」でも、Android端末との組み合わせではこれらの機能をすべて踏襲しているが、今回はさらに複数のボイスアシスタントに対応したのがトピック。従来までサポートされていた「Assistant for Xperia」とGoogle「Google Assistant」に加え、LINE「Clova」も新たにサポートされた。
LINE「Clova」が、LINE「ClovaWAVE」や「Clova Friends」といったLINE謹製のデバイス以外で対応したのは「Xperia Ear Duo」が初。「Clova」「Xperia Ear Duo」の専用アプリ経由で「Clova」アプリと連携させて設定を行うことで、「ClovaWAVE」や「Clova Friends」に搭載されていたボイスコントロールでのLINE操作や、「LINE Music」のボイスコントロールが「Xperia Ear Duo」でもできるようになっている。
なお、iOS端末はこれまで同様に、アップル「Siri」がアシスタントとして使用できるようになっている。「Assistant for Xperia」やLINE「ClovaWAVE」については、現時点で対応するかは未定とのことだ。
さらに、ボイスアシスタントの強化に合わせて、ボイスコントロールに重要なマイク性能ついても強化されているのも見逃せない。具体的には、左右ヘッドセットそれぞれに音声取り込み用マイクとノイズ分離用のマイクを搭載。周囲のノイズからユーザーの音声だけを分離することで、これまで以上の高い音声検出精度を実現しているという。
スマート機能関連では、Android端末のみのサポートとなるが、「デイリーアシスト」と呼ばれる新機能も面白い。「Xperia Ear Duo」に新たに搭載された独自開発のセンシングプロセッサー「CXD5602」を用いて、近接/加速度/ジャイロ/気圧/方位/GPS(スマホ側のセンサー情報を使用)といった各種センサー情報を常時センシング。スケジュールのアナウンスや天気予報の読み上げ、不在着信の通知など、あらかじめ設定した項目について、ユーザーの行動情報にあわせて最適な情報を読み上げているという。「Xperia Ear Duo」を使い込むほど精度が高っていくほか、機能拡張のアップデートも予定しているということで、今後の進化も楽しみだ。
近年、スマートスピーカーをはじめとしたボイスアシスタント機能の拡大に合わせ、ボイスコントロールできるウェアラブルデバイス「ヒアラブル」の注目が高まっている。完全ワイヤレスイヤホンのなかにも、この「ヒアラブル」をウリにしたモデルが増えてきているが、今回ソニーモバイルから発表された「Xperia Ear Duo」は、ボイスアシスタント機能との対話だけでなく、周囲とのリアルなコミュニケーションも楽しめる、これまでにない画期的な製品に仕上がっていた。市場想定価格は3万円前後とかなり高価だが、こまでの完全ワイヤレスイヤホンの一歩先を行く「ヒアラブル」の大本命として、大きな注目を集めそうだ。
PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。PC・家電・カメラからゲーム・ホビー・サービスまで、興味のあることは自分自身で徹底的に調べないと気がすまないオタク系男子です。最近はもっぱらカスタムIEMに散財してます。