特別企画
“地上波最高音質”の実力は?

i-dioの"ハイレゾに迫る"音質の新サービス「idio-HQ」を体験してみた

地上波デジタル放送(通称「地デジ」)にバトンタッチする形で役割を終えた地上波アナログ放送。東北3県を除く地域では停波から7年が経過した現在、その"跡地"の一部であるVHF-Low帯(99MHz〜108MHz)は、新しいデジタル放送に利用されている。

そのVHF-Low帯の一部を利用したデジタル放送サービスが「i-dio(アイディオ)」。現在のところ、音声主体のサービスを展開しているが、映像や画像などのデータを配信することも可能。ラジオというよりはマルチメディア放送であり、無料で提供されている。

デジタル放送サービス「i-dio(アイディオ)」

デジタル放送サービス「i-dio(アイディオ)」

2018年12月現在i-dioでは、音楽の紹介を中心に世界のニュース・カルチャーを発信する「TS ONE」のほか、ドライバー向けの音楽と情報を提供する「Amanekチャンネル」、訪日中国人観光客向けの「八六東京」、アニメソング専門の「アニソンHOLIC」といったチャンネルが全国向けに展開されている。ほかには大阪や東海・北陸、九州・沖縄ではローカルチャンネルがあり、中国・四国地方や東北地方では地元FM局(JFN加盟局)のサイマル放送も実施中だ。

なお、i-dioでは送信設備などハードウェアを担当する事業者と、番組編成などソフトウェアを担当する事業者が分かれている。ソフトウェア事業者は地域ごとに6社が運営しており、関東・甲信越広域圏はFM TOKYO系の東京マルチメディア放送、近畿圏はエフエム大阪系の大阪マルチメディア放送、中部圏がエフエム愛知系の中日本マルチメディア放送……と、いずれもFM放送事業者系列だ。

放送には旧地上アナログテレビの1〜3chに相当するVHF-Lowが使用され、形式には地上デジタル放送の音声部分と同じISDB-Tsbが使われる。放送波を利用したデータ通信であり、チャンネルごとに情報量(オーディオデータでいえばビットレート)が異なることもポイントだ。

i-dioの聞きかたは、専用チューナーが受信した信号をスマートフォン経由で聴くか(専用チューナーにはWi-Fi Direct機能がある)、スマートフォンアプリに実装されているインターネット受信モードで聴くかの2通りがある。スマートフォンだけでも楽しめるという点では、MP3などでストリーミング配信を行ういわゆるネットラジオと似ているが、7月にスタートした"ハイレゾに迫る"音質の新サービスはi-dio独自の試みだ。

i-dioは従来の放送サービスとどう違うのか、なかでも高音質をうたう「i-dio HQ Selection」は既存のチャンネルとどこが異なるのか、"ハイレゾに迫る"という音の印象はどうか。実際に放送を聴いてみた。

i-dioの専用チューナー「TUVL01」

i-dioの専用チューナー「TUVL01」

i-dioのチャンネル(http://www.i-dio.jp/channels/、2018年11月現在)

i-dioのチャンネル(http://www.i-dio.jp/channels/、2018年11月現在)

2018年7月にスタートした「i-dio HQ Selection」は、地上波放送初のハイレゾ級音声放送フォーマット「i-dio HQ」を利用した音質重視の専門チャンネル。放送エリアは当面関東・甲信越広域圏(茨城県/栃木県/群馬県/埼玉県/千葉県/東京都/神奈川県/新潟県/山梨県/長野県)となるが、順次全国に拡大する予定だという。なお、視聴に必要な「TS PLAY by i-dio」アプリは2018年11月現在iOS版のみの対応で、Android版の提供時期は検討中とされている。

前述したとおり、i-dioの番組はスマートフォンのみでも聴取可能だが(「TS PLAY by i-dio」アプリのインターネット受信モード)、この「i-dio HQ」を利用した番組を高音質で聴く場合ほとんどのスマートフォンで外付けのUSB DACが必要となる。96kHzというサンプリングレートを扱うためだ。

i-dioのスマートフォンアプリ「TS PLAY by i-dio」。iOS版のみi-dio HQによる

i-dioのスマートフォンアプリ「TS PLAY by i-dio」。iOS版のみi-dio HQによる"ハイレゾ"を楽しめる

聴取できるチャンネルは、現在地によって異なる(画像は関東甲信越地域のもの)

聴取できるチャンネルは、現在地によって異なる(画像は関東甲信越地域のもの)

i-dio HQ Selectionチャンネルの番組表。聞きたい番組は直前にプッシュ通知することも

i-dio HQ Selectionチャンネルの番組表。聞きたい番組は直前にプッシュ通知することも

idio-HQのコーデックは非可逆圧縮(ロッシー)のHE-AACだが、CD音質(44.1kHz)を大きく上回る96kHzというサンプリングレートで配信することにより、"ハイレゾに迫る"音質を実現しようというもの。96kHzの再生に単体で対応するスマートフォンは少なく、たとえばiPhone/iPadでは出力できるデジタルオーディオ信号の上限が48kHzとされるため、96kHz以上のサンプリングレートに対応したUSB DACが必要になる。

「OTOTOY RADIO」では、放送されている楽曲のハイレゾ音源へのリンクが表示される

「OTOTOY RADIO」では、放送されている楽曲のハイレゾ音源へのリンクが表示される

idio-HQでは、低い周波数の情報から高い周波数の情報を推測し生成するSBR技術(Spectral Band Replication)を採用することで、さらに圧縮効率を高めている。従来HE-AACとSBRの組み合わせは、音質を大きく損なうことなくビットレートをAAC-LCの水準からさらに下げる目的で利用されてきたが、i-dio HQではビットレートを下げず、生じた余裕を音質向上に振り向けたというわけだ。

入力している信号のサンプリングレートを表示できるUSB DAC「TEAC HA-P5」をiPhoneに接続し、i-dio HQ Selectionチャンネルを選択したところ、しばらくして放送中の番組「OTOTOY RADIO」の音がHA-P5から聞こえてきた。サンプリングレートを示すLEDを確認すると、「88.2/96」が点灯している。専用チューナーからWi-Fiで受信したオーディオデータがUSB経由でHA-P5に伝送され、96kHzのアナログ信号としてヘッドホン出力されているということだ。

e-onkyoが制作協力するi-dio HQ対応番組「The Right Stuff」を、USB DACで聴いてみた

e-onkyoが制作協力するi-dio HQ対応番組「The Right Stuff」を、USB DACで聴いてみた

なお、受信モードはインターネットとi-dioチューナーのどちらでも構わない。どちらのモードを選択していても、USB DACを接続すれば96kHzの信号が入力される。実際にはどのチャンネルを選局していてもUSB DAC側には96kHzと表示されるため、アプリ側の出力が(実際のサンプリングレートに関わらずS)96kHzでロックされているのだろう。

肝心の音質だが、MP3配信のネットラジオを想像していると肩すかしを食らうことになる。もちろん最終的な音質はUSB DACなりヘッドホンアンプなりの性能ということになるが、メインチャンネルの「TS ONE」(AAC-LC/最大320kbps)と比較するとレンジが広く、音場にも広がりが感じられる。通常放送の音は音域がややナロー傾向で、情報量のためか音の細かな余韻や音場の奥行きは感じにくいが、「OTOTOY RADIO」ではサウンドステージの広さを実感した。「i-dio HQ Selection」チャンネルのビットレートは公表されていないものの、48kHzのTS ONEチャンネルの上限が320kbpsということからすると、同程度と推測できる。

課題は番組内容の充実ということになるが、11月からはe-onkyoが番組の制作協力に乗り出した。OTOTOYも引き続きi-dio HQ対応番組に協力するほか、番組と連動したライブプレイリストの提供などいろいろな仕掛けを考えている(OTOTOY社長・竹中氏)とのことで、今後の展開も期待できそう。iPhoneと接続可能なUSB DACを持っているのならば、「TS PLAY by i-dio」をダウンロードして試してみてはいかがだろう。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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