レビュー
専用トランスミッターで映像と音声のズレも皆無

シャープ初のウェアラブルネックスピーカー「AN-SS1」は軽量&高コスパなお手軽モデル

各社から発売されて話題となっている「ウェアラブルネックスピーカー」。U字状の形で文字どおり首にかけ使用することで、パーソナルな音空間を実現する。ルール化されているわけではないが、送り出し側機器との接続はワイヤレス、用途はテレビ視聴が基本だ。テレビで映画を見るときは大音量がいいけれど隣近所の迷惑になるのは困る、長時間ヘッドホン/イヤホンを装着すると疲れてしまう、ソファで寝そべりながら見るなど自由な姿勢で楽しみたい……そんな消費者の願望がバランスよく満たされる、スピーカーとヘッドホンの間隙を突くような新しい製品ジャンルだ。

シャープがウェアラブルネックスピーカー参入第1弾として投入した「AQUOS サウンドパートナー AN-SS1」は、まさにその路線のど真ん中を行きつつもシャープらしい“ヒネり"がある製品。約88gの軽量設計、連続音楽再生は約14時間(JEITA規格では約8時間)というスタミナバッテリーという基本スペックにくわえ、2台同時使用など競合製品にはない特長も備えている。

シャープ初のウェアラブルネックスピーカー「AQUOS サウンドパートナー AN-SS1」

シャープ初のウェアラブルネックスピーカー「AQUOS サウンドパートナー AN-SS1」

使い方は2通りで、Bluetooth対応のスマートフォン/DAPとペアリングするか、同梱のBluetoothトランスミッターを利用するかだ。前者の場合、標準のコーデック「SBC」で接続することになるため、遅延の発生など特性は一般的なBluetoothオーディオ機器と同レベルということになる。後者の場合、低遅延オーディオコーデック「FastStream」により映像と音のズレを抑える機能と、2台同時利用の「デュアルストリーミング」の機能を利用できる。

Bluetoothにも対応しており、スマートフォンとペアリングして音楽を聴くこともできる

Bluetoothにも対応しており、スマートフォンとペアリングして音楽を聴くこともできる

まずは前者の方法を試すべく、iPhone Xとペアリングしてストリーミングサービス(Spotify)を聴いてみると、意外なほどの音量と音域の広さを実感した。低域の量感はもう一声という印象だが、ネックバンドのもっとも太い部分(約2cm)からドライバーユニットの大きさを推測すると、やむを得ない部分はありそうだ。

それよりも、独特の音像定位に少々戸惑った。物理的な位置関係からして、耳より下方から聴こえるだろうことは想像していたが、他人の声が自分のうなじの少し上あたりに定位するのはなんとも不思議。このウェアラブルネックスピーカー独特の定位には、慣れが必要かもしれない。

小型スピーカーが左右に1基ずつ上向きに取り付けられている

小型スピーカーが左右に1基ずつ上向きに取り付けられている

装着感は上々。首回りになにかある感じは否めないものの、88gという軽さは歩いたときに多少揺れても気にならない。表面素材もサラリとしていて肌触りがよく、金属の冷たさがない。1時間ほど装着したまま過ごしてみたが、疲れは特に感じなかった。

表面はマットな質感で、首にかけても違和感がない

表面はマットな質感で、首にかけても違和感がない

スマートフォンと組み合わせを想定し、本体右端には再生/一時停止ボタン、左端には電話ボタンも用意されている

周囲への"音漏れ"はそこそこある。室内で利用する場合、どのような音楽を聴いているかは周囲の人にまる聴こえと考えていい。数値化すればワイヤレス/Bluetoothスピーカーの数分の1というレベルだが、同じ部屋にいる家族が気にならないよう音楽を聴けるかどうかでいえば、答えはノーだ。ランニングや散歩など屋外利用も、耳を塞がない開放感と周囲の音が自然に耳に入ることの安心感はあるものの、音量をだいぶ下げないとすれ違う人から視線をもらうことになりそうだ。

もうひとつのBluetoothトランスミッターを使う方法は、3.5mmミニプラグをLINE/イヤホンジャックに挿すことで音声入力を行う。トランスミッターはUSB A端子に挿入するが、機器側とデータのやり取りを行うのではなく、電源をとるためだけのもの。だから、音声を送信する側の機器には(5V/500mAを供給する)ごく一般的なUSBポートと3.5mm端子さえあればいいので、大半のテレビやパソコン、オーディオコンポなどの音声を「AN-SS1」で聴くことができる。

専用BluetoothトランスミッターはテレビのUSBポートに、3.5mmミニプラグはイヤホンジャックに装着する

専用BluetoothトランスミッターはテレビのUSBポートに、3.5mmミニプラグはイヤホンジャックに装着する

映画やドラマ、地デジのバラエティとひととおり鑑賞したが、遅延らしい遅延は感じなかった。注意したのは聴こえてくる会話とその人の口もと、要するにリップシンク(映像と音声の同期)が適切かどうかを見定めようとしたわけだが、その心配はなさそうだ。スピーカーの口径ゆえに重低音はもうひと声だが、音場は広く左右のセパレーションも良好、映画も十分堪能できる。

遅延が感じられない理由のひとつが「FastStream」の採用だ。このコーデックはCSR(現Qualcomm)が開発した低遅延が特徴のオーディオコーデックで、Bluetoothオーディオでは標準のSBCが最大220ミリ秒(1000分の220秒)ほどの遅延を生じるところ、最大40ミリ秒程度にまで抑えることができる。AACも最大120ミリ程度の遅延があること、人間は映像と音声の届く差が120ミリ秒より大きいと明確にズレに気付くとされることを考慮すると、ほぼ体感できないレベルにまで遅延を追い込んだといえる。

気になった点としては、首の動きにややセンシティブなところが挙げられる。少しでも首をかしげれば左右の音量バランスは変わり、サウンドステージにも変化が生じる。本機に限らずウェアラブルネックスピーカー全般にいえることだろうが、利用時には"正しい姿勢"が求められることへの覚悟は必要だ。

とはいえ、ヘッドホン/イヤホンの圧迫感がないこと、広く開放的なサウンドステージが得られること、夜中にどれだけ音量を上げても近所迷惑にならないことはウェアラブルネックスピーカーならでは。本機の場合、同梱のBluetoothトランスミッター使用時はほとんど認識できないレベルに遅延が抑えられ、しかも首にほとんど違和感がないほど軽い。今回はテストできなかったが、2台用意すれば2人で同時に同じコンテンツを楽しむことも(Bluetoothトランスミッター使用時限定の機能)。1万円台前半という店頭価格を考慮すると、かなりコストパフォーマンスが高い製品といえるだろう。

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海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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