特別企画
2019年AV家電業界を振り返る【オーディオ編】

ストリーミングサービスの台頭と、中華系DAPが勢いを増した2019年。ヘッドホンは久々の当たり年!

2019年AV家電業界を振り返る【オーディオ編】

2019年のオーディオ界隈は、いよいよ時代の変革が大きく加速してきた、といった印象の強かった1年だった。

というのも、音楽メディアの変化が決定的となったからだ。いまだ日本国内はCDが健闘しているが、海外ではストリーミング&ダウンロード配信がメインとなっていて、CDに関してはアナログレコードとの売り上げ逆転が起きている状況に至っている。その流れが日本でも本格化してきたのは確かで、Apple MusicやSpotifyなど既存のサービスだけでなく、YouTube Musicなども日本での展開をスタート。さらに、Amazon Music HDやmora qualitasなど、ハイレゾ音源の用意をアピールするサービスも登場してきた。(日本国内的には)わずか2〜3年で一足飛びにCDからストリーミング(やダウンロード配信など)で音楽を楽しむ時代になってきたのだ。

Amazon Music HDやmora qualitasといったハイレゾ相当の音質を実現したストリーミングサービスもついにスタートした

そういった時代の潮流に、オーディオ機器もしっかり追従してきている。なかでも、特に俊敏な対応を見せたのがポータブルオーディオジャンルの製品たちだ。たとえばイヤホンは、スマートフォンでの音楽リスニングが増えたことに呼応して、これまで以上にBluetoothワイヤレスに注目が集まり、いまや完全にイヤホンとしての主流となっている。また、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)もAndroid OSを搭載してさまざまな音楽アプリが活用できるようにするなど、利便性に勝るスマートフォンと遜色のない使い勝手のよさをアピールする製品も続々登場している。

その代表的な存在といえるのが、ソニーの“ストリーミング・ウォークマン”、「A100」シリーズと「ZX500」シリーズだ。これまでオリジナルOSを採用し、サウンドの良質さやハイレゾ音源への幅広い対応に注力してきたウォークマンだったが、2019年に登場した新モデルの2つはOSをAndroid 9.0に変更してGoogle Playストアにも完全対応。さまざまな音楽アプリが利用できるようにするなど、SIMなし高音質スマートフォンと呼べるくらいの機能性を持ち合わせるようになり、ストリーミング系サービスが中心の音楽ファンにもしっかり対応してくれるようになった。

Android OSを採用し、さまざまなストリーミング系サービスと組み合わせて利用できるようになったソニーの“ストリーミング・ウォークマン”こと「A100」「ZX500」シリーズ

DAPではもうひとつ、2019年は中国ブランドが勢いを増してきた年となったが、その大半がAndroid OS採用モデルとなっている。しかしながら、中国ブランドのAndroid OS搭載DAPは、諸般の事情によりGoogle Playストアにも対応できていないものも多く、アンオフィシャルなAPKストアを利用しているものも多いので、希望のアプリが使えるかどうかは注意が必要だ。とはいえ、音質、使い勝手の面ともに評判の高いモデルが数多く登場しているのも確か。たとえば、Fiioは、上位モデル「M11」「M11 pro」などに人気が集まっているし、老舗のiBasso Audioはミドルクラス「DX160」のコストパフォーマンスの高さに注目されている。コストパフォーマンスの面では、新進気鋭ブランドHiByも要チェックだろう。さらに、超ミニマムモデル「M0」で人気を集めたShanling(シャンリン)は、年末に同社初のAndroid OS搭載の新フラッグシップモデル「M6」を投入し、こちらにも注目が集まっている。

中華系DAPの中でも今年大ヒットを記録したのがFiiO「M11」。ストリーミングサービスへの対応や、2.5mm/4.4mm 2系統バランス出力搭載といった機能性の高さがユーザーから支持され、価格.comプロダクトアワードでは「デジタルオーディオプレーヤー(DAP)」カテゴリーの銅賞を獲得

また、今年はヘッドホンのラインアップも充実してきたのも特徴といえる。日本ではイヤホンが主流となっているポータブルオーディオ製品だが、ヘッドホンの人気も決して衰えているわけではなく、高級モデルからハイテクモデルまで、さまざまな製品が登場。そのなかでも、特に注目を浴びていたのがノイズキャンセリング機能搭載のBluetoothヘッドホンと有線の高級モデルの2タイプだ。

昨年以来、ソニー「WH-1000XM3」が絶大な人気を誇っているが、今年はノイズキャンセリングヘッドホンの老舗BOSEからまったく新しいデザインのニューモデル「NOISE CANCELLING HEADPHONES 700」が登場。ノイズキャンセリング機能の高性能さなどで人気を保っている。さらに、3モードのノイズキャンセリング機能が切り替え可能なゼンハイザー「MOMENTUM Wireless」の最新世代や、振動ユニット搭載に加えて音響パーソナライズ機能“AudioDo”を採用したSkullcandy「Crusher ANC」など特徴ある製品もそろい、活況の様相を呈している。

BOSEが久々に投入したノイズキャンセリングヘッドホン「NOISE CANCELLING HEADPHONES 700」。これまでの「QuietComfort 」シリーズとは異なるサウンドチューニングに注目が集まった

「MOMENTUM」シリーズの第3世代モデルとしてこの秋登場した「MOMENTUM Wireless」。単にノイズキャンセリング性能の強さを求めるのではなく、最高の音楽体験に必要なレベルのノイズキャンセリング性能に仕上げたのが特徴

重低音に合わせて震える、Skullcandyのヘッドホン「Crusher」シリーズで初めてアクティブノイズキャンセリング機能を備えた「Crusher ANC」。左右の耳の聴覚に合わせたパーソナライズ機能を新たに実装した点も注目だ

いっぽう、有線タイプの高級モデルも、特徴的な製品がいくつも登場している。まず、6月にはモニターヘッドホンのロングセラーモデル、ソニー「CD900ST」の現代版として「MDR-M1ST」が登場。大いに注目を集めた。また、モニター系としてはfinal製の超弩級モデル「D8000 Pro Edition」もすばらしいサウンドを聴かせてくれて、とても印象に残る製品となった。

ソニー・ミュージックスタジオと共同で約4年半の歳月をかけて開発した、ソニーの最新モニターヘッドホン「MDR-M1ST」。コンシューマー向けの最新ヘッドホンにも用いられているさまざまな技術を投入し、ハイレゾへの対応も果たしている

「D8000 Pro Edition」は、2017年に発売した平面磁界型ヘッドホン「D8000」をベースに、レコーディングエンジニア向けのチューニングを実施した特別モデル。40万円超という価格でも大きな話題を呼んだ

そして秋には、オーディオテクニカから杢目模様のメイプルウッドハウジングを採用したポータブルヘッドホン「ATH-WP900」や、ホワイトカラーのウッドハウジングが印象的なGRADO「The White Headphone」、両耳の外に浮いたカタチでユニットが配される超個性派モデルLB-Acoustics「MYSPHERE 3」など、特徴的な製品がいくつも登場。そのほかにも、フォーカルの密閉型上級モデル「STELLIA」や、片側3ユニットを搭載して頭外定位と呼べる自然な音場表現を持つCROSSZONE「CZ-10」、ノイマンブランド初のヘッドホン「Neumann NDH 20」など、記憶に残っている製品は枚挙に暇がない。まさに、ヘッドホンの当たり年といっていいだろう。

オーディオテクニカ伝統のウッドハウジングヘッドホンの最新モデルとしてこの秋登場したのが、ポータブルヘッドホン「ATH-WP900」。高価なギターやバイオリンなどに使用されるメイプル材をハウジングに採用することで、音の立ち上がりや明瞭さをアップさせている

いま、一番人気を集めている完全ワイヤレスイヤホンについては、接続安定性と音質の両面から、かなりの向上を果たした年となった。これには、Qualcomm社の最新SoC「QCC3026」「QCC3020」が多大なる貢献を示したことに他ならないが、各社のミドル〜上級モデルでは都心でも安定した接続性と10時間前後のロングライフを“当たり前のもの”として一気に押し進めてくれたのは確かだ。また、サウンドチューニングに関しても各メーカーの進化が見られている。ノイズキャンセリング機能を搭載したアップル「AirPods pro」やソニー「WF-1000XM3」、3ドライバーによるハイブリッド構成のAVIOT「TE-BD21f」、6mm口径ドライバーを新規開発したNuarl「N6/N6pro」、重低音チューニングを突き詰めたオーディオテクニカ「SOLID BASS ATH-CKS5TW」など、魅力的な製品が多数登場した。

ソニーのノイズキャンセリング機能付き完全ワイヤレスイヤホンの最新モデル「WF-1000XM3」。高精度なノイズキャンセリング性能と高音質の両立で大ヒットを記録した

「AirPods」シリーズ初のノイキャン搭載モデルとして大きな話題を呼んだアップル「AirPods Pro」。ノイズキャンセリング用のマイクを使った外音取り込み機能の自然さでも注目されている

NUARL「N6 Pro」「N6」は、独自ドライバーで音質面の差別化を図った完全ワイヤレスイヤホン。完全ワイヤレスイヤホンの接続の安定性はもはや当たり前になっており、今後はこういった音質重視モデルが増えてくるかもしれない

最後にもうひとつ、再び人気が高まりつつあるレコードについて。レコードプレーヤーに関しても、キラッと光る製品が登場してくれたことも見逃せない。テクニクスから本命中の本命、DJユースにも配慮された「SL1200MK7」が登場してくれたのはとても嬉しいトピックだったし、SAEC社とのコラボレーションによってナイフエッジ機構トーンアームを採用したティアック「TN-3B」も注目を集めていた。また、アナログレコードをBluetoothスピーカーで聴くライフスタイルよりの製品としては、The House of Marleyの「EM STIR IT UP WIRELESS」もなかなか好印象を持った製品となった。

Technics「SL-1200MK7」は、「SL-1200」シリーズのなかでもド本命といえるモデル。シャーシを刷新し、使い勝手に関わる部分も大きくアップデートされており、先代の「SL-1200MK6」同様に大ヒットしそうだ

このように、2019年は世の中の状況変化に対応して、オーディオ機器がこれまでとは異なる機能性やキャラクターを持つ製品が数多く登場する、とても動きのある、いちファンとしてワクワクさせられた1年となった。来年2020年も、新たな進展を望みたい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る