Bluetoothスピーカーが、スマホ・タブレット時代の音楽リスニングの定番デバイスとして定着してはや数年。最近はWi-Fiスピーカーやスマートスピーカーという新興勢力もあるが、小型コンパクト、バッテリー内蔵で持ち歩ける、Wi-Fi環境不要でセットアップもカンタンというWi-FiスピーカーやスマートスピーカーにはないBluetoothスピーカーならではの手軽さから、いまだに根強い人気があり、新製品も定期的に登場している。
価格.comマガジンには「《2020年》おすすめBluetoothスピーカー14選! 防水・高音質などタイプ別に厳選」という人気記事があるので、Bluetoothスピーカーの基礎知識と選び方はそちらを参照してもらうとして、本稿では、最近のBluetoothスピーカーの「音質」はどうなっているかという点にフォーカス。価格.comで現在ヒットしている機種を中心に、全14機種の実機を一堂に集め、ガチレビューを試みた。
今回の音質検証では、Bluetoothスピーカーの価格帯・用途などを踏まえ、全14機種を小型・スタンダード・大型・個性派の4グループに分けてテストを実施した。一部Wi-Fi内蔵機もあるが、原則としてWi-Fi機能は使わず、サウンドはすべてiPhoneとBluetoothで接続して聴いている。再生音楽はAmazon Music HDで宇多田ヒカル『あなた』、Official髭男dism『Pretender』、ビリー・アイリッシュ『bad guy』の3曲を集中的に聴き込んだ。
音質については、クチコミなどで話題になるポイントとして、”中高域”の歌声を中心とした解像感やクリアさ、”低音”の再現性を10点満で採点。“リスニングエリア”は、スピーカー真正面以外の位置でどれだけ自然に音が聴こえるかどうかを実際に位置を変えながら聴き比べて評価している。
手軽に設置でき、スマホと組み合わせるのにちょうどいい小型サイズのBluetoothスピーカーは、最もBluetoothスピーカーらしさが残る製品群だ。さまざまなメーカーから数多くの製品が発売されているが、今回は価格.comのランキング上位にランクインするJBL「JBL GO 2」、ソニー「SRS-XB12」、Anker「SoundCore mini」「Soundcore Icon Mini」の4機種を聴き比べた。
米国では若者の音楽カルチャー向けにシフトして人気を博しているJBL。手のひらサイズのスクエアな筐体にJBLのブランドロゴをあしらい、ポップなカラーリングに仕上げた「JBL GO 2」は、その象徴的なモデルだ。
電源、再生、音量操作ボタンは本体上部に用意
「JBL GO 2」のサウンドは、ナチュラル志向で帯域こそナローだが、宇多田ヒカルの女性ボーカル、Official髭男dismの男性ボーカルとも厚みがあり、声の押し出し感もうまく再現できている。低音も演出的に“ズン”と聴かせてくれるが、ビリー・アイリッシュ『bad guy』の低音は流石に音が軽い。リスニングエリアの広がりも狭いタイプなので、机の上や浴室で自分に向けてピンポイントに音楽を流す、そんな用途向きだろう。
【音質評価】
中高域:★★★★
重低音:★★★
視聴位置:狭い
【スペック】
総合出力:3W
バッテリー駆動:5時間
防水・防塵性能:IPX7
対応コーデック:SBC
その他入力:-
充電端子:microUSB
重量:184g:
カラーバリエーション:ブラック、ブルー、レッド、グレー、オレンジ、グリーン(直販限定でネイビー、シャンパン、シナモン、シアン、イエロー、ミントもラインアップ)
重低音再生をウリにしたソニーのBluetoothスピーカー「EXTRA BASS」シリーズ。そのなかで最も小型でIP67防水防滴・防錆(ぼうせい)とポータブル性能を極めたモデルが「SRS-XB12」だ。
上向きのスピーカーユニットによる360度サウンド
ストラップ付きで吊り下げて持ち歩ける
そのサウンドは、360度どの方向でも同じく聴けるような、ライブな音空間が特徴。男性ボーカルは音空間に浮かび上がるし、女性ボーカルは声の輪郭をうまく立たせてくれる。音分離もていねいで、楽器の演奏のサウンドステージが奥行きとして伝わるほどだ。十分なボリューム感ある重低音の沈みと、かなり強めのリズムが心地いい。重低音も机の上に置くと振動が気になるほどと、このクラスではかなり強力。音の広がりもとても広くBGMを流すといった用途にも最適だ。
【音質評価】
中高域:★★★★★
重低音:★★★★★
視聴位置:広い
【スペック】
総合出力:5W
バッテリー駆動:16時間
防水・防塵性能:IPX67
対応コーデック:SBC、AAC
その他入力:AUX
充電端子:microUSB
重量:243g
カラーバリエーション:ブラック、ブルー、グリーン、レッド、グレー、バイオレット
オーディオ製品を手がけるサブブランド“SoundCore”を立ち上げ、手軽に買える価格帯の製品から、音質にこだわったハイエンドモデルまで、幅広いBluetoothスピーカーをラインアップするAnker。毎年多数のBluetoothスピーカーを投入しているが、なかでも3年以上にわたってロングセラーを続け、いまだに根強い人気を誇っている小型Bluetoothスピーカーが「SoundCore mini」だ。
手のひらサイズの本体だが想像以上に高音質
上向きのユニットで360度に音を拡散するタイプだが、驚くのが見た目以上のパワフルさ。ボーカルは女性、男性とも鮮やかで高域まで伸びるシャープサウンドで、ライブな臨場感と音空間を演出。低音は見た目のサイズをはるかに超えており、『bad guy』の重低音はベースの音や量感、バスドラムのリズムも強烈だ。音の広がりは360度で、机の上だけでなく、音量的には約30畳の部屋でBGMとして流しても通用するレベル。マンションの部屋では低音の響き過ぎを心配するべき水準だ。
【音質評価】
中高域:★★★★★
重低音:★★★★★
視聴位置:広い
【スペック】
総合出力:5W
バッテリー駆動:15時間
防水・防塵性能:-
対応コーデック:SBC
その他入力:microSDメモリーカード、AUX、FMラジオ
充電端子:microUSB
重量:215g
カラーバリエーション:ブラック、ゴールド、ローズゴールド
Ankerの低価格帯Bluetoothスピーカーのなかでも、IP67の防水防塵とストラップ付きで屋外への持ち出しを意識した製品が「Soundcore Icon Mini」だ。音質は立て設置した状態でチェックしているが、寝かせて置くと上向きスピーカーとなり視聴位置の広がりも得られる。
ボタン類は本体上部にずらっと並ぶ
ストラップ付きでアウトドアにも便利
同価格帯に「SoundCore mini」もあるが、「Soundcore Icon Mini」は派手さや臨場感など空間表現はやや抑えめで、女性・男性ボーカルとも伸びやかに線で描くような中高域と、歌声のクリアさが特徴的だった。ピアノの音の響きもとてもナチュラルで、ギターもハキハキした明瞭感がある。『bad guy』の低音の沈み込みも、「SoundCore mini」ほどではないがしっかりと再現できており、マンションやプライベートルームで聴くのに程よい感じ。音はあまり広がらないので、机の上などで自分の方に向けて置いて使いたいモデルだ。
【音質評価】
中高域:★★★★
重低音:★★★★
視聴位置:やや狭い(立てた状態)
【スペック】
総合出力:3W
バッテリー駆動:8時間
防水・防塵性能:IP67
対応コーデック:SBC
その他入力:-
充電端子:microUSB
重量:215g
カラーバリエーション:ブラック
Bluetoothスピーカーのなかでも最も売れ筋モデルが集結するのが1〜2万円クラスのスタンダードモデル。今回はBose「SoundLink Mini Bluetooth speaker II」、JBL「FLIP5」、ソニー「SRS-XB32」、Anker「Soundcore Motion+」の4機種を聴き比べた。
Bose「SoundLink Mini Bluetooth speaker II」
小型で低音再生重視というBluetoothスピーカーのひとつの定型を作ったと言っても過言ではないくらい売れまくった、米国の名門オーディオブランドBoseが送り出した「SoundLink Mini」シリーズ。2015年5月に発売された第2世代モデル「SoundLink Mini Bluetooth speaker II」はすで発売4年以上が経過しているが、今なお価格.comの「Bluetoothスピーカー」カテゴリーのランキング上位に位置しているというのだから驚きだ。
操作系ボタンは本体天面に搭載
背の低く重量感のある本体で、サウンドとしてもスピーカーの外見以上に立体感を作らないタイプだ。現在のライバルと比較してしまうと、中域以上の帯域はナローで女性・男性ボーカルとも歌声のヌケはよくないが、楽曲でも歌と楽器が同じ空間で鳴る、ずいぶんと密度感のあるサウンドだ。いっぽう、部屋を満たすような重低音は極めてリッチで、『bad guy』のような重低音メインを聴きたい場合の相性は抜群だ。小音量でも低音を感じられるところもいい。だが、『あなた』『Pretender』ともに中域にまで音が被る重低音偏重タイプであることは覚えておきたい。リスニングエリアは狭く、真正面の設置を推奨する。
なお、「SoundLink Mini Bluetooth speaker II」の後継モデルとして、2019年11月に「SoundLink Mini II Special Edition」が登場している。バッテリー駆動時間と充電端子、カラーバリエーションが異なるが、サウンドはまったく同じなので、バッテリー駆動時間や価格のバランスから、好みに応じて選ぶのがいいだろう。
【音質評価】
中高域:★★★★
重低音:★★★★★★★
視聴位置:狭い
【スペック】
総合出力:非公開
バッテリー駆動:10時間
防水・防塵性能:-
対応コーデック:SBC
その他入力:AUX
充電端子:microUSB、充電クレードル(オプション)
重量:670g
カラーバリエーション:パール、カーボン、ブラック/カッパー
チューブ型デザインの筐体で外に持ち出すというアクティブなBluetoothスピーカーの世界を作り上げたJBL「FLIP」シリーズ。シリーズ最新作となるのが「FLIP5」だ。500mlペットボトル程の本体は、屋内でも屋外でも使える絶妙なサイズ感。Bluetoothスピーカーを使ってプールサイドでホームパーティーといった米国風ライフスタイルの一旦を垣間見るモデルといえる。
縦置き設置もできるところがチューブ型デザインの利点
本体は耐水ファブリックとラバーのタフネス設計
そのサウンドは、エネルギッシュで中高域まで鮮やかな雰囲気で音楽を鳴らしてれる。音の厚みよりスッキリと立ち上がる中域で、『Pretender』のポップなサウンドもヌケよく突き抜けていて、『あなた』は特に歌声のキレがある。『bad guy』のような重低音は量的なリッチさはあるが、低音については量感こそあるがこもるような表現になるようだ。リスニング位置は360度近く広い範囲で聴けるタイプだが、厳密にはスピーカーの向きもあり正面方向が最もいい音だった。
【音質評価】
中高域:★★★★★★
重低音:★★★★★★
視聴位置:やや広い
【スペック】
総合出力:20W
バッテリー駆動:12時間
防水・防塵性能:IPX7
対応コーデック:SBC
その他入力:-
充電端子:USB Type-C
重量:540g
カラーバリエーション:ブラック、ブルー、レッド、ティール、ホワイト、スクワッド
48mmの大口径フルレンジスピーカーを2発搭載したやや大ぶりなBluetoothスピーカー。防水・防塵・防錆(ぼうせい)に対応したアウトドア仕様は兄弟機の「SRS-XB12」と同じだ。最大の特徴はスピーカーの周囲にマルチカラーのLEDを搭載したことで、音楽に合わせて発光するという日本人離れしたセンスを持っている。米国や南米のようなダンス・ミュージックを聴く文化圏に向けて作られたスピーカーなのだろう。ちなみに、LEDイルミネーションはアプリでOFFにすることも可能だ。
デフォルトのイルミネーションONの状態ではLEDがカラフルに光る
サウンドフィールドを広げる「LIVE」モードは本体から切り替え可能。低音をブーストする「EXTRABASS」はアプリで切り替える仕様だ
サウンドは、中域の厚みを持たせつつ高域まで情報量をともない伸ばしていく、音情報豊富なタイプ。『あなた』『Pretender』の2曲ともに歌声が目の前に迫るような臨場感ある表現だ。歌声やピアノの音の質感、楽器の立体感などの表現力は豊かで、低音は基本は引き締まったサウンドでリズムの刻みを鳴らすタイプ。「LIVE」モードはONにすると、声の広がりに臨場感が出るので、ライブ音源以外でも活用できる。アプリから「EXTRABASS」をONにして強烈な重低音ブーストも可能だ。リスニングエリアもある程度は広いので、横の位置からでも自然に聴けるだろう。
【音質評価】
中高域:★★★★★★★
重低音:★★★★★★
視聴位置:普通
【スペック】
総合出力:30W
バッテリー駆動:24時間
防水・防塵性能:IP67
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
その他入力:AUX
充電端子:microUSB
重量:900g
カラーバリエーション:ブラック、ブルー、グレー、レッド
AnkerのBluetoothスピーカーのなかでもミドルサイズのプレミアムモデルにあたるのが「Soundcore Motion+」。IPX7の防水性能や、専用アプリ「Soundcoreアプリ」によるイコライジング機能など、機能性も十分。本体の出力とサイズとパワーでハイコスパ勝負を仕掛けるモデルといえる。
低音を増強する独自の「BassUpテクノロジー」は、本体上のボタンから操作可能
サウンドは高域のキツさを抑えた中域重視の心地よいナチュラル系サウンドだが、声の帯域が抑え気味のバランスで、『Pretender』の男性ボーカルは音のヌケが今ひとつなのは残念。いっぽう、音楽のステージ全体を表現する立体感の表現は非常にうまい。低音は量的には多めながら、リズムの止めも効くバランス型。デフォルトで有効の「BassUpテクノロジー」を切ると、低音がほとんど出ず中高域のみがシャカシャカと鳴る程度まで落ちるので、イコライジング機能を使ってうまく対応するのがおすすめだ。音の広がりは一見正面向きのようだが、やや横位置でもバランスよく音楽を聴ける。
【音質評価】
中高域:★★★★★★
重低音:★★★★★★★
視聴位置:普通
【スペック】
総合出力:30W
バッテリー駆動:12時間
防水・防塵性能:IPX7
対応コーデック:SBC、aptX
その他入力:AUX
充電端子:USB Type-C
重量:1050g
カラーバリエーション:ブラック、ブルー、レッド