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アーティストの意図を享受したい方へ

モニタースピーカーで音楽鑑賞はアリ! 5機種をガチ試聴


主に音楽制作スタジオやDTM用途で使われている「モニタースピーカー」。楽曲の録音や編集の際、音色や楽器、ボーカルの質感、ステレオ再生時のサウンドステージ等を確認するために開発されており、一般的なオーディオ用スピーカーとは異なる位置づけにある。

しかし、原音忠実再生が行えるという利点は、すなわちアーティストの意図する音作りをストレートに表現することに直結するので、一般的なリスニング用途で使用してもおもしろいと筆者は考えている。そこで今回は、このモニタースピーカーを音楽リスニングに活用するメリットについて語りたい。

記事後半では、国内外のモニタースピーカー5機種を集めて、音質や使い勝手など音楽リスニング時のインプレッションをお届けする。

モニタースピーカーで音楽を聞くメリットとは?

モニタースピーカーは、楽曲制作時に「楽曲を正しく解釈するため」にあり、比較的至近距離(ニアフィールド)での聴取に向いた特性を持っている。つまり、モニタースピーカーをリスニング用途で使用する=デスクトップでのニアフィールドオーディオリスニングで、その効果は発揮される。

ポイントとなるのは、やはりソースに対して忠実な再生能力である。音楽を分析的に聞いたり、アーティストの意図を全面的に享受したいという方にはぴったりだと思う。

特に聴感上の帯域バランス(トーンバランス)がフラットである点は、単に低域をドンドン鳴らして迫力を稼ぐようなチープなスピーカーとは一線を画している。このフラットさは、逆に「音がはっきりと聞こえすぎて長期間の再生だと疲れる」というディスアドバンテージとして語られる部分でもあるのだが、それこそ「アーティストの意図する音作りをストレートに表現する」というメリットと表裏一体の特徴と言えよう。

業務用機器なので、単色の武骨なキャビネットデザインのモデルがほとんどだが、これもイマドキのシンプルな室内インテリアとは意外と相性がよかったりする

それに、モニタースピーカーは多くのモデルがアンプを内蔵しているので、別途アンプを用意する必要がないことも便利。さらに、コストに対する要求が高い業務用機器の世界で揉まれているだけあり、価格対性能で見たときにコストパフォーマンスにすぐれている製品が多いのだ。

音楽リスニングでモニタースピーカーを使う場合のチェックポイント

続いては、音楽リスニングでモニタースピーカーを使うとき、製品を見るうえでのチェックポイントをあげてみよう。大きく5つある。

▼キャビネットの大きさとユニット構成

モニタースピーカーはデスクトップで使用するので、設置する環境に合わせた本体サイズを選ぶのが最優先になる。ただ、低域の再生能力(低域のレンジ)を高めるなら、ある程度大型の製品が有利。また、家庭でも使いやすいデスクトップサイズのモニタースピーカーは、高域を担当するツイーターと中低域を担当するウーハーの2ウェイ構成を採用している製品が多い。

本記事の後半でテストした5機種もすべて2ウェイ構成のモデル

本記事の後半でテストした5機種もすべて2ウェイ構成のモデル

▼アンプ内蔵

現在発売されているモニタースピーカーは、基本的にほとんどがアンプを内蔵している。しかも、そのスピーカーユニットの特性や音色に合わせたアンプが搭載されていることは、大きなアドバンテージと言える。

▼音質

一般的なスピーカー同様、音質は価格帯に比例するが、モニタースピーカーは安価な製品でも聴感上フラットな帯域バランスを持つことが特徴であり魅力である。

▼低域や高域を可変させる音質調整機能の有無

多くのモデルが本体でのボリューム調整に加えて、高域(Treble)と低域(Bass)の量を調節できるスイッチを搭載している。これにより、自分の好みや設置環境に合わせてセッティングを行える。

画像はAdam Audioのモデルで、高域/低域をそれぞれ+-2dBでレベル調整できるようになっている

画像はAdam Audioのモデルで、高域/低域をそれぞれ+-2dBでレベル調整できるようになっている

▼入力端子の種類

アンプ非搭載のパッシブスピーカーの場合、インターフェイスに備わるのはスピーカー出力端子のみだが、アンプを内蔵するモニタースピーカーはRCA、XLR、PHONE、ステレオミニジャックなど複数の種類の入力端子を備えている。注意点として、もともと業務用機器であることもあり、一般的なオーディオ製品で採用されるRCAやステレオミニジャック端子を持たないモデルも多いので、そのときは変換ケーブルや変換プラグを用いる必要がある。

搭載される入力端子の種類はモデルごとにさまざま。パソコンやDAPなど使いたい再生機器と接続できるように、必要となるケーブル類も確認しておこう

モニタースピーカー5機種を音楽リスニングでガチ試聴!

ここからは、国内外のモニタースピーカーで実際に音楽リスニングを行い、その音質や使い勝手についてのインプレッションをお届けする。価格.com上に価格情報が掲載されているモデルの中から、比較的手が届きやすいペアでの販売価格10万円以下の5機種をピックアップした。最も安いもので8千円台、高くても8万円台の製品となっている(※以下、価格情報は、2020年7月29日時点の価格.com最安価格を参照)。

いずれのモデルも、スピーカーの前段である機器の音をストレートに表現するので、セッティングには手を抜けない。今回は再生ソフト「Roon」をインストールした「Macbook Pro」を再生機器としてチョイス。それをエレコム製USBケーブルで、ローランドのUSBオーディオインターフェイス「Super UA」に接続し、そこからアナログ接続でスピーカーに音声出力する構成とした。

スピーカーの底面にフット(足)がないモデルは、不要振動の防止と床とのガタを取るために、ソルボセインインシュレーターを3点支持(フロント2点、リア1点)で使用

なお、音楽リスニング時の設置のコツとしては、スピーカー2本の角度はあまり内向きにせず、あまりにも音が鮮明なときは正面方向に戻したり、高域/低域のレベル補正機能を用いて音調をソフト傾向にふるとよい。

ノートパソコンを挟む形で左右のスピーカーを設置して、若干後方にセッティング。スピーカー角度は、耳に直接音が届くように内振りからスタートして、バックミュージックの広がりとボーカル分離のバランスをとりながら微調整した。また、ツイーターの高さと耳の位置が一致するようモデルごとに座高を調整している

▼試聴曲はこちら!
・ボーカル曲……ビルボードにもランクイン中のR&Bアーティスト、ザ・ウィークエンドの「Blinding Lights」
・クラシック曲……ジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」

1.TASCAM「VL-S3 BT」


TASCAM(タスカム)は、日本の総合オーディオメーカー・TEAC(ティアック)のプロフェッショナルオーディオ部門である。本機は、そんな同社が手がけるコンパクトなアンプ内蔵2ウェイモニター。キャビネットサイズは、110(幅)×170(高さ)×138(奥行)mmで、アンプ出力は14W+14W、入力端子はRCAピンジャックと3.5mmステレオミニジャック端子を装備する。さらに、今回のテストでは使用しなかったがBluetooth接続機能もあり、スマホ等とワイヤレスで接続することもできて便利だ。

とにかくコンパクト! 手の上に乗るような小型キャビネットは、デクストップ上のスペースを占有しないので設置しやすい

価格.com最安価格8,910円(税込・ペア)と、本企画でテストしたモデルの中では最も安価な製品だが、実際に音を聞いてみると価格以上の魅力が備わっていた。音質は、クセのない帯域バランスで特に中低域のレスポンスが秀逸。スピーカー周りの空間に余裕があるので、ザ・ウィークエンドは幅広いサウンドステージ中央に音像がピンポイントで浮かぶ。低域を無理に盛るような安価なコンシューマー向け製品とは一線を画したフラットな帯域バランスで、帝国のマーチのようなクラシック楽曲も好印象だ。

絶対的な表現力は高価なモデルに譲るものの、コンパクトな見た目の印象以上にしっかりとした本格的なサウンドを鳴らすのが特徴。十分に音楽鑑賞用途としての能力があり、何よりもこの価格帯でコンパクトな正統派サウンド環境を作れるのは大きな魅力である。

2.JBL「305P MkII」


往年のホームオーディオユーザーで、JBL社の名前を知らない人はいないだろう。現在も業務用スピーカーからホーム用、Bluetoothスピーカー、さらにはカーオーディオ用スピーカーまで幅広いラインアップを持つ名門メーカーである。本機は、JBLのプロフェッショナル部門であるJBL PROFESSIONALブランドのアンプ内蔵2ウェイモデル。

同社のモデルとしては安価なほうだが、キャビネット寸法は186(幅)×298(高さ)×242(奥行)mmと堂々たるサイズを誇る。内部には、5インチのウーハーと、イメージコントロールウェーブガイドを備えた1インチのツイーターを搭載。アンプ出力は15Wで、入力端子はXLRと標準PHONEを装備する。

名門JBLモニタースピーカーの意匠を受け継ぐ、がっしりと堂々たる構えのキャビネット。なお、高域レベルを+-2dB、低域レベルを-3dBで調整する機能も備えている

そのサウンドは、トーンバランスがフラットで、上下方向のfレンジを無理に伸ばさず、質感表現をストレートに聞かせる音作りに好感が持てる。ザ・ウィークエンドでは、大型キャビネットを生かしたパワフルな低域が印象的だった。ツイーター周りに取り付けられるウェーブガイドにより広大なサウンドステージを確保していてスイートスポットも広く、少しくらい顔をズラしてもボーカル像が不明瞭にならないのもいい。

帝国のマーチは、左右のスピーカーとリスナー位置を正三角形で結び、センター位置でリスニング。立体的なサウンドステージで、オーケストラを構成する1つひとつの楽器の音の輪郭も明瞭になり、オーケストラの雄大さが表現されていた。なお、本製品との組み合わせを想定したサブウーハー「LSR310S」もラインアップされているので、こちらにも注目されたい。

3.Adam Audio「T SERIES T5V」


Adam Audio(アダムオーディオ)は、DTMユーザーやプロフェッショナルを中心に人気上昇中のブランド。1999年3月にドイツのベルリンで設立された。本機は、同社のアイデンティティとも言える独自開発の「ARTリボンツイーター」を搭載したアンプ内蔵2ウェイスピーカー。エントリーモデルでありながら、フラッグシップ機の「Sシリーズ」で使用されるのと同様のウェーブガイドをツイーター周りに搭載したハイコストパフォーマンスモデルである。

ウーハーには、軽量でレスポンスにすぐれたポリプロピレン製の5インチタイプを採用し、ツイーターとウーハーをそれぞれ20W/50WのクラスDアンプで駆動するバイアンプ構成。本体サイズは179(幅)×298(高さ)×297(奥行)mmで、入力端子はXLRとRCA端子を装備する。

ペアで4万円台中盤(単品2万円強)のモデルで、面取りされたフロントバッフルが印象的。本体でのボリューム調整のほか、高域/低域をそれぞれ+-2dB範囲でレベル調整できる

ドライバーの種類だけで音の描写力を推し量ることはできないが、実際に音を聞いてみると、リボン型ツイーターを採用するアドバンテージは大きかった。リッチな質感のある中高域が、低域とシームレスにつながる。全帯域において音に密度感があり、リスニング用途として使用した場合に特に相性がよいと感じた。

ニアフィールドで聞いても高域の刺激が少なく、ザ・ウィークエンドは重量と粘りを感じるキックドラム表現が秀逸。帝国のマーチはトランペットなど金管楽器の表現力にすぐれており、気持ちよく楽しめた。中低域に密度があるので、このようなフルオーケストラ楽曲もしっかり表現してくれる。

4.ヤマハ「MSP5 STUDIO」


世界最大級の楽器メーカーかつ総合AV機器メーカーとして知られるヤマハが開発したアンプ内蔵の2ウェイモニター。キャビネット寸法は179(幅)×279(高さ)×208(奥行)mmで、そこに5インチウーハーとチタン振動板採用の1インチツイーターを内蔵する。再生周波数帯域は50Hz〜40kHzと、高域を伸ばしているのが興味深い。また、ウーハーを40W、ツイーターを27Wの個別アンプで駆動するバイアンプ方式を採用しているのもポイントだ。入力端子はXLRと標準PHONEを装備する。

ペアで5万円前後(単品2万円台中盤)のモデルで、ヤマハいわくキャビネットの形状から細部に至るまで、ユーティリティやデザイン等に配慮した設計を投入。高域は+-1.5dB、低域は+1.5-1.5/3dBの範囲で調整できる

こちらもフラットなトーンバランスだが、特にチタン振動版によるトランジェントにすぐれた伸びのある中高域の質感が印象的である。粒立ちもよく、とにかく音に癖がない。ザ・ウィークエンドは、グルーヴィーなボーカルを正確に表現しながら、空間にしっかりと像を結ぶ。1つひとつの音が明瞭なので、特にニアフィールドで使う場合、スピーカーの内振角を調整して音の広がりとダイレクト感を調整するとよさそうだ。

ベストなセッティングで聞く帝国のマーチは、オーケストラを構成する各楽器の音が明瞭で、奥行きと高さのある鮮明なサウンドステージを表現。映画「スター・ウォーズ」でおなじみのメロディを抑揚豊かに聞くことができた。

5.GENELEC「G One」


近年、高性能モニタースピーカーを代表する存在となっているGENELEC(ジェネレック)は、フィンランドの音響機器メーカー。先鋭的な技術アプローチにチャレンジする数々のモデルをラインアップし、近年は有名スタジオへの導入も増えている。本機は、そんな同社が手がけるアンプ内蔵2ウェイモデルだ。

キャビネット寸法は179(幅)×279(高さ)×208(奥行)で、両手の上に乗るサイズ感がポイント。メタルドームを採用した3/4インチツイーターと5インチウーハーを、それぞれ50Wのパワーアンプでドライブするバイアンプ構成としている。背面のディップスイッチで高域と低域のレベル調整が可能で、さらに室内の音響特性に再生音を最適化させるルーム・レスポンス補正機能も搭載するなど、機能性も高い。

今回試したラインアップの中では、ペアで8万円強(単品4万円強)と最も高価格な製品だが、デザインや素材などモノとしてのビルドクオリティが高いことにも注目したい。底部にはしっかりとしたベースが付き、デスクトップへの設置性も抜群だ

その再生音は、当然帯域バランスはフラットで、コンパクトなサイズを感じさせない情報量と分解能にすぐれている。そしてキャビネットの不要振動が最大限抑えられているおかげだろう、にごりがなく全帯域に密度感があるサウンドで聞かせてくれる。小型なので、聴感上の低域は無理に伸ばしていないものの、レスポンスがよく分解能も高い。

ザ・ウィークエンドではベース表現がとにかくリアル。高域は刺激感とは皆無で艶となめらかさがあり、十分に「音楽鑑賞として」楽しめるクオリティだ。帝国のマーチでは、眼前にコンパクトかつ奥行きのあるサウンドステージが出現して、各楽器の配置も明快に聞こえてきた。

まとめ

いかがだっただろうか? モニタースピーカーの利点は、癖のない音色/音調を持つことと、特性が合わせられたアンプを内蔵していること。そして、聴感上フラットな帯域バランスを持つので、音楽を正しい解釈で表現してくれる。

楽曲の持つ音楽性から、録音/マスタリングの状態までわかるようになり、たとえばグラミー賞受賞作品なんかを聞くと、楽曲の音楽性やそれを下支えする音作りが適切に理解できるので、その受賞理由も感覚的に把握しやすい。繰り返しになるが、リスニング用のスピーカーと比べて分析傾向に聞こえる特徴を生かした聞き方をしたい人、アーティストの意図を全面的に享受したい人にはぴったりだ。

モニタースピーカーはとにかく多くの種類がある。ちなみに今回試聴したモデルの中には、下手なコンシューマー向けのスピーカーよりも音楽性が高いのでは、と思える製品もあったほどだった。好みのモデルを見つけて、より充実したモニターライクな音楽ライフを送ろう。

土方久明

土方久明

ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。

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