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テレワーク&巣ごもり需要で大きく変化した1年

ホーム&ポータブルオーディオ 2020年のトレンド&ヒット商品を振り返る

ホーム&ポータブルオーディオ 2020年のトレンド&ヒット商品を振り返る

今年最大の懸案事項となったコロナ禍によって、すべての業界がさまざまな影響を受けることとなった。オーディオジャンルの製品もしかり、大半のイベント開催が中止となったほか、春先は製品の発売もままならない状況となっていた。とはいえ、悪いことばかりでなく、withコロナ需要といったものがあったりと、あらゆる意味で“特別”な年となったことは確かだ。ここでは、2020年のホーム&ポータブルオーディオのトレンドをヒット商品と合わせて振り返っていきたい。

ホームオーディオはテレワーク需要、巣ごもり需要に注目が集まる

コロナ禍の状況の中、ホームオーディオ系で大いに注目を集めたのが、テレワーク需要や巣ごもり需要にマッチする製品たち。なかでも、デスクトップ用のスピーカーや小型テレビ&PC用のサウンドバー、BGM的に音楽を楽しめるBluetoothスピーカーなど、これまでのような大型テレビとのマッチング、リビング需要とは異なるニーズが高まっていたように思う。

まず、テレワーク需要の範疇となるデスクトップスピーカーについて、カテゴリー的にはモニター用途に使用されるパワードスピーカーというよりも、Bluetoothスピーカー、USBスピーカーなどに分類されるジャンルのものが多く、総じて比較的小型の製品に人気が集まっていた。

今年発売された製品の中では、JBL「104-BT-Y3」が話題となっていた。元々、Bluetoothを搭載しない純然たる小型パワードモニター「104-Y3」をラインアップしていたが、プロ向け製品にもBluetooth搭載を求めるニーズがあったのか、この「104-BT-Y3」が追加されている。モニタースピーカーとしてはかなり小型なこちらの製品、無駄なスペースの少ないデスク環境にもピッタリで、かつ、アナログ3系統とBluetooth、4系統の入力をミックスしてくれたり、Bluetoothが接続されたり音声信号が入ると待機状態から復帰してくれたりと、なかなか使い勝手もよい。ホワイトカラーが用意されていたことも含め、大いに注目を集めたのは確かだ。

JBL「104-BT-Y3」。アナログ3系統とBluetooth、計4系統の入力を備え、複数のデバイスを接続して使用できる使い勝手のよさが人気となっている

JBL「104-BT-Y3」。アナログ3系統とBluetooth、計4系統の入力を備え、複数のデバイスを接続して使用できる使い勝手のよさが人気となっている

ほかにも、同じスタジオモニター系ではTASCAM「VL-S3BT」やIK Multimedia「iLoud Micro Monitor」、ホーム向けパワードスピーカーからはKEF「LSX」などにも注目が集まっていた。

また、PCスピーカー系でも、小型で良サウンドな製品を中心に需要が高まっていた。たとえば、JBL「PEBBLES」は2013年に発売されたロングセラーモデルだが、USB接続のみのシンプルな構成を持つことや、価格の割にちゃんとした音を持ち合わせていることなどが好評を博したのだろう、また、木目を採用した上質な外観のEdifier「ED-R1280T」や、ハイコストパフォーマンスのCreative「Pebble V2」「Pebble V3」などにも注目が集まっている。

Edifier「ED-R1280T」は、クラシックなブックシェルフ型デザインだが、Bluetooth接続にもしっかりと対応。価格.comでも大きな注目を集めた

Edifier「ED-R1280T」は、クラシックなブックシェルフ型デザインだが、Bluetooth接続にもしっかりと対応。価格.comでも大きな注目を集めた

いっぽうで、Bluetoothスピーカーのメイン需要が一体型、高機能タイプが主流であることに変わりはない。特にスマートスピーカーでは、アップル「HomePod mini」が高い人気を集めている。そのいっぽうで、ギターアンプなど楽器系機材を彷彿とさせてくれるMarshall「Emberton」や「STOCKWELL II」、これまでにない新しいデザインテイストを提案したバルミューダ「The Speaker M01A」など、ライフスタイルよりのコンセプトを持つ製品にも注目が集まっていたように感じられた。

アップルの最新スマートスピーカー「HomePod mini」。コンパクトな球体デザインだが、なかなかの良音質モデルだ

アップルの最新スマートスピーカー「HomePod mini」。コンパクトな球体デザインだが、なかなかの良音質モデルだ

加えて、興味深いのがウェアラブルネックスピーカーに対する根強い需要だ。テレビ用なのか、オンライン会議用として仕事に活用しているのかいまひとつ判断しづらいところはあるが、シャープの「AQUOSサウンドパートナー AN-SS2」や「AQUOSサウンドパートナー AN-SS1」などに少なからぬ人気が集まっている。今後の動向に注目したい。

シャープの「AQUOSサウンドパートナー AN-SS2」。テレワーク需要も相まって、人気が高まっている

シャープの「AQUOSサウンドパートナー AN-SS2」。テレワーク需要も相まって、人気が高まっている

ピュアオーディオのジャンルに関しては、巣ごもり需要を反映したか、アナログレコードプレーヤーへの注目がさらに高まったのが顕著な動向だろう。以前は(少なくとも日本国内では)マニア志向が強かったアナログレコード趣味だが、ポップスなど最新タイトルも増えてきているためか、ここ1〜2年で幅広い層からの注目も集め始めている。

そういった状況を反映してか、ソニー「PS-LX310BT」やオーディオテクニカ「AT-LP60XBT」など、フルオート操作&Bluetooth対応の製品に人気が集まっている様子がうかがえる。いっぽうで、カートリッジ交換など細かいセッティングが行える音質重視派も好評で、アナログレコードプレーヤーの大本命といえるTechnics「SL-1200MK7」に加え、DENON「DP-300F」やオーディオテクニカ「AT-LP7」、ONKYO「CP-1050」なども好評のようだ。今年発売されたTEAC「TN-280BT」は、この中間に位置するモデルといえる。

フルオート操作&Bluetooth対応の手軽さで人気を博しているソニー「PS-LX310BT」

フルオート操作&Bluetooth対応の手軽さで人気を博しているソニー「PS-LX310BT」

Technics「SL-1200MK7」のような本格的なモデルも音質にこだわるマニアから根強い支持を受けている

Technics「SL-1200MK7」のような本格的なモデルも音質にこだわるマニアから根強い支持を受けている

完全ワイヤレス全盛、いっぽうで高級モデルの充実が顕著なポータブルオーディオ

ポータブルオーディオにおいては、ワイヤレスイヤホンの躍進が大きなトピックだろう。ここ数年でBluetoothタイプのワイヤレスイヤホンが急激に販売台数を伸ばしてきが、いよいよ、販売台数でも有線イヤホンを上まわることとなった。その人気の中心にあるのが、完全ワイヤレスイヤホンだ。

いまや、オーディオメーカー、スマートフォンアクセサリーメーカーだけでなく、キャラクターグッズショップまでもが完全ワイヤレスイヤホンを手がけるようになっている。まさに、群雄割拠の時代といえるだろう。

そういった状況のなかでも、個性がキラリと光る魅力的な製品がいくつも登場してきたのが今年の状況だ。実は、2020年の完全ワイヤレスイヤホンはANC(アクティブノイズキャンセリング機能)が最大のトレンドとなっていたが、ノイズキャンセリング機能に注目が集まるいっぽうで、音質やデザインなど、基本的な部分で魅力ある製品に人気が集まっている様子もうかがえた。BOSE「QuietComfort Earbuds」やJabra「Elite 85t」はアクティブノイズキャンセリング機能をしっかりと抑えつつも独自の機能性やユーザビリティで、ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 2」やTechnics「EAH-AZ70W」、オーディオテクニカ「Sound Reality ATH-CKR70TW」、AVIOT「TE-D01m」などは音質優先の絶妙なANCチューニングによって、揺るぎないアップル「AirPods Pro」とソニー「WF-1000XM3」の二大巨頭状態の中、大いに健闘していたように思う。

BOSE初のノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホンとして登場した「QuietComfort Earbuds」。発売直後から品薄になるほど注目を集めた

BOSE初のノイズキャンセリング機能搭載完全ワイヤレスイヤホンとして登場した「QuietComfort Earbuds」。発売直後から品薄になるほど注目を集めた

いっぽうで、現在の完全ワイヤレスイヤホンの普及には、低価格化も欠かせないファクターだ。ANKERやTAOTRONICSに加えて、今年はMPOWも本格的な日本上陸をはたし、低価格モデルにおいては中国ブランドの勢力がとても強くなっている(特にMPOWはANC機能搭載ながら8000円前後の価格を実現した「X3 ANC」などもラインアップ)。いっぽうで、JVCやエレコム、オウルテックなど国内メーカーも安価なモデルを発売していて、今後どうなっていくのかは予断を許さない状況ではある。

このほかにも、もうひとつの傾向としてag「AG-TWS04K」やNoble Audio「FALCON PRO」、JVC「Victor HA‐FX100T」、AVIOT「TE-BD21j-pnk」などの音質重視派、オーディオテクニカ「ATH-SQ1TW」、Shure「AONIC 215」などデザインに主張のあるモデルなど、ハッキリした個性を持つ製品が大いに注目を集めて点も、今年の顕著な傾向として興味深いところだった。

Noble Audio「FALCON PRO」。Noble Audioの完全ワイヤレスイヤホン史上最高音質を目指し、同社初のハイブリッド構成を採用した意欲作だ

Noble Audio「FALCON PRO」。Noble Audioの完全ワイヤレスイヤホン史上最高音質を目指し、同社初のハイブリッド構成を採用した意欲作だ

すっかり主役の座を奪われた有線イヤホンだが、興味深い製品はいくつもある。今年はShureから大量にイヤホン新製品が登場していて、なかでも同社初のハイブリッドドライバー構成の「AONIC 4」は、バランスのよい、それでいて勢いのあるShureサウンドを持ち合わせているため、とても聴き心地がよい。Jポップとのマッチングもよく、新時代Shureを表す製品となっている。いっぽうで、finalも新世代の有線イヤホン「A3000」「A4000」をリリース。「A3000」は人気モデル「E3000」の完璧版といえる存在で、いっぽうの「A4000」は「A8000」のハイコスパ版といえるキャラクターとなっていてそれぞれ趣が異なるが、相変わらず“この価格でこの音が楽しめるなんて”といった感想を持つハイコスパ音質を持ち合わせている。

Shure「AONIC 4」。Jポップとのマッチングもよく、Shure有線イヤホンの定番モデルになりそうな予感だ

Shure「AONIC 4」。Jポップとのマッチングもよく、Shure有線イヤホンの定番モデルになりそうな予感だ

そのほかにも、中国の新興ブランド水月雨 (MOONDROP)の「SSR (Super Starship Reference)」やTFZ「LIVE 3」、iBasso Audio「IT00」、こちらも2019年に設立されたばかりのQoAが発売した「Adonis」など、5000円〜2万円程度の比較的手の出しやすい価格帯に魅力的な製品が数多く揃っていたりもする。有線イヤホンも相変わらず目を外せないジャンルといえる。

2020年はポータブルDAP(デジタルオーディオプレーヤー)も面白かった。残念ながらウォークマンの新製品はなかったが、その代わりに海外勢がコロナ禍などなかったかのような勢いで数多の製品をリリースしている。たとえば、DAP界の雄であるAstell&Kernからは、2種類のDACを同時搭載した「SE200」や、同ブランド初の4.4mmバランス端子搭載「KANN ALPHA」など、ユーザー目線の意欲的なコンセプトを持つ製品が登場している。いっぽうでA&normaシリーズの第2世代機「A&norma SR25」は、音質の向上もさることながら、約21時間という連続再生 を確保しているなど、ユーザビリティの高さでも覆いに人気を博している。

Astell&Kern「KANN ALPHA」は、2.5mmバランス、3.5mmアンバランスに加え、同社DAPとして初めて4.4mmバランス接続にも対応。高出力のヘッドホンアンプ部と合わせ、どんなイヤホン・ヘッドホンにも対応できる点が人気となっている

Astell&Kern「KANN ALPHA」は、2.5mmバランス、3.5mmアンバランスに加え、同社DAPとして初めて4.4mmバランス接続にも対応。高出力のヘッドホンアンプ部と合わせ、どんなイヤホン・ヘッドホンにも対応できる点が人気となっている

もうひとつ、LUXURY & PRECISIONの「P6」「P6PRO」も注目株だ。R2Rラダー方式のディスクリートDAC回路をポータブルDAPで初めて実現してモデルで、そのサウンドの上質さは格別。とても高価なモデルではあるが、大いに人気を集めている製品となっている。
また、中国勢は高級モデルへのシフトが推し進められている。FiiOが新フラッグシップモデル「M15」を春先に発売したことを皮切りとして、HiByは屋外でのストリーミングなどをメインターゲットとしたSIM搭載モデル「R8SS」を、Shanlingはヘッドホン端子が簡単に交換できる「M8」を、iBasso Audioはデジタル部とアンプ部を完全別電源化した(充電端子まで別)限定モデル「DX220MAX」を発売。特に「DX220MAX」は瞬く間に限定数が終了してしまった。

このほかにも、HiBy「R3Pro」や「R3Pro Saber」、HIDIZS「AP80 Pro」、iBasso Audio「DX160 ver.2020」など、小型軽量のエントリーモデルにバランス端子が搭載され、対応するハイレゾ音源もグレードアップ。音質的にもかなり良質となっていて、“これひとつで十分なのでは!?”と思えるくらい実力が高くなっている。

FiiOの新フラッグシップDAP「M15」。旭化成エレクトロニクス初の電流出力型ハイエンドDAC「AK4499EQ」を2基搭載した注目モデルだ

FiiOの新フラッグシップDAP「M15」。旭化成エレクトロニクス初の電流出力型ハイエンドDAC「AK4499EQ」を2基搭載した注目モデルだ

iBasso Audio「DX160 ver.2020」。大人気DAP「DX160」をベースに、一部パーツ変更を実施したモデルとなっており、「DX160」同様に高い人気を誇っている

iBasso Audio「DX160 ver.2020」。大人気DAP「DX160」をベースに、一部パーツ変更を実施したモデルとなっており、「DX160」同様に高い人気を誇っている

2021年のホーム&ポータブルオーディオの展望

さて、このように大きな変動がいくつもあった2020年のオーディオ製品だが、はたして2021年はどういったものとなっていくのだろうか。

2021年は、2020年の状況がさらに顕著になっていくと思われる。エントリークラスのイヤホンはさらにワイヤレス化が推し進められ、完全ワイヤレスイヤホンがすべてのイヤホンの主役に躍り出ることだろう。実際、2021年にはBluetoothの新世代規格、LE Audioの新コーデック「LC3」に対応する製品が登場すると予想されている。この「LC3」は、基本的に低遅延と高効率圧縮、マルチ接続が注目ポイントとなっているが、ハイレゾ音源も十分に伝送できる内容となっているため、音質面でも大いに期待が持てる。スタート時は機能性優先だろうが、先々には有線イヤホンに匹敵する音質を持ち合わせる可能性もある。大いに期待しつつ、2021年の動向を見守りたいところだ。もちろん、このLE Audioはホームオーディオにも大いに影響してくるはず。Bluetoothスピーカーも、ここ数年で全盛期を迎えることになりそうだ。

Bluetoothの新世代規格、LE Audioの新コーデック「LC3」に対応する製品が登場する予定。ワイヤレスイヤホンの音質や機能性がますます進化しそうだ

Bluetoothの新世代規格、LE Audioの新コーデック「LC3」に対応する製品が登場する予定。ワイヤレスイヤホンの音質や機能性がますます進化しそうだ

アナログレコードプレーヤーについては、それほど大きな変化はなく、このまま徐々に人気を高めていくような気がする。まずは新譜のアナログ盤が増えることを期待したい。そのいっぽうで、ポータブルDAPについては、このあと数年間で大きな変動が起こりえるかもしれない。現在も激動といえる時代が続いており、急減な進化が推し進められている。なかでも、スマートフォンと変わらない利便性の確保と、さらなる高音質化でその魅力を高めていくことになりそうだ。実際、HiBy「R8SS」はAndroid OSに加えてSIMスロットを実装しているし、LUXURY & PRECISIONの「P6」「P6PRO」はR2Rラダー方式という据え置き型DACも真っ青の高級モデルをリリースしてきた。窮している未来が見えるからこそ、興味深い製品が登場するのかもしれない。DAPの向後の動向も、見守っていきたい。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどをはじめ幅広いジャンルで活躍するAVライター。ハイレゾ音源についても造詣が深く、アニソンレーベルのスーパーバイザーを務めるほか、TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」コーナーではアドバイザーとしてレギュラー出演している。

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