レビュー
B5サイズのコンパクトな筐体に多彩な機能を凝縮!

ストリーミングもカバー!インドアに特化したShanlingのデスクトップ・ミュージックセンター「EM5」

DAPではない「デスクトップ・ミュージックセンター」

DAPことデジタル・オーディオ・プレーヤーは、ポータブルオーディオファンにとってマストアイテムのひとつ。機種選定の基準はDACの性能、サイズやデザイン、利用できるアプリ/サービスの種類などなど...どのように音楽を聴くか、音楽と付き合うかというユーザの考え、そしてライフスタイルにより決定される。

だが、その基準が"インドアでどれだけ使えるか"となるとどうだろう? 屋外ではスマートフォンとTWSイヤホンの組み合わせが現実的だから、そのぶん屋内環境を充実させたい。家でもヘッドホンリスニングが中心だから、DAC/ヘッドホンアンプを重点的に強化したい。家で使うからサイズは気にしない、オーディオコンポとして活用しても面白いかも、と考える向きも少なくないはずだ。

今回取り上げる「EM5」は、意欲的な製品開発で知られるShanling(シャンリン)が世に問う「デスクトップ・ミュージックセンター」。彼らの説明によれば、DAP/ヘッドホンアンプとしての機能に加え、OPTICALや同軸といった入出力端子を装備、Bluetoothレシーバー、そしてネットワークプレーヤーとしても活用できるオールラウンドな使い方ができるデバイスだという。

Shanling EM5

Shanling EM5

筐体は188(幅)×55(高さ)×238(奥行)mm/約2kgと、500枚入りB5コピー用紙束を少し軽くした程度のサイズ感。その天面には4.7インチタッチディスプレイが用意され、DAPライクに操作できる。電源はACでバッテリーは非搭載、基本的には据え置きタイプだ。

ストレージは内蔵が32GB(うちシステム領域8GB)、外部ストレージとして最大2TB対応のmicroSDメモリーカードスロットを1基装備する。カスタマイズを加えたAndroidベースのOSを搭載、2.4/5GHzのデュアルバンドに対応したWi-Fiをサポートすることで、Amazon MusicやApple Musicなどハイレゾ/ロスレス対応ストリーミングも利用できる。

DACチップには、AKM/旭化成エレクトロニクスの32bit DAC「AK4493EQ」を採用。フルバランスアンプ回路により低歪と信号の完全なコントロール、パワフルな出力を実現したという。さらに自社開発の「CPAFローパスフィルタリング・テクノロジー」、水晶デバイスを得意とする日本企業・大真空(KDS)の低位相雑音水晶発振器とShanling自社開発のFPGA技術により、正確な再生の妨げとなるジッターを低減。回路の各チャンネルにはTIの「TPA6120A2」を配置するほか、重要部分にはパナソニックのポリマータンタルコンデンサーを使うなど、パーツも吟味されている。

このDACパートを入出力の両方に利用でき、ローカル再生にもネットワーク再生(DMRとして動作)にも対応するうえ、ヘッドホン出力/LINE出力/プリアウトが可能という点がEM5のユニークな点だ。パワーアンプとスピーカー、もしくはアクティブスピーカーを用意すれば、ミニコンポ風にも活用できてしまう。しかもDSD 256やMQAフルデコードに対応、現在流通しているオーディオフォーマットの大半を網羅する。デスクトップ・ミュージックセンターという命名は、決して誇張ではない。

EM5のフロントパネル

EM5のフロントパネル

EM5のリアパネル

EM5のリアパネル

microSDメモリーカードスロットは最大2TBを利用できる

microSDメモリーカードスロットは最大2TBを利用できる

ブロック図を天面に印刷したのは自信の表れ?

ブロック図を天面に印刷したのは自信の表れ?

DAPとしてもDACプリとしても使えるネットワーク&ストリーミングデバイス

EM5の特徴を簡潔にまとめると、「DAPとしてもDACプリとしても使えるネットワーク&ストリーミングデバイス」ということになる。ヘッドホンリスニングとスピーカーリスニングの両方に対応でき、10万円台前半と値段が手ごろなうえにコンパクト、クオリティも上々というかなりツボを押さえた製品だ。

EM5の再生経路は、ヘッドホンリスニングであれば前面のバランス出力(XLR4と4.4mm)またはシングルエンド出力(6.3mm)、スピーカーリスニングであれば背面のRCAか同軸デジタル、あるいはOPTICALでコンポとつなぐことになる。出力はLINEとプリアウトを選択できるため、プリメインとパワーアンプどちらでも利用できる。Bluetooth(LDACで送受信可能)という選択肢まであるから、"リスニングスタイルを選ばない"と表現してもいいだろう。

EM5のホーム画面

EM5のホーム画面

ソースはローカル(内蔵ストレージ/microSDメモリーカード)のほか、USB接続したPC/スマートフォン、同軸、OPTICALを選択できる

ソースはローカル(内蔵ストレージ/microSDメモリーカード)のほか、USB接続したPC/スマートフォン、同軸、OPTICALを選択できる

試聴はヘッドホンリスニングから。4.4mm端子にリケーブルしたSHURE「SE846」で聴いてみたが、一聴してS/Nの高さとダイナミックレンジの広さがわかる。宇多田ヒカルの「道」は、前奏のカリプソ風シンセサイザーがキレよく、エコーの効果や音像が鮮明に伝わる。高域方向の情報が豊富に感じられるいっぽう、スネアアタックは迅速に収束、音の輪郭にメリハリがあり歯切れがいい。フルバランスアンプ回路の効果か、ポータブル機では埋もれてしまいがちな音がていねいにトレースされる印象だ。

スピーカーリスニングは、"箱庭オーディオ"的ユースケースを想定し、パワーアンプにTOPPING「PA3」、スピーカーにECLIPSE「TD307MK3」という組み合わせを利用した。普段ターンテーブルを置いている場所へ横一列に並べて収まるのだから、そのコンパクトさがうかがえようというものだ。

パワーアンプにTOPPING PA3、スピーカーにECLIPSE TD307MK3という"箱庭"構成でも聴いてみた

パワーアンプにTOPPING PA3、スピーカーにECLIPSE TD307MK3という"箱庭"構成でも聴いてみた

2Lのサイト(http://www.2l.no/hires/)からダウンロードしたMQA音源をいくつか再生してみたが、曲頭のブチっというMQAで起こりがちなノイズは一切ない。Hoff Ensembleの「Innocence」は見通しがよく、抑制が効いたピアノのタッチが印象に残る。スピーカーの口径もあり、さすがに低域の迫力は期待できないものの、この環境でこれだけの明瞭な定位と解像感が愉しめるのであれば、選択肢としてはアリだろう。

MQAのフルデコードに対応、しかも同軸で出力できる

MQAのフルデコードに対応、しかも同軸で出力できる

クイック設定画面でライン出力とプリアウトを選択できる

クイック設定画面でライン出力とプリアウトを選択できる

続いてはネットワーク再生。EM5はDMRとして動作するため、スマートフォンからDLNA/OpenHome対応アプリを利用すると、NASなどに保存している音源を再生できるのだ。実際にAndroid端末で「fidata」を使い試したところ、DIGAに保存しているCDからリッピングした音源をスムーズに再生できた。離れた場所からEM5の再生機能を利用できるわけで、スピーカーリスニング派には朗報だろう。

Android版「fidata」を利用し、DIGAに保存している音源をEM5でネットワーク再生した

Android版「fidata」を利用し、DIGAに保存している音源をEM5でネットワーク再生した

最後にストリーミングも試してみた。EM5はアプリストアを備えていないが、デフォルトで8つのアプリ(Amazon Music、Spotify、Apple Music、TIDAL、酷狗音楽/KuGou、Qobuz、QQ Music、Deezer)がインストールされており、ここ日本で利用するぶんに不満はない。EM5にはアップコンバート機能(クイック設定画面でON/OFFできる)が用意されているので、ロッシー音源でもそれなりに楽しめる。

Amazon MusicやApple Music、TIDALなど計8つのストリーミングアプリがプリインストールされている

Amazon MusicやApple Music、TIDALなど計8つのストリーミングアプリがプリインストールされている

なお、ヘッドホンリスニング/DAPとして使う時にはタッチパネルで操作するとして、スピーカーリスニング/DACプリとして使う時には、曲選択のたびにEM5のところまで歩いて行く煩わしさが残りそうなものだが、その心配は無用。EM5には「Eddict Player」というアプリがあり、ワイヤレスプロジェクションという機能を利用すると、EM5のほぼすべての機能をスマートフォンから遠隔操作できるのだ。ファイル再生にもストリーミング再生にも使えるうえ、レスポンスも悪くなく(さすがにタッチパネルを直接操作するほうが軽快だけれど)、かなり気に入ってしまった。

DLNAとワイヤレスプロジェクションは初期値でオフにされている

DLNAとワイヤレスプロジェクションは初期値でオフにされている

EM5のココが気に入った!

EM5はDAPというには大きく、コンポというには小さい。しかし、見方を変えれば、電源部の設計や部品の選定といったDAPの制約が減り、コンポと組み合わせて聴くなどDAPではできそうでできないことを実現している。

Shanlingはモジュラーシステム採用の「M30」を発表して以降、DAPの新しい可能性...というより「オーディオ機器新ジャンル」の開拓に意気軒昂で、それが昇華したものがEM5だとも言える。機能面でも主要ストリーミングサービスやネットワーク再生に対応しておしまいというわけではなく、スマートフォンから遠隔操作を可能にするワイヤレスプロジェクション、XLRライン出力のサポートといった痒いところに手が届く機能をも用意している。

個人的には、MQAのサポートがツボだった。フルデコード対応なうえ冒頭のボツッというノイズがなく、しかも同軸経由で出力できるPC不要&10万円台で入手できるMQAプレーヤーは意外に少ない。特にTIDALユーザにとっては、いい選択肢になるのではないだろうか。

アプリ(Eddict Player)の完成度にAndroid版とiOS版でムラがある、SRC機能はON/OFFできても条件設定には対応しない(OFFかDSD256のみ)、DLNAとワイヤレスプロジェクションが初期値ではOFFにされていてとまどった、など言いたいことがないわけでもないが、欲しい機能と納得の音がここにある。とにかく、楽しく使えること請け合いだ。

海上 忍

海上 忍

IT/AVコラムニスト、AV機器アワード「VGP」審査員。macOSやLinuxなどUNIX系OSに精通し、執筆やアプリ開発で四半世紀以上の経験を持つ。最近はAI/IoT/クラウド方面にも興味津々。

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