レビュー

見た目も中身も音も大きく生まれ変わったハイエンドウォークマン「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」を聴く

発売前から大きな話題となっているソニー ウォークマンの新しいフラッグシップモデル2機種がついに発売となった。

ソニー ウォークマンの新しいフラッグシップモデル「NW-WM1ZM2」(写真左)と「NW-WM1AM2」(写真右)

ソニー ウォークマンの新しいフラッグシップモデル「NW-WM1ZM2」(写真左)と「NW-WM1AM2」(写真右)

こちら、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」という製品名からもわかるとおり、「Signature Series(シグネチャーシリーズ)」として2016年に登場した既存モデルの後継という位置付けだ。アルミ筐体を採用するノーマルモデル“A”と、純銅筐体を採用するスペシャルモデル“Z”というラインアップも変わりない。3.5mmステレオミニに加えて4.4mmバランスヘッドホン出力を搭載している点や、384kHz/32bitまでのリニアPCM、11.2MHzまでのDSD音源のネイティブ再生に対応している点など、基本スペックもほぼ同じだ。

しかしながら、デジタル接続端子を、長年ウォークマンシリーズで使われてきた独自のWMポートからUSB Type-Cに変更したり、OSをLinuxからAndroidに変更し、「ZX500」シリーズから始まった“ストリーミングウォークマン”世代のシステムへと変貌を遂げるなど、“M2”のひと言では片付けられないほどのアップデートが行われている。今回は、そんな大注目の新製品を詳しくレビューしていこう。

大きく変わった外観デザイン。ハードもソフトも大幅進化し、使い勝手が格段にアップ

まずは、大きく変わった外観デザインからチェックしていこう。「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」のボディは、先代モデルのイメージを踏襲しつつも、サイズ感がひと回りほど大きく、そして厚みについては若干薄くなっている。それに合わせてディスプレイが5インチへと拡大、HD画面(1280×720ドット)となり、Androidアプリを活用することで映像コンテンツも楽しめるようになった。

フルHD画面でないことは少々残念に思えたが、これは音質重視設計からくる結論のようで、製品のアイデンティティからすると当然の選択とも思える。それでも、画面サイズが拡大したことでフロントパネルに占める画面の面積も拡大、上下のブラックアウト部分が狭くなり、ジャケット写真がより大きく映し出され、タッチ操作もさらに快適に行えるようになるなど、メリットは多々ある。

「NW-WM1ZM2」(写真左)と、前代前モデル「NW-WM1Z」(写真右)の大きさを比較。本体も画面サイズも大きくなった

「NW-WM1ZM2」(写真左)と、前代前モデル「NW-WM1Z」(写真右)の大きさを比較。本体も画面サイズも大きくなった

重ねてみると、ひと回りほど大きくなったのがよくわかる

重ねてみると、ひと回りほど大きくなったのがよくわかる

また、外観デザイン変更にともない、左右のハードキーやmicroSDメモリーカードスロットの位置なども変わった。電源ボタンが一段上がった場所に移動しているのは、ポケットの中に入れている時などでもなかなかにわかりやすく操作できて好印象だ。microSDメモリーカードスロットがふた付きのトレー型になってくれたのも、扱いやすさとホコリの侵入の両面でメリットがあり、ありがたいと思えた(先代もカバーが付いていたものの抜き差しの時はじゃまになってしまう傾向があった)。

電源ボタンが独立。ポケットに入れたままボリューム調整する際などに誤って電源ボタンを押してしまうことが少なくなった

電源ボタンが独立。ポケットに入れたままボリューム調整する際などに誤って電源ボタンを押してしまうことが少なくなった

このように、外観デザインだけでも随所に細やかな改良が行われた「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」だが、実際に手にしてみると、見た目とは異なり、しっくりと手に収まるサイズとなっているのが意外だった。重心バランスの問題なのか、先代に比べて重くも感じない(実際には「NW-WM1ZM2」が35g増の490g、「NW-WM1AM2」が32g増の299g)。また、背面上部がやや膨らみを持つため、テーブルなどに置くと、ほんのちょっと斜めになって画面が見やすく操作しやすくなっているのもなかなか考えられている。こと外観デザインについては、なかなか絶妙な改良だと思う。

本体デザインのおかげか、サイズは大きくなったものの、しっかりと手になじんでくれる

本体デザインのおかげか、サイズは大きくなったものの、しっかりと手になじんでくれる

「NW-WM1ZM2」は実測で489gだった。数値だとかなり重く見えるが、意外に重さは感じにくい

「NW-WM1ZM2」は実測で489gだった。数値だとかなり重く見えるが、意外に重さは感じにくい

本体背面に傾斜が付いているので、置いたままでも画面が見やすく、タッチ操作がとてもしやすい

本体背面に傾斜が付いているので、置いたままでも画面が見やすく、タッチ操作がとてもしやすい

なお、先にも話したが、「NW-WM1ZM2」と「NW-WM1AM2」ではデザインはほぼ同一ながら、ボディの素材が異なっている。「NW-WM1ZM2」は金メッキを施した無酸素銅削り出しシャーシを採用、「NW-WM1AM2」はアルミ削り出し素材となる。なかでも「NW-WM1ZM2」は、先代に対して無酸素銅の純度を(99.4から)99.99%へとアップ、背面には新たにアルミ削り出しカバーを採用することでボディ剛性も向上、音質アップにも貢献しているという。

「NW-WM1ZM2」は金メッキを施した純度99.99%の無酸素銅削り出しシャーシを、「NW-WM1AM2」はアルミ削り出しシャーシを採用する

「NW-WM1ZM2」は金メッキを施した純度99.99%の無酸素銅削り出しシャーシを、「NW-WM1AM2」はアルミ削り出しシャーシを採用する

もちろん、外観デザインや素材だけなく、内部に関してもすべてパートにおいてアップグレードが施されている。まず、電源部には独自開発の「FTCAP3」コンデンサーを搭載。ひとつひとつ異なるチューニングを行うなど、きめ細やかなモノづくりが行われている。また、バランスヘッドホン出力の内部配線は、同じキンバー製ケーブルながら、イヤホン用からヘッドホン用の4芯編みケーブルへと径の太さをアップ。さらなる良音質を追求しているという。

上位モデルの「NW-WM1ZM2」は、バランスヘッドホン出力の内部配線にキンバー製の太ケーブルを採用するなど、「NW-WM1AM2」よりも内部パーツがさらに豪華になっている

上位モデルの「NW-WM1ZM2」は、バランスヘッドホン出力の内部配線にキンバー製の太ケーブルを採用するなど、「NW-WM1AM2」よりも内部パーツがさらに豪華になっている

Android OSへの対応も万全だ。アナログ部とデジタル部を基板上で分離し、デジタルブロックを削り出し無酸素銅シールドによって囲むことでノイズを遮断。さらに、アンテナモジュールをアナログブロックと離して影響を低減させたほか、GPS機能も音質優先で削除されている。無線まわりは音質に予期せぬ悪影響を与えることがあるが、そういった部分においても徹底した対処が行われているようだ。とはいえ、Wi-FiもBluetoothも搭載されており、ストリーミング系のアプリで音楽再生も楽しめ、LDACやaptX HDなどの良音質コーデックでBluetoothワイヤレス再生が楽しめたり(新たにAACにも対応している)と、“ストリーミングウォークマン”世代ならではの使い勝手のよさは持ち合わせている。

さらに、デジタル接続端子がWMポートからUSB Type-Cに変更されている点も大きな恩恵といえる。こちらはすでに「ZX500」シリーズで実現していたが、実際にデータ転送や充電を行ってみたところ、かなりのスピードでファイルをコピーすることができ、充電もずいぶん早くなったように感じた。メーカーからの具体的な発表はないものの、6.15GBほどの音楽ファイルを2分かからず転送できた。大容量のハイレゾ音源を扱うDAPとしては、ありがたい進化だ。

デジタル接続端子がUSB Type-Cとなり、ファイル転送がかなり早くなったのもうれしいポイントだ

デジタル接続端子がUSB Type-Cとなり、ファイル転送がかなり早くなったのもうれしいポイントだ

もうひとつ、Android OSを採用しながらも再生時間が長くなっているのもうれしいポイントだ。メーカーの資料では、MP3(128kbps)の連続再生時間が約33時間から約40時間へと20%ほどロングライフ化している。具体的な数値はわからないが、バッテリー容量がかなり大きくなったと思われる。Android OS採用によってバッテリーライフがシビアになるのでは、と心配していたが、いらぬ心配だったようだ。

機能面、ソフトウェアで充実した内容を持ち合わせているのも、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」の特徴となっている。トピックとしては、新たにUSB DAC機能が追加されたほか、アップスケーリング機能が「DSEE Ultimate」へと進化。AIを活用した分析によって、最大192kHz/32bitまでのクオリティアップを行うことができるという。また、Bluetoothワイヤレス接続時にも利用できるようになったほか、利用できるアプリの制限も撤廃され、音楽ストリーミングサービス系のアプリでも有効化できるようになったという。キツい縛りがなくなったのはありがたい。

さらに、独自のアルゴリズムによってPCM音源をDSD信号に変換して再生を行う「DSDリマスタリングエンジン」も搭載されている。こちら、「DMP-Z1」でも採用されていたが、「NW-WM1ZM2」「NW-WM1AM2」では11.2MHz相当のDSD信号に変換する最新バージョンとなっている。このほかにも、イコライザーやバイナルプロセッサー機能など、さまざまなサウンドチューニング機能が搭載され、自分好みの音を作り上げることも可能となっている。

アップスケーリング機能「DSEE Ultimate」やPCM音源をDSD信号に変換して再生を行う「DSDリマスタリングエンジン」など、さまざまなカスタマイズ機能も充実している

アップスケーリング機能「DSEE Ultimate」やPCM音源をDSD信号に変換して再生を行う「DSDリマスタリングエンジン」など、さまざまなカスタマイズ機能も充実している

ちなみに、標準の音楽再生アプリには、ヘッドホン出力をどれくらい使用したか確認できるエージングカウンター機能というかなりマニアックな機能も用意されている

ちなみに、標準の音楽再生アプリには、ヘッドホン出力をどれくらい使用したか確認できるエージングカウンター機能というかなりマニアックな機能も用意されている

「NW-WM1AM2」の音は格段に進化。「NW-WM1ZM2」は別次元のサウンドに

さて、肝心のサウンドはいかがなものだろうか。「NW-WM1AM2」、「NW-WM1ZM2」の順で、イヤホンだけでなくヘッドホンでも試聴を行ってみた。

まずは「NW-WM1AM2」の試聴からスタート

まずは「NW-WM1AM2」の試聴からスタート

Android OSの採用や(ヘッドホン出力部の)S-Master HXが同じ型番(CXD3778GF)だったりと、心配な要素はいくつかあったものの、一聴しただけでそんな心配は吹き飛んだ。特に「NW-WM1AM2」は、先代に対して格段にクオリティが上がっていて、ていねいで緻密なサウンドを聴かせてくれるようになっていた。おかげで、ピアノの音はストレスなく伸びやかな表現になっているし、女性ボーカルも肩の力の抜けた、自然な歌声を聴かせてくれる。総じてニュートラル傾向というべきか、メリハリはしっかりしているものの派手さはなく、聴き心地のよいていねいな表現だ。ボーカルものやアコースティック楽器との相性は抜群といっていい。

また、ヘッドホンをしっかりと鳴らしきってくれる駆動力の高さ、歪み感の少なさも好印象だった。特にソニー「MDR-Z7M2」とは抜群の相性で、DAP直とは思えない溌剌としたサウンドだった。ちなみに、同社製のほかのヘッドホンでも聴いてみたが、「MDR-Z1R」との相性もよく、「MDR-1AM2」ではかえって「NW-WM1AM2」の実力が勝ってしまって惜しい音になってしまっていた。他社製品では、オーディオテクニカ「ATH-ADX5000」とも相性がよく、高域の鋭さが普段よりもやや控えめでニュートラルな帯域表現に生まれ変わったバランスのよいサウンドが聴け、HIFIMAN「DevaPro」もずいぶんと聴き心地のよい音になってくれた。

他社製のヘッドホンを含め、いろいろなヘッドホンを組み合わせて試聴してみたが、どのヘッドホンもしっかりと鳴らしきってくれた

他社製のヘッドホンを含め、いろいろなヘッドホンを組み合わせて試聴してみたが、どのヘッドホンもしっかりと鳴らしきってくれた

続いて、「NW-WM1ZM2」を聴いてみる。実際に聴くまでは、「NW-WM1AM2」で十分というかコスパも含めて「NW-WM1AM2」がいい!と思っていたのだが、残念ながら役者が違う。先代に対してすら格段に向上したSN感のよさによって、見通しのよいダイナミックな抑揚表現のサウンドを楽しむことができる。基本的なサウンドキャラクターは「NW-WM1AM2」とそう変わらないが、高域の伸びやピュアさ、低域のフォーカス感などが確実にクオリティアップ、音楽がより印象的な、魅力あるサウンドとなっているのだ。純銅ボディの恩恵が大きいのだろうか、この音を聴いてしまうと「NW-WM1ZM2」に軍配を上げたくなる。

さらに、ヘッドホンとの相性も抜群で、「MDR-Z1R」との組み合わせでは空間的な広がり感がさらに増し、定位もピシッと定まってくれた。こういった傾向はヘッドホンを「ATH-ADX5000」に替えても同様で、音場表現がとても緻密になっていることがわかる。屋外でもヘッドホン直で楽しみたい人には、「NW-WM1ZM2」の一択だろう。

続いて「NW-WM1ZM2」を試聴。ヘッドホンとの相性が抜群で、直刺しで運用するなら間違いなく「NW-WM1ZM2」を選びたくなる

続いて「NW-WM1ZM2」を試聴。ヘッドホンとの相性が抜群で、直刺しで運用するなら間違いなく「NW-WM1ZM2」を選びたくなる

しかしながら、「NW-WM1AM2」のサウンドも大いに魅力的だ。SN感と音の緻密さでは両者に純然とした違いが感じられるものの、低インピーダンスのイヤホンでは両者の差がそれほど気にならなかったりもする。コストパフォーマンスとしては「NW-WM1AM2」が圧倒的なので、予算次第で「NW-WM1AM2」をチョイスすることがあったとしても、かなり満足できるはずだ。

格段に進化した音質とAndroid OS採用による利便性、進化した使い勝手のよさなどから、どちらを選んでも満足できる製品といえる。唯一、ストリーミングウォークマンと名乗るのならSIMを内蔵してほしいところだが、そのあたりは次の世代、または「ZX500」シリーズの後継あたりに期待しよう。

野村ケンジ

野村ケンジ

ヘッドホンなどのオーディオビジュアル系をメインに活躍するライター。TBSテレビ開運音楽堂にアドバイザーとして、レインボータウンFM「みケらじ!」にメインパーソナリティとしてレギュラー出演。音元出版主催のVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める。

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