レビュー

「Roon Only」の効果は絶大! LUMIN「U2 MINI」を聞く

昨今の音楽聴取スタイルとして、“サブスク”によるストリーミングサービスが主流であることは言うまでもないだろう。それは趣味のオーディオの世界にも影響していて、アナログやデジタルのディスクを再生するだけでなく、音楽をデジタルファイルで再生することもしばしば。

デジタルファイル再生の方法のひとつとして確立されて久しいのが、「ネットワークオーディオ」だ。NASなどのローカルにため込んだファイルを再生するプレーヤーを使うスタイルで、スコットランドの名門LINN(リン)が提唱したDSシリーズがそのはしり。2007年に初代機「KLIMAX DS」を発売して以来、さまざまな派生製品を展開している。

その後、音楽聴取はストリーミングサービスという時代がやってきた。そこでネットワークオーディオプレーヤーに組み込まれたのがストリーミングサービスの再生機能だ。オーディオの世界では「TIDAL」や「Qobuz」といったハイレゾ音源の再生も可能なサブスクリプションサービスが重宝されている。これらは日本でサービスを開始してないが、「Qobuz」の運営母体Xandrie(ザンドリエ)はe-onkyo musicの事業を継承した会社。いずれ日本でも……と期待しているのは筆者だけではないはず。

ワールドワイドでサービスを展開し、日本でも利用できるストリーミングサービスとしては、アップルが手がける「Apple Music」と、Amazonが手がける「Amazon Music」が有名だ。「Apple Music」と「Amazon Music」の一部プランでは、追加費用なしで空間オーディオコンテンツやハイレゾコンテンツを楽しめるということもあり、これらを使っている人もいることだろう。

オーディオ機器の「Roon」対応について

ただし、オーディオ再生機能が組み込まれているかどうか、という点においては「TIDAL」「Qobuz」に利があるのが現状だ。要は「ネットワークオーディオプレーヤーで直接再生できるかどうか」が重要なのだが、「TIDAL」「Qobuz」は音楽再生のための総合管理ソフト「Roon」にも統合されている。ここがオーディオ趣味としてのポイントと言える。

「Roon」に対応する「Roon Ready」製品は増加傾向にある。TEACの「UD-701N」も対応製品のひとつ

「Roon」に対応する「Roon Ready」製品は増加傾向にある。TEACの「UD-701N」も対応製品のひとつ

ここですべてを説明するのは難しいが、「Roon」は音楽を再生するだけでなく、ファイルの管理、未知の音楽のレコメンドまでを包含している。「Core」「Control」「Output」それぞれのソフトウェアが組み合わされて動くのだが、ユーザーはそれを意識せず、PCやオーディオ機器をシームレスに扱えることが大きなメリットだ。実際には、PCが「Core(核)」となって音声信号処理を担当し、iOS/Android端末で「Control(操作)」、ネットワークオーディオプレーヤーなどが音声を「Output(出力)」する、という構成が想定される。もちろん、「Core」「Control」「Output」は同一ネットワーク内に設置する必要がある。

そのうち「Output」を担当できるのが「Roon」対応オーディオ製品であり、「Roon Ready」と呼ばれる。今回取り上げるのは「Roon Ready」製品の中でもかなり尖ったネットワークオーディオプレーヤーLUMIN(ルーミン)「U2 MINI」。D/Aコンバーターを内蔵しないので、「ネットワークトランスポート」と呼ばれることもある。

試用したのは、Pixel Magic System社が展開するブランド、LUMINの「U2 MINI」

試用したのは、Pixel Magic System社が展開するブランド、LUMINの「U2 MINI」

「U2 MINI」はアナログ音声出力を持たない「ネットワークトランスポート」。自宅システムの都合でD/Aコンバーターを持たない製品のほうが好ましく、今回の試用となった。また、デジタル音声出力として同軸(RCA、BNC)、光、AES/EBU(XLR)各種を揃えていることもポイントだ

「U2 MINI」はアナログ音声出力を持たない「ネットワークトランスポート」。自宅システムの都合でD/Aコンバーターを持たない製品のほうが好ましく、今回の試用となった。また、デジタル音声出力として同軸(RCA、BNC)、光、AES/EBU(XLR)各種を揃えていることもポイントだ

利便性の高いネットワークオーディオ機能はアンプやアクティブスピーカーなどに内包されていることが多く、単体プレーヤーに期待されるのは必然的に「音のよさ」ということになる。そのほか、故障時や新規格への対応のための買い替えがしやすいというメリットもあるにはあるが、そんなことを考えるユーザーはほぼ音質重視のマニアではないだろうか。

ここで注目したいのは、LUMINが自社製品群に追加したばかりの新機能「Roon Only」モードである。ネットワークオーディオプレーヤーはインターネットラジオの聴取やAirPlayに対応していることが多いが、こうした機能をすべてオフ。本当に「Roon」しか使えない状態にするというなんとも極まった機能だ。その代わりに、「Roon Readyの音質を大幅に向上」させると輸入代理店は説明する。日頃から「Roon」での音楽再生が中心の筆者も一度試してみたいと「U2 MINI」を借用することになった。SFP端子付き無線LANルーターの導入でネットワークオーディオの音質が改善されたばかりであり、さらにプレーヤーも試してみたい、という気分が高まってきたのだ。

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LUMIN製品の設定はすべて専用アプリ「LUMIN App」(無料、Android、iOS対応)で行う。「Roon」を使うかどうか、デジタルボリュームを使うかどうかなど、直感的にわかりやすい

LUMIN製品の設定はすべて専用アプリ「LUMIN App」(無料、Android、iOS対応)で行う。「Roon」を使うかどうか、デジタルボリュームを使うかどうかなど、直感的にわかりやすい

「Roon Only」モードを使うには、「LUMIN名称」を「♯ROONONLY」に変更するだけ。以降はアプリでの操作も受け付けなくなるため、音楽再生には「Roon」のアプリを使う。なお、「Roon Only」モードを終了するには、ハードウェアリセット(製品本体のリセットボタンを長押し)をする必要がある

「Roon Only」モードを使うには、「LUMIN名称」を「♯ROONONLY」に変更するだけ。以降はアプリでの操作も受け付けなくなるため、音楽再生には「Roon」のアプリを使う。なお、「Roon Only」モードを終了するには、ハードウェアリセット(製品本体のリセットボタンを長押し)をする必要がある

プリアンプ/プレーヤー兼任から専任へ。音質の変化は……

まず、普段の「Roon」再生方法はと言うと、AVプリアンプであるトリノフ・オーディオの「Altitude 16」がネットワークオーディオプレーヤーを兼ねていた。上記のように便利なネットワークオーディオプレーヤー機能を内包した製品だ。この「Altitude 16」は高度なデジタルプロセッシングが売りで、入力した音声信号はすべて96kHz/24bitのデジタル信号に変換され、内部処理される。その理由で、D/Aコンバーターを内蔵しないトランスポート仕様であるほうが好ましく(余計なD/A、A/D変換を挟まないので)、充実したデジタル音声出力端子を持った「U2 MINI」は格好の存在ではあったのだ。

「Altitude 16」はAVプリアンプだが、我が家では2chで音楽を再生する場合のプリアンプも兼ねている。さらに「Roon」のプレーヤーとしてデジタルファイル再生も兼任。デジタルファイル再生時は、デジタルドメインで内部処理後、D/A変換したアナログ音声信号をパワーアンプへ送る。信号経路としては理にかなった方法と言える

「Altitude 16」はAVプリアンプだが、我が家では2chで音楽を再生する場合のプリアンプも兼ねている。さらに「Roon」のプレーヤーとしてデジタルファイル再生も兼任。デジタルファイル再生時は、デジタルドメインで内部処理後、D/A変換したアナログ音声信号をパワーアンプへ送る。信号経路としては理にかなった方法と言える

これまでプリアンプとネットワークオーディオプレーヤーを兼任させていたところ、このテストではネットワークオーディオプレーヤー機能を切り離し、単体の製品に任せることになる。「U2 MINI」を使って「Roon」経由でサブスクリプションサービス「TIDAL」の音楽を再生する。プリアンプを担当する「Altitude 16」へは同軸デジタル出力。この接続方法だと伝送フォーマットが限定されるが、先の内部処理の制約があるため、あまり気にしない方針だ。

こちらが「Roon」アプリでの操作画面。「Control」はiPhoneで行い、「Core」を担当するのは同一LAN内のMac mini。「Output」を行う再生機は左画面で選ぶ。再生機のデジタルボリュームを使う設定であれば、右下のスピーカーマークから音量調整も可能だ

こちらが「Roon」アプリでの操作画面。「Control」はiPhoneで行い、「Core」を担当するのは同一LAN内のMac mini。「Output」を行う再生機は左画面で選ぶ。再生機のデジタルボリュームを使う設定であれば、右下のスピーカーマークから音量調整も可能だ

「Roon Only」モードの効果は劇的! さすがは単体プレーヤー

まずは「U2 MINI」を通常モードで使ってみよう。さすが単体プレーヤーだな、という情報量の多さだ。オーディオテストのド定番、スティーリー・ダンの「Babylon Sisters」を再生すると、緻密に作り込まれた音の響き、余韻に違いが出てくるのだ。「Altitude 16」での再生では、エッジの立ったスネアの響きに見るべきものがあるかも、と一瞬思ったものの、それはむしろ特有のクセっぽさであり、以前から改善したいと思っていた部分だと気付かされる。

ただし、「U2 MINI」の希望小売価格はシルバーが396,000円(税込)、ブラックが435,600円(税込)。そこまでの差があるかどうかと問われれば悩んでしまうところではある。しかも、「Altitude 16」で「Roon」再生をすることには2つのメリットがある。音量調整まで一括でまかなえることと、サラウンドファイルを再生できることだ。特に手元(iPhone)のアプリで選曲と音量調整を一気にできる利便性は手放しがたい。この利便性を上回るほどの圧倒的高音質でなければ、システム変更は考えづらいところだ。

それでは、と期待の「Roon Only」モードを試してみると、これが驚くほどの効果だった……。「あまり手を入れていないこの部屋で音楽を聞く以上は、これよりよい音はそうそう望めないかな」と思っていた想定を簡単に覆されてしまった。部屋の限界、と決めつけていた自分を反省するしかない。通常モードの再生よりもさらに情報量が増えたことにより、音楽の奥行きをより立体的に感じる。いろいろな場所で取材をしてきて、「自宅でこれくらいの音を聞けたらいいな」と思っていたクオリティに初めて達したという印象だ。ここですぐに購入! という価格の製品でもないのだが、今後はシステム変更もやむなしと思わされる音質だったことは確か。しかし、どうせならば上位グレードモデル「U1X」も試してみたい……。

LUMINのネットワークトランスポート最上位機種が「U1X」。電源が別体であるほか、ボディはアルミの削り出し素材を使うなど、贅を尽くした仕様だ

LUMINのネットワークトランスポート最上位機種が「U1X」。電源が別体であるほか、ボディはアルミの削り出し素材を使うなど、贅を尽くした仕様だ

ともあれ、「Roon Only」モードの効果は絶大。このモードは「Roon」しか使わないというユーザーにしかおすすめできないものの、すでに「Roon」が自宅のメインソースという方はぜひLUMIN製品に注目していただきたい。そうでない場合も、「Roon」を音楽聴取のためのメインソースとして検討するきっかけにもなりうる製品だ。

柿沼良輔(編集部)

柿沼良輔(編集部)

AVの専門誌を編集して10年超。「(デカさ以外は)映画館を上回る」を目標にスピーカー総数13本のホームシアターシステムを構築中です。映像と音の出る機械、人が一生懸命つくったモノに反応します。

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