レビュー

DEVIALET、Noble Audio、HIFIMAN、デノンの音質全振り完全ワイヤレスイヤホンを一斉レビュー

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DEVIALET、Noble Audio、HIFIMAN、デノンの音質全振り完全ワイヤレスイヤホンを一斉レビュー

完全ワイヤレスイヤホン選びで最も重要ポイントは音質である−−これは当然のようだが、実のところ「ワイヤレスイヤホンは利便性重視のガジェットだから」とか、「完全ワイヤレスイヤホンで音質トップ」(※4万円以下)とか、注釈付きで語られることも多かった。

最近はそんな完全ワイヤレスイヤホンの世界にも、「完全ワイヤレスイヤホンで最高音質を目指します。音質妥協なし。価格も高くていい」という音質全振りの超ハイエンド機種が続々と登場してきている

今回、2023年に登場した価格にして4万〜10万円台の注目機種、DEVIALET「Gemini II」、Noble Audio「FoKus Prestige」、HIFIMAN「Svanar Wireles」、デノン「PerL Pro」の4機種をお借りできたので、音質を中心にレビューをお届けしよう。

今回試聴した4万〜10万円台の音質全振りハイエンド完全ワイヤレスイヤホン。左から、HIFIMAN「Svanar Wireles」、DEVIALET「Gemini II」、デノン「PerL Pro」、Noble Audio「FoKus Prestige」

今回試聴した4万〜10万円台の音質全振りハイエンド完全ワイヤレスイヤホン。左から、HIFIMAN「Svanar Wireles」、DEVIALET「Gemini II」、デノン「PerL Pro」、Noble Audio「FoKus Prestige」

再生環境はAndroidスマートフォンの「Xperia 1 IV」で、イヤホンとはLDACやaptX Adaptive(96kHz/24bit)といった高音質コーデックにて接続を行っている。アプリは全機種導入しているが音質はデフォルトを基本として、デノン「PerL Pro」のみ製品の特性を考慮してパーソナライズ済みの状態で試聴を実施している。

音源はAmazon Musicのハイレゾ音源で、下記の4曲をそれぞれ試聴したうえで、各ジャンルとのマッチングを5段階の★で評価。サウンドの総評を別途コメントしている。

J-POP(女性ボーカル):YOASOBI/アイドル
J-POP(男性ボーカル):青のすみか/キタニタツヤ
ジャズ:ダイアナ・クラール/夢のカリフォルニア
クラシック:ヴィヴァルディ/四季

2023年のJ-POPヒットソングと音質評価定番のジャズ・クラシックで試聴を実施

2023年のJ-POPヒットソングと音質評価定番のジャズ・クラシックで試聴を実施

DEVIALET「Gemini II」

「Gemini II」は、DEVIALET(デビアレ)が手掛ける第2世代の完全ワイヤレスイヤホンだ。超高級オーディオメーカーがワイヤレスイヤホンに参入ということで話題となった「Gemini」の直接的な後継モデルにあたる。ドライバーユニットには、3層のポリマーにチタンコーティングを施したカスタムメイドの10mm高感度ドライバーユニットが使われている。DEVIALETはイヤホンの装着状態を測定・最適化する技術で他社よりも先行していたが、第2世代となった「Gemini II」では独自のノイズキャンセリング機能「Devialet Adaptive Noise Cancellation」を搭載。最大で40dBもノイズを低減するというという強力なノイズキャンセリング機能も魅力のひとつとなっている。フランスのメーカーらしいおしゃれな外見も特徴的だ。

DEVIALET「Gemini II」。シンプルながら作り込まれたデザインも特徴

DEVIALET「Gemini II」。シンプルながら作り込まれたデザインも特徴

イヤホン本体が小さく、耳へのフィット感も優秀

イヤホン本体が小さく、耳へのフィット感も優秀

専用の「Gemini」アプリからイコライザーなどのカスタマイズも可能だ

専用の「Gemini」アプリからイコライザーなどのカスタマイズも可能だ

バッテリー駆動時間:最大5時間
ノイズキャンセリング:対応
外音取り込み:対応
Bluetoothバージョン:Bluetooth5.2
対応コーデック:SBC、AAC、aptX
マルチポイント接続:対応

YOASOBI/アイドル ★★★★★

音の解像度がきわめて高く、高域までキレよく歪まずに伸びる。女性ボーカルは空間に浮かぶタイプだが、声の高域部が伸びるため鮮やかさも維持。低音もズンズンと沈み込むが、低音の止めもよくディテールも見事。楽曲をライブ感たっぷりに再現するのにマッチしている。

青のすみか/キタニタツヤ ★★★★★

疾走感のある楽曲も音の動と静をはっきりと切り替えていて、個々の音を空間で分離させる再現はまさに見事。あくまで音源に対する客観性、忠実さ重視で、男性ボーカルが空間に浮かんで前に出るようなところはない。だが、その客観性を常に維持し続けるところが聴いていて信頼できる。

ダイアナ・クラール/夢のカリフォルニア ★★★★

全体的なサウンドバランスはニュートラルで、よくも悪くも突っ走らないサウンド。特にゆったりとしたピアノの音、余韻の再現がうまく伝わっている。ギターの音も克明に分離する。ウッドベースの低音もとてもよく分離するが、より音楽に浸りたいという人には違うかもしれない。

ヴィヴァルディ/四季 ★★★★★

ステージ上の楽器個々の音をはっきりと再現するサウンドは、クラシックとの相性も抜群。特に超高域まで伸びやかな音を維持し、音の解像度が音の高低の影響を受けず繊細な音を再現できている。全体的な音量が下がる曲中盤以降もサウンドをていねいに再現するところもよい。

総評

音分離がきわめて細かく、S/Nも非常に高いという、ほかのどのイヤホンにも似ていない異質なサウンド。リスニング的な面白さを感じられるかは楽曲次第ではあるが、音の解像度を極めたい人にはイチオシだ。

Noble Audio「FoKus Prestige」

有線イヤホンの超ハイエンドブランドの一角であるNoble Audioが手掛けた、音質ファーストな完全ワイヤレスイヤホン「FoKus」シリーズの第2弾モデル。2023年2月発売の「FoKus Mystique」をベースとして内部を再構成しており、ドライバーユニットにはKnowles製BAドライバー2基と、8.2mmのダイナミックドライバー1基のハイブリッド構成を採用。音質全振りでノイズキャンセルも非対応というところもなかなかストイックだ。

Noble Audio「FoKus Prestige」。イヤホン本体と充電ケースの外装にスタビライズド・ウッドを採用しており、木目を生かした独特な模様が個性的だ

Noble Audio「FoKus Prestige」。イヤホン本体と充電ケースの外装にスタビライズド・ウッドを採用しており、木目を生かした独特な模様が個性的だ

イヤホン本体はカスタムIEMのような密着度のあるフィット感が特徴

イヤホン本体はカスタムIEMのような密着度のあるフィット感が特徴

専用の「Noble FoKus」アプリでなどのカスタマイズも可能。「myEQ」と呼ばれる聴力測定による音質調整も可能だ

専用の「Noble FoKus」アプリでなどのカスタマイズも可能。「myEQ」と呼ばれる聴力測定による音質調整も可能だ

バッテリー駆動時間:最大9〜10時間
ノイズキャンセリング:非対応
外音取り込み:対応
Bluetoothバージョン:Bluetooth 5.2
対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive(48kHz/24bitまで)
マルチポイント接続:非対応

YOASOBI/アイドル ★★★★

シャープに立ち上がる歌声、そしてそれとは独立したような臨場感ある楽曲の再現がとても面白い。中域の音の情報量は控えめだが、アタックの強さ、ゴリゴリとした低音の再現と行き過ぎなくらいのメリハリ表現がうまい。パワフルに整えられた、リスニング志向のサウンドだ。

青のすみか/キタニタツヤ ★★★★

頭を中心に前後に音空間が広がり、いい意味で音楽への没入感をうまく出してくれるサウンド。男性ボーカルのディテールの再現はよく出ているし、ダイナミズムも心地よい。ほかのイヤホンでは埋もれていた楽器の音も発見できるサウンドバランスだ。

ダイアナ・クラール/夢のカリフォルニア ★★★★

声が迫るような情熱的で鮮やかなサウンド。ジャズボーカルを魅力的に聴きたいという人に特にマッチした音だ。ピアノの余韻の美しさ、リッチな低音の響きがウッドベースやアコースティックギターの音を心地よく聴かせてくれる。音分離よりも音楽的な再現にすぐれたイヤホンだ。

ヴィヴァルディ/四季 ★★★

空間をうまく作りながらそつなくこなすサウンドではあるが、クラシック特有のステージ上の楽器数の多さの再現はほどほど。弦楽器の伸びやかな部分に音の揺らぎを感じるところもあり、ジャンル的な相性はさほどよくないかもしれない。

総評

前作の「FoKus Mystique」とはサウンド傾向が大きく変化し、メリハリのある臨場感志向のサウンドになった。低音がパワフルかつ解像度と臨場感をどちらも狙えるため、リスニング的に楽しめるサウンドだ。

HIFIMAN「Svanar Wireless」

高音質なヘッドホンで知られるHIFIMANが手掛ける完全ワイヤレスイヤホンのハイエンドモデル。口径10mmのダイナミックドライバーには、振動板の表面に特殊なメッキ処理を施したトポロジーダイヤフラムを採用。DACには独自のR2Rラダー方式「HYMALAYA R2R DAC」が使われており、メーカーは総額300,000円の組み合わせを完全ワイヤレスイヤホンで実現したとアピールしている。また、最大35dBもノイズを低減するというノイズキャンセリング機能や、音質特化の「HIFIモード」も搭載されている。なお、2023年12月にはLDACコーデック非対応の廉価版「Svanar Wireless LE」も登場したが、今回はオリジナル版を試聴している。

HIFIMAN「Svanar Wireless」。イヤホン本体は白鳥をイメージしたという個性的なデザイン。充電ケースもジュエリーケースのようだ

HIFIMAN「Svanar Wireless」。イヤホン本体は白鳥をイメージしたという個性的なデザイン。充電ケースもジュエリーケースのようだ

装着時は耳からの飛び出しが大きめ。フィット感は耳の形状に左右されやすいかもしれない

装着時は耳からの飛び出しが大きめ。フィット感は耳の形状に左右されやすいかもしれない

アプリが存在せず、音質カスタマイズなどはできない

アプリが存在せず、音質カスタマイズなどはできない

バッテリー駆動時間:最大4時間(HIFIモード、ANCモードの場合は最大6時間)
ノイズキャンセリング:対応
外音取り込み:対応
Bluetoothバージョン:Bluetooth 5.2
対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
マルチポイント接続:非対応

YOASOBI/アイドル ★★★★

ハキハキとして鮮やかなボーカルをリスナーに迫るように鳴らす、中高域の圧倒的なダイナミズムが特徴。中域の音の解像力、情報量もとても優秀。低音は引き締まっているが、量感の再現は4機種で最も弱い。イコライザーによる調整もできないため、音量小さめで聴く人は注意が必要だ。

青のすみか/キタニタツヤ ★★★★★

冒頭から音が頭の全部を行き交うような感じで、グっと音楽の世界に引き込んでくれる。そして男性ボーカルの声のニュアンスの再現、表現力は今回試した4機種の中でもいちばんだった。エレキギターの再現もとても立体的で面白い。低音はやや弱めではあるが、音量を上げてもキツい音にならないため、音量をガンガン上げて聴いたら楽しいと思う。

ダイアナ・クラール/夢のカリフォルニア ★★★★★

ジャズとして聴いている楽曲だが、ダイアナ・クラールの歌声の表現力があまりにもすばらしい。解像度の高さだけでなく、声のニュアンス・質感を維持しながらしっかりと再現できているところが魅力的だ。ピアノのていねいな響きの再現が心地よく、弦の余韻も伝わってくる。低音の量感は弱めではあるが、十分引き締まっていて個人的にはさほど気にならない。

ヴィヴァルディ/四季 ★★★★

クラシックはステージも適度に作るし、音の解像度もあるバランス型。それぞれの楽器の音の分離とハーモニーもよく整っており、弦楽器の繊細な音も歪ませず無理なく再現してくれている。超高域の音色が歪まず再現できているところも優秀だ。

総評

男性・女性の歌声、ギターやピアノなど、曲を聴いていて意識が向きやすい音の再現がとにかく絶妙。歌ものを中心に聴くなら突き抜けて魅力的だ。ただし、低音の量感が弱いところは好みがわかれるかもしれない。

デノン「PerL Pro」

「PerL Pro」は、「Masimo AAT(Adaptive Acoustic Technology)」によるパーソナライズ機能を特徴とする完全ワイヤレスイヤホン。新生児の難聴検査技術を応用したもので、アプリを介して個人の聴覚特性に対するサウンド補正を行う。ドライバーユニットは10mm超低歪み3レイヤー・チタニウム振動板・ダイナミックドライバーを採用。デノンのサウンドマスター、山内慎一氏による音質監修も行われている。

デノン「PerL Pro」。ハウジング周りが光沢仕様になっているなど、デザインも高級感がある

デノン「PerL Pro」。ハウジング周りが光沢仕様になっているなど、デザインも高級感がある

イヤホン本体はやや大きめだが、イヤーピースのほかにアタッチメントも用意されており、装着感を細かく調整できる

イヤホン本体はやや大きめだが、イヤーピースのほかにアタッチメントも用意されており、装着感を細かく調整できる

専用アプリ「Denon」からパーソナライズが可能。画像は僕の耳でパーソナライズしたものだ

専用アプリ「Denon」からパーソナライズが可能。画像は僕の耳でパーソナライズしたものだ

バッテリー駆動時間:最大8時間
ノイズキャンセリング:対応
外音取り込み:対応
Bluetoothバージョン:Bluetooth 5.3
対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive (96kHz/24bit)、aptX Lossless(44.1kHz/16bit)
マルチポイント接続:対応

YOASOBI/アイドル ★★★

全体としてメリハリがありクリアで楽曲の中で際立つ女性ボーカル、そして臨場感志向で包み込むような音と、よく演出された臨場感重視のサウンドだ。中高域の解像度を重視したタイプではないが、クセがなく聴けるところはさすがだ。

青のすみか/キタニタツヤ ★★★★★

ボーカルを浮かべながら、空間が間近まで迫るような独特の没入感もたらしてくれるサウンド。男性ボーカルの声の厚みとディテール再現がよく、男性ボーカルメインに聴きたい人にはマッチしてくれる。音楽を聴いていて楽しいと思える絶妙なチューニングだ。

ダイアナ・クラール/夢のカリフォルニア ★★★

空間の中で歌声が浮かぶタイプだが、ボーカルの再現は情熱的で肉厚というバランス型。ピアノやアコースティックギターなどのサウンドも空間に漂わせて雰囲気たっぷりだが、そのサウンドの描きわけを特別志向しているタイプではなさそう。心地よいサウンドを聴けるハイエンドイヤホンだ。

ヴィヴァルディ/四季 ★★★

ステージ上を再現するような、空間志向の音で弦楽器は響きとともにゆったりと鳴らして再現。高域まで伸びてしっかりと鳴らすサウンドではあるが、全体的な音の解像度は今回試聴した4機種の中では最も冴えない。サウンドステージを再現することを重視したチューニングと言えるだろう。

総評

空間再現にすぐれ、臨場感を重視したサウンド。今回試聴した4機種の中では音の解像度がある方ではないが、音楽への没入感もあるため楽しく聴ける。なお、パーソナライズしていない状態のサウンドはニュートラルだが空間表現が物足りないため、アプリからの最適化は必須だ。

折原一也
Writer
折原一也
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家。「オリチャンネル」主催。IT系出版の編集者出身で、2004年に独立後はモノ雑誌やオーディオ・ビジュアル専門誌で活動。2009年より音元出版主催のVGP審査員。画質・音質にこだわるAV評論家ではあるが、ライフスタイルになじむ製品、コスパにすぐれた製品を評価する庶民派。2022年に立ち上げたYouTubeチャンネル「オリチャンネル」では、取材メディアの人間として一次情報の発信、検証と測定データに基づくレビューなど独自の発信も行っている。最近のマイブームはAI全般。
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遠山俊介(編集部)
Editor
遠山俊介(編集部)
2008年カカクコムに入社、AV家電とガジェット系の記事を主に担当。ポータブルオーディオ沼にはまり、家にあるイヤホン・ヘッドホンコレクションは100オーバーに。最近はゲーム好きが高じて、ゲーミングヘッドセットにも手を出している。家電製品総合アドバイザー資格所有。
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