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マランツ最高のサラウンドを“一体型”で表現する「CINEMA 30」

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マランツの11chアンプを内蔵したAVアンプ「CINEMA 30」が3月中旬に発売される。希望小売価格は770,000円(税込)。マランツの“一体型”AVアンプとして最高グレードの製品だ。

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トップエンドの要素を“一体型”に詰め込んだのが「CINEMA 30」

「CINEMA 30」は、これまでマランツ“一体型”AVアンプの最高グレード品だった「CINEMA 40」の上位モデル。“セパレート型”のAVプリアンプ「AV10」と16chパワーアンプ「AMP10」の組み合わせをAVにおけるマランツサウンドの頂点として、その音質を“一体型”で実現するためのものだという。

マランツのAVアンプラインアップに「CINEMA 30」が追加された。1つの箱にパワーアンプとプロセッサー/プリアンプなどをすべて収めた“一体型”AVアンプとしては最高グレード製品だ

マランツのAVアンプラインアップに「CINEMA 30」が追加された。1つの箱にパワーアンプとプロセッサー/プリアンプなどをすべて収めた“一体型”AVアンプとしては最高グレード製品だ

上述のとおり、マランツが現在提示している最高のサラウンドサウンドは、パワーアンプを内蔵しないAVプリアンプ「AV10」と16chパワーアンプ「AMP10」の組み合わせで実現される。

こうした構成はAVアンプの“セパレート型”と呼ばれることがあるが、「AV10」も「AMP10」も大型であるうえ、とても高価。さらには2つの箱が並び立つことになり、これはいかにも大げさになってしまう。そこで求められるのが“一体型”の最高グレード品。

姉妹ブランドであるデノンには「AVC-A1H」という“一体型”の最高グレードAVアンプがあるいっぽう、これまでのマランツの“一体型”の最高グレードAVアンプは希望小売価格506,000円(税込)の「CINEMA 40」。「AVC-A1H」のおよそ半額になってしまうわけで、“一体型”のマランツ最高音質が欲しいという人にとっては物足りない状況があったわけだ。

「AV10」と「AMP10」を組み合わせた音を“一体型”で、とひと言で表すのは簡単だが、実際にはコストが限られているうえ、本体が1つになるので、ほぼ「半分」の筐体に同じ機能を収めるということになる。この難題は、「AV10」「AMP10」それぞれに使われた技術をうまく利用することで解決したのだという。その施策を順に見ていこう。

「CINEMA 30」のリアパネル。高級モデルとあって、アナログ系の映像入力端子まで充実した装備。アンプ数は11chだが、対応プロセッシング数は13.4ch。13ch分のスピーカー出力が並ぶ姿が壮観

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「CINEMA 40」との機能的違いはアンプ数とプロセッシングch数

冒頭のとおり、「CINEMA 30」は音質にフォーカスされた製品であり、先行した「AV10」(と「AMP10」)や「CINEMA 40」と比較して新たな機能が追加されているわけではない。決定的に異なることと言えば、内蔵アンプ数やプロセッシング可能なch数くらい。

もちろん、内蔵パワーアンプをあえて使わない設定を行う「プリアンプモード」や自動音場補正機能「Dirac Live」(有償)にも対応している。

「AV10」は15.4chものプロセッシングが可能だが、「CINEMA 30」では13.4ch。「CINEMA 40」では11.4chの対応だ。とはいえ、いずれの製品でもオーバーヘッド(ハイト/トップ)スピーカーの6本使いは可能。オーバーヘッドスピーカーを6本としたうえで、サラウンドバックスピーカーやフロントワイドスピーカーを置きたい……という場合に初めて関わってくる部分なので、限定されたユーザー以外は気になる部分ではないだろう。

また、「CINEMA 30」の内蔵アンプは11ch分。たとえばフロントスピーカーのパワーアンプのみ外部アンプを用意するというシステムであれば、「7.1.6」ch分がまかなえるちょうどよい数字と言える。

少なくとも機能的にはそれほど大きな差はないのだが、オーディオ的なグレードはもちろん別物。より剛性の高いシャーシに高精度D/Aコンバーター(DAC)とプリアンプ、新設計のパワーアンプ、そして余裕のある電源部を詰め込んだのが「CINEMA 30」だ。

「CINEMA 30」の主要スペック
●HDMI入力7系統(すべて40Gbps対応)
●内蔵パワーアンプ数:11ch
●アンプ定格出力:140W+140W(8Ω、20Hz-20kHz、THD 0.05%)
●最大プロセッシングch数:13.4ch(7.4.6構成に対応)
●プリアウト:13.4ch(RCA)
●Dolby Atmos、DTS:Xのほか、360 Reality Audio、Auro-3D、IMAX Enhancedに対応
●「指向性」サブウーハーモード、プリアンプモード搭載
●ネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」対応
●自動音場補正機能Dirac Live対応(有償)
●寸法:442(幅)×457(奥行)×189(高さ)mm(アンテナを除く)
●重量:19.4kg

HDMIなどのスペックは「CINEMA 30」と「CINEMA 40」で大差はないとも言える。音質以外で気にすべきはユーザー自身が何本のスピーカーを設置するかだろう

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スペックシートには表れづらい「CINEMA 30」と「CINEMA 40」の差はこちら

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フロントパネルとキャビネットの強化

「CINEMA 40」と比べてすぐにわかる差は「新プレミアムキャビネット&高剛性シャーシ」の採用。フロントパネルは「AV10」と同様の構造で高級感もある。もちろん主眼は剛性を確保して、悪影響のある振動を抑制すること。メインシャーシは銅メッキ仕様で放熱の観点からも有利だという。さらに電源トランスの真下は3層構造になっており、重量物をしっかりと支える。また、本体横のビスも銅メッキ品。「CINEMA 40」では見送られた音質対策が細かく施されている

「CINEMA 40」と比べてすぐにわかる差は「新プレミアムキャビネット&高剛性シャーシ」の採用。フロントパネルは「AV10」と同様の構造で高級感もある。もちろん主眼は剛性を確保して、悪影響のある振動を抑制すること。メインシャーシは銅メッキ仕様で放熱の観点からも有利だという。さらに電源トランスの真下は3層構造になっており、重量物をしっかりと支える。また、本体横のビスも銅メッキ品。「CINEMA 40」では見送られた音質対策が細かく施されている

DAC回路の強化

「AV10」と同様、DACはやはり電流出力型。DAC素子の近傍にジッター除去回路を置くなど、細かな配慮がされている

「AV10」と同様、DACはやはり電流出力型。DAC素子の近傍にジッター除去回路を置くなど、細かな配慮がされている

デジタル信号を扱う基板レイアウトにも、信号経路の最適化など「AV10」でのノウハウが生かされているという

デジタル信号を扱う基板レイアウトにも、信号経路の最適化など「AV10」でのノウハウが生かされているという

「HDAM SA2」やカスタムコンデンサーを使ったプリアンプ部

プリアンプ部には「HDAM SA2」(※)を採用。同じ名前でも社内で区別される種類があり、最適化の進んだ「HDAM SA2」であるという※「HDAM」とは、フラットな周波数特性と高いスルーレート(応答速度)が特徴の電流帰還型のディスクリート(オペアンプなどを使わない、個々のパーツで構成された)アンプのこと

プリアンプ部には「HDAM SA2」(※)を採用。同じ名前でも社内で区別される種類があり、最適化の進んだ「HDAM SA2」であるという
※「HDAM」とは、フラットな周波数特性と高いスルーレート(応答速度)が特徴の電流帰還型のディスクリート(オペアンプなどを使わない、個々のパーツで構成された)アンプのこと

部品から徹底的に再検討されたパワーアンプ部

パワーアンプは「CINEMA 40」からの流れを汲むAB級増幅。「CINEMA 30」のために増幅素子から新規で開発し、さらに大出力を実現した

パワーアンプは「CINEMA 40」からの流れを汲むAB級増幅。「CINEMA 30」のために増幅素子から新規で開発し、さらに大出力を実現した

chごとにモジュール化されたパワーアンプ回路を搭載することは「AMP10」のコンセプトと同様。増幅素子以外の部品も徹底的に見直されたという

chごとにモジュール化されたパワーアンプ回路を搭載することは「AMP10」のコンセプトと同様。増幅素子以外の部品も徹底的に見直されたという

パワーアンプモジュールはヒートシンクに取り付けられる。その間にはL/R用それぞれに効率的な放熱のための銅板が挟まれている。配列が千鳥配列(互い違い)になっていることもポイントだ

パワーアンプモジュールはヒートシンクに取り付けられる。その間にはL/R用それぞれに効率的な放熱のための銅板が挟まれている。配列が千鳥配列(互い違い)になっていることもポイントだ

実際の「CINEMA 30」のパワーアンプ部。“一体型”AVアンプに多数のパワーアンプを収めるという観点から、「AMP10」からD級増幅アンプを移植することは見送られたという。D級増幅アンプを使うならば、「AMP10」のようにパワーアンプモジュールは端子の近傍に置きたいが、多数のデジタル基板も持つ「CINEMA 30」ではそうもいかないのだ

実際の「CINEMA 30」のパワーアンプ部。“一体型”AVアンプに多数のパワーアンプを収めるという観点から、「AMP10」からD級増幅アンプを移植することは見送られたという。D級増幅アンプを使うならば、「AMP10」のようにパワーアンプモジュールは端子の近傍に置きたいが、多数のデジタル基板も持つ「CINEMA 30」ではそうもいかないのだ

センター配置された大型トロイダルコアトランス

センターのトロイダルコアトランスを中心として、L/Rチャンネルのパワーアンプ部が左右に分けて設置される。信号同士の干渉や熱の集中を低減するねらいだ。スライドの下写真が「CINEMA 40」。構成の違いは明らかだ

センターのトロイダルコアトランスを中心として、L/Rチャンネルのパワーアンプ部が左右に分けて設置される。信号同士の干渉や熱の集中を低減するねらいだ。スライドの下写真が「CINEMA 40」。構成の違いは明らかだ

「CINEMA 40」の電源トランスはEIコアだったところ、「CINEMA 30」はコストの高いトロイダルコアトランスを採用。珪砂と充填剤を充填したケースで振動を抑制している。スライド中の下写真はパワーアンプ電源用のコンデンサー。こちらも容量の大きなものに変更された

「CINEMA 40」の電源トランスはEIコアだったところ、「CINEMA 30」はコストの高いトロイダルコアトランスを採用。珪砂と充填剤を充填したケースで振動を抑制している。スライド中の下写真はパワーアンプ電源用のコンデンサー。こちらも容量の大きなものに変更された

「CINEMA 30」の天板を開いたところ。左右のパワーアンプが分離して置かれた正統派と言える形は、“一体型”の頂点らしい象徴的な仕様だ

「CINEMA 30」の天板を開いたところ。左右のパワーアンプが分離して置かれた正統派と言える形は、“一体型”の頂点らしい象徴的な仕様だ

高S/Nが際立つハイファイクオリティ!

D&Mホールディングスの試聴室にて、「CINEMA 40」と「CINEMA 30」を比較試聴する機会を得られた。試聴システムはBowers&Wilkinsの「800D4」シリーズを中心とした「7.2.4」chスピーカーだ

D&Mホールディングスの試聴室にて、「CINEMA 40」と「CINEMA 30」を比較試聴する機会を得られた。試聴システムはB&Wの「800D4」シリーズを中心とした「7.2.4」chスピーカーだ

最後に、「CINEMA 30」の内覧会にて実機を試聴できたので、そのインプレッションをお伝えする。「CINEMA 40」と順に同じソースを再生し、比較する形だったのだが、一聴すると「CINEMA 30」は地味だと感じられるほど音がスムーズ。要はS/Nのよさが際立っていて、変なクセが感じられない。比べて初めてわかるほどだが、極端に言えば「CINEMA 40」は確かに質感がザラつているのだ。

内覧会では「AV10」での分離のよさを目指した、という説明がされたが、そうしたよさが際立ったのはUltra HDブルーレイ「ウエスト・サイド・ストーリー」のダンスパーティーシーン。トランペットがほかの楽器に埋もれず華やかに響き、それでいて耳に痛くない自然さがある。

同じくUltra HDブルーレイ、エルトン・ジョンの自伝的映画「ロケットマン」から、トルバドールでの初ライブシーンもすばらしかった。周囲の音が遠のき、ステージに立つ瞬間の心音をフィーチャーするかのような演出。遠くから聞こえるような拍手でホールの空気感を表している。部屋のサイズを感じさせない広い空間表現、これが「CINEMA 30」の実力のなせる技だろう

マランツの音質を最終決定する「サウンドマスター」尾形好宣氏によれば、「CINEMA 30」では「AVアンプ用」の音作りはしていないそうだ。つまり、マランツの「Hi-Fi」製品とまったく同じ基準で音質を仕上げているということ。AVアンプとしてはかなりの高級品だが、サラウンドの音質を極めたいと思っているユーザーにとって有力な候補になることは間違いなさそうだ。

柿沼良輔(編集部)
Writer / Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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