筆者が普段使いしているながら聴きイヤホンJBL「Soundgear Sense」。これを実際に24時間装着して生活してみた
耳をふさがないため、音楽と周囲の音を同時に聴ける「ながら聴きイヤホン」の人気が続いている。
ストリーミングサービスの普及で音楽がより身近になるとともに、コロナ禍を経てイヤホンが音楽を聴くためだけのツールではなくなった昨今。イヤホンの気軽な使い方として、ながら聴きというスタイルに人気が出るのも頷けるというものだ。
しかし、本当にながら聴きイヤホンなら違和感なく日常生活を送ることは可能なのだろうか?
今回、朝起きてから24時間ずっと装着しっぱなしにして生活できるか試してみたので 、そのリアルな感想をレポートしていきたい。
今回の企画で使用するのは、JBLのオープンイヤー完全ワイヤレスイヤホン「Soundgear Sense」。筆者が普段から愛用しているモデルだが、24時間着けっぱなしは初めての試みだ。
「Soundgear Sense」はブラックのほかホワイトとブルーのカラーバリエーションをラインアップする
本機は耳に引っ掛ける装着方法を採用しており、イヤーフックは4段階での角度調整が可能。脱着式ネックバンドを付属しているのでネックバンドスタイルでも使用できる。バッテリー持続時間は本体のみで約6時間、充電ケース併用で約24時間。バッテリーの持ち具合がどうなるかにも注目したい。
脱着式のネックバンドも付属。首にかけた状態でも使える
作業ツールとしての側面も大きいながら聴きイヤホンには必須とも言える、最大2台のデバイスと同時接続できるマルチポイントにも対応。また、左右どちらかのイヤホンだけで使用可能なデュアルコネクト機能も搭載する。本体はIP54等級に対応しているので、ちょっとした汗や雨にも耐えられる。
サウンド面では、16.2mmダイナミックドライバー+BASSエンハンスメント(低音強化アルゴリズム)を含むサウンドチューニングにより、耳をふさがないスタイルのイヤホンながらパワフルな低音とクリアな高音域の実現を謳う。加えて、音漏れにも配慮された設計がされている。対応コーデックはSBC、AAC(LC3にも対応予定)までだが、ながら聴きイヤホンに高音質コーデックはあまり必要ないと思うので、そこに問題はないだろう。
さて、企画の前に注意事項として記しておきたいのだが、これだけ長時間着けっぱなしにする使い方は、本来推奨されるものではないはずだ。
また聴覚に影響があるため、たとえ装着はしていても、絶対に音楽を流しっぱなしにするべきではない。
筆者も「あくまで耳に着けているだけで音楽は流していない」時間は長めに確保し、風呂のように外さないといけない場面や、撮影のために少し外すことがあることをご了承のうえ、レポートを読んでいただけたら幸いだ。
24時間にわたるながら聴きイヤホン生活を開始
朝6時40分、起床。ここから「Soundgear Sense」を装着して、24時間ながら聴きイヤホン生活スタートだ。
普段は寝起きにいきなりイヤホンはしないし、何か聴いたりもしないが、せっかくなので低めのボリュームで音楽を流しながら身支度を調える。
耳をふさがないため、周りの小さな音でも気づける
着替えていると、飼い猫たちが朝ご飯を催促してきた。いつもは8時過ぎを朝食時間にしているのだが、今日は気分が違うようだ。「早くご飯を出して」と訴えかける鳴き声をしっかり聴き取れた。
その後、目覚めのコーヒーを淹れていると実感したが、家事をする際は耳が開放されているほうが作業しやすい。そのうえで、そこに音楽が加わることで快適に家事が進められる。さっそく、ながら聴きイヤホンの本領を発揮してくれている印象を受けた。
イヤホンは着けっぱなしだが、耳を休ませるために音を鳴らさない時間も確保
そこから10時過ぎまで、1時間30分ほどYouTubeを見てダラダラと過ごす。朝に100%だったバッテリー残量は、すでに71%になっていた。このペースでは夜まで持たないのではという不安と、何より耳を休ませるために再生をストップ。しばらく何も鳴らしていないイヤホンを耳に着けたまま、原稿書きに集中することにした。
1本のオンライン会議を挟み、休憩に入る。オンライン会議ではそのまま「Soundgear Sense」を使用したが、着けっぱなしなうえに、マルチポイントでパソコンとも接続されているので、スムーズに会議に入れた。そして相手の声は十分クリアに聴こえたし、こちらの声について確認してみると、ノイズ混じりになることなく聴き取りやすい音質で届いたようだ。
およそ6時間が経過したが、思ったよりも違和感はない
15時前に遅めの昼食。ここまで約6時間 「Soundgear Sense」を着けっぱなしだが、現状では耳に痛みは感じない。むしろ、ながら聴きイヤホンならではの装着感によって、イヤホンの存在を意識することがなくなってきた。
また、普段は「万が一、電車などで音が出てしまわないように」とスマートフォンはミュートにしているが、息抜きと情報収集がてら何気なく眺めるSNSから音が聴こえることに楽しくなる。イヤホンを着けていることを忘れているので一瞬スピーカーから音が出ているのではと驚くが、イヤホンを意識しないままスマートフォンの音が自分だけに聴こえるという状況は、慣れるとかなり便利だ。
さまざまな音があふれる環境では、耳をふさがないことの恩恵が実感できる
買い物のため外出すると、ながら聴きイヤホンが耳をふさがないことの恩恵を強く感じる。カナル型イヤホンなどでノイズキャンセリング機能とセットで搭載されることの多いヒアスルー(外音取り込み)機能は、優秀なモデルでなければいかにも「マイクで拾いました」という聴こえ方をしてしまう。「Soundgear Sense」のようなタイプはそもそも耳をふさいでいないので、外音がダイレクトに飛び込んでくるため気持ち悪さがない。
飲食店でのやり取りなども、音楽を再生しなければまったく問題なく行える。音楽を再生していても相手の声が聞こえはするが、それで何を言っているのかわからず聞き返すことになれば失礼なので、それは止めたほうが無難だ。またそもそもイヤホンを着けっぱなしだと相手に気を使わせてしまうことがありうる。たとえスムーズに会話ができても外したほうがよい場面はあるだろう。
デメリットとして、道を歩きながらといった場面では、音楽を再生してもよく聴こえない。歌詞を理解するのは諦めて、うっすら流れるメロディラインを楽しむようなイメージだ。また店内BGMがある場所では、イヤホンの再生音と合わさってカオスになってしまう。
賑やかな場所ではイヤホンで音楽を聴くことを諦めて、「いちいち取り外さなくても外音が聴こえる」というメリットのみを享受する。またイヤホンの再生音が聴こえる場所であれば、動画再生など外音とかち合っても大丈夫なコンテンツを楽しむ。こういった向き合い方が、ながら聴きイヤホンを快適に使用するためのポイントになるのではないだろうか。
イヤホンとしての音質をチェック
ここで「Soundgear Sense」での音楽リスニングの印象をレビューしておこう。
ながら聴きイヤホンでは再現が難しい低音が、ある程度の量感でパワフルに楽しめるのが大きな特徴だ。中高域もそれに負けず元気があり、全体としてまとまりよく再生される。
また、オーディオ好きには避けられがちなイコライザー機能も、ながら聴きイヤホンでは積極的に使いたい。イコライザーオフで聴く米津玄師「Plazma」は軽やかな鳴り方でスピード感があり、ボーカルがハッキリとした輪郭で再現される。これはこれでよいのだが、イコライザーを「BASS」にすることで刻まれるビートと唸るような低音に迫力がプラスされた。鼓膜に届くまでに抜け落ちる情報がある分、このくらい派手にしてちょうどよいように思う。
どうしても余韻成分のような小ボリュームの表現に限界を感じるが、それは高望みだろう。オープン型ヘッドホンのように広がりが感じられるので、アコースティック系のボーカル曲などは相性がよいと思う。
映像鑑賞にも、ながら聴きイヤホンは十分使える
夕食後に映画を1本、「iPad」で鑑賞した。先述したように「Soundgear Sense」は低音が充実しているので、銃撃戦などのアクションシーンも迫力ある表現で楽しめる。人物のセリフもハッキリと聴こえるし、遅延も気になるレベルではない。空気清浄機の音などが耳に入るが、それは普通にテレビを見ていても同じこと。ながら聴きイヤホンでも十分、作品に没頭できた。
この時点でバッテリーは残り20%を切ったので、風呂に入る間に充電ケースに入れておく。約15分で約4時間分の充電が可能な急速充電に対応しているので、風呂から上がったらもう100%になっていた。ただ、そこから何のアプリも起動していないのに20分程度で80%と表示されたので、実際のバッテリー残量と表記にズレがあるのかもしれない。
就寝時にもイヤホンは外さない
24時間ながら聴きイヤホン生活もいよいよラスト。あとは寝るだけだ。もちろん、このまま着けっぱなしでいく。
とはいえ、筆者は就寝姿勢が主に仰向けと右向きなので、左耳だけ装着することにした。いわゆる“寝ホン”と違って、頭と枕に潰されると痛いからだ。就寝時は「Soundgear Sense」の片方だけで使えるという機能が役立つ。
横になってスマートフォンで動画を見ながら過ごす。ここで大切な注意事項として、寝落ちしてしまったときにずっと音が鳴りっぱなしにならないよう、アプリの自動再生機能をオフにするなど、途中で再生が止まるように設定しておくのを忘れないようにしたい。
24時間が経ち、ながら聴きイヤホンを耳から外すときが来た
次の日の朝、着けっぱなしにしていた「Soundgear Sense」を耳から外して、24時間ながら聴きイヤホン生活が終了した。
まず、これだけ長時間にわたって装着していて耳は痛くなかったか。
少なくとも、筆者はあまり違和感なく着けっぱなしでいられた。ただし、実のところ「Soundgear Sense」を入手してすぐのころは、1時間も装着すれば圧迫感と痛みを感じた。それがいつの間にか、着けたまま寝落ちできるくらいになっていたという経緯がある。
耳が慣れてきたからなのか、痛くならない装着方法を自然と身につけたのか、はたまた「Soundgear Sense」のフック部が少し緩んだのか、理由は定かではない。ただ、こうしたフックタイプの装着方法を採用したイヤホンが苦手な方でも、もしかしたら使い続けるうちに平気になるケースがあるかもしれない、ということをお伝えしておきたい。モデルによってはフック部がシリコンになっていたりするので、そういったバリエーションを試してみるのもひとつの手だろう。
また、カナル型イヤホンはもちろん、「AirPods」のように耳に引っ掛けるタイプのイヤホンでも、やはり耳の穴に“異物”がある状態が続くのはストレスだし、物理的にもつらくなってくる。「Soundgear Sence」のように耳をふさがない形状ではそういった負担がかからないのも、長時間着けていられた理由として大きいと思う。
ながら聴きイヤホンをずっと着けっぱなしをすることは、スマートフォンを手放せないライフスタイルを送る筆者にとっては、メリットを感じるシーンが多かったのも確かだ。ただ、生活できなくはないだけで、する必要はないということは間違いない。使いたいときだけ取り出せばよいという当たり前の結論にいたった。
読者の皆さまにおいては、ながら聴きイヤホンという便利なアイテムとは適度な距離感でお付き合いいただけたら幸いだ。