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プロが徹底解説「RGB mini LED」テレビとは? 有機EL一択はもう終わり?

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本記事では、液晶テレビの最新技術「RGB mini LED」とは何か? どんなユーザーメリットがあるのか? という素朴な疑問に答える

本記事では、液晶テレビの最新技術「RGB mini LED」とは何か? どんなユーザーメリットがあるのか? という素朴な疑問に答える

令和8年3月の内閣府調査によると、テレビの平均使用年数は約10.8年だという。昨今の格安テレビの台頭もあって、「テレビは消耗品」という人が増えているのかと思いきや、「テレビは10年使うもの」という感覚は、案外今も昔も変わっていないようだ。

長く使うものだから、できるだけ最新技術が搭載された製品を買っておきたい。そう考えるのは当然だろう。筆者は「AV Watchアワード」という、その年のNo.1テレビを決める賞レースの審査員をやっていることもあって、友人・知人からテレビの買い替え相談を受けることが多い。その大半は「液晶と有機ELどっちがオススメ?」というド定番な内容なのだが、それに混じって最近よく尋ねられるようになったのが、「RGB mini LEDって何?」という質問だ。

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そもそも液晶テレビのバックライトとは?

RGB mini LEDは、液晶テレビのアドバンテージである「高輝度」「広色域」をさらに拡張するだけでなく、ハロー(光漏れ)や視野角といった泣き所まで改善する、いま大注目のバックライト技術である。

すでにハイセンス、TVS REGZA、ソニーからRGB mini LEDバックライト搭載の新製品が発売されているが、昨年までのトレンドだった青色mini LED×量子ドット方式とは何が違うのか、気になっている方も多いだろう。

液晶テレビの歴史はバックライト技術の進化の歴史と言っても過言ではない

1画素1画素が自発光する有機ELと違い、液晶パネルはそれ自身が発光できないため、バックライト(光源ユニット)が必要になる。光源自体は2000年代に入って、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極蛍光管)から、発光効率のよい白色LEDに移行していったが、LEDバックライトの配置もエッジ型(導光型)から直下型へと進化し、それにエリア駆動(ローカルディミング)を組み合わせることで、液晶の弱点だった局所コントラスト性能が大幅に向上。結果的に、自発光デバイスだったプラズマディスプレイとの覇権争いに勝利する要因ともなった。

従来型の一般的な液晶テレビ概念図。画面裏にLED製のバックライトがあり、そこから出る光を液晶でコントロールする。RGBの3原色はさらにカラーフィルターをかけて取り出す仕組みだ

従来型の一般的な液晶テレビ概念図。画面裏にLED製のバックライトがあり、そこから出る光を液晶でコントロールする。RGBの3原色はさらにカラーフィルターをかけて取り出す仕組みだ

そして2010年代後半、局所コントラストで絶対的なアドバンテージを持つ有機ELが競争相手になると、それに対抗するため、LEDはmini LEDに置き換わり、エリア駆動の分割数が一気に増加。さらに2020年代に入ると、波長変換技術である量子ドット(QD: Quantum Dot)によって、より高純度な白色光が取り出せる青色mini LED×量子ドット方式が高級機を中心に採用され、液晶テレビは飛躍的な輝度向上と広色域化を遂げることになる。

LEDバックライトの配置イメージ。左がエッジ型。LEDをパネル周辺に配置する(上だけ、下だけ、もしくは上下、あるいは左右に配置されている場合もある)。中央が直下型で、右がmini LED。直下型をより細かく区切ったのがmini LEDだと言える。このLEDの特定エリアだけを明滅させることをエリア駆動(ローカルディミング)と言い、映像の高コントラスト化を期待できる

LEDバックライトの配置イメージ。左がエッジ型。LEDをパネル周辺に配置する(上だけ、下だけ、もしくは上下、あるいは左右に配置されている場合もある)。中央が直下型で、右がmini LED。直下型をより細かく区切ったのがmini LEDだと言える。このLEDの特定エリアだけを明滅させることをエリア駆動(ローカルディミング)と言い、映像の高コントラスト化を期待できる

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2022/08/26 19:00

「RGB mini LED」の大きなメリットは高輝度化と色空間の拡大

上述のとおり、ハイセンス、TVS REGZA、ソニーが打ち出す次なる一手が、バックライト自体をフルカラー化してしまうRGB mini LED方式だ。その理論上のメリットは多岐にわたる。

まずあげられる大きなメリットはさらなる「高輝度」化だ。理由は単純で、mini LEDの数自体が増えるからである。簡単に言えば、これまでのmini LEDであれば1つ(青色もしくは白色)だったところに、赤色、緑色、青色の3つのLEDが配置されることになる。これに関しては、製品のグレードやインチサイズによって敷き詰められるLEDの数はまったく違うし、消費電力にも直結してくる部分なので、あくまで理論的な話だととらえてほしい。

また、昨年の時点で、各社フラッグシップmini LEDテレビ(青色mini LED×量子ドット方式)の輝度実測値はすでにピークで3000nitを超え、全白でも1000nitに迫る製品が登場しており、これ以上の高輝度化は一般的な家庭内での使用においては効果を実感しにくいかもしれない。

TVS REGZA「ZX3」シリーズのRGB mini LEDのイメージ。これまで単色だったLEDバックライトをRGBの3色で構成。より明るく、色の再現性の高い映像を目指した

TVS REGZA「ZX3」シリーズのRGB mini LEDのイメージ。これまで単色だったLEDバックライトをRGBの3色で構成。より明るく、色の再現性の高い映像を目指した

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次にあげられるメリットは「カラーボリューム(色空間)」の拡大だ。一般的に色空間は、底面に色域、縦軸に輝度を示した立体図で表現されるが、バックライトのフルカラー化によってこの容積が桁違いに増えた。これは、どんな明るさのどんな色でも、純度の高い色表現が可能となったことを意味する。

色域だけ見ても、これまでの量子ドット方式では、BT.2020色域カバー率が80%台そこそこだったのに対して、RGB mini LED方式では、各社とも宿願だった「100%」を謳っている。

BT.2020色域とは色再現に関わる規格のこと。これまでの規格よりも範囲が広く、人の目で認識できる範囲により近い。たとえばハイセンス「UXS」シリーズでもBT.2020色域を100%カバーできるとしている

BT.2020色域とは色再現に関わる規格のこと。これまでの規格よりも範囲が広く、人の目で認識できる範囲により近い。たとえばハイセンス「UXS」シリーズでもBT.2020色域を100%カバーできるとしている

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「RGB mini LED」“ならでは”のメリットはハローと視野角の改善にあり

RGB mini LEDバックライトを搭載したハイセンス「UXS」シリーズ(中央)を使ったバックライトのデモンストレーション。左が直下型(エリア駆動なし)で、右がmini LEDバックライトだ。mini LEDは映像に合わせて部分ごとに明暗の調整(エリア駆動)をするため、LEDだけで元の映像に近い表示になっている。同時に、そこまで細かい分割でもないことがわかる。そのため、mini LEDであっても原理的にハロー(光漏れ)を解決できているわけではない

RGB mini LEDバックライトを搭載したハイセンス「UXS」シリーズ(中央)を使ったバックライトのデモンストレーション。左が直下型(エリア駆動なし)で、右がmini LEDバックライトだ。mini LEDは映像に合わせて部分ごとに明暗の調整(エリア駆動)をするため、LEDだけで元の映像に近い表示になっている。同時に、そこまで細かい分割でもないことがわかる。そのため、mini LEDであっても原理的にハロー(光漏れ)を解決できているわけではない

高輝度化と広色域化については、RGB mini LEDの仕組みからもイメージしやすいメリットだと思う。ただし、この2つは、RGB mini LED方式の直接のライバルであり、TCLが推進する「青色LED×スーパー量子ドット(SQD: Super Quantum Dot)方式」でも実現可能だ。詳細は後述する。

そのため、最初からフルカラーのバックライトが焚けるRGB mini LED方式“ならでは”のメリットは、「ハロー(光漏れ)」と「視野角」の改善にあると、個人的には考えている。なぜバックライトをRGB化することで、液晶テレビの長年の泣き所だったこの2つの問題が改善されるのか?

液晶テレビ(ディスプレイ)のバックライトは、その構造上、高輝度な被写体の周囲にはわずかな光漏れが生じる(本来光るべきでない部分が光って見える)。これがハローの正体なのだが、従来の白色バックライトの場合、この漏れた光が白色として現れるため、被写体本来の色との差異が生じて余計に目立ってしまう。

しかし、RGB mini LEDバックライトの場合、光源そのものが被写体と同じ色で発光するため、ハローが生じた場合でも、漏れる光の色が被写体の色と一致し、自然に見える。その結果、ハローが低減したように感じられるのだ。

また、従来の液晶ディスプレイでは、バックライトからの白い光を、液晶セルの開閉とカラーフィルターの通過によって色として表現していたため、光の波長によって透過時の光学的な広がり方が異なり、斜め方向から視聴した際に色変移が発生しやすかった。

それに対して、RGB mini LEDバックライトでは光源側で直接色を生成できるようになったことで、カラーフィルターへの依存度が下がり、各色の光の拡散特性の差分が最小化。その結果、斜めから視聴した際の色変移が大幅に抑制され、広視野角化を実現した

ハイセンス「UXS」シリーズは「黒曜石パネル」として視野角の広さをアピール。原理的な優位性に加えて、「広視野角シートPro」という表面処理で斜めから見た際の光漏れを抑えるという

ハイセンス「UXS」シリーズは「黒曜石パネル」として視野角の広さをアピール。原理的な優位性に加えて、「広視野角シートPro」という表面処理で斜めから見た際の光漏れを抑えるという

「RGB mini LED」の弱点とは?

本来は別記事で取り上げるべき内容なのだが、前述したスーパー量子ドット技術を使ったSQD-mini LED方式についても少し触れておこう。これは、従来の青色mini LED×量子ドット方式の次世代版と言える技術のこと。量子ドット素材、LEDチップ、カラーフィルターの改良によってさらに純度の高い白色発光が可能となり、高輝度化と広色域化を実現している。TCLが推進している方式だが、シャープも2026年の液晶フラッグシップ機で同方式を採用した。

RGB mini LED方式とSQD-mini LED方式には、理論上それぞれ得手不得手があるが、そのなかでTCLが指摘するRGB mini LEDの短所の1つが「混色」だ。メディア向けの説明会では、真っ赤な車に乗ったペンギンの顔が、周囲のバックライト(この場合は赤色)からの光漏れ(ハロー)によって、赤く染まってしまう現象が紹介された。SQD-mini LEDの白色バックライトでは当然こうした問題は発生しない。たしかに、液晶テレビのハローが完全になくならない限り、絵柄によっては、RGB mini LEDでこのような混色が発生することはあるだろう。

しかし、極端なことを言えば、そうした苦手な映像信号が入力された場合に、あえてカラーではなく白色で発光させることもできるのがRGB mini LED方式というわけだ。要はバックライト制御(エリア駆動)のアルゴリズムをどこまで追い込めるかが重要なのである

ただ、その制御は非常に難しく、各社が苦戦している姿を、私はAV Watchアワードの審査を通じて見てきた。それが、今度はバックライトの明暗だけでなく、色までコントロールする必要が出てきたわけで、その困難さは容易に想像できる。

TVS REGZAのRGB mini LED。ひとつのユニットにRGBの3色が並んでいる。写真のように場所によって取り付け方向が異なり、これは「混色」の影響を抑えるための工夫だという

TVS REGZAのRGB mini LED。ひとつのユニットにRGBの3色が並んでいる。写真のように場所によって取り付け方向が異なり、これは「混色」の影響を抑えるための工夫だという

ちなみに、この弱点について、「BRAVIA」シリーズではあまり心配しなくてもよいのかもしれない。本稿執筆時点で、筆者がレビューしたRGB mini LEDテレビはまだ「BRAVIA 9 II」のみだが、“RGB mini LED初号機”とは思えない完成度の高さに大いに驚かされた。元来、ソニーのエリア駆動技術には図抜けたものがあったが、その伝統はRGB mini LEDバックライトでもしっかり生かされているようだ。

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有機ELテレビとの差はどんな部分か?

有機ELテレビの進化も順調で、年々輝度を上げている。LGディスプレイによる有機ELパネル「プライマリーRGBタンデム」は、パネル自体のスペックとして最大4000nitの輝度を公称している

有機ELテレビの進化も順調で、年々輝度を上げている。LGディスプレイによる有機ELパネル「プライマリーRGBタンデム」は、パネル自体のスペックとして最大4000nitの輝度を公称している

では、最大のライバル、有機ELと比較するとどうだろう。2025年のLGエレクトロニクス、パナソニック、TVS REGZAのフラッグシップ機で採用された「プライマリーRGBタンデム」パネルの登場により、有機ELの弱点とされた輝度と色域については劇的な改善がなされた。テレビを実測したところ、輝度はピークで2000nit、全白で350nitを超え、BT.2020色域カバー率も80%台を達成。最新の液晶テレビと比べると数値的には地味かもしれないが、実使用においてはまったく問題のないレベルに達しており、自発光デバイスが生み出す絶対的な局所コントラストも相まって、本質的な画質力という意味では、有機ELにまだまだ分があると言ってよい。QD-OLED(サムスンディスプレイによる量子ドット技術を用いた有機ELパネル)陣営だったシャープも、今年は「プライマリーRGBタンデム」パネルを採用しており、最新パネルでは画質がさらに向上している可能性もある。

いっぽうで、2025年の「プライマリーRGBタンデム」には弱点もあった。そのなかで最も気になったのが、最暗部における色抜けである。具体的には赤成分がゴッソリ抜けてしまうのだが、同じシーンをソニー「BRAVIA 9 II」(RGB mini LED液晶テレビ)で表示してみると、そういった現象は見られなかった。これが、RGB mini LEDの大きなメリットとしてあげた「どんな明るさのどんな色でも、純度の高い色表現が可能となった」ことの実例である。

ソニーの技術資料によれば、高ビットレートで駆動する専用の制御用プロセッサーが、RGB各色の明るさを個別に制御し、中間色の多いシーンでもその明暗の違いを繊細に描き出すことで、既存の有機ELパネルでは技術的に難しい、明るさや彩度が控えめな色調も表現することが可能になったという。

もちろん、これが「BRAVIA 9 II」だけの話なのか、下位モデルである「BRAVIA 7 II」や、ハイセンス、TVS REGZAのRGB mini LEDテレビでも同じなのか、SQD-Mini LEDテレビではどうなのか、最新の「プライマリーRGBタンデム」搭載有機ELテレビでは同症状は改善されているのか、など今後検証していく必要があるが、高輝度と広色域以外にもRGB mini LED液晶テレビの強みがあることは知っておいて損はない。もちろん消費電力や有機EL特有の焼き付き問題も無視はできないだろう。

2026年のトレンドのひとつ低反射処理にも注目

また、液晶・有機ELを問わず今後はパネルの低反射処理がひとつのトレンドになると考えている。その嚆矢(こうし)は、「BRAVIA 9 II」が独自に開発した、実質“無反射”とも言える驚愕の低反射パネルであり、実際に店頭で体験した読者もいるかもしれない。2026年は「プライマリーRGBタンデム」の有機ELパネルでも低反射処理が行われるようだ。暗室であれば気にならないかもしれないが、明るい環境での映り込みは映像体験を大きく阻害する。従来の低反射処理は画質とのトレードオフの関係にあったが、それも技術革新で過去の話となりつつあるようだ。テレビを買い替える際には映り込みも重要なチェックポイントになるだろう。

【まとめ】画質優先なら有機EL一択という状況は変わりつつある

拙宅のテレビは2019年発売の有機ELテレビ東芝「55X930」。「レグザPro」というキャッチコピーのもと、映像制作にも活用できる「プロスペック高画質」を目指したモデルだ。筆者がリクエストした機能がいくつか盛り込まれていることもあって、自室で長年愛用していたのだが、部屋の改装を機にリビングへ移動したところ、明るい環境ではパワー(輝度)不足が気になるようになってきた。頑張れば壊れるまで使うこともできるとは思うが、テレビの進化は「10年ひと昔」ではなく、「10年大昔」であることも事実だ。

この10年、プライベートではマスターモニター的に使うことを重視していたため、映像のリニアリティの観点から有機ELテレビ一択だった。しかし、リビングで使用するのであれば、ハローと視野角が改善されたRGB mini LEDテレビも今後は買い替え候補になるだろう。特に「BRAVIA 9 II」は、従来とは一線を画すディレクターズインテントを重視した画作りが強く印象に残った。高輝度・広色域をことさら強調するのではなく、カラーボリュームの余裕を色の正確性のために活用したことは特筆に値する。そのほかの製品については、これからチェックすることになるが、SQD-mini LEDと切磋琢磨することで、液晶テレビの画質が新たな次元へ引き上げられることに期待したい。

秋山 真
Writer
秋山 真
音響の専門学校を卒業後、CDマスタリング、DVDエンコードのエンジニアとしてキャリアをスタート。2007年に渡米し、パナソニックハリウッド研究所(PHL)に在籍。ハリウッド大作からジブリ作品に至るまで、ブルーレイの名だたるハイクオリティ盤を数多く手掛けた。帰国後はオーディオビジュアルに関する豊富な知識と経験を生かし、評論活動を展開中。2019年からは日本オーディオ協会の職員として協会運営にも携わっている。
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柿沼良輔(編集部)
Editor
柿沼良輔(編集部)
AV専門誌「HiVi」の編集長を経て、カカクコムに入社。近年のAVで重要なのは高度な映像と音によるイマーシブ感(没入感)だと考えて、「4.1.6」スピーカーの自宅サラウンドシステムで日々音楽と映画に没頭している。フロントスピーカーだけはマルチアンプ派。
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