「ハイレゾ」――今年2014年のAV家電市場における重要なキーワードの1つである。ハイレゾとは、音楽CDよりも情報量が多い音楽データのこと。昨年までは一部のマニア層にしか知られていなかったが、今年は対応プレーヤーや配信サービスが増加し、一気に間口が広がった。日本オーディオ協会では、オーディオ市場活性化のカギとしてハイレゾを位置付け、普及に力を入れている。音源がハイレゾ化され、音の情報量が増えたことで、ますます重要性が増しているのが、音の出口であるヘッドホン・イヤホンである。ハイレゾが盛り上がる以前から、高級ヘッドホン・イヤホンの人気は高まっていたが、今年はさらに盛り上がりを見せているのだ。そこで今回は高級ヘッドホン・イヤホンに分類されるが、価格.com最安価格で2万円台と比較的購入しやすい人気モデルをピックアップしてみた。
2012年に発売され、価格.com上でもロングセラーを記録した「MDR-1R」の後継機種。デザインとコンセプトを踏襲しながら、さらなる高音質化を図っている。新開発の40mmドライバーユニットには、同社の最上位モデル「MDR-Z7」と同じ「アルミニウムコートLCP振動板」を採用。液晶ポリマーにアルミニウム薄膜をコーティングしたもので、2種類の素材の相互作用により、全帯域で高くフラットな内部損失特性を実現しているという。再生周波数帯域は3〜100000Hzで、日本オーディオ協会が定義するハイレゾ対応機器の条件(40000Hz以上)を余裕でクリアしている。さらに、ハウジング上に設けたポート(通気孔)で通気抵抗をコントロールする「ビートレスポンスコントロール」により、重低音のリズムを正確に再現できるようにしている。
イヤーパッドは、人間工学に基づいた立体縫製で、耳を包み込むような快適な装着性と高い気密性を実現。音漏れも軽減している。ケーブルは片出しだが、別売りの「MUC-S20BL1」を使ってバランス接続が可能。対応アンプは同社の「PHA-3」のみだが、購入後にバランス接続を楽しめるのは面白いポイントだ。
従来機種のMDR-1Rと同様、人気が高く価格.comの「ヘッドホン・イヤホン」カテゴリーの売れ筋ランキングと注目ランキングで1位を獲得している(2014年12月16日)。価格.com最安価格は24,022円(同)。カラーはブラックとシルバーの2色を用意する。なお、派性モデルとして、USB DAC機能を内蔵した「MDR-1ADAC」もラインアップする。パソコンに加え、「ウォークマン」や「Xperia」、「iPhone」とのデジタル接続が可能だ。デジタルアンプにはハイレゾに最適化した「S-Master HX」を搭載する。
MDR-1A
オーディオテクニカがヘッドホン部門を立ち上げて、今年でちょうど40年。この40年の節目のモデルとして登場したのが「ATH-MSR7」だ。心臓部のドライバーユニットには新開発の「φ45mm “トゥルー・モーション” ハイレゾオーディオドライバー」を搭載。振動板のコルゲーション(ひだ)やコイルの長さや巻き方には、長年培ったノウハウをつぎ込み、高い駆動力を実現しているという。名称に「ハイレゾ」というキーワードが入っている通り、多くの独自技術を盛り込むことで、再生周波数帯5〜40000Hzというハイレゾ音源に対応するポータブルヘッドホンに仕上げられている。
ハウジングにはマグネシウムをブレンドしたアルミニウムを採用。内部は、2つの音響スペースを設けて、不要な振動を抑える「レイヤードメタル構造」となっている。音響スペースの空気の流れを最適化するために、ハウジング内部に1つ、外部に2つのベント(音響孔)が設けられている。低反発素材の立体縫製イヤーパッドにより、長時間の使用でも疲れにくいという。なお、価格.comのクチコミでは、側圧が強いと感じる人が多かったので、購入する前に店頭などで一度試すといいだろう。
価格.com最安価格は23,635円(2014年12月16日時点)。価格.comの「ヘッドホン・イヤホン」カテゴリーの注目ランキングでは、MDR-1Aに次ぐ2位に入っており、注目度は高い(同)。MDR-1Aと比較している人も多く見られた。カラーは挿し色にブルーが入ったブラックと、ワインレッドを使ったガンメタリックの2色を用意する。レッドカラーの限定版「ATH-MSR7 LTD」もラインアップする。
ATH-MSR7
初代モデル「HP-FX500」の登場からおよそ6年ぶりに全面リニューアルされたJVCの「ウッドシリーズ」。その名の通り、振動板やハウジングなど、随所に木材を使用した個性的なシリーズだ。ラインアップは、今年2月に発売された「HA-FX850」「HA-FX750」「HA-FX650」の3モデルと、12月に発売されたばかりの最上位モデル「HA-FX1000」の全4モデルが用意される。
今回ピックアップしたHA-FX850は、11mm径の「ウッドドームユニット」を搭載したミドルレンジのモデルだ(HA-FX1000が発表されるまではフラッグシップモデル)。振動板に薄膜加工した木をドーム型に成型加工した「ウッドドーム振動板」を採用するほか、振動板の前には「ウッドディフューザー」、ユニット後方には「ウッドダンパー」、ハウジング後部には「ウッドリングアブソーバー」など、木材がふんだんに使われている。再生周波数帯域は6〜45000Hz。価格.comに寄せられたクチコミを見ると、「自然な残響効果があって、心地よい音」「アコースティックカバー曲を聴くのに最高」と、ウッドシリーズならではのサウンドを楽しんでいる人が多かった。
また、ケーブルはMMCXコネクターによる着脱式で、リケーブルと交換して音の変化を楽しめるのもポイント。価格.com最安価格は24,600円(2014年12月16日時点)。発売から10か月ほど経過しているものの、2014年12月16日時点で売れ筋ランキングの3位に入っており、安定した人気をキープしている。なお、本製品は価格.comプロダクトアワード2014のAV家電カテゴリー プロダクト大賞を受賞している。
ATH-MSR7
2012年の発売以来、ゼンハイザーを代表するモデルとして高い人気を維持しているオーバーヘッドタイプの密閉型ヘッドホン。天然のレザーを使ったヘッドバンドとイヤーパッド、マットに仕上げられたハウジング、そしてステンレススチールのヘッドラインなど、上質で所有感を満たしてくれるデザインが目を引く。カラーバリエーションはベーシックなブラウン、赤いステッチが特徴的なブラック、クラシックな雰囲気のアイボリーの3色が用意される。クチコミでもデザインを高く評価する意見が多く見られた。
音質は、ドライバーユニットに磁束密度の高いネオジウムを採用することで、キレのよい中低域を実現しているという。クチコミを見ると、低音の評価は分かれるものの、聞き疲れせずに、クセの少ない音質と評価する人が多かった。ケーブルは片出しで、アップル製品用のマイク付リモコンケーブルなどが付属する。価格.com最安価格は25,920円(2014年12月16日時点)
MOMENTUM
バランスド・アーマチュア型とダイナミック型の2つのドライバーを搭載したハイブリッドタイプのイヤホン。ドライバーユニットの構成は、バランスド・アーマチュア・ドライバーユニット2基(フルレンジ+HDスーパートゥイーター)と、12mm径のダイナミックドライバーを組み合わせたものだ。バランスド・アーマチュア・ドライバーには、T型のシンメトリックアーマチュアとダイレクトドライブ構造を採用。振動の上下対称性を高めることで波形再現性を向上させている。
最新の「XBA」シリーズは、ダイナミックドライバーユニットのサイズや、搭載するバランスド・アーマチュア・ドライバーユニットの数、HDスーパーツイータの有無により、4モデルがラインアップされる。XBA-A2は、その中でも音質の価格のバランスがとれたモデルだ。価格.com最安価格は23,000円(2014年12月16日時点)。ケーブルは着脱式で、MDR-1Aと同じくバランス接続にも対応する(別売りの専用ケーブルと、対応ポータブルヘッドホンアンプのPHA-3が必要)。再生周波数帯域は4〜40000Hz。ハイレゾ入門イヤホンとして選んでもいいだろう。
XBA-A2