ソニーはハイレゾ音源に対応した高音質モデルからお風呂で使える小型の防水モデルまで、数多くのBluetoothスピーカーをラインアップする。その中でも、ひときわ個性的なのが「BSP60」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)だ。球形の本体は、音楽に合わせて踊るように動き、音声でコントロールできる。耳のように見える「スピーカーカバー」がガンダムの「ハロ」のように動くのも面白い。今回は、普通のBluetoothスピーカーとは一味違う、“遊び心”のあるBSP60の実力をチェックしていきたい。
スマートフォンと連携し、音楽に合わせて踊ったり、音声に反応して天気や時刻を教えてくれたりするBSP60。ソニーのBluetoothスピーカーの中では異色のモデルだ。価格.com最安価格は33,581円(2015年7月24日時点)
BSP60は球形のBluetoothスピーカーだ。漆黒のボディと開閉するスピーカーカバーが近未来的で、ロボットのような雰囲気を醸し出している。一番の特徴は、スマートフォンと連携して、音楽に合わせて踊るように動くこと。底面にタイヤがあり、前進、後退、回転といった動きをする。耳のように見えるスピーカーカバーも音楽に合わせて動き、カバーの下に仕込まれたLEDライトの色も変わる。スピーカーカバーが開く様子は、ガンダムのハロを彷彿とさせる(ハロとは動き方が違うが)。BSP60を見て、同社が2008年に発売した「Rolly(ローリー)」を思い出す読者もいるかもしれない。
スマートフォンとペアリングすれば、「ボイスコントロール」機能を使って、天気やスケジュール、SMSの読み上げもしてくれる。内蔵マイクを使ってハンズフリー通話も可能だ。Androidの「OK、Google」ように、「OK、スピーカー」と発声すると、ボタン操作をしなくてもボイスコントロール機能をオンにできる。対応機器は、Android 4.4以上およびBluetoothプロファイルA2DP、AVRCP、HFPに対応した機器だ。なお、ボイスコントロール機能などは使えないが、通常のBluetoothスピーカーとして、iPhoneやパソコンと接続して音楽を再生することもできる。
本体サイズは、100(幅)×100(高さ)×100(奥行)mm、重量は約349g。手のひらにのるほどコンパクトだ。バッテリーを内蔵しており、連続音楽再生時間は約5時間(Bluetooth接続時、アクションがオフの状態)。
漆黒の球形ボディ。前面のモニターには時刻や各種ステータスが表示される。モニターの四隅にある白いライン(写真では右上と左上にしか表示されていない)は、「コントロールライト」と呼ばれるタッチボタンで、ボイスコントロールの呼び出しや音量の調整などに利用する
本体裏面に充電用のmicroUSBポートを備える。ケーブルとACアダプターは付属しないが、スマートフォン用のケーブルなどで充電できる
本体の底面に2つのタイヤを搭載。電源やペアリングスイッチも底面に備える
ソニーが2008年に発売したRolly。アーム/ショルダー/ホイールといった複数の可動部と2基のサイドランプLEDで、音楽にあわせて動きや光を表現する「モーション機能」を搭載していた。付属のソフトを使って、動きやLEDを制御できるなど、かなり凝った使い方ができるのが特徴だった。発売時の価格は4万円前後
続いて、使い方を見ていこう。まずはペアリングするAndroidスマートフォンに「Smart Bluetooth Speaker」アプリをインストールする。アプリは「Playストア」から無料でダウンロードできる。NFCを搭載しており、NFC搭載スマートフォンとならワンタッチでペアリング可能だ。Smart BT Speakerを起動すると、ボイスコントロールアプリをダウンロードするように促される。指示に従って、ボイスコントロールアプリをダウンロードし、インストールが終われば設定作業は完了だ。
スマートフォンで音楽を再生すると、BSP60のスピーカーカバーが開き、音楽が再生される。初期設定では踊らない設定になっているので、設定をオンにすると楽しそうに踊ってくれる。注意点は、落下センサーを搭載していないので、机の端で使うと落ちてしまうこと。動く範囲は狭いので、広いスペースは不要だ。踊りはランダムだが、パターンは何となく決まっているようだ。また、曲調などとシンクロすることもない。Rollyでは、アプリケーションを使って動きを細かく設定できたが、BSP60ではすべておまかせだ。それでも、小さなボディが一生懸命踊る様子は何とも愛くるしい。
Smart Bluetooth SpeakerアプリはPlayストアから無料でダウンロードできる
音楽に合わせて踊らせるには、「設定」から「音楽に合わせて踊る(音楽再生中)」をオンにする(左)。BSP60に踊ってもらう場合は落下に注意しよう(右)
スピーカーカバーを閉じると音楽の再生を一時停止できる
もう1つの特徴であるボイスコントロールは、利用者の問いかけに対して、音声で答えてくれるというものだ。日付、天気、スケジュール、電池残量など基本的なことから、「○○さんに電話」と話しかければ、電話もできる。アーティスト名やアルバム名、プレイリスト名で音楽を再生することも可能だ。「電話どこ?」と話すと、スマートフォンから音楽が流れ、スマートフォンがどこにあるのかがわかる便利な機能もある。ボイスコントロールでどんなことができるのかは、「問いかけの例」というメニューから確認できる。「元気ですか?」と聞くと、「はい、元気です」と返答してくれるなど、「問いかけ例」にはない返答もあったので、隠しコマンドがあるのかもしれない。
ボイスコントロール機能は、右上のコントロールライトをタッチすると使えるほか、前述の通り、「OK、スピーカー」と発声しても動作する。「はい、なんでしょう?」と聞かれる前に、話しかけて上手くいかないときもあったが、慣れれば問題はなさそうだ。聞き取り精度も非常に高く、ストレスなく使える。アーティスト名やスケジュールなど、長い文章を読み上げるときはぎこちないが、問題なく聞き取れるレベルだった。
なかなか便利なボイスコントロールだが、アプリを起動することができず、話題の定額配信サービス「AWA」を音声で起動して聴くといった使い方はできない。また、音声で音楽再生を停止することもできない。
「OK、スピーカー」とスピーカーに向かって話しかけると、ボイスコントロールが起動する(左)。同機能はオン・オフが可能(右)
問いかけの例の一部
BSP60のもう1つの便利な使い方がアラームだ。利用者が起きるまで動き続ける機能はないが、両方のスピーカーカバーを閉じるまではアラームが停止しない仕組みで、寝坊も防げそうだ。アラーム停止後に、天気とその日のスケジュールを読み上げてくれるのも親切だ。
アラームは、細かく時間を設定できる。両方のスピーカーカバーを閉じないとアラームが停止しない仕組みだ(左)。アラーム停止後に天気やスケジュールを読み上げる機能も備える(右)
BSP60が搭載するスピーカーの直径は約25mmで、アンプの実用最大出力は2.5Wだ。同じ球形でエントリーモデルのSRS-X1よりも出力が低く、ソニーの高音質コーデック「LDAC」にも対応していないことからもわかるように、気軽に音楽を楽しむためのスピーカーと言える。
高音質とは言えないが、360度どこから聴いても音質に大きな差がなく、聴く場所を選ばないのが特徴だ。スピーカーカバーは音楽に合わせて上下するが、音質に影響が出るため、ギリギリのところで閉まらないように調整されている。静かな音楽を再生していると、駆動用のモーター音が気になるが、そこも愛嬌があって許せてしまう。
搭載するスピーカーの直径は約25mmで、実用最大出力は2.5W。音楽再生中はスピーカーカバーは完全に閉じることはなく、スピーカーカバーが動作しても音質に大きな影響はない。Bluetoothの対応コーデックもSBC
BSP60の価格.com最安価格は33,581円(2015年7月24日時点)。Bluetoothスピーカーとしは高価な部類に入る。LDAC対応の「SRS-X88」(価格.com最安価格37,540円)とほぼ同じ価格帯だ。音質にこだわりたい人や、1台目のBluetoothスピーカーとしてはSRS-X88のほうが満足度は高いだろう。それに対して、BSP60は、踊ったり、話したりする遊び心があるモデルだ。普通のBluetoothスピーカーでは物足りない人にぜひチェックしてもらい。2台目、3台目として、ちょっと面白いモデルを探している人にもマッチするはずだ。