音がこもりやすい印象のある低価格帯のイヤホンであるが、中にはクリアな音質を感じさせてくれるモデルもある。今回紹介するRHA「S500」もその1つだ。コストパフォーマンスの高い高級イヤホンを多数ラインアップするRHAが、ひさびさにリリースした低価格モデルになる。価格.com最安価格は5,734円(2016年4月22日時点)。
RHA 「S500」。iPhone用リモコンが付いた「S500i」もラインアップされている
英国のオーディオメーカーRHAが送り出す「S500」は、ダイナミックドライバーを搭載したカナル型イヤホン。価格.comでも人気の高い同社製イヤホンのスタンダードモデル「MA750」(価格.com最安価格は12,000円台)の下位製品になり、RHAのラインアップではもっとも安価なエントリー機となっている。
低価格イヤホンで気になるのが製品全体のクオリティだが、S500では価格以上の質の高い作りを実現している。外観は、非常にコンパクトに作られているアルミニウム製のハウジングが特徴的。見た目も美しく仕上げもていねいで、耳に装着しても違和感のない着け心地だ。ぴったりとフィットするため遮音性も悪くない。同社のイヤホンにはすべて金属製のボディが使われているが、本製品も同社のこれまでのノウハウが感じられる美しい仕上がりとなっている。
イヤーチップと比べてみると、ハウジング部の小ささがよくわかる。シンプルなデザインだが、後方が斜めにカットされているのがいいアクセントになっている
搭載されるドライバーユニットは、新しいマイクロダイナミックドライバー「140.1モデル」だ。再生周波数帯域は16Hz〜22000Hzで、きめ細やかに全音域をカバーするという。
なお、ケーブルには、左右分岐の前後で異なる材質を使用。これにより衣服にケーブルがこすれたときの、タッチノイズを抑えている。ケーブル長は1.35m。
ハウジングのノズル部。目の細かいメッシュパネルが装着されている。細部もきれいに作りこまれている
ケーブルはY分岐になっており、耳側のケーブルは熱可塑性エラストマー(TPE)仕上げ。プレーヤー側のケーブルには表面に繊維素材が使われている
充実した付属品も魅力だ。イヤーピースは、標準タイプが3サイズ(S/M/L、各2組)、ダブルフランジが1サイズ用意されている。ほかにも、イヤーピースを固定するホルダーや、キャリングポーチ、さらにケーブル固定用クリップも同梱される。低価格イヤホンとは思えない充実ぶりだ。
また、上位モデルと同様に3年間のメーカー製品保証がついており、初心者にとってはまさに至れり尽くせりなモデルになっている。
イヤーピースは2種類あり、標準タイプが3サイズ(S/M/L、各2組)、ダブルフランジが1サイズとなっている
それでは気になる音質についてチェックしていきたい。今回使用したプレーヤーは、Astell&Kern「AK Jr.」と、ソニーモバイルのファブレット「Xperia Z Ultra」。楽曲は、CD音源(44.1kHz/16bit)を中心に、96kHz/24bitや192kHz/24bitのハイレゾ音源も使用している。
この製品、おそらく買ってすぐは高域がシャリシャリし、低域の出方も弱めで、しっくりこないように感じると思う。が、イヤホンの性能を引き出すために行う慣らし運転(いわゆるエージング)のあとでは、高域の鋭さがほどよく効いた音に変わる。音の抜けにもつながる高域の鋭さは、この製品のいいところだが、逆に女性ボーカルがシャープになり過ぎてしまい騒がしく感じることもある。特に高い声の声優が複数人で歌っているようなアニメソングでは、その傾向が強かった。
しかし、上原ひろみの「Alive」を聴くとシンバルの音はしっかり抜けているし、Perfumeなどのエレクトロな楽曲では打ち込み系の音がメリハリよく鳴り、またボーカルも突き刺さる感じはしない。1つひとつの音が比較的クッキリハッキリ聴こえてくるため、解像感が高まっているようにさえ感じる。
さらに、一般的にドライバーが小さいことで起こりやすい低音の不足感は、TOTO「I Will Remember me」でも、先ほどのAliveでも、ボワ付かず適度な締りがでている。ハイレゾ音源の魅力を伝え切れるほどの情報量は出せないが、そうした点があまり気にならないほど、帯域バランスがうまくまとめられている印象だ。
仕様だけ見ると特に目新しいところがない「S500」だが、実際に聴いてみると、この価格でこんな質の高い音が聴けるのかと、とにかく驚く。本体デザインもアルミの質感がきれいにでた、ていねいな仕上げで、安っぽい感じはしない。付属品の充実さやメーカー保証期間の長さなど、イヤホンをはじめて買い換える方なら気になる点が、しっかりケアされているのも好印象だ。
5000円台ということを考えると満足できる製品と言える。シャープさがアクセントになった音が好みの方なら、ドンピシャな製品だろう。